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平成26年1月30日判決言渡
平成25年(ネ)第10079号特許権に基づく差止等請求控訴事件
(原審・東京地裁平成24年(ワ)第16103号事件)
口頭弁論終結日平成25年12月16日
判決
控訴人株式会社テクニカルメディアサービス
控訴人X
両名訴訟代理人弁護士加藤伸樹
両名訴訟代理人弁理士小林義孝
被控訴人三菱UFJニコス株式会社
訴訟代理人弁護士吉澤敬夫
訴訟代理人弁理士新井全
同岡崎信太郎
補佐人弁理士野口和孝
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,原判決別紙イ号物件目録記載のサービスを提供してはならない。
3被控訴人は,控訴人株式会社テクニカルメディアサービスに対し,787万
5000円及びこれに対する平成24年6月14日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
4被控訴人は,控訴人Xに対し,1575万円及びこれに対する平成24年6
月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5訴訟費用は,第1審,2審とも,被控訴人の負担とする。
6仮執行宣言。
第2事案の概要
1原判決で用いられた略語は,本判決でもそのまま用いる。原判決の引用部分
については,「原告」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と読み替える。
2本件は,控訴人ら(原告ら)が被控訴人(被告)に対し,被控訴人(被告)
の提供する被控訴人サービスは,控訴人らの有する「情報データ出力システム」に
係る2つの特許権(本件各特許権)を侵害すると主張して,特許法100条1項に基
づく差止請求権により被控訴人サービスの提供の禁止を求めるとともに,民法70
9条に基づく損害賠償として控訴人会社において787万5000円,控訴人Xに
おいて1575万円及びこれらに対する不法行為の後の日である平成24年6月1
4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求めた
事案である。原判決は,控訴人らの請求をいずれも棄却したため,これを不服とす
る控訴人らが,本件控訴を提起した。
3前提事実及び争点は,原判決の「第2事案の概要」の「1前提事実」及
び「2争点」(原判決2頁14行目から11頁12行目まで)に記載のとおりであ
るからこれを引用する。
第3争点に関する当事者の主張
1争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加する他は,原判決の「第2事
案の概要」の「3争点に関する当事者の主張」(原判決11頁13行目から22頁
23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2原判決12頁23行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。
「平成25年12月3日から,被控訴人サービスの利用規定が変更された(以下,
変更前の規定(甲7)を「旧規定」と,変更後の規定(甲34)を「新規定」とい
う。)。新規定においては,被控訴人サービスの利用者に対する要求が明確化された
他,利用者の端末に限定が加えられた点,割賦販売法30条の2の3への言及がさ
れた点,例外的な場合を除き文書を送付しないことが明らかにされた点が旧規定と
異なる。
新規定においては,割賦販売法の要件を満たすために,被控訴人サービスの利用
者が使用する端末に限定を加えているものであって,被控訴人は被控訴人サービス
の利用者を支配・管理しているといえるから,端末装置の保有者が利用者であった
としても,被控訴人サービスは,「端末装置」の要件を充足する。」
3原判決14頁15行目末尾に,改行の上,次のとおり挿入する。
「(ウ)新規定で言及される割賦販売法30条の2の3第1項から3項に定める書
面の交付に関する同法施行規則61条2項については,「見読性」,すなわち,「直ち
に整然とした形式及び明瞭な状態で使用に係る電子計算機その他の機器に表示及び
書面を作成できること」を要求するものと解されている。被控訴人サービスでは,
かかる「見読性」を満たすためのアプリケーションソフトウェアとしてリーダーを
用いているのであるから,被控訴人は,リーダーを「互換性の相違にかかわらず,
統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する」
アプリケーションソフトウェアとして使用しているものであって,被控訴人サービ
スは,「共用アプリケーションソフトウェア」の要件を充足する。」
第4当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人らの請求には理由がなく,控訴人らの本件控訴はいずれも棄
却されるべきものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正する他は,原判決
の「第3当裁判所の判断」(原判決22頁24行目から37頁1行目まで)に記載
のとおりであるから,これを引用する。
1原判決29頁6行目の「甲29」を「甲29,30」と改め,原判決29頁
26行目から30頁11行目までを,次のとおり改める。
「(イ)PDFファイルを作成するに当たっては,フォントを設定するが,別の端
末で表示・印刷するに際して,当該フォントが当該別の端末にインストールされて
おらず,代替フォントも存在しない場合には,別の端末で表示・印刷したときに元
のレイアウトを保持することができず,エラーや文字化けが発生することがある。
このようなエラーや文字化けを防止するためには,PDFファイルを作成するに当
たって,PDFファイルにフォントを埋め込む方法(当該フォントに含まれている
全ての字形を埋め込む方法又は当該文章に使用されている字形のみを埋め込む方法)
がある。
他方,PDFファイル内にフォントが埋め込まれているのではなく,PDFファ
イルを開くシステム上のフォントが参照されている場合,リーダーはファイルを開
くシステム上で当該フォントを検索し,システム上のフォントを使用してテキスト
を表示する。フォントの検索については,リーダー起動スプリクト又はユーザー構
成ファイル内のPSRESOURCEPATH変数を設定して,リーダーがインス
トールされているフォントにアクセスするように指定することもできる。」
2原判決33頁12行目から35頁5行目までを,次のとおり改める。
「イこれを被控訴人サービスについてみると,前記(1)エのとおり,被控訴人サ
ーバにおいては,あらかじめ用意されているテンプレートに従って利用明細に係る
PDFファイルが作成され,これが利用者に送信されると,利用者は,元のレイア
ウトを変更することなく,単に,受信したPDFファイルをリーダーで表示又は印
刷するにすぎないことが認められる。このように,リーダーは単に受信したPDF
ファイルを表示又は印刷するにすぎず,統一された一定の規則性に基づいて規則正
しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定するものではないから,
「共用アプリケーションソフトウェア」に該当しない。
本件各発明の「共用アプリケーションソフトウェア」は,前記アのとおり,利用
者端末の機種やOS,アプリケーションソフトウェア,フォント環境等の相違にか
かわらず,情報データを統一された一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)
レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能を有することが求められている。
被控訴人サービスにおいて,上記の要件を充足するアプリケーションソフトウェア
を探すとすれば,PDFファイルの作成機能を有するアクロバット等のアプリケー
ションソフトウェアがこれに該当するというべきであり(なお,アクロバット等の
アプリケーションソフトウェアは,利用者端末ではなく被控訴人サーバにインスト
ールされているものと認められる。),利用者が利用明細に係るPDFファイルを表
示又は印刷する際に使用する利用者端末のリーダーはこれに該当することはない。
ウこれに対し,控訴人らは,リーダーにも,元の文書に使用されたフォントが
端末装置に存在しない場合に代替フォントを用いて出力する機能,元の文書を縮小
して印刷する際に文字サイズ,上下端縁及びマージンを変更して出力する機能があ
ると主張する。
しかし,前記のとおり,リーダーは単に受信したPDFファイルを表示又は印刷
するにすぎないと認められる。そして,前記(1)ウ(イ)のとおり,リーダーのフォン
トの設定次第では,別の端末で表示・印刷したときに元のレイアウトを保持するこ
とができず,エラーや文字化けが発生する場合もある。また,同(ウ)のとおり,リー
ダーを使用してPDFファイルを印刷する場合,その設定次第では,最適のサイズ
での印刷がされるとは限らないことが認められる。そうすると,リーダーに控訴人
らの主張するような機能があるとしても,リーダーが,文字サイズ及び文字フォン
トを常に一定の規則性に基づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態
に自動的に設定する機能(前記アの③)を有するとまでは認められない。
また,控訴人らは,リーダーは,PDFファイルについて印刷命令が出された場
合,ページ記述言語データにデータ数,文字数,文字サイズ,文字フォント,行数,
上下端縁,マージン等を設定することを理由に,リーダーが,「共用アプリケーショ
ンソフトウェア」に該当すると主張する。
しかし,控訴人らの主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,控訴人らの主張を前提としても,その機能は,元のファイルのレイア
ウトを最適なものに設定する機能ではなく,元のファイルのレイアウトを何ら変更
することなく印刷することができる機能にすぎない。
したがって,控訴人らの上記主張は,共用アプリケーションソフトウェアが有す
べき前記アの①ないし③の機能のうち,①の情報データの文字数及び行数及び②の
印刷用紙に印字する前記情報データの個数について,統一された一定の規則性に基
づいて規則正しい(最適な)レイアウトで出力する状態に自動的に設定する機能が
あることの根拠となる主張とはいえない。」
3以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,控訴人らの本件
控訴はいずれも棄却されるべきであるから,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
小田真治

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