弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破毀する。
     本件を神戸地方裁判所に差戻す。
         理    由
上告理由第二点は
原判決が賃借関係の移転があつたと判断した点は暫く措くとしても、上告人と被告
人間の使用関係について借家法の適用なしと判示したのは借家法第八条の決意を誤
解した違法の判決であつて、破棄さるべきものと確信する。
原判決は「被控訴人は自ら賃借権に基き本件家屋に居住している積りでいたのであ
るが、眞実は控訴人と接衝してその妻の取極めにより前記家屋の一部を他に住居を
求める迄の暫定的な住居として一時的な転借をしたものでおることが明であるか
ら、此の関係については借家法の適用がない」と判示した上、解約の申入の正当性
の存否につき判断することなく解約申入によつて契約が終了したと判示して明渡の
請求を認容した。
然し乍ら借家法の適用が排除される一時的使用であるには使用者が使用の目的を明
示し、且その使用がその性質上一時的のものであることが明な場合(例へば花見の
茶店用)及び当事者が特に一時的使用であることを明示し、且その理由を明にした
場合(例えば三ケ月後には他人に貸すからそれ迄の期間貸すようなとき)を云うも
のであるととは学者の説く所であり(薬師寺教授借地借家法論昭和七年版二一八頁
三潴教授借地法及び借家法四七頁)又契約書に一時的使用の文言丈ではこれを判断
すべきでなく、その使用の目的態様継続の期間その他の事情を斟酌してこれを決す
べしというとと借地法第九条について判例の明にする所である(昭和十五年(オ)
第四二九号同一一月二七日民事四部)本件の場合においても原審判決が認定したよ
うに他に住居を求むる迄暫定的な住居として一時的な転借をしたもの」であつて
も、其丈では借家法の適用を排除するものとはいえない。
 (イ)空襲により住宅用家屋の四割を喪失し、一方復員者や疎開引揚者の帰還に
よる住宅に対する需要の増加と供給の絶対的不足とは「他に住宅を求むること」が
その当時も現在においても極めて至難な事に属していたから「他に家を求むる迄の
居住」という事は、それだけでは借家法第八条の「一時使用であること明な」とい
う理由にはならない。
 (ロ)被上告人が本件家屋に入るようになつた経緯が被上告人が空襲罹災し、電
燈もなく子供の勉学にさえ困つていたのを上告人の妻にすすめられて上告人方に同
居するに至つた事が、その始りであることは第一審におけるAの第一、二回訊問に
明た所であつて、上告人及びその妻が疎開及び復員より引揚げて住居がない際に本
件家屋を使用するのに期限を附してこれを許すべき事も考えられず、又そのような
事実の証拠もない。Aは第一審の第一回証人訊問において「二、三ケ月したら出て
行くだろうと思つた」というのは被上告人側の希望的観測にすぎず、当時の住宅事
情等から上告人の方も同様の考えであつたという証拠は何所にもないのである。況
んやそれ等の事を当事者双方が明示した事実は何所にもないわけである。却つて被
上告人は昭和二十四年五月十九日の口頭弁論に於いて「別に期限を定めず一時的に
貸したものであつて条件もつけていない」旨を主張しているのは前段に述べたよう
な一時使用明な場合に該当しない事を明にするものといえよう。
以上の次第で本件使用関係を借家法の適用なきものと判示した原判決は借家法第八
条の法意を誤つた違法な判決であるというべく破棄さるべきものと確信する。
というのである。
<要旨第一>民事訴訟法が事実(第一四〇、一九一、二五六、四〇三条)又は事実上
の主張(第一八五条)というのは事実(場所と時とによつて定められた
外界又は内心生活上の出来事及び状態)そのものではなくして、普通のありふれた
又はむすかしい専門的た実験則を適用して得た判断の結果に外ならない。事実は過
ぎ去るとともにその後においては、も早これに触れるととはできない。真もなく僞
もなく無二無三ただそれのみである。だが事実上の判断はいくつでも成り立ち得
る。従つて又眞もあり僞もあること勿論である。そうして事実は当事者の主張(事
実上の判断)によつてのみ訴訟資料となされ得るのであつて、実にこの事実上の判
断のみが証拠の目的及び結果たり得る。すなわち証人の証言、当事者本人の供述書
証は裁判官に事実上の判断を提供報告するに過ぎない。検証は裁判官に直接事実の
実験を可能ならしめるけれども、その結果は裁判官の事実上の判断でしかない。す
り代えられた写真機のレンズがツアイス製であつたかどうかが問題となつたとす
る。証人はあのレンズはツアイスであつたと証言した、裁判官は証人がそのレンズ
を見たことであるのか、どんな印がついていたのかなどの点についてはくわしく取
調べもしないで、その証言をとつてそのとおり事実を認定した。然しほんとうはツ
アイスではなかつたのであるが、審理の不盡はあるとしてもそのままではその認定
は上告裁判所を覇束する。(民訴第四〇三条)。原審は論旨摘録のように被上告人
は上告人において他に住居をさがし求めるまで暫くの間の同居を認めることとな
り、右家屋南側六疊一室等(中略)を賃料一ケ月金八円二十五銭と定めて貸すこと
となり、爾来上告人においてその部分を使用占有していると認定した。そうしてこ
の事実は原判決挙示の証拠中証人Aの第一、二審における証言のみによつて認めら
れたに過ぎないのでおるが、第一、二審共上告人の家族の数やその資産状態、その
希望する家屋の等級、資料、当時の借家の入手可能性、その費用日数等特に事実を
よく掘り下げて調査した形跡はない。それなのに原審はこの事実を目して、漫然被
上告人は右家屋の一部を上告人が他に住居を求めるまでの暫定的な住居として一時
的な転貸をしたものである。従つてと<要旨第二>の関係については借家法の適用が
ないと判断しておるのである。然しこのような解釈は契約解釈の方法を無視 第二>した、いわゆる文言のみによる文理解釈でしかない。よろしく当事者の眞意を
探求し、取引の通念に従つて前示のような諸般の事情を斟酌して解釈すべきであ
る。この点において原判決には審理の不盡があり、引いて契約の解釈を誤り法律の
適用を誤つた違法があるといえる。原判決はその他の上告理由を判断するまでもな
く、すでにとの点において破毀を免れたい論旨は理由がある。
以上設明のとおりであるから、民事訴訟法第四〇七条に従つて主文のとおり判決す
る。
 (裁判長判事 石神武蔵 判事 林平八郎 判事 大田外一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛