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平成30年5月11日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成29年(行コ)第234号品種登録調査等の義務付け請求控訴事件
(原審大阪地方裁判所平成29年(行ウ)第61号)
口頭弁論終結日平成30年2月23日
判決
控訴人(一審原告)P1
被控訴人(一審被告)国
上記代表者法務大臣P2
上記指定代理人中田光昭
同馬田雅行
同竹原友深
同新里将也
同内澤啓
同川口藍
同田中岳夫
同筒浦良昌
処分行政庁農林水産大臣
P3
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
第2事案の概要
以下で使用する略称は,原判決の例による。
1本件は,控訴人が,登録番号第15866号の品種(本件登録品種)につい
て,種苗法47条1項に基づく本件登録品種の調査(本件調査)及び同法49
条1項に基づく本件登録品種の品種登録の取消しの審査(本件審査)を行うこ
との各義務付けを求める行訴法3条6項1号の非申請型の義務付けの訴えであ
る。
原審は,本件調査及び本件審査はいずれも行訴法3条6項1号所定の処分と
はいえず,これらの義務付けを求める本件訴えはいずれも訴訟要件を欠くから,
本件訴えをいずれも不適法であるとして却下した。
控訴人は,これを不服として,原審への差戻しを求めて控訴した。
2判断の前提となる事実並びに争点及び当事者の主張は,次のとおり補正し,
当審における控訴人の主張を3に加えるほか,原判決の「事実及び理由」中の
第2の2及び第2の3(原判決2頁9行目から11頁20行目まで)に記載
のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)原判決5頁8行目の「1年2か月」を「懲役1年2か月」に改める。
(2)原判決7頁14行目の「本件登録品種」から15行目の「制限されてお
り」までを「本件登録品種を業として利用する権利の専有が認められ,育成
者権を持たない者の業として利用する権利が大きく制限されており」に改め
る。
(3)原判決8頁9行目から12行目までを次のとおりに改める。
「特に控訴人は,平成23年5月に常緑性のエゾノキリンソウの品種を,平
成26年3月に常緑性のタケシマキリンソウの匍匐性種を,それぞれ登録出
願し,前者は同年7月に登録された。ところが,育成者権者グループが落葉
性のキリンソウからタケシマキリンソウに酷似した常緑性種である本件登録
品種を育種したとして登録出願し,これが登録されたことによって,控訴人
は強く影響を受けている。」
3当審における控訴人の主張
(1)原審における審理不尽
DNAの分析結果によれば,本件登録品種の塩基配列は本件登録品種の親
とされているキリンソウの塩基配列と異なるところからすると,本件品種登
録には他種を親と偽った不正があることが明白である。それにもかかわらず,
原審は,本件品種登録が不正なものであることについて何ら審理をしておら
ず,審理不尽の違法がある。
なお,処分行政庁は,控訴人から,多数回にわたり疑問等の通知を受けた
にもかかわらず,必要な本件調査や本件審査を行っておらず,真実を隠匿し
ている可能性がある。
(2)本件調査及び本件審査の処分性
本件品種登録が,他国原産の植物を自国の在来種と偽ってされた,不正な
ものであることは明白であり,このことは,処分行政庁が本来行うべき業務
である本件調査及び本件審査を行い,簡易なDNA解析や客観的な審議で容
易に判明する。
本件品種登録により,多くの緑化事業関係者が大きな影響を受けており,
控訴人も「一定の処分をすべき旨を命じることを求めるにつき法律上の利益
を有する者」である。これらの者の損害を避けるためには,本件調査及び本
件審査が必要であり,他に適当な方法がない。
なお,処分行政庁は,本件登録品種が種苗法3条1項1号の明確区別性を
具備していない可能性があることや,性状やDNAが常緑性のタケシマキリ
ンソウに酷似した品種が落葉種のキリンソウからは生まれないことを指摘さ
れたにもかかわらず,上記指摘に対する意見や反論を示さず,客観的な調査
や審議を行っていない。
処分行政庁は,本件調査及び本件審査をするだけでなく,「控訴人の指摘
に対する意見提出」や「客観的な調査や審議」を行うべきであり,これらの
行為が「一定の処分」として命じられるべきである。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人がした本件訴えは不適法であると判断する。その理由は,
後記2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほか,原判
決「事実及び理由」中の第3の1及び第3の2(原判決11頁22行目から
12頁21行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
2当審における控訴人の主張に対する判断
(1)審理不尽について
控訴人は,原審における審理不尽をいうが,前記1において引用する原判
決記載のとおり,本件調査及び本件審査はいずれも行訴法3条6項1号の処
分とはいえず,本件訴えは訴訟要件を欠くものである。そのため,原審は,
本件品種登録に不正があったか否かについての審理を行わなかったものであ
り,控訴人の批判は当たらないというべきである。
(2)本件調査及び本件審査の処分性
控訴人は,本件調査及び本件審査が,行訴法37条の2第1項所定の「処
分」であることを前提とした主張を繰り返すものであるが,同条項所定の
「処分」とは原判決「事実及び理由」中の第3の1及び第3の2(原判決1
1頁22行目から12頁21行目まで)の説示のとおりであり,控訴人が指
摘する本件品種登録の不正や緑化事業関係者への影響などの事情は,同条項
所定の処分であることを基礎付けるものではない。また,本件調査及び本件
審査が行われ,控訴人主張のとおりの事実関係が明らかになったとしても,
そのことによって,法律上当然に品種登録の取消しの効果が発生するもので
はないから(種苗法47条,49条参照),控訴人の主張は失当である。
3よって,原判決は相当であって,本件控訴には理由がないから,これを棄却
することとして,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官中尾彰
裁判官髙橋文淸は,転補により,署名押印することができない。
裁判長裁判官山田陽三

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