弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は検察官提出の控訴趣意書の通りであり之に対する答弁は弁護人
金原政太郎提出の答弁書に記載さした通りである。而して当裁判所の判断は左の通
りである。
 論旨は原判決は法令の解釈適用に誤があり、其の誤が判決に影響を及すことが明
かであるから破棄を免れないと主張するのである。
 よつて按ずるに本件公訴事実は、「被告人は昭和二十六年九月二十三日頃から東
京都台東区a町b番地A方に於てB社(本店)を経営し順次同区c町d番地C方及
び埼玉県北足立郡e町f町g丁目h番地D方に右B社支店を開設して来たが、同年
十一月七日右三個所の本店及び支店に於てE、F外数名の事務員を使用しG外多数
人からH競輪に於ける連勝式勝者投票券六百五十余枚の購入方の依頼を受け同券一
枚につき代金百円及び手数料十円を受取り之と引換えに右購入依頼者に対して代金
領収証及び払戻金引換証の趣旨からレース番号、連勝式番号及び其の枚数を記載し
た伝票を発行交付し払戻金千円以上の場合には五分の謝礼金を徴し以て自転者競走
施行者の為す勝者投票券発売と類似の行為を為したものである。」というのであ
り、原審の見解は、「被告人はその使用人を通じて各本店及び支店で不特定多数の
客から自転車競走の連勝者投票券購入の依頼を受け、客の希望するレース番号と連
勝式と枚数を聞きとり、直にそれ等と各客の名前、年月日とを複写式伝票に記入
し、客からは勝者投票券購入代金と外に手数料として右代金の一割に当る金員を受
け取り、それと引換えに「本命が欠場の場合も車券は購入致します。」と記載ある
右伝票の一枚を、勝者投票購入受託及現金の預り証と的中の際の払戻相当金支払の
引換証の趣旨で客に交付し、一方予め現金十万円を持たせH等レースの行われる自
転車競技場へ赴かしめておいた使用人等と電話で連絡し客の注文に応ずる勝者投票
券を各レース毎に現場で購入させ、各レース終了毎にその結果を電話で本店に報告
させ現場で的中者分の払戻金を受けとらせると共に、本店又は支店で、的中勝者投
票券の購入依頼者中の希望者には現場で受け取ると同額の払戻相当金を交付した伝
票と引換えに立替払し、その際払戻金が千円を超える場合のみその内から更に予想
的中の謝礼金として五分の割合の金額を受けとつていたものであり、昭和二十六年
十一月七日にも右方法で営業してG外多数の客からH自転車競技に於ける連勝式勝
者投票券約六百五十枚の購入依頼を受け、前記の如き伝票を交付していた」ことは
認め得るが、斯の如きは要するに多数の勝者投票券の購入希望者から依頼を受け
て、投票券を正規の発売所から買受けてやり、的中者については代理して払戻金を
正規の払戻所から受取つてやるのみの行為であり、これ等の代理行為に対して予め
約束した一定の手数料を受け取つただけのものであつて、右行為は営利目的を以て
不特定多数人から勝者投票券の購入の委託を受けて之を履行したに過ぎないので、
其の際被告人が前記認定の様な伝票を委託者に交付したことにより勝者投票券発売
類似の行為をしたものと云うことはできない。被告人の所為は本来取締の必要ある
ととは認められるが、投票券の購入の委託を受ける営業行為乃至購入の取次行為に
対する罰則を欠く現行法の下に於ては之を処罰することはできない、よつて被告人
に対しては無罪を言渡すべきものでおるというのである。
 而して記録を精査するに右原審の事実認定については事実誤認ありとは認められ
ないのであり、該事実認定<要旨>を前提とし、被告人は不特定多数人から車券購入
の委託の趣旨に従い車券を現実に購入し、競技の結果的中者については払戻
金を代通して受取つたに過ぎないものであると認むべきものである以上たとえ前記
の如き伝票を交付した事実があり委託者の一部の者が之を車券と殆んど同視してい
たとしても之を法に所謂勝者投票券類似のものを発売したものとすることはできな
い。
 論旨は本件被告人の行為を以て車券発売類似の行為でないとするならば他に之に
該当する例は殆んど考え得られないであろうというが、両者の場合を別に観念し得
べきものであることは本件以後昭和二十七年六月三十日法律第二百二十号により改
正された自転車競技法第一条第三項には「競輪施行者以外車券其の他これに類似す
るものを発売して自転車競争を行つてはならない」と規定する一方第十九条第二項
に於て新に「業として車券の購入の委託を受け又は財産上の利益を図る目的を以て
不特定多数の者から車券の購入の委託を受けた者」を罰する旨規定したことによつ
てもわかる。尤も右改正法律は昭和二十七年七月一日以降実施されたものであつて
本件行為に適用し得べきものでないことは言をまたない。結局原判決には法律の解
釈適用について誤りはなく、本件控訴は理由なきに帰するから刑事訴訟法第三百九
十六条に則り之を棄却すべきものと認め、主文の通り判決する。
 (裁判長判事 藤嶋利郎 判事 飯田一郎 判事 井波七郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛