弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を長崎地方裁判所に差戻す。
         理    由
 本件控訴の趣意は記録に編綴してある検察官佐藤直提出の控訴趣意書記載の通り
であるからここにこれを引用する。
 同控訴趣意について
 原判決は本件賃金不払の原因が昭和二十三年九月頃の豪雨のため坑内に浸水、石
炭搬出道路決壊し約四十日間操業不能となり、且貯炭約五百噸を失ひ、爾後深刻な
資金難に陥つたこと、搬出道路が翌年四、五月頃まで原状回復に至らず、打続く降
雨と相俟ち出炭、運炭共に著しく振はず、且被告人が同年三月から六月頃まで病気
となりたるため昭和二十四年四、五月頃A株式会社から約金四十六万円の石炭代の
収入があつた外は石炭代収入は微々たるものであつたこと、被告人は金融に奔走し
たが成功せず、右四十六万円中約半額は未払賃金の支払に充て、残半額を従前の賃
金の支払のための過去の借入金の辨済、事業継続に必要な火薬、カーバイト、坑木
等資材の購入に充て、辛じて経営を継続したことを認定して期待可能性がないとの
理由で被告人に無罪を言渡したのである。
 <要旨>しかし(1)企業が使用労働者の賃金を長期に亘つて支払ひ得ないやうな
場合は其の原因及将来の見通によつては経営の規模の縮少、人員の整理合理
化をも必要とする場合もあるのであるところ、本件炭坑が判示のやうな原因から経
営が困難となり、石炭代収入が減じたこと、及被告人が金融に或程度奔走したこと
は原判決挙示の証拠で認められるが証人Bの検察官に対する上申書(一)及乃至
(四)及同人の原審公判廷の証言によつて明かなやうに本件賃金の不払は昭和二十
三年十一月分以降昭和二十四年七月分までの長期に及ぶものであり且昭和二十三年
十月分以前にも賃金の不払があつたのであるから、本件炭坑の経営については被告
人が其の経営の規模使用人員数等の適否について検討し如何なる手段方法を構じた
か否かにつき、(2)又Bの原審の証言、検察官に対する上申書(三)原審の証人
Cの証言によれば、昭和二十三年十二月以降も被告人は賃金の一部を支払つている
こと、個人からの金融を受けることは全然不可能ではなかつたこと、本件不払賃金
は昭和二十五年四月二十五日福岡石炭局の斡旋によつて鉱業使用権者の鉱業権者に
支払ふべき使用料(約四十五万円)を不払賃金の支払に充てることとして全部支払
はれたことが認められるので被告人に於て更に一段の努力をしたなら支払ふ方法を
発見し得たのではないかと窺はれるところもあるので、被告人に於て賃金支払資金
入手のため如何なる程度の奔走方をしたか又不要不急資産にして処分換価しうるも
のの有無、右期間内の収入金額及其の費途、出炭運炭の成績を上げるための努力の
程度等につき、(3)更に昭和二十四年四月五日に於て被告人は石炭代四十六万円
の収入あり内約半額は炭坑経営のための資材の購入及従前の賃金支払のための借入
金の支払に充てたことは原判決の認定するところであるが賃金の支払をなさず従前
の借入金の支払に充てた場合には借入金の性質、借入の条件等を審究せずして従前
の賃金の支払のために借入金なればとて賃金の支払に優先し得るものとは断じ難い
(尤も原審判決は労働組合との話合の上其の支出を決定したかの如き認定をしてゐ
るが証人Dの証言によれば軽々に其の認定をなし難い)ので右借入金の性質、返済
期其の他借入の条件等につき、更に一段の審理を尽くした後でなければ期待可能性
ありや否や断定することは出来ない。
 原審が右諸点につき審理を尽くさず前示のやうな認定から直ちに期待可能性なし
としたことはいささか審理不尽のそしりを免れない。
 以上の理由により本件控訴の論旨は理由があるので刑事訴訟法第三百九十条第四
百第に從い主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 石橋鞆次郎 裁判官 藤井亮 裁判官 池田惟一)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛