弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     検察官および被告人らの本件各控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用中証人Aに支給した分は、被告人らの連帯負担と
する。
         理    由
 検察官の本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検事丸物彰の提出にかかる東京地方
検察庁検事河井信太郎作成名義の控訴趣意書に記載してあるとおりであり、被告人
らの本件各控訴の趣意は、弁護人福田徹、同久々湊道夫、同角尾隆信および同小見
山繁の連名提出にかかる控訴趣意書に記載してあるとおりであるから、おのおのこ
れを引用する。
 (中略)
 被告人らの控訴の趣意第一の一および二、法令の適用の誤りの主張について
 所論は、原判決には、(一)憲法上の観点からみて、(二)慣行上の権利という
観点からみて、法令の適用の誤りがあり、これは、判決に影響を及ぼすことが明ら
かであるというものである。
 そこで、以下順次これらの点について判断する。
 (一)について
 <要旨>憲法第二三条に規定する学問の自由は、これを学生の立場からみれば、学
習の自由、学問的研究の自由および学問的見解の発表の自由にあるというこ
とができる。そして、かかる学問の自由を護り、学問の進歩・発展を期するには、
学生の健全な自主的精神・批判的精神を助長すべきであり、学生の適正な自治活動
は、これを尊重し、むしろこれを育成助長すべきものといわなければならない。し
かし、学生は、教育者ではなく、あくまで修学途上の教育を受ける立場にあるもの
であるから、学問の自由が保障されるからといつて、無制限な自治行動が許容され
るわけのものではない。本件のB会館は、学生のため物心両面にわたつて厚生援護
を図ることを目的とする財団法人C会によつて経営されていた学生寮であり、その
敷地および建物は、国有に属し、C会が国からこれを借り受けていたものであつ
て、同会館の経営に要する費用は、大部分国庫補助金によつてまかなわれていたも
のであることは、原判決挙示の証拠上明らかなところである。されば、C会は、自
己の施設たるこの会館を自己の責任において、自己の方針に従い管理運営すること
は、当然であつて、国に対しても、会計法規、国有財産の管理に関する法令および
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律等による規制のもとに、これを管
理運営する責務を負つていたものといわなければならない。したがつて、原判決
が、「弁護人の主張について」と題する欄において、入館選考、退館処分その他D
会館の管理運営に関する諸事項を処理する権限や、各D会館に対する予算を配分す
る権限がC会に帰属すること自体については、法制的に疑問の余地がなく、そのこ
とを前提としたうえで、実際の運営をどのように行なうかについては、種々の態様
が可能であるが、C会は、その目的とする教育的事業の一環として館生の自治制度
を採用しているのであるから、館生の自治の限度の最終的決定権は、教育目的や効
果などを考慮しつつ館生を指導するという立場にあるC会にあり、民主社会におけ
る自治能力の養成、学生の自由で自主的な気風の養成という教育的観点からも、C
会が館生の自治活動を最大限に尊重すべきことは、いうをまたないけれども、館生
は、教育の一環としての自治活動をすることを承認して入館しているものといわざ
るを得ないのであつて、その主張し得る自治活動には、おのずから限界がある旨説
示したことは、まことに正当な判断を示したものといわなければならない。本件の
B会館は、館生の勉学および生活の場ではあるが、原審における審理の結果および
当審における事実の取調の結果をつぶさに調査して、検討しても、本件のB会館の
移転は、不可避の情勢にあつたものであり、あらたに建設される会館の施設や、あ
らたに制定される予定のD会館管理規程において、館生らの自治活動の範囲が従来
より狭められることは、否めないとはいえ、これも、東京都およびその近郊の住生
活の実情や館生らの自治活動がすでに長期間正当な限界を逸脱していたことに照ら
しても、まことにやむを得ないところであり、もとより、これにより、館生らの学
問の自由を保障するために必要な自治活動までが制限される状況にあつたとは、考
えられず、また、館生らの生存権ないし生活権が侵害されるとも、解せられないの
である。以上に徴すれば、原判決は、学問の自由を保障した憲法第二三条の解釈を
誤つたものでないのはもとより、教育を受ける権利について規定した憲法第二六条
第一項についても、また、憲法の精神に則り制定された教育基本法の前文、第一条
ないし第三条、その他の教育関係法規についても、その解釈を誤つたものとは、い
えない。被告人らが、所論のように、館生らの憲法上の諸権利を、これに対するさ
しせまつた侵害の危険から防衛するため、本件行為に出たものであるとは、とうて
い解せられないところである。
 (二) について
 本件のB会館における館生の自治の限度の最終的決定権がC会にあることは、右
(一)について判断したとおりであつて、かかる判断が、所論のように、単純な所
有権・管理権理論による解釈に過ぎないもので、憲法上の学問の自由を正当に評価
しないものであるとするわけにはいかないことも、右(一)について判断したとこ
ろにより明らかである。同会館の在館学生が従来実質的に広範な自治活動を行なつ
て来たことは、原判決も、これを認めるところであるが、原判決挙示の証拠と原審
の審理に現われたその余の証拠および当審における事実の取調の結果とをあわせて
考察すれば、C会の発足の当初は、理事らと在館学生との間には、相互に親愛・信
頼の関係があり、右会館の運営については、C会が最終的決定権を確保しながら、
実質的には大幅に在館学生の自治に委ねていたものであるが、年を経、在館学生が
交替して行くにつれて、両者の親愛・信頼関係が薄れ、在館学生がC会の最終的決
定権を無視し、正当な自治の限界を越えた行動をとるに至り、かかる状態が長期間
継続して本件当時に至つたもので、本件の館生らは、かかる状態の継続中に入館し
て来たものと認められるのであるが、かかる状態は、もとより適法なものではな
く、かかる状態が事実上幾年続こうとも、館生らが所論のような慣行による広範な
自治権を取得すべきいわれはなく、また、館生の自治活動の範囲について、C会当
局と館生らとの間に意見の一致を欠いたからといつて、C会当局が、館生らの要求
により、その解決をはかるため、館生の集団との直接交渉に応じなければならない
ものとは、解せられないのであるから、C会が、所論のように一方的に館生らの慣
行上の権利を侵害し、または、これを侵害しようとしていたものということはでき
ない。したがつて、被告人らが、館生らの所論のような慣行上の権利を、これに対
するさしせまつた侵害の危険から防衛するため、本件行為に出たものであるとし
て、これを正当視するわけにはいかない。
 以上(一)および(二)について判断したとおりであるから、原判決には、所論
のような法令の適用の誤りはない。
 論旨は、理由がない。
 (以下省略)
 (裁判長判事 堀義次 判事 内田武文 判事 金子仙太郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛