弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人ら代理人弁護士鍛治利一の上告理由第一点について。
 しかし、本件の主要な争点は、本件家屋は、上告人らの先代Dが建築所有したも
のであるか又は被上告人がこれを建築所有したかであつて、Dがその敷地を被上告
人の母訴外Eから転借したか否かは、その建築所有を間接に推認せしむべきいわゆ
る間接事実に過ぎないものであること明白である。そして、かかる間接事実につい
ての自白は、裁判所を拘束しないものであること当裁判所の判例とするところであ
るから(昭和三一年五月二五日第二小法廷判決、民事判例集一〇巻五号五七七頁以
下)、たとえ、被上告人がその転借の事実を自白しながら、これを取り消し、上告
人においてその取消につき異議を述べたとしても、原審が判示所有権の帰属を判断
するについて、かかる自白に拘束されるものでないこというまでもない。それ故、
所論は採るを得ない。
 同第二点について。
 しかし、原判決は、所論原判示事実を甲第九号証、乙第六号証だけで認定したも
のではなく、該証拠のほか挙示の書証、検証の結果、ことに、原審並びに第一審証
人F、第一審並びに原審における控訴本人Bの各供述の一部に弁論の全趣旨を綜合
して認定したものであつて、その認定は、その証拠資料に照し肯認できないわけの
ものでもない。しかのみならず、所論原判示の認定事実は、被上告人の本件家屋建
築の際に取り極めた代償として上告人ら先代において取得すべき賃料に関する判示
であつて、被上告人の所有権取得に関する直接事実の判示とは認められない。従つ
て、この点に関する所論は、結局原判決に影響を及ぼすべき法令違背の主張とも認
められない。それ故、所論は採るを得ない。
 同第三点について。
 しかし、所論原判決の判示は、結局その賃料を約旨によりDに支払つていた事実
の経過事実として判示したものであつて、これにより被上告人の所有権取得を認定
したものでないことその判示に照し明白である。従つて、所論は、原判決に影響を
及ぼすべき法令違背の主張とは認められないから、上告適法の理由として採るを得
ない。
 同第四点について。
 しかし、所論原判決の判示は、甲第一号証の一を採用できない理由の一部に過ぎ
ない蛇足的な説示と認められるから、本論旨も原判決に影響を及ぼすべき法令違背
の主張とはなし難い。
 上告人ら代理人弁護士上野常一の上告理由第一点について。
 しかし、原判決は、本件家屋が上告人ら先代Dの所有であることを推認せしめる
判示の一応の間接的傍証的事実を認めることができるが確定的心証を得難き旨説示
した上、挙示の書証、検証の結果、供述並びに弁論の全趣旨(ことに第一審以来の
弁論によれば、被告の母訴外Eにおいて昭和一九年四月一日被告名義で家屋台帳に
登載手続をし公簿上の所有名義は被告名義となり、昭和二七年一〇月八日被告名義
に所有権保存登記されたことは、原告ら訴訟代理人自ら主張し、被告訴訟代理人の
認めるところである。)により、結局判示のごとく控訴入(被上告人、被告)所有
の旧家屋に増築することとしその増築に要する大工左官等の職人に支払うべき賃金
その他の諸経費は控訴人が負担支出すべくその他原判示のごとく取り極めた上昭和
一六年四、五月頃本件家屋の建築を完成し控訴人においてこれが所有権を取得した
ことを認定判示したものであつて、その認定は、挙示の証拠資料に照しこれを肯認
できないことはないのである。されば、所論は、原判決の判示に副わない法令違背
を主張するに帰し、採るを得ない。
 同第二点について。
 しかし、所論家賃取立権に関する原判示は、挙示の証拠で肯認できないわけのも
のでもない。所論は、結局原審の適法になした事実認定ないし原審の裁量に属する
証拠の取捨、判断を非難するに帰し採るを得ない。
 同第三点、第四点について。
 しかし、原審の検認の結果その他原判決挙示の証拠資料によれば、原判決の事実
認定を肯認できないわけのものでもなく、所論は、結局原判決が適法になした事実
の認定又は原事実審の裁量に属する証拠の取捨、判断を非難するに帰し、採ること
ができない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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