弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人原賀隆雄の論旨は同弁護人提出の控訴趣意書に記載するとおりであるから
これを引用する。 論旨第一について。
 原判示第三の横領罪の目的となつた自転車は同判示第二の窃盗罪の被害物件と同
一であること即ち被告人が判示第二の被害者から盗取したものを判示第三の被害者
に売却したものであること、従つて判示第二の被害者は民法第百九十三条により占
有者である判示第三の被害者に対し右自転車の回復請求権を有することは所論の<要
旨>通りである。しかし被告人が一旦甲から窃取したものを乙に売却処分した以上盗
物の処分行為はこれをもつて終了したものであり、被告人が更に右乙から借
り受けた当該物件を第三者丙に入質して横領した場合には新に別個の領得犯意に基
く横領罪の成立するのは当然であると言わなければならない。民法第百九十二条と
第百九十三条の関係において盗物の所有権帰属につき大審院判例と学説の上に争が
あるところであるが仮に判例に従い盗物の所有権は右の場合乙に移らないで依然甲
に保有せられるものと解するとしても、被告人が各別の領得犯意に基き各別の領得
行為を実現する限り当該構成要件該当の各個の法益侵害罪が成立するものと言わな
ければならない。論旨は採用できない。
 論旨第二について。
 本件諸般の犯情に徴し被告人の原判示併合罪に対し原審が懲役一年三月を量刑し
たのは特に過重とは認められない。本論旨も理由がない。
 そこで控訴は理由がないので刑事訴訟法第三百九十六条により主文の通り判決す
る。
 (裁判長判事 吉村国作 判事 小山市次 判事 沢田哲夫)

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