弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成12年(わ)第244号,平成13年(わ)第2号,第4号,第31号 各殺
人,強盗予備,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
主文
被告人Aを死刑に,被告人Bを懲役18年に処する。
被告人Bに対し,未決勾留日数中600日をその刑に算入する。
被告人Aから,押収してある自動装てん式けん銃1丁(平成13年押第
8号の21),サイレンサー1個(同号の22),実包16個(同号の
23),自動装てん式けん銃1丁(同号の19),サイレンサー1個
(同号の20),実包3個(同号の9ないし11),回転式けん銃1丁
(同号の14)及び実包4個(同号の15ないし18)を没収する。
理由
(被告人両名の身上経歴等)
1 被告人Aは,昭和27年12月9日静岡県で出生し,中学2年生の時に父の
営む木工所が倒産したため,家族が北海道旭川市に移り住み,Aはその希望で
一人静岡県に残って生活したものの,中学3年生の時に北海道に行き,父の働
く木工所で仕事を手伝うなどしていた。Aは,その後,再び静岡県に戻って運
輸会社で働いていたが,交通事故が原因で北海道の親元へ戻り,母の勤める食
堂で働き,17歳の時に同食堂で働いていた北海道出身の現在の妻と知り合っ
て,昭和46年に同人と結婚し,同人との間に3人の子をもうけた。Aは,同
妻とは昭和54年に一度離婚して,その後別の女性と再婚したが,その後も現
在の妻との交際を続け,再婚した女性と離婚した後の平成11年10月再び現
在の妻と結婚した。Aは,現在の妻と1度目の結婚をした後の昭和48年から
土建業を経営していたが,手形をだまし取られたことなどから資金繰りが悪化
し,昭和54年に交通事故を装って保険金合計2000万円余りをだまし取っ
た詐欺等の犯行に及び,これらにより昭和57年に懲役2年6月に処せられて
服役した。Aは,昭和58年ころ,服役の間にa会系の暴力団組員と知り合
い,服役後,その舎弟となって暴力団組員としての活動を始めた。その後,A
は,昭和60年に覚せい剤取締法違反(覚せい剤の自己使用)の罪で懲役10
月に,昭和61年に同じく覚せい剤取締法違反(覚せい剤の自己使用)の罪で
懲役1年2月に処せられたが,このころ,服役中にc会の暴力団組員と知り合
い,出所後,同会での活動を始め,平成2年2月ころ被告人B〈当時旧姓〉と
知り合ってAの若い衆にした。同年10月ころ,Aは,5代目b組d組内e組
の舎弟となり,e組内f会を名乗って活動を始めたが,同年11月から12月
にかけて,暴力団への密売目的でけん銃合計90丁余り及びけん銃用実包合計
約1500発を入手して所持していたという銃砲刀剣類所持等取締法(以下
「銃刀法」ともいう。)違反,火薬類取締法違反の罪を犯し,平成3年8月に
懲役7年に処せられ,平成10年4月服役を終えて出所した。出所後も,A
は,平成12年6月ころe組を破門になるまで,暴力団組員として活動した。
2 被告人Bは,昭和44年10月2日千葉県で出生したが,小学校低学年の時
に父が病死し,小学校4年の時にBほか4名のきょうだいを置いて母が出奔し
たため,以後は養護施設で育ち,昭和60年に中学校を卒業した。Bは,高校
に進学したが,程なく中退して運送店の手伝いなどをし,昭和61年に窃盗罪
で中等少年院に,昭和62年に強盗未遂罪等で特別少年院に送致された。平成
元年ころ,千葉県内で土工として勤務した先の社長が暴力団組員であったこと
から,Bは,その若い衆として暴力団の活動を始め,平成2年2月ころ,知人
を介して当時c会組員であったAと知り合い,意気投合してAの若い衆として
活動するようになった。平成3年8月Aが前記銃刀法違反等の罪で服役した
際,Bは,Aとの連絡役をするため,平成3年12月にAを養親として養子縁
組をし,その後,札幌市で運送業のアルバイト等をしていた。Bは,平成7年
にいわゆるデン助賭博のおとり客(さくら)となった賭博幇助罪で罰金刑に処
せられ,平成9年3月,生活苦から車上狙い等をしたことにより,窃盗,窃盗
未遂罪で同年5月に懲役1年2月(3年間刑執行猶予)に処せられたが,同年
10月再度車上狙いをしたため,平成10年1月窃盗罪により懲役1年2月に
処せられ,前記執行猶予も取り消されて併せて服役し,平成12年3月12日
に刑務所を出所した。この間,Bは,前記きょうだいとは養護施設を卒園した
ころから現在に至るまで音信不通の状態であり,また,母とは,Bが20歳の
ころに一度再会したものの,平成7年ころから再び連絡が取れなくなってお
り,出所後は,後記Pビルの事務所等でAと生活を共にしていた。
(第1の犯行に至る経緯)
1 Aは,平成10年4月,銃刀法違反等の罪による服役を終えて刑務所を出所
した後,平成11年9月ころ,Eと知り合い,平成12年3月ころ,東京都豊
島区〈以下略〉にあるPビル5階に共同で事務所を借りてそれぞれ仕事をして
いた。そのころ,Bが刑務所を出所し,AとBは生活,行動を共にするように
なった。
2 Cは当時5代目b組2代目g会h組i一家の副長,Dは当時同i一家若頭の
地位にあったところ,同i一家組長であったFとCとの間にはかねてから確執
があった。平成10年ころ,Cは,Dに,Fの殺害の話を持ちかけ,その後
も,FとCの溝は深まり,CとDは,折に触れて,殺害を引き受けてくれそう
な外国人マフィア等を探すために外国人と接触するなどしていた。
3 Aは,前記銃刀法等違反を実行した際,Lにけん銃24丁及び適合実包を保
管料150万円で預けていたが,同人が,これらのけん銃等を警察官に提出し
たために自分の刑が重くなったと考え,また,けん銃等の一部をLが勝手に売
却した様子であったことから,平成10年10月ころ,Lに会って金を払うよ
うに求めた。しかし,Lは,結局これに応じず,平成11年3月ころ,同人の
父が暴力団j一家の元総長で,Fがかつて同一家の系列に属していたというつ
てを頼って,富山県高岡市〈以下略〉所在のi一家組事務所に逃げ込んだ。そ
の後,Aは,同組事務所でD及びCと面談したところ,Aの説明を聞いたCや
Dは,Lの話よりもAの話が筋が通っていると考えた。そこで,Dは,同組事
務所にいたFにその旨報告したが,Fは金の支払いを渋ったため,結局,Gか
ら貸与を受けて,Aに100万円又は150万円を渡した。この件をきっかけ
に,AとDは相互に電話をかけて連絡を取り合う関係となった。
4 平成12年1月24日ころ(以下は,全て平成12年の出来事である。),
Aは,Aに中国人マフィアに関する情報がないか聞いてみようと考えていたC
及びDからの誘いで,同人らと東京都新宿区所在のQホテルで会った。Aは,
C及びDから,「実は,殺したい人間がいるんだけど,外国人を使ってそいつ
を殺してもらえないか。」,「どれくらい(金が)かかりますか。」などと切
り出された。Aは,1500万円くらいかかるなどと答えたが,Aの若い衆2
人が同席していたため,具体的な殺害依頼を受けるには至らなかった。そのこ
ろ,Aは,Dにけん銃の購入を勧めたところ,4月下旬ころ,Dからけん銃を
購入したいという連絡があった。そこで,Aは,5月2日にDから代金120
万円の振込みを受けた後,自動装てん式けん銃1丁(平成13年押第8号の1
9),サイレンサー1個(同号の20)及び適合実包16個を密売人を介して
Dに送付し,数日後,Dはこれらを受領した。
5 Aは,いよいよCとの間でFの殺害をAに依頼することを決めたDから,一
度高岡に来てほしいと頼まれ,富山県高岡市に行くこととした。Aは,6月1
日,飛行機で富山県に向かい,同日昼過ぎころ到着して,富山空港に迎えに来
ていたD運転の自動車に乗り,高岡市内のホテルRに向かった。同ホテル又は
同ホテルに向かう途中の前記自動車内で,Aが,Dに,殺したい人間がいると
いう話は誰のことか聞いたところ,Dは,Aに,「実は,俺の所のオヤジをや
ってほしいんだ。」などと言って,Fの殺害を依頼した。引き続き,同ホテル
の喫茶店で,AはDからFを殺害する理由などを聞いていたが,この間,D
が,携帯電話をかけてCも呼び出そうとしたので,Aは,目立ってしまい犯行
発覚の手がかりになってしまうおそれがあると考えて,これを制止した。A
は,同日午後6時ころから,D運転の自動車に乗り,Dの案内でFの家やFの
愛人の家等を見て回り,一度ホテルに戻った。その後,Aは,Dと夕食を共に
することになったが,この時もDはCを呼び出そうとしたので,前同様の理由
でこれを制止した。同ホテルに宿泊したAは,翌6月2日,一人で富山空港に
向かう途中に高岡市内の地図を購入してから,飛行機で東京に戻った。
6 Aは,かねて,中国人グループとつながりを持っていたEから,中国人グル
ープが強盗をするのに適当な会社や個人の家等に関する情報を教えてほしいと
頼まれていた。Aは,Dからの依頼をEを介して中国人らに持ちかけることと
し,そのころ,前記Pビルの事務所で,Eに「強盗に見せかけて,殺してほし
い奴がいるんだけど,中国人に頼むことはできないか。」などと話した。Eが
中国人マフィアにその話を伝えることを了解したので,Aは,Dから支払われ
る約束になっていた1500万円のうち,まず約半分に相当する800万円を
送金してもらおうと考え,Dにその旨依頼し,6月7日,DからPビルの事務
所に宅配便で送付されてきた800万円をMを介して受け取った。また,その
ころ,Aは,Dから,F方付近の住宅地図のコピー2枚(高岡市全図のコピー
1枚及びW〈地番略〉の住宅地図のコピー1枚)を受け取ったほか,隠し金庫
の位置等の説明が付記されているF方内の見取図,FG夫婦のみが写っている
写真の送付を受けた。この写真は,ゴルフ場で,FG夫婦をCとDが挟み4人
横一列に並んで写っていた写真のうち,CとDが写っている両端部分が切り離
され,FG夫婦が写っている部分のみが残されたものであった。更に,Aは,
Aが購入してきた高岡市内の地図をコピーしたものを貼り合わせて,自らF方
付近の地図1枚(W駅付近の住宅地図1枚)を作成した。
7 Aは,そのころ,前記Pビルの事務所で,中国人グループ側の中心人物であ
るHらと会い,Hに対し,強盗に見せかけてFG夫婦を殺害してくるように依
頼した。しかし,Hに殺人はしないと断られたため,結局,AはHに強盗のみ
を依頼してHから承諾を受け,前記800万円の中から準備金として200万
円をEを介してHに交付した。6月中旬ころ,Aは,埼玉県川口市内のカラオ
ケ店等で,Eと共に,Hら中国人グループと打ち合わせを重ねる一方,Bに
も,中国人を使った強盗を計画しているので,中国人を自動車に乗せて石川県
を経由して富山県まで連れて行く役や,宅配便を装って相手に玄関を開けさせ
る役をするように言い,Bはこれを了解した。
8 6月17日ころ,A,B及びEは,高岡市に行ってF方を下見し,F方に向
かうルートやF方の様子をビデオカメラで撮影した。6月21日,A,B,E
及びHら中国人グループが,東京都武蔵野市〈以下略〉にあるホテルSの1室
に集まり,Aらは,Hら中国人グループに,F方等の様子が収録されているビ
デオテープを再生して見せるとともに,Dから入手した前記写真,見取図及び
地図,Aが作成した地図,Aが入手してきた自動装てん式けん銃1丁(平成1
3年押第8号の21),サイレンサー1個(同号の22)及び適合実包16発
(同号の23)をHら中国人グループに渡した。当初,強盗は6月25日に実
行する予定であったが,Fに葬儀参列の予定が入ったため実行予定日が6月2
8日となり,Hは,6月27日,実行行為を担当する中国人らを埼玉県川口市
内のカラオケ店に集めて強盗の謀議を遂げた。しかし,Eが用意してきた自動
車の調子が悪かったため,結局6月30日に実行することとなった。Aらは,
この時までに,バール等の強盗の道具や偽造ナンバープレートを用意したほ
か,Eに普通乗用自動車(ワゴン車)を手配させてその準備を済ませた。
9 6月29日午後0時30分ころ,中国人らは,後記「T」駐車場で,前記自
動装てん式けん銃やバール等が積み込まれた普通乗用自動車ほか1台の自動車
2台に分乗し,同普通乗用自動車をKが運転し,Bがほか1台の自動車を運転
し,K運転の自動車を先導して石川県経由で富山県に向かい,もって,判示第
1の強盗予備の犯行に及んだ。
(罪となるべき事実第1)
被告人両名は,E,H,I,J,Kらと共謀の上,富山県高岡市〈以下略〉F
方に押し入り,金品を強取する計画のもとに,被告人B,K,I,Jらにおい
て,平成12年6月29日午後0時30分ころ,埼玉県草加市〈以下略〉T駐車
場において,自動装てん式けん銃1丁(平成13年押第8号の21),サイレン
サー1個(同号の22),適合実包16個(同号の23),脇差し1振,バール
8本,住宅地図写し等を積載した普通乗用自動車ほか1台に乗車し,Kが同自動
車を運転し,被告人Bがほか1台の自動車を運転し,K運転の自動車を先導して
石川県経由で富山県に向けて出発し,同日午後7時30分ころ,金沢市k町〈以
下略〉付近駐車場に至り,もって,強盗の罪を犯す目的でその予備をしたもので
ある。
(第2の各犯行に至る経緯等)
1 Bらは,同日,金沢市に到着した後,Bは中国人らを引率してF方をもう一
度下見し,翌朝に出発することを決めたうえ,I,K,Jら5名と,B及び他
の中国人らとに別れて金沢市内の2つのホテルに分宿した。しかし,6月30
日午前7時12分ころ,Iらが自動装てん式けん銃等が入ったかばんを持って
バール等が積載された普通乗用自動車に乗り込み出発しようとした際,不審者
が宿泊しているという通報を受けて付近に張り込んでいた警察官が,Iを逮捕
し,強盗予備の犯行が発覚した。A及びEは,B及び中国人らが石川県経由で
富山県に向けて出発した後,E運転の普通乗用自動車(以下「チェイサー車」
ともいう。)で,6月30日午前4時14分ころ東京都内の練馬インターから
関越自動車道に入って富山県方面に向かい,北陸自動車道を経て,同日午前8
時09分ころ金沢東インターに到着した。しかし,同日午前7時30分ころ,
Bからの電話連絡等により中国人らが警察官に捕まって強盗の計画が実行不能
になったことが分かった。Aは,同日午前9時07分ころ,Dにそのことを電
話で連絡した。
2 Aは,6月30日にDに計画の失敗を電話で連絡した際,Dとの間で機会を
うかがって再度計画を実行することとする一方,Aが中国人らに渡した地図や
写真等が押収されていないかなどの捜査に関する情報を教えてもらうようDに
依頼した。その後,AとEは,前記チェイサー車に積載されていた偽造ナンバ
ープレートや脇差しを,石川県羽咋郡l町〈以下略〉所在のUダム近くの駐車
場付近に隠した。その後,Aに対し,中国人らから,Eを通じて弁護料を負担
してほしいという要求があった。Aは,7月3日ころDに400万円の送金を
求め,Dから,同月4日に200万円,同月6日に200万円の銀行振込を受
けて,合計400万円を受け取った。Aは,この400万円のうち50万円
を,Eを通じてHに渡した。
3 7月10日ころ,Aは,Dから,「中国人たちが写真などを持っていたらし
い。中国人たちが持っていたオヤジと姉さんの写真は,3枚しかなくて,俺の
写真がなくなっていることがばれたら,俺が疑われる。何とかしてくれない
か。」という連絡を受けた。Aは,Eに連絡を取って,Eを通じてHにそのよ
うな事実がないか聞いたが,EからHはこれらを絶対に捨てたと言っているな
どと報告を受けたため,Dに対して,中国人は持っていっていないと言ってい
ると連絡をした。しかし,Dが強く抗議してきたので,AもHに再度確認しよ
うとしたが,そのころからHらとは連絡が取れなくなってしまった。
4 7月12日昼ころ,Aは,Dから,今度は,「オヤジが警察の要請で中国人
が持っていた写真などを確認しに行くことになった。明日昼ころまでに,オヤ
ジが金沢東警察署に行く予定になっている。」という連絡を受けるとともに,
「何とかこれを止めないと,俺が中国人に写真を渡したことが分かってしま
い,俺が殺されてしまう。Aさん〈当時旧姓〉何とかしてくださいよ。」など
と暗にF殺害を依頼された。Aが,Eにそのことを伝えると,Eは,AからE
にも危害が及ぶ可能性があるなどと聞かされたため,最後には,Aに,「冗談
じゃあないですよ。そんなことにならないように,やられる前にきちんと手を
打って下さいよ。」と言ってF殺害を促した。Aは,その後もDから再三にわ
たって同様の電話を受けたため,高岡市に行くこととした。同日午後4時8分
から9分ころ,AとBは,東京都台東区〈以下略〉の通称アメや横町内のスポ
ーツ用品店で,ジャンパーや帽子を各自購入した。Aは,Dとの電話の際,D
に3名で高岡市に行くことを伝えるとともに,Dとの間でDがけん銃2丁を準
備することが決まった。
5 その後,AとBは,B運転の普通乗用自動車(以下「センチュリー車」とい
う。)に乗り,同日午後8時50分ころ練馬インターから関越自動車道に入
り,途中,Eと,あらかじめ合流場所として決めておいた高坂サービスエリア
で合流し,同サービスエリアでEが運転してきたチェイサー車のナンバープレ
ートに,番号を写真撮影されないようにするための半透明のカバーを取り付け
るなどして,Aが同乗するB運転のセンチュリー車及びE運転のチェイサー車
の2台で,北陸自動車道を経由して高岡市に向かった。Aは,まず,先に偽造
ナンバープレート等を隠しておいたUダムに行き,同所でナンバープレートを
取り替えることとし,Dに対し,国道159号線を通り,県道29号線(高岡
羽咋線)からUダムに一たん向かい,その後,同県道を通って高岡市内に入る
と連絡するとともに,Dとの間で,同ダムから同県道を高岡市方面に向かう道
路の途中でDと落ち合い,Dからけん銃等を受け取ることを決めた。
6 Aは,B運転のセンチュリー車が金沢東インターを降りた翌7月13日午前
3時27分ころ,Dに金沢東インターに着いたという連絡をし,その約30分
後にUダムに到着して,先に同ダムに到着していたEと合流した。Aは,Bに
チェイサー車のナンバープレートを取り替えておくように指示したうえ,一人
でセンチュリー車を運転して前記県道29号線を高岡市方面に30分くらい進
んだところで,対向車線を走行してきていたDと合流した。Dは,先にAから
購入していた自動装てん式けん銃1丁及びサイレンサー1個,別にDらが入手
していた回転式けん銃1丁(平成13年押第8号の14)並びにこれらの適合
実包(同号の9ないし11,15ないし18はその一部)を持参してきてお
り,Aは,Dが運転してきた車の中で,これらの自動装てん式けん銃等を受け
取った。その際,AはDに「俺たちがやるの。」と聞いたが,Dから改めて
「お願いしますよ。」などと言われた。Aは,自動装てん式けん銃と回転式け
ん銃のそれぞれに実包を装てんしたほか,実包2発をポケットに入れ,Uダム
に戻った。
7 Aは,受け取ったけん銃を試射することとし,B及びEと共に,石川県羽咋
郡l町〈以下略〉付近で停車し,同所の林道を奥に入った場所(以下「試射現
場」ともいう。)で,Aは自動装てん式けん銃を2発発射し,BはAの指示で
回転式けん銃を1発発射した。Aは,Bが発射する様子を見て,その腕前が悪
く,誤って自分に弾丸が当たってしまうかもしれないなどと考えたことから,
Bらに気づかれないように注意しながら,回転式けん銃の弾倉から空薬きょう
1個と実包1個を抜いてその場に投棄し,弾倉を回転させて引き金を2回引い
ても弾丸が発射されないようにした。このとき,回転式けん銃の発射音がかな
り大きかったことから,Eは,Aらに対し,回転式けん銃の上にセカンドバッ
グを被せて発射すれば音が小さくなると助言した。そこで,Aは,Bが持って
いた化粧ポーチを被せて回転式けん銃を発射することとし,Bは,前記のよう
に2回撃っても弾丸が発射されないようにされた回転式けん銃を,空にした化
粧ポーチの中に入れて持っていた。Aら3名は,センチュリー車をその場に置
き,E運転のチェイサー車にAとBが同乗して試射現場から出発した。その
後,午前5時25分ころ,富山県氷見市内でチェイサー車のタイヤがパンクし
たため,AはDに連絡して工具等を持ってきてもらうように依頼したが,午前
5時40分ころ付近のバス営業所で工具を借りて修理することができたため,
Dは組事務所に戻り,Aらは,午前6時24分ころ同市内のガソリンスタンド
でタイヤのパンクを修理した。
8 Aは,FG夫婦の所在について,先に,Dから「今晩,オヤジ夫婦は強盗か
ら狙われているので,姉さんが家に帰るのを嫌がって事務所に泊まることにな
った。」と聞いていたところ,午前6時ころ,Dから「まだ,しばらく,オヤ
ジ夫婦は事務所から出ないようだ。」と連絡があった。そこで,Aらは,午前
7時ころ,富山県高岡市〈以下略〉のコンビニエンスストアで朝食を買って食
べたが,このとき,Aの指示でガムテープも購入した。その後,Aらは,F方
近くにある高岡市〈以下略〉所在のV株式会社ショールーム南側駐車場(以下
「V駐車場」という。)に移動して待機し,この時までにAやBは購入した前
記ジャンパー等を着るなどして準備したが,Bは,化粧ポーチ内に入れておい
た回転式けん銃の弾倉を確認したところ,実包2発が抜けていてそのままでは
直ちに発射できない状態になっていたことに気づき,弾倉を回すなどして,直
ぐに弾丸を発射できる状態にした。
9 午前8時57分ころ,V駐車場で待機していたAらに,Dから「オヤジたち
が家に帰ることになった。」と連絡があり,続いて午前8時59分ころ,
「今,オヤジたちが事務所を出ました。紺色のベンツが行くはずだから,見て
いてください。」などと連絡があった。Dは,このころ,犬の散歩のためにF
方に行くこととなっていたNに電話をかけ,組事務所にFらが忘れていったバ
ッグ等を取りに来させてF方に近づかないようにした。一方,Aは,なかなか
ベンツがやってこないと思っていると,Dから電話があり,「もう,とっくに
着いているはずだ。家に行って見てきてください。」という連絡があった。A
は,F方の前を通ると,Nと思われる若い衆がいる様子だったので,Dからの
電話に対し,「若い衆も来ているし,だめだ。」などと言ってV駐車場で待機
するなどしていたが,更に,Dから,「今,ほかに誰もいません。今から5分
は大丈夫だから,すぐに行ってください。」という連絡があったので,Aら3
名は直ちにF方に向かい,F方付近で,Aが自動式けん銃を,Bが回転式けん
銃を持ってE運転のチェイサー車から降り,F方に入って,判示殺人及び銃刀
法違反の犯行に及んだ。
(罪となるべき事実第2)
 被告人両名は,C及びDと共謀の上,前記第1の事実に関する写真(F及びG
が写ったカラー写真の切れ端)等の証拠品が警察に押収されていて,Fが警察署
に証拠品の確認に行くという情報を得たことから,F及びGの口を封じて前記第
1の事実,ひいてはFG夫婦殺害計画の発覚を防ぐとともに,Gについては併せ
て被告人両名によるF殺害を隠ぺいするなどの目的で,F及びGを殺害しようと
企て,
1 平成12年7月13日午前9時30分ころ,前記第1のF方1階8畳和室に
おいて,F(当時56歳)に対し,殺意をもって,被告人Aにおいて,あらか
じめ準備して所持していた自動装てん式けん銃(平成13年押第8号の19)
で,Fの頭部等をめがけて実弾2発を発射し,それぞれ同人の左鼻孔前縁及び
右下顎角部に命中させ,よって,即時同所において,同人を右下顎角部銃創に
よる脳損傷により死亡させて殺害した,
2 前記第2の1の日時ころ,前記第1のF方1階北東4.5畳和室において,
G(当時52歳)に対し,殺意をもって,被告人Aにおいて,あらかじめ準備
して所持していた前記第2の1の自動装てん式けん銃で,Gの後頭部及び背部
をめがけて実弾2発を発射し,それぞれ同人の左後頭部及び右背面に命中さ
せ,よって,即時同所において,同人を左後頭部銃創による脳損傷により死亡
させて殺害した,
3 前記第2の1の日時ころ,前記第1のF方において,前記第2の1の自動装
てん式けん銃及び回転式けん銃(同号の14)各1丁を,同自動装てん式けん
銃に適合する実包8個(うち3個は同号の9ないし11),同回転式けん銃に
適合する実包4個(同号の15ないし18)と共に携帯して所持した
ものである。
(事実認定の補足説明等)
第1 本件審理経過の概要及び争点等
被告人両名は,いずれも第2回公判期日における被告事件に対する陳述
(罪状認否)で,全ての公訴事実(ただし,各殺人及び銃砲刀剣類所持等取
締法違反被告事件については,被告人両名の共謀によるという当初の訴因に
対する罪状認否である。)を認めたが,AはD及びCの本件各犯行への関与
を秘匿し続け,また,被告人両名が,いずれも自分がけん銃を発射してF及
びG殺害の実行行為をしたと供述していたため,F及びG殺害の実行行為者
が,A,Bのいずれであるかが主たる争点とされていた。しかし,このよう
な状況下で,第28回公判期日にいったん審理が終結した後(以下「第1次
結審」ともいう。),A及びBに付されていた接見等禁止が付されなくな
り,AやBが暴力団関係者らと接見したことや,AがBに信書を送ったこと
等を契機に,A及びBが,検察官に対してそれまでとは異なる供述を始め
た。すなわち,BはF及びG殺害の実行行為者はAであると供述し,AはD
及びCの関与を認める旨供述した。そのため,弁論が再開され,再開後の第
29回公判期日において殺人及び銃刀法違反の各公訴事実につきD〈当時旧
姓〉を共犯者に加える訴因変更が,第31回公判期日において同各公訴事実
につき更にCを共犯者に加える訴因変更がなされた。しかし,その一方,A
及びBは殺意等(計画性や積極性を含む)について否認ないしあいまいな供
述をするなどし,また,Aは,第32回公判期日のAに対する被告人質問か
らCの関与を否定する供述に転じた。
そこで,以下,まず,①FG夫婦殺害の実行行為者について判断を示した
うえ,弁論再開後の主要な争点である,②AのF及びGに対する殺意等,③
BのF及びGに対する殺意等及びAとの殺人の共謀の有無(Bは幇助犯にと
どまるとの弁護人の主張に対する判断も含む)について順次判断を示し,更
に,④D及びCとの殺人の共謀の有無についても本件の罪となるべき事実の
認定に必要な限度で判断を示し,最後に,⑤自動装てん式けん銃の加重所持
罪にかかる適合実包の個数について判断することとする。
第2 FG夫婦殺害の実行行為者について
   関係各証拠によれば,F及びGはいずれも自動装てん式けん銃(以下,単
に「自動式けん銃」という。)でそれぞれ2発ずつ撃たれて殺害されたこと
が認められるところ,A及びBは,一方が自動式けん銃を他方が回転式けん
銃を所持してF方に入り,途中両被告人がけん銃を交換した形跡は窺われな
いから,自動式けん銃を所持してF方へ入った一人の人物がF及びGを殺害
したと認められる。ところで,被告人両名は,F方に入る前に各けん銃をそ
れぞれ試射しているところ,F方で自動式けん銃を所持しそのけん銃で殺害
の実行行為をした人物が同じ自動式けん銃を試射し,F方で回転式けん銃を
所持していた人物が同じ回転式けん銃を試射したものと考えるのが最も自然
である。この点,Eは,試射の際,Aが自動式けん銃を,Bが回転式けん銃
を試射したと,捜査・公判を通じて一貫して供述している〈証拠略〉。E
は,Bが試し撃ちをしたとき,ぎこちない様子でけん銃を持っていたので,
Bが試し撃ちする様子を注意して見ていたから,Bが回転式けん銃を発射し
たことは間違いないなどと,その根拠を説明しているところ,Bのけん銃の
発射技能が拙劣であったことはAも一致して供述しているうえ,その供述内
容には具体的な心情描写も含まれている。しかも,AとBがそれぞれどちら
のけん銃を試射したのかは,E自身の刑事責任の軽重に大きな影響を与える
事項ではなく,Eがことさらにこの部分について虚偽の供述をする動機は乏
しい。これらに鑑みると,Aが自動式けん銃を試射し,Bが回転式けん銃を
試射したというEの供述には十分な信用性が認められる。また,試射現場に
は,自動式けん銃から発射された弾丸2発と回転式けん銃に適合する実包1
発が遺留されていたが(なお,回転式けん銃から発射された弾丸は発見され
ていない。)〈証拠略〉,この弾丸等の遺留状況は,試射の状況に関するA
の供述,すなわち,Aが自動式けん銃を2回試射し,Bに回転式けん銃を渡
す前に同けん銃の弾倉から薬きょう1個と実包1個を抜いた〈証拠略〉とい
う供述と合致している。他方,第1次結審前にBは,試射の状況につき,B
が自動式けん銃を1回発射したと供述しているが,試射現場に,自動式けん
銃から発射された弾丸が2発残っていることと矛盾している。そうすると,
自動式けん銃を試射したのはAであると認められ,ひいては,自動式けん銃
でFG夫婦を射殺した人物もまたAであると推認することができる。
また,Gの殺害状況につき,Gに撃ちこまれた2発の弾丸のうち,同人の
背部に撃ちこまれた弾丸は,うつぶせに倒れていたGの右背面から射入して
右鎖骨部から射出されたことが認められる。この点,Aは,Gの左横から足
側に移動し,まず後頭部目がけてけん銃を撃った後,背部目がけて2発目の
けん銃を発射したと供述あるいは再現していて,この2発目のけん銃発射と
前記弾丸の軌道とが概ね符合している。ところが,Bは,その第1次結審前
の供述や再現によれば,うつぶせに倒れているGの左横の位置から後頭部目
がけてけん銃を発射した後,そのままの位置から背部を射撃したというので
あり,背部に命中させた弾丸に関し,この供述ないし再現は弾丸の軌道と合
致していない。
これらの事情に加え,Fの手元にあった固定電話の受話器が外れていたこ
とからすると,Fが殺害される直前に受話器を持っていたことがうかがわれ
るところ,そのような状況は,Aの供述や再現にはあらわれているが,第1
次結審前のBの供述や再現にはあらわれておらず,F殺害時の状況について
Aの供述や再現の方がより客観的な状況に添ったものとなっている。しか
も,Bの第1次結審前の供述によると,F殺害現場となった8畳和室には殺
害を実行したBのみが入っていてAは入っていないというのであるが,そう
であるのに,AがFの手元にあった受話器の状況を具体的に供述できるはず
もなく,この意味でもBの供述には疑問がある。また,E運転のチェイサー
車でF方から逃走した際のAとBの会話内容について,Aの供述とEの供述
とがほぼ一致している反面,Bは,第1次結審前において,BがF殺害の実
行行為を担当したことを前提として,Aからターゲットの殺害状況を尋ねら
れたので,Aに対し顔面に2発撃ち込んだと報告した旨供述しているが,こ
の点も,Eは,AとBがターゲットを撃ち殺した状況について話していたこ
とはなかったと供述しており,このE供述と合致していない。
Bは,前記のとおり,第1次結審後,AがFG夫婦殺害の実行行為者であ
ると供述するに至ったが,第1次結審後の供述中,実行行為者がAであると
する部分については,特に不合理というべき部分はない。Bは,第1次結審
前に虚偽の供述をしていた理由について,「当初Aは黙秘していると聞いた
ことから,恩義のあるAをかばうために自分が実行行為者となる決意をし
た。その後,Aが自分が実行行為者であるという供述をしていることが分か
ったが,供述を訂正するのは容易でなく,今さらうそをついていたとは言え
ないと考えて,うそをつき通すことにした。」などと,また,第1次結審
後,供述を変えることとした理由については,「接見に来た暴力団幹部から
本当の話をしてほしいと言われたことや,Aから手紙が来て,AもDらの関
与を公にするので,これ以上うそをつかず,知っていることを正直に話して
ほしいと頼んできたため,これ以上我を張っていてもAが苦しむだけだと思
った。」などと説明している。Bが相当期間暴力団に身を置いていたこと
や,Aとの上下関係等に鑑みると,これらの説明は,暴力団特有の論理に深
く根ざしたものとして,首肯するに足るものである。
   以上によれば,F及びGを現実に殺害した実行行為者は,いずれもAであ
ると認められる。
第3 AのF及びGに対する殺意等について
 1 Fについて
AのFに対する殺意について検討すると,凶器は殺傷能力が十分に認めら
れる自動式けん銃であり,しかも,Aはそれまでにけん銃を取り扱ってきた
経験があるうえ,犯行前にそのけん銃を自ら試射しているのであるから,そ
の性能をよく理解していたと認められる。また,Aは,しゃがんでいたFの
左鼻孔前縁に弾丸を命中させ,続いて後方に倒れたFの右下顎角部に弾丸を
命中させていて,いずれも頭部という身体の枢要部に弾丸を命中させている
うえ,2メートル未満の至近距離からのど仏等の枢要部を狙って射撃したこ
とや,2発目は既に転倒しているFにとどめを刺す目的でけん銃を撃ったこ
とも認められる。これらに照らせば,AにはFに対する確定的殺意があった
ことは明らかである。
ところで,Aは,弁論再開後の当公判廷において,Dから高岡に来てくれ
と頼まれた段階では,自分たちがFを殺害する実行犯の役をやらされるとは
思っていなかった,Fとは最初は2000万円の件について話そうと思って
いた,Fの態度いかんによっては話し合いで終わり殺害には至らないのでは
ないかという気持ちがあった,Fが受話器を持ったまま立ち上がり電話機を
振り上げて自分を殴りにかかってきたのでけん銃で撃ったなどと供述して,
F方に入る段階ではいまだFを殺害する意思がなく,偶発的にFを殺害する
に至ったかのような供述をしている。
しかし,この供述は,Fが金沢東警察署にまさに写真等の証拠品を確認に
行くという状況下で,その口を封じるためにDと連絡を取り合って殺人等の
犯行に及んだという状況や,そのために犯行前にはけん銃の試射までしてい
るという状況に全くそぐわない。また,Fの手元にあった電話機や受話器の
状況は,電話機が座卓の上に普通に置かれ,その上に受話器が外れた状態で
置かれていたというもので〈証拠略〉,Fが受話器を持ったまま立ち上がり
自分を殴りにかかってきたというAの供述とはおよそ合致しないものであ
る。第1次結審後,すなわちDの関与等を供述する気持ちになっていた状況
下でA自身が作成した上申書〈証拠番号略〉中にも,そのような記載が全く
なく,むしろ,「Fもちゅうこしになってきたので私は顔面にむかって拳銃
で1発撃っております」と,第1次結審前に供述していた殺害状況とほぼ同
じ供述をしている。これらに照らすと,F殺害状況に関する弁論再開後のA
の公判供述は到底信用できない。
Aは,第1次結審後,検察官に対し,「高岡に向かう前の段階で,Dは自
分たちにFG夫婦殺害の実行行為をする役目をさせようと考えていることは
分かっており,場合によっては自分たちが実行犯になるかもしれないと思っ
た。遅くともDからけん銃を受け取った段階でFを殺害するという共謀がま
とまった。」旨の供述をしている〈証拠略〉。高岡市に向かう前の段階で,
DとAのいずれが言い出したのかはともかく,両名の間で既に道具としてけ
ん銃を使うという話が出ていたことは明らかであるし,Aは,高岡市に向か
う前に,東京都内でジャンパーや帽子を購入しているが,この点について,
Aは,第1次結審前ではあるが,けん銃を発射すると硝煙反応が出るため,
けん銃発射後に着衣を投棄して犯行発覚を免れることができるようにするた
めであるとも供述している〈証拠略〉。そして,Aは,石川県に到着した後
も,Dからけん銃を受け取る際に実行犯となることを強硬に拒否する態度を
示していないし,その後,Aの指揮でBと共にけん銃の試射をしているので
あって,結局,Aは,Dから翌日Fが金沢東警察署に証拠品を確認に行くと
の連絡を受け,高岡市に向かってから殺害に至るまでの間に明確な消極的態
度を示しておらず,それどころか,殺害現場においてもF殺害をためらった
様子は全く認められない。Eの供述によっても,A自身も,Dからの前記連
絡を聞いて何とか手を打たなくてはいけないと思っていたことや,EからF
殺害の懇請を受けていたことも認められる〈証拠略〉。
そうすると,Aの検察官に対する前記供述は信用することができ,Aは,
高岡市に向かう段階で,既にF殺害の実行犯となる可能性を高い確率で認識
していたし,遅くともDからけん銃を受け取った段階ではF殺害の意思が固
まっていたと認められる。したがって,Fの殺害は偶発的であったというA
の公判供述は到底信用できない。
 2 Gについて
   AのGに対する殺意についても,やはり,Aは,殺害するのに十分な性能
を有する自動式けん銃を凶器として用い,その性能を理解しながら,床に額
をつけて許しを乞うGの左後頭部に弾丸を命中させ,続いてそのまま崩れる
ようにうつぶせに倒れたGの右背面に弾丸を命中させていて,2発の弾丸を
いずれも頭部,胴体といった身体の枢要部に命中させている。しかも,A
は,1メートル未満の至近距離から各部位の付近に狙いを定めて射撃してい
ることや,2発目は既に後頭部に弾丸を撃たれてうつぶせに倒れているGに
とどめを刺す目的でけん銃を撃ったことも認められる。これらに照らせば,
AはGに対しても確定的な殺意を有していたことは明らかである。
ところで,Aは,G殺害の計画性等について,第1次結審後,検察官に対
し,「東京から高岡に向かう前の段階では,自分がFを殺害することになる
かもしれないと思ったものの,Dの言うとおりにGまで殺害する必要はない
と思っていた,Dからけん銃を受け取った時点では,DはGの殺害も依頼し
てきていて,Gも必ずAが殺してくれると思っていただろうが,自分は『G
が抵抗するなどして,殺さざるを得ない状況になったときには,殺害せざる
を得ない』と考えた,F方に入る時は,帽子をかぶり,サングラスをかけて
いたので,瞬時の出来事であるからGに顔などが分からないだろうと考え,
逃走するために(Gが)逃げないようにガムテープで拘束しておけばよいと
考えた。しかし,焦ってしまい,買って用意してあったガムテープを車の中
に忘れてしまった。」旨供述し,また,G殺害の動機を,「Fを殺害した
後,奥の部屋に逃げたGが,土下座して『お金はないけど』などという自分
を泥棒扱いして馬鹿にするような言葉を言ってきたため,Fを殺害して興奮
していたときだったので,さらに激高したためである」と供述して〈証拠
略〉,結局,F方に入るときからGを殺害するつもりだったのではなく,G
殺害も偶発的な事情によるものであると主張する。
しかし,Aは,第1次結審前には,「Gが地図等を見てしまうと,Gに自
分たちがやったことがばれてしまい,結局,自分たちの命が狙われることに
なるので,FとGの2人を殺害する必要があった」〈証拠略〉とか,「家に
入って2人を殺害する以上,自分たちの犯行がばれないようにする必要があ
りました。」〈証拠略〉などとG殺害の動機を述べているところ,Gをいか
なる理由で殺害したかは,DやCの本件への関与を隠すこととは直ちに結び
つくものではなく,そのためにことさら自己に不利な供述をする必要もな
い。また,客観的には,既に地図に付着していた指紋によりAの関与は捜査
機関に発覚しつつあったのであるが,A自身の認識として,Gが証拠品を確
認することによって,Aの関与が発覚し自分に危害が加えられる危険が迫る
と考えることも不自然ではなく,Aも弁論再開後の当公判廷で「指紋べたべ
ただからやばい」とも供述している〈証拠略〉。したがって,Aのこの供述
はそれなりに信用することができる。また,Aが高岡市に向かう途中でDか
ら受けた連絡には,FだけでなくGの所在に関する情報も含まれており,高
岡市に到着した後も,「まだ,しばらく,オヤジ夫婦は事務所から出ないよ
うだ。」という連絡を受け,V駐車場で待機していた殺人の犯行直前の段階
では,Dから,「オヤジたちが家に帰ることになった。」すなわちFと共に
GもF方に戻るという連絡を受けている。そうすると,遅くともこの段階で
は,AらがF方にけん銃を持って入る際には,GがF方に在宅することにな
ることは確実となっていたのであるから,Gに顔を見られたり,Gの抵抗に
遭うなどしてGまで殺害するに至る可能性が高いことは十分理解していたと
考えるのが合理的である。無抵抗のGに対しほぼ連続して2回もけん銃を発
射しているというG殺害の態様や,たとえ興奮していたとしても,Aの述べ
る動機のみでは人命を奪う動機としていかにも薄弱であると考えられること
にも照らすと,少なくとも,Aがその場の激高のみでGを殺害したとは到底
認められない。
他方,Aは,F方に入る前の午前7時ころ,コンビニエンスストアでガム
テープを購入していることが認められる〈証拠略〉。そうすると,Aが供述
するように,G殺害には消極的で,Gはガムテープで縛って放置するにとど
める意思があったとも考えられないではない。しかし,暴力団組長方に入っ
て組長を殺害するというのであるから,極めて緊迫した状況となることが容
易に想定されることからすると,速やかにGを緊縛するにはBとの役割分担
等につき十分な打合せが必要であると考えられるのに,これらについて,A
からの具体的な指示やAとBとの間の詳細な打合せがあったわけでもなく,
実際にF方に入った時にも,ガムテープを持って行っていない。そうする
と,Aが当初女性であるG殺害にやや消極的な意図を持っていたことは否定
できないとしても,ガムテープを購入していることは,F方に入る時点で既
にG殺害の意思を有していたと認めることの妨げとはならない。
もっとも,Fは,当初はCに運転させて金沢東警察署に証拠品の確認に行
くと言っており,Gが運転して行くことは,7月13日にF及びGが組事務
所から自宅に戻る直前に決まったものである〈証拠略〉。したがって,それ
までは,GがFと当然に一緒に行動することとなっていたわけではない。ま
た,7月13日に証拠品を確認するのはFであるから,殺害して口を封じる
必要が特に切迫していたのはFであったといえる。
これらに鑑みると,Aが,前日にDから殺害依頼を受けた段階から,F殺
害の意思と同じように,確実にGを殺害するという意思まで持ち続けていた
とは断定できず,その限度でAの供述の全てを否定することはできないが,
遅くとも,AらがV駐車場でDからGもF方に戻るという連絡を受けた段階
では,AはGを殺害する意思を固めていたと認めるのが相当であり,これに
反するAの供述は信用できない。
第4 BのF及びGに対する殺意等及びAとの共謀について
 1 弁論再開後のBの公判供述の内容
Bは,F方に入るとき,Aについてこいと言われたからついて行っただけ
で,何のためにF方に入るのかは全く考えていなかったなどと供述して,F
及びGに対する殺意及びAとの殺人の共謀を否認している。
 2 殺意について
  ア Fに対する殺意
まず,Bは,F方に入る段階で,AとBがそれぞれF方でけん銃を使用
することとなる可能性を十分に認識していたと認められる。すなわち,B
は,犯行前にAと共に試射現場で回転式けん銃を試射しており,このこと
によって,Bが殺害の実行行為を担当する可能性を強く認識したと考える
のが合理的である。しかも,F方に入る段階で,Bの所持していた回転式
けん銃は化粧ポーチに入れられているところ,前記試射現場では,Bが試
射した回転式けん銃の発射音が大きかったため,Eがセカンドバッグを被
せて撃つと音が小さくなるという助言をしているから〈証拠略〉,回転式
けん銃を発射する可能性があるからこそ,わざわざこのEの助言を踏まえ
て発射音を小さくするために化粧ポーチが使われていたと考えられる。そ
して,Bは,F方に入る際,Aから「行くぞ」又は「来い」と言われただ
けであるのに,自己の判断で,回転式けん銃が入っていることを認識して
いた化粧ポーチを持ち出し,携行している。
Bは,殺意の点につき,第1次結審後,検察官に対して,「Aから受け
取ったけん銃を化粧ポーチに入れておくことにした。Eがけん銃にセカン
ドバッグなどを被せると撃ったときの音が小さくなると言ったので,実際
けん銃を使うときは化粧ポーチを使おうと思った。F方近くの駐車場(V
駐車場)でけん銃を確かめたところ,弾が2発抜けていたことが分かっ
た。1発しか試し撃ちをしていないのに,2発弾がなくなっているのは何
故だろうと思い,そっとげき鉄を引いて,弾倉を1回まわして玉(弾)が
込められている位置がげき鉄に当たるようにして,玉(弾)を発射できる
ようにした。その後,F方に入る前までに,化粧ポーチの中のけん銃のげ
き鉄を引いていつでもけん銃を発射できる状態にした。」などと供述して
いる〈証拠略〉。この供述は,Bに接見等禁止が付されなくなった後,暴
力団関係上の上位者で,養親でもあるAから正直に話すように指示されて
話すに至ったもので,このような供述経緯に照らしてBが虚偽の供述をし
ているとは考えがたい。また,Eからセカンドバッグを被せると撃ったと
きの音が小さくなるという助言を受けた部分についてはEの供述と一致
し,回転式けん銃を確かめたところ実包が2発抜けていたという部分につ
いては,試射現場で回転式けん銃から実包を1発抜いたというAの供述,
更に,同現場での実包の遺留状況と合致していて,核心的部分について証
拠上十分な裏付けがある一方,Bは弁論再開後の公判で,V駐車場で回転
式けん銃を確認した部分を否定したが,その理由として刀を確認したのと
間違えたなどとおよそ合理性のない供述をしている〈証拠略〉。前記検察
官調書では,殺意や共謀の認定に関して重要な意味を持つ,BがAから
「やるときはちゅうちょするなよ。」と言われた事実の有無については,
そのようなAの指示はなかったというBの言い分がそのまま録取されてい
るのであるから,無理にBの言い分を否定する調書が作成されたとも解さ
れない。以上によれば,第1次結審後のBの検察官に対する供述は極めて
信用性が高く,その供述によれば,BはF方で自分が回転式けん銃を発射
する可能性も十分認識していたものと認められる。
このように,Bは,試射の段階では,回転式けん銃というそれ自体極め
て殺傷力の高い凶器を使用する可能性を認識していたのであり,そもそ
も,AがBらを連れて高岡市に来た目的が,強盗のターゲットだった人物
が証拠品を確認に行くという情報を得たため何らかの手を打つためである
ことは,Bも認識していたのであるから,これらを総合すれば,Bには,
遅くとも試射の段階ではFに対する殺意を生じていたことが明らかに認め
られる。
  イ Gについて
Gに対する殺意の有無については,Gの所在に関するBの認識が重要と
なるところ,Bは,その弁論再開後の公判供述によっても,遅くとも,V
駐車場においては,Aから,組長(F)と姐さん(G)が事務所を出たと
か,待機中のAやBらの目の前を通るはずだなどと聞かされていたことが
認められる〈証拠略〉。Bが,先の強盗予備の準備過程で,F方の下見を
したり,ターゲットの家に住んでいる人物としてFとGが写真に写ってい
たのを見ていることを考慮すると,まさにその写真に写っていたFG夫婦
がF方に向かっていることを,かなり明確に理解できていたはずである。
そうすると,この段階では,Bは,F方が殺害の実行現場となり,そこに
はFのみならずGも在宅する状態となる可能性が高いと認識していたと認
められる。そのような認識の下で,Bは,前記のとおり,B自身が発射す
る可能性を理解していた回転式けん銃を所持していたのであるから,状況
次第では,犯行発覚を免れる等の目的で,殺害現場のF方に居合わせるG
をも殺害することを十分に予測していたと認められる。
この点,Bは,第1次結審前ではあるが,「F殺害実行時にGに顔を見
られてしまうかもしれないので,殺人が発覚しないようにするためにはG
も殺害する必要があった。覆面等をしておらず,特に自分には顔に傷が残
っているので,一目見られれば記憶に残ってしまう。」と検察官に供述し
ている〈証拠略〉。この供述は,Bが殺人の実行行為者であるという虚偽
の供述を前提としたものであるから,その信用性には慎重な検討が必要で
あるものの,内容自体には不合理な点はないうえ,Bの顔に一見して目立
つ傷跡が残っていることや,給油所でパンクを直した際店員に顔を見られ
てしまわないように注意していたことが認められること〈証拠略〉等に鑑
みると,この供述の信用性はなお失われていないと考えられる。そうする
と,BにもG殺害の動機があるといえる。
もっとも,Bは,東京都内のアメや横町でジャンパー等を購入した段階
では,Aから「強盗のターゲットが明日,写真を確認に行くらしい。それ
を確認されてしまうとこっちが狙われる。」などと聞かされ,富山県に行
くことは分かったと認められるものの,Bらが自らけん銃を使用するとい
う認識があったとまでは認められない。Bが,Aらと共に高岡市に向かう
途中等に,Aから「やるときはちゅうちょするなよ。」という指示を受け
たか否かについても,この事実は,Bが,自分が実行行為者であると虚偽
の供述をしていた第1次結審前に供述していたのみで,Aは一貫して否定
し,Bも第1次結審後はそのような指示はなかったと供述している。もっ
とも,Eは,AからBに「やるときは,びびるんじゃねえぞ」というよう
なアドバイスがあったようにも供述しているが〈証拠略〉,これは既に高
岡市に着いてからの場面についての供述であり,少なくともAとBが東京
から高岡市に向かう途中での発言ではないのは,Eが別の車に乗っていた
ことに照らして疑問の余地はない。したがって,東京から高岡市に向かう
途中で,Aから「やるときはちゅうちょするなよ」という指示があったと
いうBの第1次結審前の供述は,Bが自ら罪をかぶるつもりで供述した疑
いが強く,そのような指示があったとは認められない。
そうすると,Bが,東京から高岡市に向かう段階で既にG殺害の認識を
有していたとまではいえず,前記のとおり,遅くとも,試射した後にV駐
車場でGがF方に戻ることを認識した段階で,G殺害の意思が具体化した
と認められる。
3 Bの弁論再開後の供述の信用性
   他方,Bは,弁論再開後の公判廷において前記のとおり殺意等を否定して
いるが,その内容は極めてあいまいであるか不自然である。すなわち,B
は,けん銃を試射したときや,F方に入った際の心理状態について,Aに指
示されたから〈証拠略〉とか,Aについてこいと言われたからついて行った
だけである〈証拠略〉などと述べるのみで,極めて具体性や迫真性に乏し
く,Bは,実質的には供述を避けているというほかない。また,化粧ポーチ
の中に入っていた回転式けん銃をV駐車場で確認したという場面について,
Bは,弁論再開後の公判期日でこれを否認し始めたが,前記のとおり,第1
次結審後の検察官に対してはその旨の事実を述べていたのに,弁論再開後の
公判期日で否認に転じたのは,刀を確認したことと勘違いしたためであるな
どと,不自然極まりない供述をしている。しかも,Bの弁論再開後の公判供
述の態度は,Aをかばい,あるいはAの供述に迎合しようとする姿勢が顕著
である。例えば,第1次結審後,検察官に対して,AがGにけん銃を突き付
けている様子を見ていたと述べている〈証拠略〉のに,弁論再開後の公判で
はその様子は見えなかったと供述したり〈証拠略〉,F方に入る際にAがけ
ん銃を持っていたことについて,「わかりません」とか,「おどかすだけか
もしんないじゃないですか」などと供述したり〈証拠略〉している。そうす
ると,Bが殺意を否認しているのも,Bの刑を軽くしようとして,再三にわ
たり,Bには殺意がなかったと供述ないし主張するAに迎合している側面も
あると理解される。
   以上によれば,殺意がなかったというBの弁論再開後の公判供述は到底信
用することができない。
4 AとBとの間の殺人の共謀について
  Bの弁護人は,殺人についてBは幇助犯であると主張し,その根拠とし
て,実行計画等について,DとAは明示的な謀議を遂げているが,Bは十分
な謀議を遂げていないこと,Bの関与は消極的であること,犯罪の結果につ
いてBは利害を有せず,現に利得の分配を受けていないことなどを指摘す
る。
しかし,Bは,Aと一緒に,前記アメや横町内のスポーツ用品店でジャン
パー等を購入しており,この段階で,少なくとも,強盗のターゲットだった
人物が翌日証拠品を確認に行くことを防ぐために,何らかの役割を担う目的
で富山県に行くことが分かり,その際着用するためにジャンパー等を購入し
ていることを理解していたと認められる。この認識の下,Bは,Aと一緒に
高岡市に向かい,F方に入るに至るまで,Aが一人でDからけん銃を受け取
った場面を除いて,終始Aと行動を共にしているのであるから,明示的な謀
議がなくても,暗黙のうちに意思を通じるに足りる状況にあったというべき
である。しかも,Bは,Aと共に,自らも回転式けん銃を試射したうえ,同
回転式けん銃を化粧ポーチに入れて所持し,その後,前記のとおり,B自身
の判断で,引き金を引けば直ちに弾丸を発射できるように弾倉の位置を直し
ていたのであり,Aから口に出して言われるまでもなくその意を察し,B自
身が殺人の実行行為に及ぶ可能性を十分認識しながらそのための準備をして
いたといえる。いよいよF方に入ろうとする際にも,Aから個別具体的な指
示はなく,「行くぞ。」という号令があったにすぎないのに,特に意表をつ
かれた様子もなく,速やかに,あらかじめ発射できるようにした前記回転式
けん銃を,発射音を小さくするための化粧ポーチに入れて持ち出しているの
であり,このことは,AとBとの間で暗黙のうちに殺害の意思疎通が十分に
できていたことを如実に物語るものである。犯行現場での状況を見ても,た
とえBのいた場所がF方の玄関付近であったとしても,状況次第ではその場
所に家人等が飛び出してきても何らおかしくないのであり,現実にBが回転
式けん銃を発射する可能性は十二分にあったのであるから,Bは犯行現場で
殺人の実行行為者に匹敵する役割を担っていたといえる。また,強盗予備や
殺人の犯行が発覚すればBにとっても不利益であるから,その発覚を免れる
ためのF及びG殺害につきBも利害を有していたといえるし,なるほど経済
的利益についてはBが犯罪遂行の過程で具体的に意欲していたとまでは認め
ることができないが,AとBは,暴力団関係上の上下関係やそれに加えて養
親子関係をも通じて,経済的基盤を共通にする部分があったのであるから,
客観的に見て,Aが利益を得ることによってBも利益を得る結果となるのは
疑う余地がない。したがって,B自身の利害が全くなかったとはいえない。
以上によれば,Bも,Aとの間で,F及びG殺害の意思を相通じてF方に
臨場し,けん銃発射の用意をしていたことは明らかである。
なお,Bの弁護人は,BがDとの面識がなかったことを指摘して,BとD
との間には共謀がないとも主張している。しかし,Bは,Dとは,Aを介し
て順次共謀したと認められるから,BがDとの面識を有していなかったこと
をもって,この両名間の共謀を否定する理由とはならない。
 5 Aの供述について
   ところで,Aは,弁論再開後,当公判廷において,Bとの共謀はなかった
旨供述しているが,これまでに述べたAとBの行動経過に全くそぐわないう
え,共謀の成否に関する重要な事実関係について,例えば,Bに試射させた
理由については,たまたまBが山道を上がってきて,一つ道具が余っていた
から1発撃たせただけと述べたり,BをF方に連れて行った理由について
は,EとBを同じ車の中に入れておくと,何するかわからんという不安があ
ったからと述べるなど,いずれも不自然極まりない供述をしている。また,
Aは,Bにけん銃を渡した理由について,現に何かあったときには自分が玄
関に行ってBからけん銃を取り上げるという考えだったと供述しているが,
まさにFG夫婦を殺害しようという切迫した状況下で,玄関に配していたと
いうBのところにわざわざけん銃を取り上げに行くのはむしろ自己の生命身
体を危険にさらす行為であるから,およそそのように考えていたとは認めが
たい。また,Aが実包を抜くなどしてから回転式けん銃をBに渡したのは,
試射時のBの状況からBの撃った弾丸がどこに行くか分からず不安に感じた
からというのであり,Bが回転式けん銃を使用するという前提に立っている
のであるから,AがBからけん銃を取り上げて撃つ予定だったというのは矛
盾している。以上によれば,Bとの共謀を否定するAの供述は全く信用でき
ない。
 6 結論
   以上によれば,BのF及びGに対する殺意及びこれらについてAとの共謀
を認定することができる。
第5 D及びCとの共謀について
 1 Dとの共謀について
   Aは,DからG殺害をも依頼されたと供述するのに対し,Dは,Fの殺害
は依頼したが,Gの殺害まで依頼したことはなかったなどと供述しているの
で,この点の共謀の有無について検討する。
   Dは,強盗予備の犯行前の6月中旬ころ,Aに写真を送付していることが
認められるところ,この写真にはFのみならずGも一緒に撮影されている
が,その写真はもともとFG夫婦のみが写っていたものではなく,CとDが
FG夫婦を挟み,この4名が一列に横に並んで撮影されたものを,Dが,C
とDが写っていた両端部分を特に切り離して送付しているのであるから,G
の写っている部分をDが意図的に残したことは明白であり,仮に,Fのみが
殺害依頼の対象であれば,わざわざGの撮影されている部分を残して送付す
る理由はないはずである。この点,Dは,写真を送付した経緯について,A
から,GとFの愛人とを区別するために姐さん(G)の写真も欲しいと言わ
れたので,そのように思って送付しただけであり,殺害を依頼したのはあく
までFのみである旨供述している。しかし,Fのみを殺害する目的であれば
Fのみが撮影されている部分を送付すれば事足りるのであるし,Gの写真ま
で必要な理由についてDが細かく確認した様子がないことも,事柄の重要さ
に照らして不自然であるから,Dの供述ではGの撮影されている部分まで送
付した理由を十分説明できているとはいえない。したがって,Dが自分から
写真を送付したのか,Aの依頼を受けたため写真を送付したのかはともか
く,遅くともGも写っている写真を送付した段階では,Dにおいて,Fのみ
ならずGも殺害の対象となっていることを認識していたと,強く推認され
る。
また,Dは,6月2日の段階で,強盗に見せかけて殺害することを依頼し
た点も否定しているが,その後,Dは,Aに,D自身が作成し,更に金庫の
ありか等をも付記したF方内の見取図を送付しており,Dも,この段階では
F殺害時に中国人マフィアが強盗もしてくることを容認したという限度で
は,当公判廷でも事実を認めている〈証拠略〉。もっとも,Aの供述するよ
うに,6月2日の段階で,DからAに強盗に見せかけて殺害するように依頼
があったかどうかについては,疑問の余地は残る。すなわち,Dは,強盗の
話は自分やCから出た話ではなく,Aから,6月中旬ころ,殺人だけをする
中国人は余りおらず,一応手配はしてあるが,お土産(現金のこと)がある
と言ったら,すぐに中国人が集まってくるので,金庫の場所を教えてくれと
いわれた旨供述している〈証拠略〉ところ,この供述は,Aが,かねてEか
ら中国人マフィアが強盗するのに適当な家等を教えてほしいと言われていた
ことや,Hがそのころ殺人の依頼を拒んでいたことと符合するし,他方,6
月1日には強盗に見せかけて殺害するという話が全くなかったのに,翌6月
2日に急きょ強盗に見せかけて殺害するという計画に変更されたというのは
やや唐突とも思われること,Dらが強盗実行者が奪ってきた財産を受け取る
という謀議をした事実もなく,そのような利益もないのにわざわざ強盗に見
せかけるように指示する理由が乏しいことからすると,Dの供述もそれなり
に信用することができ,共犯者への責任転嫁の危険のあるAの供述をそのま
ま採用することはできない。しかし,いずれにせよ,DがAにF方の見取図
を送付した段階では,DとAとの間で,強盗に見せかけて殺害することで意
を通じていたといえる。
Fが写真等の証拠品を確認に行くことが判明した7月12日の段階につい
て検討すると,まず,このときの殺害依頼の動機は,Dが自己の殺害計画へ
の関与が発覚することを恐れたというものであり,そうであれば,確認予定
の写真に写っていて,その元となったCとDの部分を切り離す前の写真と同
一の写真を持っていると考えられるGが,この写真を確認することによって
も,Dが手引きしたことを疑われる結果となるのであるから,発覚を免れる
ためにGの殺害をも依頼したと考えるのが自然である。Dは,Fについては
写真を見たら殺されるかもしれないと思ったが,姐さんはそこまでではない
ので写真の複製を準備しておけば大丈夫だと思ったと供述しているが〈証拠
略〉,Gが写真等を確認すれば,Dの関与が発覚し,ひいてはDの地位等が
危うくなるのは疑いがなく,写真の複製を準備したところで写真を持ってい
た人物が限られている以上,発覚を免れうるものではないから,Dの供述す
る理由が,直ちにG殺害依頼の有無を左右するとも解されない。
しかも,Dは,Aとの間でけん銃2丁を準備することが決まった段階で,
けん銃を使って「姐さん(G)を見張る」という認識を有していて,Gにけ
ん銃を突き付けることになることは理解していたし〈証拠略〉,けん銃2丁
をAに渡した後Fらの動静をAに伝えていたころには,F殺害時にGがFの
近くにいることになることを理解している〈証拠略〉。そうであれば,D
は,殺害現場の状況次第ではGに向かってけん銃が発射されてしまう可能性
があることを分かっていたというほかなく,そのような認識の下で,DはA
にけん銃2丁を渡し,しかも,Fと共に行動するGの動静についてもそのま
ま伝え,特段,Gを殺害しないようにするための明確な指示をしていないの
であるから,このことは,DがG殺害を容認していたことのあらわれと見る
のが最も合理的である。
以上に加え,Aは,A自身にも独自の利益や殺害の必要性がなかったわけ
ではないが,基本的には,Dから依頼されて殺害を実行しているのであるか
ら,仮に,Aの言うような犯行現場でのGの言葉に対する激高が加わってい
たとしても,それだけで依頼もないのにGまで殺害するとは考えがたいこ
と,殺人等の犯行後,Dが,Fが組長を務めていた暴力団の組長となり,こ
れに伴って,種々の経済的利益を得ることができたのもGまで殺害したから
こそであると認めることができることなどを併せ考慮すると,Dは,G殺害
を認識かつ認容し,その旨Aと意思を相通じていたと認めることができる。
 2 Cとの共謀
(1)当公判廷で実施された証拠調べ等のうち,C共謀の認定に関わる主要な
証拠等は,Dの供述及びAの第1次結審後の供述である。
  Dは,当初のF殺害計画はCから持ちかけられたものであるし,7月1
2日にFが警察署へ写真を確認に行くという情報を得て,発覚を防ぐため
にFを殺害することとしたのも,Cとの共謀に基づくものである旨供述す
る。
  Aは,第1次結審後第31回公判期日まで(供述変更前)は,CとDの
両名から,強盗殺人に見せかけてFG夫婦を殺害することを依頼されてお
り,FG夫婦殺害はDのみならずCとも共謀して実行したものである旨供
述していたが,第32回公判以降(供述変更後)は,6月1日まではCも
F殺害計画に関与していたが,6月2日以降,Gも殺害し,また,強盗殺
人に見せかけて殺害することとなった以後はCは関与しておらず,FG夫
婦殺害についてCとの共謀はないと供述している。
(2)そこで,Cとの共謀について検討する。
  まず,Aの変更前の供述についてみると,前記供述経過に照らしてこの
供述には基本的な信用性が認められるうえ,Aは,Dに対して悪感情を抱
く一方,Cには好感情を抱いていることが窺われることに照らしても,こ
とさらうそを言ってCの関与があったと供述する理由はない。他方,A
は,突然にCの関与を否定し始めたが,その供述の変更にはおよそ合理的
な理由を見出すことができない。Aの変更後の供述内容を見ても,例え
ば,6月2日の段階では既に具体化していたF殺害計画から,十分な理由
もなく突然Cが離脱したというのは余りにも唐突で不自然であるし,Cと
の共謀を否定する理由についても,「(CとDがどういう話をしているか
というのは)わかんないことですけど,大体薄々話の内容を聞いて,今ま
での流れを総合すると,そういうふうに感じるわけです。」〈証拠略〉な
どと,極めてあいまいで具体的な根拠に乏しい説明をするにとどまってい
る。そうすると,Cとの共謀を否定するAの変更後の供述は全く信用でき
ず,Cとの共謀を認める変更前の供述の方がむしろ信用性が高いというべ
きである。
  また,Dの供述については,G殺害や強盗に見せかけて殺害する点につ
いて関与を否定する部分は,前記のとおり信用できないが,Cとの連絡状
況等に関する部分は,それ自体かなりの具体性があるうえ,Oの検察官調
書〔謄本〕〈証拠番号略〉によれば,7月12日の深夜,Oが,Cからの
指示でCの自宅に電話をかけるとDが電話口に出て,Dから氷見の山奥に
あるダムに向かう道を尋ねられたというのであるから,Dの供述中,Cと
Dが相互に連絡をとってOにUダムに向かう道を尋ねたという共謀の成立
に密接にかかわる部分について,裏付けも存在する。他方,当公判廷で取
り調べた証拠のうちDの供述に明らかに反する証拠は,Aの変更後の供述
のみであるが,その供述は信用できず,その他,特にDの供述を覆すべき
有力な証拠はない。
  そうすると,当公判廷で取り調べた証拠の限度では,Cとの共謀を肯定
するDの供述や変更前のAの供述の信用性を否定しうる証拠がないのであ
るから,結局,これらの供述によってCとの共謀を認定することができる
こととなる。
第6 自動式けん銃に装てんされていた実包の個数について
   Aは,銃刀法違反の公訴事実中,自動式けん銃のけん銃加重所持の点につ
いて,所持していた適合実包の数は8発ではなく7発であると主張する。
   しかし,関係各証拠によれば,同自動式けん銃はF及びG殺害に使用され
たものであることが明らかであるところ,Fの体内から2発,Gの体内から
1発の弾丸がそれぞれ発見されているほか,Gの殺害現場となった4.5畳
和室の北側フローリング寝室の床上にGの身体を貫通した弾丸1個が遺留さ
れているから,これらにより,F方で自動式けん銃から合計4発の弾丸が発
射されたことが認められる。また,Aらは犯行後この自動式けん銃を高岡市
内の用水路に投棄しているところ,同けん銃が発見されたときの状況は,同
けん銃の銃口内に弾丸1発が詰まっていたほか,打ちがら薬きょう1個と適
合実包3発が同けん銃に装てんされていたというものであるが,同けん銃を
発見した人物の供述によれば,同人が発見直後に誤ってその引き金を1回引
き,不発させていることが認められるから,銃口内に詰まっていた弾丸1発
と,打ちがら薬きょう1個は,この行為によって生じたものと認められ,そ
うすると,投棄した時には実包4発が同けん銃に装てんされていたことにな
る。以上を総合すると,F方で自動式けん銃を発射する前の段階において,
自動式けん銃に装てんされていた適合実包の数は8発であると認められる。
(累犯前科)
1 被告人Aは,平成3年8月8日東京地方裁判所で銃砲刀剣類所持等取締法違
反,火薬類取締法違反の罪により懲役7年に処せられ,平成10年4月9日そ
の刑の執行を受け終わったものであって,この事実は〈証拠略〉によって認め
る。
2 被告人Bは,(1)平成9年5月23日市川簡易裁判所で窃盗,窃盗未遂罪によ
り懲役1年2月(3年間刑執行猶予,平成10年2月10日横浜地方裁判所で
その猶予取消し)に処せられ,平成12年3月11日その刑の執行を受け終わ
り,(2)平成10年1月13日神奈川簡易裁判所で窃盗罪により懲役1年2月に
処せられ,平成11年1月31日その刑の執行を受け終わったものであって,
これらの事実は〈証拠略〉によって認める。
(法令の適用)
被告人両名の判示第1の所為は刑法60条,237条に,判示第2の1及び第
2の2の各所為はいずれも刑法60条,199条に,判示第2の3の所為は包括
して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項(1項),3条1項
にそれぞれ該当するところ,
1 被告人Aについて,判示第2の1及び第2の2の各罪について所定刑中いず
れも死刑を選択し,前記の前科があるので刑法56条1項,57条により判示
第1及び第2の3の各罪の刑について,判示第2の3については同法14条の
制限内で,それぞれ再犯の加重をし,以上は同法45条前段の併合罪であるか
ら,同法46条1項本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第2の2の
罪の刑で処断して他の刑を科さないこととして被告人Aを死刑に処し,押収し
てある,自動装てん式けん銃1丁(平成13年押第8号の21),サイレンサ
ー1個(同号の22),実包16個(同号の23)は,いずれも判示強盗予備
の犯罪行為を組成した物であり,自動装てん式けん銃1丁(同号の19)(サ
イレンサー1個(同号の20)はその従物),実包3個(同号の9ないし1
1),回転式けん銃1丁(同号の14)及び実包4個(同号の15ないし1
8)は,いずれも判示銃砲刀剣類所持等取締法違反の犯罪行為を組成した物
で,被告人A及び共犯者以外の者に属しないから,刑法19条1項1号,2項
本文を適用してこれらを被告人Aから没収し,
2 被告人Bについて,判示第2の1及び第2の2の各罪について所定刑中いず
れも有期懲役刑を選択し,前記の各前科があるので刑法56条1項,57条に
より判示各罪の刑について,判示第2の1,第2の2及び第2の3については
同法14条の制限内で,それぞれ再犯の加重をし,以上は同法45条前段の併
合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第
2の2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告
人Bを懲役18年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中600日をそ
の刑に算入する。
訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担さ
せないこととする。
なお,検察官は,求刑で,脇差し1振(平成13年押第8号の40)及び脇差
しの鞘1本(同号の41)も没収すべきであると主張する。しかし,これらは,
判示強盗予備の関係では,前記「T」において普通乗用自動車に積み込まれたも
のではなく,Bらが出発した後,これとは別にA及びEが石川県経由で富山県に
向かった時に自動車に積載されていた物にすぎないから,強盗予備の用に供しよ
うとした物とまでは認められず,また,判示殺人の関係でも,前記UダムでE運
転車両(チェイサー車)の助手席マットの下に積み込まれたものではあるが,被
告人両名がF方に入った際に携帯していった物ではなく,実行行為時までに同脇
差しを誰が使用するかが具体的に定められたと認めるに足りる証拠はないから,
殺人の用に供しようとした物ともいえない。その他,刑法19条1項各号所定の
要件に該当すると見うる事情はない。よって,これらは没収しないこととする。
(量刑の理由)
1 事案の概要
  本件は,被告人両名が,DらからF殺害の依頼を受けたことに端を発し,ま
ず強盗に見せかけてFG夫婦を殺害することを企図して,E及び中国人の犯罪
集団らと共謀の上及んだ強盗予備の事案と,この計画が警察官に発覚して失敗
に終わった後,Fが強盗予備の犯人が所持していた写真等の証拠物を警察署へ
確認に行くという情報を得たDらからその旨の連絡を受け,Dらと共謀の上,
F及びGの口を封じる等の目的で,F及びGの2名をけん銃で射殺したとい
う,殺人及び銃刀法違反(以下「殺人等」という。)の各事案である。
2 被告人両名に共通する情状について検討する。
  本件各犯行において,被告人らは,強盗に見せかけてFG夫婦を殺害するこ
とを企図し,F及びGの写真,F方付近等の住宅地図の写し,F方内の見取図
等をDから入手し,あるいはAにおいて自ら準備し,被告人両名がEと富山県
高岡市内のF方に赴いて下見をし,その様子をビデオカメラで撮影する一方,
Eを通じて中国人の犯罪集団とも結託し,そのビデオテープや写真,地図等を
使って綿密な謀議を行い,バールや脇差し等の犯行道具や,犯行発覚を免れる
ための偽造ナンバープレート,犯行に使用する自動車を準備するなどして強盗
予備の犯行に及び,その後,前記写真等をFらが警察署に確認に行くという情
報が入るや,直ちに口封じのため殺害する必要があるなどとして,犯行時に着
用するためのジャンパーや帽子を購入し,Dと緊密に連絡を取り合ったうえ,
同人からけん銃2丁を受け取り,これらを試射し,DからF及びGの動静につ
いて逐一情報を得ながら,その情報に基づき,F及びGが自宅に戻り,かつ,
他の組関係者がF方にいない隙を的確に捉え,現場から直ちに離脱できるよ
う,あらかじめEに一定時間後に門扉前道路で自動車で待機しておくように指
示したうえ,F方に入り,FG夫婦の殺害に至り,犯行後,直ちにその自動車
に乗り込んで速やかに逃亡し,犯行に使用したけん銃2丁等,連絡に使用した
携帯電話,ジャンパーや帽子,偽造ナンバープレート等を順次投棄し,更に犯
行に使った被告人らの自動車を解体処分するなど,入念な罪証隠滅行為をして
いる。このように,本件は,周到な準備や綿密な計画に基づき,共犯者らと緊
密な連絡を取り合いながら遂行された凶悪犯罪である。FG夫婦殺害に向けら
れた顕著な計画性と,その計画に従って極めて冷静に2名もの殺害が完遂され
ていることには生命の尊厳に対する思いや被害者らに対する憐憫の情がみじん
も感じられず,罪質は極めて悪い。
  犯行動機を見るに,強盗予備の犯行は相当高額の報酬目当てで及んだもの,
殺人等は,主として,Fらが写真等の証拠品を確認に行くことでFG夫婦殺害
計画への関与が発覚することを恐れたDらから依頼を受け,殺害計画への関与
が発覚することを防ぐため,また,Gについては併せて被告人両名によるF殺
害の犯行を隠ぺいするため,F及びGの口を封じる目的で及んだものであり,
殺人等はAら自身の違法行為に起因するものであることに鑑みても,いずれも
身勝手極まりなく,およそ正当化の余地がない。
  ところで,殺人等の犯行について,検察官は,Aは1億円の報酬獲得を主た
る動機として本件犯行に及んだものであり,強盗殺人に類する悪質な犯行であ
ると主張する。確かに,Aは,第1次結審後,Dとの間で1億円の報酬約束が
あったと供述しているが,他方でDはこれを明確に否定しているところ,1億
円の報酬を支払うという会話が出た状況は,Aの供述によれば,6月1日にD
とAが自動車でFの愛人方を下見に行った際,Fが金を貸しているというパチ
ンコ店の近くを通りかかったときにDから話が切り出されたというものである
が,それまでにもDはホテル等でF殺害を依頼しているのに,その時に1億円
もの報酬の話がなかったことからすると,報酬の話を切り出された経緯がやや
唐突で不自然な印象がある。その後,殺人等の犯行に至るまでに1億円の報酬
約束が特に再確認されたような形跡もなく,Aは第38回公判期日において殺
人の当日にけん銃をDから受け取った時にも報酬のことを確認したとも供述し
ているが,この場面での報酬約束は審理の最終段階になって初めて供述したに
過ぎないことに鑑みると,そのまま信用することはできない。DとAが一致し
て認める1500万円の交付約束及びそれに基づく金銭の交付状況が極めて具
体性に富んでいることに比べて,1億円の報酬約束をめぐる状況は全体として
漠然としているとの印象が残る。また,Aは第1次結審後にDらの関与を供述
するようになった理由について,弁論再開後の公判廷ではDから約束の報酬が
支払われていないことも理由であるかのように述べているが,第1次結審後,
検察官に対しては,むしろ,AがF方から盗みをしたという話になっていて,
所属していた暴力団の上部団体が高額の損害賠償を求められているという話を
聞いたため,これを否定して自己の沽券を守るとともに,同暴力団の窮地を救
いたいという気持ちからであると供述している〈証拠略〉。しかも,Fらを殺
害しなければならないことは,殺人等の犯行前日である7月12日に急きょ決
まったことであり,殺害依頼を受けた後は,Fが7月13日に警察署に出頭す
る前に,なんとしてもFやGを殺害しなければならないという極めて切迫した
状況にあったものである。以上に鑑みると,Aにおいて,7月12日に殺害依
頼を受けてからその翌日に殺害遂行に至る過程において,どれほど具体的な確
実性をもって1億円の報酬獲得を考えていたか疑問が残る。息子のMに対する
発言状況等に照らすと,Aにおいてもある程度高額の報酬をもくろんでいたこ
とは否定できないとはいえ,検察官の主張するように1億円の報酬獲得目的が
主要な動機であるとは認定できず,ましてや強盗殺人に匹敵するという主張は
正当とはいえない。もっとも,このことは,殺人等の犯行動機の身勝手さや悪
質さを何ら減じるものではなく,結局,犯行動機には,一片の酌量の余地もな
いという点に変わりはない。
  犯行の態様を見ると,Aは,F方においてFと顔を合わせるや,ためらうこ
となく至近距離からFの顔面を狙撃し,そのまま後ろに倒れたFにとどめを刺
す目的でFの下顎角部を狙撃している。また,Gに対しては,けん銃を突き付
け,いわば人質に取った状態でFの居場所を案内させたうえ,Gが,その目前
でFが射殺されたため慌てて別室に逃亡し,床にひれ伏し金品の提供を申し出
るなどして必死に命乞いをするのにも構わず,至近距離からGの後頭部を狙撃
し,そのまま崩れるようにうつぶせに倒れたGにやはりとどめを刺す目的でそ
の背部を狙撃している。犯行態様は冷酷かつ残忍であり,とりわけ,必死の命
乞いをするGを殺害した点は無慈悲この上ないというべきである。被害者両名
はいずれもその場で血まみれになって絶命していて,凄惨を極めている。
  2名もの尊い生命が奪われた結果は極めて重大であり,量刑上最も重視すべ
き事情であることは詳論するまでもなく,突如として死の恐怖に直面したF及
びGの驚愕や,F殺害の様子を目の当たりにさせられたうえ,床にひれ伏して
必死の命乞いをしたときのGの絶望感は,筆舌に尽くしがたいものがある。F
は暴力団組長,Gはその妻ではあったが,同人らがその親族らにとってかけが
えのない存在であることはいうまでもなく,被害者両名の長女,Fの父及びG
の姉ら遺族の処罰感情は峻厳を極め,この3名はいずれも被告人らの極刑を求
めている。とりわけ,犯罪者によって一度に両親を奪われることとなった被害
者両名の長女藪中愛は,第1次結審時には「この先両親にいろんな事をしてあ
げたかったし,自分の歩んで行く姿を常に見ていてほしかったのです。世間か
らはどういう風に見られている親であろうが,私にとっては唯一の家族であ
り,人としてもとても尊敬できる大切な2人でした。そんな2人を失った事は
私自身もある意味死んだも同然で(す)。私は死刑という判決にしか納得はし
ません。」などと,癒しがたい被害感情や峻烈な処罰感情を述べ,最終結審時
にもその被害感情や処罰感情には変わりがなく,むしろ,被告人両名の弁論再
開後の供述態度に接してその感情が更に強まっていることも窺われる。これら
遺族に対して,慰謝の措置は全くとられておらず,今後そのような措置がとら
れる見込みも乏しい。
  また,本件は,白昼,住宅地において,一度の機会に2名もの人命がけん銃
で奪われたものであり,犯行現場がF方内であったため,公衆の面前でけん銃
が発射されるような事案に比べて一般人が直接巻き添えになる危険性は少なか
ったとはいえ,暴力団が絡んだ凶悪事件で関係する組員以外の一般人に危害が
及ぶ場合が少なくないことに鑑みると,近隣住民や社会一般に与えた不安や衝
撃が大きいことは明白であり,社会防衛の見地も到底軽視することはできな
い。
  ところで,Fは被害に遭った当時暴力団組長の地位にあったものであるとこ
ろ,この点について,検察官は,FG夫婦はあくまでも一般市民として被告人
両名に殺害されたのであるから,Fが暴力団組長であったことをもって被告人
両名に有利な情状とすべきでないと主張するのに対し,弁護人らは,組織間の
抗争であるかどうかはともかく,暴力団組織内における抗争事件であることは
間違いないことなどを指摘して,このことを量刑上考慮すべきであると主張す
る。確かに,本件は,Fが組長を務める暴力団i一家内でのFとCの確執を発
端とし,CらにおいてF殺害を発案し,Cと意思を相通じたDがAに殺人を依
頼したものであるから,Fは暴力団i一家の組長であったからこそ殺害される
に至ったもので,目的実現のためには犯罪行為をもいとわない暴力団組員らを
率いる暴力団組長という立場に内在する危険性が現実化したという一面がある
ことは否定できず,Fはあくまで一般市民として殺害されたという検察官の主
張に直ちに与することはできない。しかし,本件犯行当時,抗争事件が生起し
つつあるような具体的状況があったわけではなく,Fは暴力団組長の地位にあ
ったこと以上に,何らかの積極的な攻撃行為を仕掛けるなどことさら犯罪を誘
発する行為にまで及んでいたことは窺えないのであるから,このことを過大に
被告人両名に有利にしんしゃくするのは相当とはいえない。Fの妻であったに
すぎないGとの関係では,なおさらこの理が妥当し,むしろ一般市民に近い立
場にあったものというべきである。
3 次いで,各被告人の個別的な情状について検討する。
 (1)Aは,犯行計画の遂行の過程において,Dと緊密に連絡を取り合いなが
ら,自らの判断で,ジャンパー等の着衣を準備したり偽造ナンバープレート
等を取り付けるなどの犯行発覚防止の工作を施し,的確に実行できるように
けん銃を試射することを決め,DからのF及びGの動静に関する随時の連絡
に即応して,実行行為者側のBやEを統率し,殺害実行の時機を逃すことな
く犯罪を遂行しているのであり,殺人等の犯行においてほぼ一貫して主導的
かつ中心的な役割を果たしている。また,Aは,2名もの人命を奪う残虐な
殺害行為をまさに自らの手で行っている。これらの事情は,量刑にあたっ
て,相当重要な位置を占めると考えられる。
   ところで,Aの弁護人は,AはDらに利用されたものであり,殺害には消
極的であったなどと主張して,このことをAに有利にしんしゃくすべきであ
ると主張する。
   なるほど,本件各犯行は,まず強盗予備の段階において,FとCの確執を
原因としてCやDがF殺害を発案し,これをAに持ちかけたことを契機とし
て殺害計画が具体的に進行し始めており,殺人等の段階においても,Aは,
Fが写真等の確認をするという情報を得たDから「俺が殺されてしまう。X
さん(Aのこと)何とかしてくださいよ。」と強く依頼されたため最終的に
殺害を決意するに至っているから,Dらが各犯行の発端を作ったという一面
は否定できない。しかしながら,殺害計画の遂行過程でAが果たした役割の
大きさ,Bらを統率していった状況のほか,A自身も発覚を妨げる必要があ
り,また,Aが相当高額な報酬をもくろんでいたことが窺われることなどに
照らせば,本件各犯行においてAが従属的立場にあったなどとは到底いえな
いことは明らかである。まして,Aは,Dとは別の組織に所属していた者
で,両者の間に上下関係はなく,Dからの依頼を事実上拒むことができない
ような立場にあったわけでもないから,Dに引きずられていったなどとも評
価することは到底できない。結局,発案者こそDらであるが,犯罪を成し遂
げる過程では,Aは,Dから随時提供される情報等に速やかに呼応しなが
ら,BやEを指揮して実行行為に向けた具体的な行動を取り,まさに車輪の
両輪となって犯罪実現に大きく寄与したものであるから,その果たした役割
はDに比して何ら遜色ないものである。
   殺害意思が消極的であったとの主張について検討しても,前記のようなA
が果たした役割に加え,犯行から離脱することが困難なわけでもないのにそ
のまま殺害の実行に及んでいること,F殺害をためらった様子が全く窺えな
いことに照らせば,Fに対しては当初から強固な殺意を持ち続けていたのは
明らかであるし,Gについては,F方に入る前にガムテープを購入している
ことなどに照らして,消極的な気持ちがあったというAの供述を全面的に否
定することはできないものの,殺害時には確定的な殺意に基づき,無抵抗の
Gを残虐な方法で殺害しているのであるから,有利にしんしゃくする余地が
あるとしても,その程度は自ずと限られた範囲にとどまるというべきであ
る。
   Aの前科関係を見ると,Aは,昭和57年以降,前科4犯を有し,いずれ
も懲役刑の実刑に処せられているほか,最初の服役を契機に暴力団活動を開
始しており,その活動歴は活発で相当に長期に及んでいる。とくに直近の前
科を見ると,Aは,平成3年8月に銃刀法違反,火薬類取締法違反の罪で懲
役7年に処せられていて,その刑期は決して短くないうえ,内容も,暴力団
に対する密売目的で,けん銃94丁及び実包1498発を所持していたとい
う暴力団特有の反社会性が顕著に反映されているものであって,罪質は非常
に悪い。それにもかかわらず,Aは,平成10年4月に刑の執行が終了して
出所した後も,本件犯行直前まで暴力団組員として活動し,けん銃や適合実
包の密売行為に関わっていたばかりか,本件強盗予備で準備された自動式け
ん銃等と,殺人の犯行で使用された自動式けん銃等は,いずれももともとA
が入手してきたものである。矯正教育の効果は全くなかったというほかな
く,その年齢等も考慮すると,顕著に反社会的なAの人格態度は相当に強く
固着しているといわざるをえない。反省悔悟の情を検討しても,Aは被害者
やその遺族に対する謝罪の言葉を口にするけれども,その供述態度,すなわ
ち,Aは,第1次結審前は,暴力団特有の論理に基づき,あるいは家族への
見返りを当て込んでCやDの関与をことさらに隠し,弁論再開後は,A自身
やBの殺意等について不合理な弁解を繰り返し,Cの関与についても不可解
な供述の変遷をしているばかりか,最終結審前に至って,Fが暴力団組長で
あったことを棚に上げて被害者らの遺族が一方的な処罰感情を表明している
などという不満を表明してまでもいる〈証拠略〉ことに鑑みると,特に第1
次結審後は一度死刑の求刑がされたという特異な状況下で供述していたこと
を最大限考慮したとしても,Aには真摯な反省悔悟の情を見出すことはでき
ない。
 (2) Bは,強盗予備事件では,下見及びビデオ撮影や,ホテルでの謀議に参加
したうえ,自ら中国人らを先導して金沢市に向かい,F方の下見を指揮する
など重要な役割を果たしている。殺人等事件では,Bは,終始,Aと行動を
共にしながら,回転式けん銃を試射し,F方付近での待機中に回転式けん銃
の弾倉を直ちに発射できるように直して準備を整えたうえ,犯行現場では,
発射音が響き渡らないように化粧ポーチを被せた状態で回転式けん銃を持
ち,Aと一体となってF方に入り,玄関先で見張りをするなどの役割を果た
している。このように,Bがけん銃を持って見張り等の役割を担当していた
ことが,Aの冷静で的確な殺害行為に大きく寄与していることは優に認めら
れるし,状況次第ではB自身がけん銃を発射していても全くおかしくない状
況にあったのであるから,犯行現場でBが果たした役割にはAに準じうるも
のがあり,F方の外で,自動車内で待機していたに過ぎないEとはその果た
した役割に格段の違いがある。Bにも,10年余りにわたる暴力団組員とし
ての活動歴があり,凶悪犯罪こそ含まれていないものの,前科3犯を有し,
うち2回は服役しているうえ,出所後わずか約1年半の後に本件犯行に及ん
でいる。弁論再開後のAに迎合的な供述態度に鑑みても,Bには暴力団特有
の価値観が定着しつつあることが窺われる。反省悔悟の情につき検討して
も,Bの述べる謝罪の言葉はそれなりに真摯なものとも受け取れる部分もあ
るが,その供述態度,すなわち,Bは,第1次結審前は自分が実行行為を行
ったと虚偽の供述をして,暴力団関係上の上位者でありかつ養親であるAを
かばおうとし,弁論再開後は,Aの供述に迎合するような態度を示してお
り,特に第1次結審前の供述態度については,B自身が,遺族の心情を考え
るよりもオヤジをかばう気持ちが強かったなどと供述していることに照らす
と,やはり,反省が十分に深まっているとまで認めることはできない。
   他方,Bは,DとAとの間の緊密な謀議や連絡に直接加わっていたもので
はなく,基本的には暴力団関係における絶対的上位者であるAの断片的な指
示に従い,その意を汲んで行動していたにとどまり,B自身が自らの判断で
積極的に行動していた場面は回転式けん銃の弾倉を直した点を除いてはほと
んどなかったものであるから,その地位や役割はAやDに比して従属的であ
るといえる。殺人の実行行為時においても,Bは結果的には1発もけん銃を
発射することなく,ほぼ玄関先にどとまっていたに過ぎないのであるから,
もとより殺人等の共同正犯であることに合理的な疑いを入れる余地はないも
のの,殺害の結果発生に対する具体的な寄与の程度はそれほど大きいとはい
えない。報酬等については,Bが現実味を持って得られる見込みを認識して
いたとまでは認められず,Bが独自の経済的利益を特に意欲して犯行に及ん
でいたとはいえない。これらの事情はBにとって特に有利にしんしゃくすべ
きであるし,また,Bの不遇な成育歴は多少なりともBに有利に酌むことが
できると考えられる。
4 そこで結論であるが,以上のとおり,なにより被害者2名の生命を奪ったと
いう結果が極めて重大であり,特筆すべき周到かつ綿密な計画に基づき共犯者
らと緊密な連絡をとって2人の生命を奪うという凶悪な犯罪が極めて冷静に遂
行されていること,殺害の方法は,Fに対しては何らのためらいなく,Gに対
しては必死の命乞いを無視して,それぞれの身体の枢要部にけん銃で弾丸2発
を撃ち込むという冷酷かつ残虐なものであること,口封じ目的という殺害動機
にいささかたりとも酌むべきところがないこと,被害者らが暴力団組長の夫と
その妻であったことを過大に評価することはできず,遺族の処罰感情も峻烈で
極刑を求めていること,社会的影響も軽視できないこと等に照らして,被告人
両名の刑事責任は極めて重大であるというべきところ,Bについては,Dとの
謀議は直接はかかわっておらず,基本的にはAの絶対的な指示,命令に基づい
て行動していたものでその従属性が顕著であること,殺人の実行行為時に果た
した役割は限定的であること,具体的な経済的利益を意欲して犯行に及んでい
たとも認められないことなどAに比して特に有利に酌むべき事情が存在し,更
に,その不遇な成育歴をも併せ考慮すると,各殺人罪について有期懲役刑を選
択するのが相当であり,しかも,その処断刑の最長期をもって臨むことはいさ
さか重きに過ぎるというべきである。しかし,Aについては,Dに劣らぬ地位
にあって実行行為側の共犯者らを率い,あるいは主体的に犯罪遂行の準備を
し,最後には自ら残虐な実行行為を行うなど,ほぼ一貫して主導的で中心的な
役割を果たしており,前科関係等も芳しくないことをも併せ考慮すると,他方
において,本件殺害等の計画はAが発案したものではないこと,F及びG殺害
に至る過程で報酬目的を具体的に意欲していたとまではいえないこと,一応は
遺族に対する謝罪の言葉を口にしていることなど,Aに有利にしんしゃくする
余地のある事情を最大限考慮したとしても,Aの刑事責任はまことに重大であ
って,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも,Aを極刑に処すること
はやむを得ないものと認められる。
 よって,主文のとおり判決する。
(求刑 被告人Aにつき死刑,没収。被告人Bにつき無期懲役)
平成16年3月26日
富山地方裁判所刑事部
裁判長裁判官   神沢昌克
   裁判官   水野将徳
   裁判官   三輪篤志

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛