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平成21年8月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成20年(ネ)第10068号特許権侵害差止控訴事件
原審・東京地方裁判所平成19年(ワ)第19159号
口頭弁論終結日平成21年6月18日
判決
控訴人株式会社ディスコ
同訴訟代理人弁護士中村智廣
三原研自
同補佐人弁理士佐々木功
川村恭子
久保健
被控訴人本間工業株式会社
同訴訟代理人弁護士伊原友己
加古尊温
同訴訟代理人弁理士中越貴宣
同補佐人弁理士楠本高義
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,商品名を「MCS−8000」とするシンギュレーションシス
テム装置を製造,販売し,又は販売の申出をしてはならない。
3被控訴人は,控訴人に対し,3400万円及びこれに対する平成19年8月
7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
53項につき仮執行の宣言
第2事案の概要
1本件は,被控訴人が,商品名を「MCS−8000」とするシンギュレーシ
ョンシステム装置(以下「被控訴人製品」という。)を製造,販売した行為につい
て,控訴人が,被控訴人の上記行為は,控訴人の有する第3887614号特許権
(発明の名称「切削方法」。以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲請求
項3に係る発明を「本件発明」という。)を侵害するものとみなされる(特許法1
01条5号)と主張して,①本件特許権に基づき,被控訴人製品の製造,販売等の
差止めを求めるとともに,②不法行為に基づく損害賠償として,3400万円及び
これに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
2原判決は,被控訴人の上記行為による本件特許権の侵害の成否について判断
することなく,本件特許は,下記引用例1及び引用例2に記載された発明(以下
「引用発明1」「引用発明2」という。)に基づいて当業者が容易に発明をするこ
とができたものであり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか
ら,特許法104条の3により,本件特許権を行使することはできない旨を判示し
て,控訴人の請求を棄却したため,控訴人がこれを不服として控訴した。
引用例1:実願昭58−49304号(実開昭59−156753号)のマイク
ロフィルム(乙9)
引用例2:実願平1−76555号(実開平3−16343号)のマイクロフィ
ルム(乙15の2)
3本件発明に係る特許請求の範囲は,別紙特許請求の範囲目録(1)のとおりで
あるところ,控訴人は,無効審判手続において,平成20年10月17日,訂正請
求を行った(以下「第1次訂正」という。)。その訂正に係る特許請求の範囲は,
別紙特許請求の範囲目録(2)記載のとおりである(以下「第1次訂正発明」とい
う。)。
さらに,控訴人は,平成21年4月15日,訂正審判を請求した(以下「第2次
訂正」という。)。その訂正に係る特許請求の範囲は,別紙特許請求の範囲目録
(3)記載のとおりである(以下「第2次訂正発明」という。)。
そして,控訴人は,当審において,上記各訂正により,本件特許は無効にされる
べきものとはいえない旨の主張を追加した。
第3当事者の主張
1原審における主張
原審における当事者の主張は,原判決の事実及び理由の第3(原判決5頁18行
∼27頁20行)のとおりであるから,これを引用する。
2当審における当事者の主張
〔控訴人の主張〕
(1)原判決の認定した無効理由について
ア動機付けについての判断の誤り
(ア)原判決は,引用発明1に引用発明2の切削方法を適用することは,2本の
切断線を同時に切断して切削時間を短縮するという観点から当業者が容易に想到す
ることができたものであると判断したが,切削時間を短縮するための方法としては,
①切削送り速度の高速化,②割り出し送り速度の高速化,③アライメント処理の高
速化,④ブレードの数を増やす,⑤切削ストロークの短縮等さまざまであり,常に
本件発明のような手順を採用すれば済むというものではない。
(イ)引用発明1及び2は,いずれもブレードの数を増やすという範疇に属する
ものである。これに対し,本件発明は,被加工物の形状を正方形又は長方形とし,
2つのスピンドルを一直線上に位置させ,一方のブレードを被加工物の端部に位置
付けると共に他方のブレードを被加工物の中央部に位置付けて2つのストリートを
同時に切削し,2つのブレードを同方向にずらしながら順次ストリートを2本ずつ
切削することにより,切削ストロークの短縮という目的を達成したものであり,ブ
レードの数を増やすという発想はもともとない。
(ウ)上記のように,切削時間を短縮するという課題解決のための技術手段は多
岐にわたっているため,切削時間短縮を目的とする技術が公知文献に示されていて
も,それが直ちに発明の基礎となるわけではない。本件発明は,切削ストロークの
短縮という技術思想に立脚しており,ブレードの数を増やすことのみをベースとし,
単に切削回数を減らすという単純な思想しか有していない引用発明1及び2には,
本件発明に対する動機付けは存在しない。
また,本件発明では,被加工物が正方形又は長方形でなければ,切削ストローク
の短縮を実現できない手順を採用しており,当初から円形のウェーハを切削する場
合とは明確に区別している。すなわち,円形のウェーハの場合は,本件特許の請求
項1,2の手順を使うことを前提としており,円形ウェーハを対象とする引用発明
2は当初から除外しているのである。
したがって,かかる観点からも,引用発明2を本件発明の基礎とすることはでき
ない。
イ阻害要因についての判断の誤り
引用発明1に引用発明2を適用すると,2つのカットホイールの位置関係が固定
された状態になってしまうために柔軟な位置関係の変化が不可能となり,引用発明
1に記載されている「一つのワークを一または複数のカットホイールが加工してい
るときのあきスペースに別のワークが位置していて別の一または複数のカットホイ
ールが加工を行っている」点については実現不可能になる。
したがって,当業者であれば,そもそもこのように発明の本旨が失われるような
組合せを試みることはない。
(2)第1次訂正による無効理由の解消と特許権侵害について
ア第1次訂正の内容
第1次訂正は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とし
て,別紙特許請求の範囲目録(2)のとおり訂正したものである。
第1次訂正は,特許法134条の2第5項が準用する同法126条3,4項の要
件を充足する適法なものである。訂正により新たに特定した事項は,引用発明1,
引用発明2及び周知例として引用された文献のいずれにも記載されていない。した
がって,引用発明1,引用発明2及び周知例として引用された文献に記載された内
容を組み合わせても,第1次訂正発明を想到することはできない。
よって,原判決が認定した無効理由は解消した。
イ被控訴人方法の第1次訂正発明の充足性
(ア)構成要件の分説
A一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動
により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,
B−1’該一方のネジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動
する第一のスピンドル支持部材が係合し,
B−2’該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動
する第二のスピンドル支持部材が係合し,
C−1該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され,
C−2該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され,
D−1該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され,
D−2該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され,
E該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレードと該第二
のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,
F−1半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが,
F−2’X軸方向に移動可能に配設され,半導体ウェーハの表面を撮像する撮
像手段と,該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出する
アライメント手段とを備えた精密切削装置を用いて
F−3正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって,
X半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ,該アライメン
ト手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出
され,
G−1該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形
の被加工物の端部に位置付けられ,
G−2該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ,
H−1該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,
H−2該チャックテーブルをX軸方向に移動させ,
H−3’該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメント手段によって
検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し,
I−1該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,
I−2’該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向
に個別に割り出し送りし,
I−3’該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によ
って検出されたストリートを2本ずつ切削する
I−4切削方法。
(イ)被控訴人方法との対比
a構成要件AないしEについて
構成要件AないしEについては,争いがない。なお,訂正付加された構成要件B
−1’,B−2’中の「個別に」の部分についても,被控訴人製品の構造・機能上,
争いのないものと解される。
b構成要件Fについて
被控訴人製品には,被加工物を載置・固定するチャックテーブルが存在すること
は明らかであり,また,半導体ウェーハと半導体パッケージの違いはあるが,対象
物の表面を撮像する撮像手段と,対象物の表面に形成された切削すべきストリート
を検出するアライメント手段に相当するものを有する。したがって,半導体ウェー
ハが半導体パッケージではないとの点以外は,構成要件F−1ないし3を充足する。
c構成要件Xについて
半導体ウェーハと半導体パッケージの違いはあるが,対象物の真上にアライメン
ト手段が位置付けされ,対象物の表面に形成された切削すべきストリートをアライ
メント手段により検出するものであることは,被控訴人製品の構造・機能上明らか
である。よって,半導体ウェーハが半導体パッケージではないとの点以外は,構成
要件Xを充足する。
d構成要件Gについて
被控訴人製品には,正方形又は長方形の被加工物を載置・固定するチャックテー
ブルが存在する。また,被控訴人方法目録(1)記載のように,被加工物をブロック
部13aと捉えれば,そこには端部及び中央部は想定できるから,構成要件Gも充
足する。
e構成要件Hについて
被控訴人製品には,被加工物を載置するチャックテーブルが存在することは前記
のとおりである。また,切削ストリートが,アライメント手段によって検出される
ことについては,被控訴人は,切削前にカメラで切削位置の計測を行っている旨の
主張をしており,争いはない。なお,「形成され該アライメント手段によって検出
されたストリートをX軸方向に2本同時に切削する」との点については,被控訴人
は,耳(両端部)から切除されるので,「X軸方向に2本同時に切削する」ことは
ないと主張していたが,被控訴人方法目録(1)記載のように,被加工物をブロック
部13aと捉えれば,「端部及び中央部に形成され,該アライメント手段によって
検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削」するものといえる。よって,
半導体ウェーハが半導体パッケージではないとの点以外は,構成要件Hを充足する。
f構成要件Iについて
被控訴人は,二本同時切削時のスピンドル間の間隔がその都度微調整される旨主
張し,「間隔を維持」してはいないと主張するが,その微調整は,ブレード位置の
アライメントそのものである。そして,かかるアライメント作業がなされたとして
も,被控訴人方法目録(1)における治具12aには,予めストリートの溝12bが
刻まれており,パッケージを切削する際,当該溝にブレードの刃が落ちるように切
削していくものであり,その意味では,二つのスピンドルは,間隔を維持したまま,
送り出されて切削しているものと評価できる。よって,構成要件Iも充足する。
(ウ)均等侵害
a非本質的部分性について
第1次訂正発明は,「生産性の向上を図ること」を目的とするものであり,該目
的を達成するために,「該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形
または長方形の被加工物の端部に位置付けられ,該第二のブレードが該被加工物の
中央部に位置付けられ,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させる
と共に,該チャックテーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部
に形成され該アライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同
時に切削し,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,
該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り
出し送りし,該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によ
って検出されたストリートを2本ずつ切削する」ことは本質的に必須な要件である
が,被加工物の切削対象が「半導体ウェーハ」か「半導体パッケージ」かは本質的
部分ではない。
b置換可能性について
第1次訂正発明は,精密切削装置における生産性の向上を図ることを目的とする
ので,切削対象物を「半導体ウェーハ」から「半導体パッケージ」に置き換えても,
発明の目的を達することができることは明らかである。
c置換容易性について
「半導体パッケージ」は,半導体チップを所要の回路基盤上に取り付けて樹脂で
モールドしたものであり,回路基盤は要するに薄板であるから「ウェーハ」という
ことができ,「半導体パッケージ」も「半導体ウェーハ」同様に精密切削が必要と
なるものであることからすれば,「半導体ウェーハ」から「半導体パッケージ」へ
の置換は,侵害時(平成18年12月)において,当業者であれば,容易に想到す
ることができたものである。
d公知技術からの推考非容易性について
被控訴人製品において「半導体パッケージ」を「第一のスピンドル及び第二のス
ピンドルとの間隔を維持したまま,第一のスピンドル及び第二のスピンドルをもう
片方の端部の方向に個別に割り出し送りし,チャックテーブルをX軸方向に移動さ
せて該アライメント手段によって検出されたストリートを2本ずつ切削」する方法
は,第1次訂正発明を待って初めて推考できるようになったものであり,当業者が,
本件出願時に公知技術から容易に推考できるものではない。
e意識的除外等の特段の事情の不存在について
本件出願経緯において,切削対象物として「半導体パッケージ」を意識的に除外
した等の事情はない。
ウ間接侵害
(ア)課題解決のための不可欠性について
被控訴人製品は,第1次訂正発明の構成要件を充足しており,同発明による課題
の解決(第一のスピンドル及び第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,第一の
スピンドル及び第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし,
チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出された
ストリートを2本ずつ切削することによる生産性の向上)に不可欠な構成を有して
いる。すなわち,被控訴人製品を使用すれば,第1次訂正発明における方法を実施
することができ,切削の時間を短縮することができる。
(イ)被控訴人の悪意について
控訴人は,被控訴人に対し,平成19年4月7日到達の通知書により,被控訴人
製品が本件特許権を間接的に侵害するものであることを通知したから,遅くとも,
上記時点において,被控訴人は悪意である。
(ウ)よって,被控訴人製品の製造,販売又は販売の申出は,本件特許権を間接
的に侵害するものである(特許法101条5号)。
(3)第2次訂正による無効理由の解消と特許権侵害について
ア第2次訂正の内容
第2次訂正は,本件発明の特許請求の範囲の減縮を目的として,別紙特許請求の
範囲目録(3)のとおり訂正したものである。
第2次訂正は,特許法126条1ないし4項の要件を充足する適法なものである。
また,第2次訂正発明は,フランジ及びブレードカバーが配設された構成において
2つのブレードを最も接近させたときのブレード間隔と,切削しようとする2本の
ストリート間の距離との関係に着目したものであり,かかる関係下においてもすべ
てのストリートを2本ずつ切削できる点に技術的意義を有しているところ,このよ
うな発明は,被控訴人が提出した文献(乙16の1∼12,乙19の1∼12)に
基づいて容易に発明できるものではなく,無効理由を解消し,特許出願の際独立し
て特許を受けることができるものである。
イ被控訴人方法の第2次訂正発明の充足性
(ア)構成要件の分説
A一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動
により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,
B−1’該一方のネジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動
する第一のスピンドル支持部材が係合し,
B−2’該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動
する第二のスピンドル支持部材が係合し,
C−1該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され,
C−2該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され,
D−1”該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され,該第一の
ブレードがフランジによって固定されブレードカバーによって覆われて第一の切削
手段が構成され,
D−2”該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され,該第二のブレー
ドがフランジによって固定され該第二のブレードがブレードカバーによって覆われ
て第二の切削手段が構成され,
E該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレードと該第二
のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,
F−1半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが,
F−2’X軸方向に移動可能に配設され,半導体ウェーハの表面を撮像する撮
像手段と,該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出する
アライメント手段とを備えた精密切削装置を用いて
F−3正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって,
X”該第一のブレード及び該第二のブレードの先端にフランジが装着され該第
一のブレード及び該第二のブレードがブレードカバーによって覆われているために,
該第一のブレードと該第二のブレードとを最も接近させた場合においても該第一の
ブレードと該第二のブレードとの間隔より切削しようとする2本のストリート間の
距離の方が狭くなる半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ,
該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきスト
リートが検出され,
G−1該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形
の被加工物の端部に位置付けられ,
G−2該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ,
H−1該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,
H−2該チャックテーブルをX軸方向に移動させ,
H−3’該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメント手段によって
検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し,
I−1該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,
I−2’該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向
に個別に割り出し送りし,
I−3’該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によ
って検出されたストリートを2本ずつ切削する切削方法。
(イ)被控訴人方法との対比
被控訴人製品では,1ブロックタイプの半導体パッケージの場合,別紙被控訴人
方法目録(1)記載のとおりの切削方法を採用しているところ,本件特許との関係に
おいては,同目録(1)中の「3②主たる切削工程」とが対比されるべきものである。
第2次訂正により,訂正された構成要件については,以下のとおりであり,その余
は前記(2)イと同様である。
a構成要件Dについて
別紙物件目録の図2及び図3のとおり,被控訴人製品における第一の切削手段1
8は,第一のスピンドル8の先端に第一のブレード10が装着されフランジ16に
よって固定されブレードカバー17によって覆われた構成となっている。また,被
控訴人製品における第二の切削手段21は,第二のスピンドル9に第二のブレード
11が装着されフランジ19によって固定されブレードカバー20によって覆われ
た構成となっている。2つのフランジ16,19及び2つのブレードカバー17,
20については,乙12の写真にも示されている。よって,被控訴人製品は,構成
要件D−1”及びD−2”を充足する。
b構成要件X”について
被控訴人製品は,第一のブレード10及び第二のブレード11の先端にフランジ
16,19がそれぞれ装着され第一のブレード10及び第二のブレード11がブレ
ードカバー17,20によってそれぞれ覆われて構成されている(別紙物件目録の
図3)。したがって,切削しようとする2本のストリートS1,S2がある場合に,
第一のブレード10と第二のブレード11とを最も接近させた場合においても,第
一のブレード10と第二のブレード11との間隔より切削しようとする2本のスト
リートS1,S2間の距離の方が狭くなる(乙7,12)。また,半導体ウェーハ
と半導体パッケージの違いはあるが,切削対象物の真上にアライメント手段が位置
づけされ,切削対象物の表面に形成された切削すべきストリートをアライメント手
段により検出するものであることは,被控訴人製品の構造・機能上明らかである。
よって,半導体ウェーハが半導体パッケージではないとの点以外は,構成要件X”
を充足する。
(ウ)均等侵害
a非本質的部分性について
第2次訂正発明は,「生産性の向上を図ること」を目的とするものであり,該目
的を達成するために,「該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形
または長方形の被加工物の端部に位置付けられ,該第二のブレードが該被加工物の
中央部に位置付けられ,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させる
と共に,該チャックテーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部
に形成され該アライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同
時に切削し,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,
該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り
出し送りし,該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によ
って検出されたストリートを2本ずつ切削する」ことは本質的に必須な要件である
が,被加工物の切削対象が「半導体ウェーハ」か「半導体パッケージ」かは本質的
部分ではない。
また,「該第一のブレード及び該第二のブレードの先端にフランジが装着され該
第一のブレード及び該第二のブレードがブレードカバーによって覆われているため
に,該第一のブレードと該第二のブレードとを最も接近させた場合においても該第
一のブレードと該第二のブレードとの間隔より切削しようとする2本のストリート
間の距離の方が狭くなる半導体ウェーハ」という要件についても,2つのブレード
間の間隔と切削しようとする2本のストリートの距離との関係が重要なのであり,
その関係を満たす対象が「半導体ウェーハ」か「半導体パッケージ」かは本質的部
分ではない。
b置換可能性について
第2次訂正発明は,精密切削装置における生産性の向上を図ることを目的とする。
また,半導体ウェーハにも半導体パッケージにもストリートが存在し,いずれに
ついても「該第一のブレード及び該第二のブレードの先端にフランジが装着され該
第一のブレード及び該第二のブレードがブレードカバーによって覆われているため
に,該第一のブレードと該第二のブレードとを最も接近させた場合においても該第
一のブレードと該第二のブレードとの間隔より切削しようとする2本のストリート
間の距離の方が狭くなる」という関係が成立する。
したがって,切削対象物を「半導体ウェーハ」から「半導体パッケージ」に置き
換えても,本件発明の目的を達することができることは明らかである。
cその余の要件について
置換容易性・公知技術からの推考非容易性・意識的除外等の特段の事情の不存在
については,前記(2)イと同様である。
ウ間接侵害
前記(2)ウと同様である。
〔被控訴人の主張〕
(1)原判決の認定した無効理由について
控訴人の主張は争う。
ア引用発明1も引用発明2も,いずれも本件発明(第1次訂正発明を含む。以
下同じ)と技術分野を共通にするだけではなく,技術課題及び目的までも共通にす
るものである。さらに,本件発明,引用発明1及び引用発明2のいずれもが,2枚
のブレードによって切削位置を2本ずつ切削することができるという点で作用を共
通にするとともに当該作用によって得られる生産性の向上という効果までも共通に
している。共通の技術分野において,共通の作用効果を有する引用発明1及び引用
発明2が,共通の技術課題及び目的を解決するために,それぞれの組合せを試みよ
うとするのは自然なことである。
また,引用発明2において円形の半導体ウェーハの端部と中心部とを同時に切削
すれば切削ストロークに無駄が生じるのは自明な課題であるところ,引用発明1に
開示されている矩形の被加工物であれば,円形のものと比較して各ストロークに無
駄が生じないことは論理必然のことであって当業者ならずとも自明である。よって,
引用発明2が,円形の半導体ウェーハを対象としていることによって生じる自明の
課題を解決するためにも,被加工物を矩形にすることを試みようとするのは自然な
ことである。
このように,引用発明1及び引用発明2には,本件発明に対する動機付けが存在
することは明らかである。
イなお,控訴人は,引用発明1に引用発明2を適用すると2つのカットホイー
ルの位置関係が固定された状態になってしまうため,引用発明1がいう柔軟な位置
関係の変化が不可能となるという阻害要因が存在すると主張する。しかし,引用発
明1の考案はカットホイール(ブレード)の位置関係を柔軟に設定できるものであ
り,引用発明1に,引用発明2を適用したものは,まさしく柔軟な位置関係の変化
が可能な引用発明1の一態様にほかならず,同様の位置関係をとり得ることは引用
発明1の第2図及び第3図として開示されているから,引用発明1の考案の内容を
読み誤ったものである。
よって,引用発明1に引用発明2を適用することに阻害要因は存在しない。
(2)第1次訂正による無効理由の解消と特許権侵害について
ア第1次訂正によって追加された事項である被切削物である半導体ウェーハの
切削箇所(ストリート)の正確な位置を特定するための撮像手段及びアライメント
手段は,ダイシング装置及びダイシング方法に関する技術分野において極めてあり
ふれた周知・常套な構成に過ぎず,また,独立した駆動装置に繋がっている各スピ
ンドル及びその支持部材がそれぞれの駆動装置が作動することによって「個別に」
移動することは構造上自明のことにすぎない。
よって,第1次訂正が認められたとしても,進歩性欠如の無効理由は何ら解消さ
れるものではない。
イ被控訴人方法が,構成要件A,C,D及びEの構成を備える被控訴人製品で
なされるものであることは認める。なお,構成要件Bについては,第一及び第二ス
ピンドル支持部材が独立した各モーターの駆動を通じてそれぞれ移動するので,そ
のことを単に「個別に」と表現したにすぎないというならば,認める。しかし,被
控訴人方法は,別紙被控訴人方法目録(2)のとおりであり,構成要件FないしIを
充足しない。
また,控訴人は,第1次訂正発明と被控訴人方法との関係においては,別紙被控
訴人方法目録(1)の「3②主たる切削工程」の記載事項とが対比されるべきもので
あると主張するが,そもそも,被控訴人製品では,控訴人がいうような前処理工程,
主たる切削工程,補完工程という切削方法をとらない。被控訴人製品は,半導体パ
ッケージを縦横にカットして個々のチップにするものであり,すべてのストリート
を切削することが不可欠であるから,いずれのストリートの切削も重要性において
同等であって,切削するストリート間に優劣や主従の関係が生じる余地はなく,し
たがって,切削工程を優劣や主従をつけて区別をすることはできない。
(3)第2次訂正による無効理由の解消と特許権侵害について
第2次訂正による主張は,時機に後れた攻撃防御方法であり,却下されるべきで
ある。
(4)結語
均等侵害及び間接侵害はいずれも成り立たない。また,本件特許は特許無効審判
により無効にされるべきであるから,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権を行
使することができず(特許法104条の3),控訴人の本件請求に理由はない。
第4当裁判所の判断
1請求原因(間接侵害の成否)について
控訴人は,被控訴人製品の製造販売による本件特許権の侵害を主張するので,ま
ず,この点について検討する。
(1)文言侵害
控訴人は,そもそも,被控訴人製品において用いられている切削方法,すなわち,
被控訴人方法が別紙被控訴人方法目録(1)のとおりであることの立証をしていない
が,文言侵害の成否についてみると,被控訴人方法が,本件発明に係る切削方法の
対象物である「半導体ウェーハ」を切削する方法ではなく,「半導体パッケージ」
を切削する方法であることを自認している。
「半導体ウェーハ」は,シリコンウェーハ上にフォトエッチング等を施した状態
のものであるのに対し,「半導体パッケージ」は,これを個別に切り分けて個々の
チップとなったものを,さらにチップマウントして配線を施し,樹脂封止する等の
機械的加工がされて形成された回路基盤である(乙4,5,弁論の全趣旨)。
よって,文言上,被控訴人方法が本件発明の技術的範囲に属さないことは明らか
である。
(2)均等侵害
ア控訴人は,被控訴人方法は,その切削対象物が「半導体パッケージ」であり,
「半導体ウェーハ」ではない点で,本件発明と相違するものの,いわゆる均等論に
より,本件発明の技術的範囲に属すると主張する。
本件発明に係る特許請求の範囲に記載された構成中に被控訴人方法と異なる部分
が存する場合であっても,①上記部分が本件発明の本質的部分ではなく,②上記部
分を被控訴人方法におけるものと置き換えても,本件発明の目的を達することがで
き,同一の作用効果を奏するものであって,③上記のように置き換えることに,本
件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」とい
う。)が,被控訴人方法の使用の時点において容易に想到することができたもので
あり,④被控訴人方法が,本件発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業
者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤被控訴人方法
が本件発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに
当たるなどの特段の事情もないときは,被控訴人方法は,特許請求の範囲に記載さ
れた構成と均等なものとして,本件発明の技術的範囲に属するものと解するのが相
当である(最高裁平成6年(オ)第1083号平成10年2月24日第三小法廷判
決・民集52巻1号113頁参照)。
イ均等侵害の要件⑤について
(ア)本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
a発明の属する技術分野として,「本発明は,半導体ウェーハ,フェライト等
の被加工物を精密に切削することができる精密切削装置及びこれを用いた切削方法
に関する。」(【0001】)との記載
b発明の実施の形態として,「…ダイシング装置10を用いて被加工物の切削
を行う際は,被加工物はチャックテーブル11に載置されて吸引保持される。例え
ば,半導体ウェーハをダイシングするときは…」(【0012】),「…ダイシン
グ装置10を用いて,被加工物,例えば図2に示した半導体ウェーハ14の切削を
行う際は…」(【0024】)との記載
c図面の簡単な説明において,図2について,「切削の対象となる被加工物の
一例である半導体ウェーハを示す平面図である。」との記載
なお,本件特許権の請求項1及び2の切削対象物は,いずれも「円形状の半導体
ウェーハ」である(甲2)。
(イ)本件発明の出願経緯は,以下のとおりである。
a本件発明は,当初,請求項の数を4とし,当初の請求項1には,特許請求の
範囲の記載を「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモータ
ーの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,/該一方のネ
ジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材
が係合し,該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二
のスピンドル支持部材が係合し,/該第一のスピンドル支持部材の下部には第一の
スピンドルが配設され,該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドル
が配設され,/該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され,該第二
のスピンドルには第二のブレードが装着され,/該第一のスピンドルと該第二のス
ピンドルとは,該第一のブレードと該第二のブレードとが対峙するように略一直線
上に配設されている精密切削装置。」(文中の「/」は,原文の改行部分を示す。
以下,これに倣う。)とする発明が記載されていた。当初の請求項1に係る上記発
明は,装置についての発明であり,切削対象を特に限定するものではなかった(乙
8の3)。
b請求項3に係る本件発明は,当初請求項4として出願されたものであるが,
当初から切削対象物については「半導体ウェーハ」と記載されていた(乙8の3)。
c同出願については,引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたと
して拒絶理由が通知された(乙8の10)。なお,引用発明1には,「シリコンウ
エーハーや圧電基板等の切削」方法が開示されている(乙9)。
控訴人は,「半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブル」の存在を不可欠
なものとして構成要件に取り込む等の補正をしたが(乙8の11・12),この補
正によっても拒絶理由を回避することができず,当初の請求項1に係る発明は,引
用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとして,本件特許出願について
拒絶査定がされた(乙8の13)。
d控訴人は,拒絶査定不服審判を請求し(乙8の14),その際,発明の名称
を「切削方法」とし,当初の請求項1を削除し,本件発明に係る当初の請求項4を
請求項3とする補正を行った(乙8の15)。
控訴人は,拒絶査定不服審判の請求の理由として,「切削の対象が正方形または
長方形の半導体ウェーハであること…が関連しあって,…独特の作用効果を奏する
ものである。仮に,切削対象が不定型なワークであるとすると,…」と記載し(乙
8の17),その後,本件発明に係る特許出願は,特許査定された(乙8の19)。
(ウ)上記(ア)認定の本件明細書の記載に照らせば,控訴人は,被加工物すなわ
ち切削対象物として半導体ウェーハの外,フェライト等が存在することを想起し,
半導体ウェーハ以外の切削対象物を包含した上位概念により特許請求の範囲を記載
することが容易にできたにもかかわらず,本件発明の特許請求の範囲には,あえて
これを「半導体ウェーハ」に限定する記載をしたものということができる。
また,上記(イ)認定の出願経緯に照らしても,控訴人は,圧電基板等の切削方法
が開示されている引用発明1(乙9)との関係で,本件発明の切削対象物が「正方
形または長方形の半導体ウェーハ」であることを相違点として強調し,しかも,切
削対象物を半導体ウェーハに限定しない当初の請求項1を削除するなどして,本件
発明においては意識的に「半導体ウェーハ」に限定したと評価することができる。
このように,当業者であれば,当初から「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を
包含した上位概念により特許請求の範囲を記載することが容易にできたにもかかわ
らず,控訴人は,切削対象物を「半導体ウェーハ」に限定しこれのみを対象として
特許出願し,切削対象物を半導体ウェーハに限定しない当初の請求項1を削除する
などしたものであるから,外形的には「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を意識
的に除外したものと解されてもやむを得ないものといわざるを得ない。
(エ)そうすると,被控訴人方法は,均等侵害の要件のうち,少なくとも,前記
⑤の要件を欠くことが明らかである。
ウ均等侵害の要件④について
また,仮に,被控訴人方法が「半導体ウェーハ」以外の本件発明の構成要件を充
足するとすると,後記2(1)で判示するのと同様に,被控訴人方法も,引用発明1
から容易に推考することができるというべきであるから,均等侵害の要件のうち,
前記④の要件も欠くことに帰する。
(3)小括
よって,被控訴人方法は,いずれにしても,本件発明の技術的範囲に属さないか
ら,特許法101条5号による間接侵害は成立しない。
2抗弁(特許法104条の3の抗弁の成否)について
当裁判所は,以上のとおり,控訴人の本件請求は,被控訴人製品の製造販売によ
る本件特許権の侵害が認められないので,理由がないと判断するが,原判決は,特
許権侵害の成否について判断することなく,本件特許が無効であるとして,控訴人
の請求を棄却していることから,このような本件事案に鑑み,以下,被控訴人の主
張する特許法104条の3の抗弁についても,控訴人の主張する再抗弁を含め,そ
の成否を判断することとする。
(1)本件発明の進歩性
ア本件発明
本件発明は,別紙特許請求の範囲目録(1)に記載のとおり,「一方のモーターの
駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動により回転する他方のネ
ジとが基台のY軸方向に配設され,/該一方のネジには,該一方のネジの回転によ
りY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し,該他方のネジには,該
他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し,
/該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され,該第二の
スピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され,/該第一のスピンド
ルの先端には第一のブレードが装着され,該第二のスピンドルには第二のブレード
が装着され,/該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレード
と該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,/半導
体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが,X軸方向に移動可能に配設されて
いる精密切削装置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方
法であって,/該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長
方形の被加工物の端部に位置付けられ,/該第二のブレードが該被加工物の中央部
に位置付けられ,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,
該チャックテーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部に形成さ
れたストリートをX軸方向に2本同時に切削し,/該第一のスピンドルと該第二の
スピンドルとの間隔を維持したまま,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドル
をもう片方の端部の方向に割り出し送りし,該チャックテーブルをX軸方向に移動
させてストリートを2本ずつ切削する切削方法。」である(甲2)。
イ引用発明1
(ア)引用例1(乙9)には,次の記載がある。
a「本考案はICに使用されるシリコンウエーハーや圧電基板等の切削や切断
加工に好適なダイシングソウに関するものである。」(1頁18∼20行)
b「本考案は上記の問題点に鑑みてなされたものであつて,圧電基板などの切
り出しや切削などの加工が短時間にできるようにして生産性を向上することを目的
とする。本考案はこのような目的を達成するため,制御信号によつて水平面内の任
意位置に移動したり任意角度回転するチヤツキングテーブル上に,圧電基板などの
ワークを載置固定し,制御信号によってワークに対し遠近あるいは水平面に移動し
たりするカツトホイールで加工するダイシングソウにおいて,一つのワークに対し
個々に制御,あるいは連動される二以上のカツトホイールを配設するか,一つのワ
ークを一または複数のカツトホイールが加工しているときのあきスペースに別のワ
ークが位置していて別の一または複数のカツトホイールが加工を行なうようにし
た。」(3頁2∼17行)
c「ダイシングソウ10は,圧電基板12が載置されるテーブル14を備える。
このテーブル14は図上上下方向(記号X方向)および,これと直交する左右方向
(記号Y方向)にカツトホイールが移動可能に設けられている。なお,このテーブ
ル14はさらに回転可能に設けられたものであつてもよい。また,テーブル14は,
ワーク12を粘着テープ16にはり付けそれを真空吸着する様に設けられている。
さらに,ダイシングソウ10には互いに対向して配置されたカツトホイール18a,
18bが設けられている。このカツトホイール18a,18bにはそれぞれスピン
ドル20a,20bの一端が固定されて,このカツトホイール18a,18bを支
持している。また,スピンドル20a,20bの他端は各カツトホイール18a,
18bに対して個々に設けられたモータ22a,22bの回転軸(図示省略)に連
結されている。そして,カツトホイール18a,18b,スピンドル20a,20
b,モータ22a,22bはテーブル14に対して上下方向(符号Z方向)さらに
水平方向(符号Y方向)に移動可能に設けられる。」(4頁1行∼5頁2行)
d「カツトホイール18a,18bをそれぞれの役目に応じた量だけ下降させ
る。」(5頁10∼11行)
e「カツトホイール18aとカツトホイール18bとに同時に同じ作業をやら
せてもよい。」(5頁18∼20行)
f「上記実施例においては,1つのワーク14に対して,2つのカツトホイー
ル18a,18bを互いに対向配置したものを示した」(6頁6∼8行)
g第2図によれば,実施例において切削対象であるワーク12が長方形である
ことが認められる。
(イ)以上の記載を本件発明に対応させて整理すると,引用例1には,「Y軸方
向に移動するモータ22aと,Y軸方向に移動するモータ22bと,該モータ22
aにはスピンドル20aが配設され,該モータ22bにはスピンドル20bが配設
され,該スピンドル20aの先端にはカツトホイール18aが装着され,該スピン
ドル20bにはカツトホイール18bが装着され,該スピンドル20aと該スピン
ドル20bとは,Z軸方向に個別に移動可能で,該カツトホイール18aと該カツ
トホイール18bとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,シリコン
ウェーハーを真空吸着するテーブル14が,X軸方向に移動可能に配設されている
ダイシングソウ10を用いて長方形のシリコンウェーハーを切削する切削方法であ
って,テーブル14をX軸方向に移動させ,該カツトホイール18aと該カツトホ
イール18bにより,同時に,ワークを2本切削する切削方法」の発明が開示され
ているものと認められる。
ウ本件発明と引用発明1との対比
(ア)本件発明と引用発明1とを対比すると,後者の「モータ22a」は前者の
「第一のスピンドル支持部材」に,後者の「モータ22b」は前者の「第二のスピ
ンドル支持部材」に,後者の「スピンドル20a」は前者の「第一のスピンドル」
に,後者の「スピンドル20b」は前者の「第二のスピンドル」に,後者の「カツ
トホイール18a」は前者の「第一のブレード」に,後者の「カツトホイール18
b」は前者の「第二のブレード」に,後者の「シリコンウェーハー」は前者の「半
導体ウェーハ」に,後者の「真空吸着」は前者の「吸引保持」に,後者の「テーブ
ル14」は前者の「チャックテーブル」に,後者の「ダイシングソウ10」は前者
の「精密切削装置」に,後者の「長方形」は前者の「正方形または長方形」に,そ
れぞれ相当するということができる。
(イ)そうすると,本件発明と引用発明1とは,以下の点で一致する。
Y軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材とY軸方向に移動する第二のスピ
ンドル支持部材と,該第一のスピンドル支持部材には第一のスピンドルが配設され,
該第二のスピンドル支持部材には第二のスピンドルが配設され,該第一のスピンド
ルの先端には第一のブレードが装着され,該第二のスピンドルには第二のブレード
が装着され,該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレードと
該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,半導体ウ
ェーハを吸引保持するチャックテーブルが,X軸方向に移動可能に配設されている
精密切削装置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法で
あって,チャックテーブルをX軸方向に移動させ,第一のブレードと第二のブレー
ドにより,同時に,ワークを2本切削する切削方法である点。
(ウ)また,本件発明と引用発明1とは,以下の点で相違する。
a相違点1
本件発明は,「該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または
長方形の被加工物の端部に位置付けられ,該第二のブレードが該被加工物の中央部
に位置付けられ,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,
該チャックテーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部に形成さ
れたストリートをX軸方向に2本同時に切削し,該第一のスピンドルと該第二のス
ピンドルとの間隔を維持したまま,該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを
もう片方の端部の方向に割り出し送りし,該チャックテーブルをX軸方向に移動さ
せてストリートを2本ずつ切削する」ものであり,第一,第二のスピンドル支持部
材の移動が,「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモータ
ーの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,該一方のネジ
には,該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材が
係合し,該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二の
スピンドル支持部材が係合」することによりなされるのに対し,引用発明1は,
「Z軸方向に移動可能」な「第一のブレードと第二のブレード」とにより,「2本
同時に切削」するが,その具体的機構・動作が開示がされていない点。
b相違点2
本件発明は,「該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設
され,該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され」るも
のであるのに対し,引用発明1には,そのような構成につき開示がされていない点。
エ引用発明2
(ア)引用例2(乙15の2)には,次の記載がある。
a「半導体ウエハを切断して個々の半導体ペレットに分割するときに使用され
るダイシングソウに関する。」(1頁11∼13行)
b「一枚の半導体ウエハを複数のダイシングブレードによって一度に一定間隔
で複数箇所を切断できるようになり,半導体ウエハの全体を切断して個々の半導体
ペレットに分割する時間が短縮される。」(4頁9∼12行)
c「図に示すダイシングソウは半導体ウエハ9の縦横に形成されたスクライブ
ライン9aに沿って切断して個々の半導体ペレットに分割するための装置であり,
第1のダイシングブレード1及び第2のダイシングブレード2を有し,各ダイシン
グブレード1,2は回転軸を共通にして平行で一定間隔を保って配置されている。
上記第1のダイシングブレード1は一対のハブ4,4によって切断刃3の先端部を
残した状態で挟持されたものであり,図示していない上下駆動機構によって上下動
可能なスピンドル5の内蔵モータ(図示せず)によって高速回転する第1のブレー
ド取付軸6に固定されている。さらに,上記第2のダイシイングブレード2は,上
記第1のダイシングブレード1と同様に一対のハブ4,4によって上記切断刃3と
全く同径の切断刃3’の先端部を残した状態で挟持されたものである。この第2の
ダイシングブレード2は,上記第1のダイシングブレード1が固定された第1のブ
レード取付軸6に取り付けられて一体で回転する第2のブレード取付軸7に固定さ
れおり,該ブレード取付軸7の外周面にはスペーサ用リング8が嵌着されて,この
第2のダイシングブレード2と第1のダイシングブレード1との間に所定の間隔H
が保たれている。
上記スペーサ用リング8の長さLは,例えば,第1及び第2のダイシイングブレ
ード1,2間の間隔Hが切断する半導体ウエハ9の直径Dの2分の1の長さとなる
ように各ハブ4や切断刃3,3’の厚み等を考慮して設定されている。」(4頁1
8行∼6頁6行)
d「半導体ウエハ9をスクランブライン9aに沿って切断する場合には,まず,
ダイシングブレード1の切断刃3の先端を半導体ウエハ9の最も周縁に近い位置の
スクライブライン9a上に当接して切断時の初期設定を行う。この場合,ダイシン
グブレード1,2の切断刃3,3’の外径及びその回転中心が同一であるため,ダ
イシングブレード2の切断刃3’先端は半導体ウエハ9の半径長さHだけ離れたほ
ぼ中心位置のスクライブライン9a上に当接された状態となりダイシングブレード
2の高さ位置及びX−Yテーブル11の座標等の初期設定が効率よく行える。
初期設定が終了すると,スピンドル5の内蔵モータを回転させてブレード取付軸
6,7を高速回転させてそれぞれに固定されている第1及び第2のダイシングブレ
ード1,2を高速回転させると共に,該スピンドル5を切断深さ分だけ外部駆動機
構によって下降させる。それに伴って,X−Yテーブル11をXまたはY方向に移
動させると半導体ウエハ9を半径の長さ間隔Hを隔てた2本のスクライブライン9
が同時に切断される。以後,X−Yテーブル11を移動させながら順次間隔Hを隔
てた2本のスクライブライン9aを同時に切断する。
そして,第3図に示すように,半導体ウエハ9の略中心のスクライブライン9a
に第1のダイシングブレード1の切断刃3が位置したとき,このスクライブライン
9aは既に第2のダイシングブレード2の切断刃3’によって切断されているので
切断作業は終了する。
従って,従来の切断時間の半分の時間で半導体ウエハ9の切断が終了して個々の
半導体ペレットに分割することができるようになり,切断時間がほぼ半減する。」
(6頁18行∼8頁11行)
(イ)上記の各記載によれば,引用例2には,半導体ウェーハのストリートを2
本同時に切削する具体的方法として,「第一のブレードがチャックテーブルに保持
された半導体ウエハの端部に位置付けられ,第二のブレードが該半導体ウエハの中
央部に位置付けられ,スピンドルを下降させると共に,チャックテーブルをX軸方
向に移動させ,該半導体ウエハの端部及び中央部に形成されたストリートをX軸方
向に2本同時に切削し,該第一のブレードと該第二のブレードとの間隔を維持した
まま,該チャックテーブルをY軸方向に割り出し送りし,該チャックテーブルをX
軸方向に移動させてストリートを2本ずつ切削する」方法の発明が開示されている
ものと認められる。
オ周知技術
(ア)本件特許出願前に頒布された刊行物には,以下の記載がある。
a特公平2−42604号(乙16の1)には,送り駆動モータ7の駆動によ
り回転する駆動ネジ10と,送り駆動モータ9の駆動により回転する駆動ネジ11
とが,機体2のZ軸方向に配設され,駆動ネジ10には,駆動ネジ10の回転によ
りZ軸方向に移動する主軸台3が係合し,駆動ネジ11には,駆動ネジ11の回転
によりZ軸方向に移動する主軸台5が係合し,主軸台3にはスピンドル3aが配設
され,主軸台5にはスピンドル5aが配設されていることが記載されている(第1
図,3頁右欄13∼20行,同32∼36行,4頁左欄6∼10行)。
b特開平7−186007号(乙16の2)には,Z軸サーボモータ14の駆
動により回転するZ軸ボールネジ13と,Z軸サーボモータ24の駆動により回転
するZ軸ボールネジ23とが,Z軸方向に配設され,Z軸ボールネジ13には,Z
軸ボールネジ13の回転によりZ1軸方向に移動する主軸台12が係合し,Z軸ボ
ールネジ23には,Z軸ボールネジ23の回転によりZ2軸方向に移動する主軸台
22が係合し,主軸台12及び主軸台22にはスピンドルが配設されていることが
記載されている(図1,【0011】)。
c特開昭59−224250号(乙16の3)には,モータ15aの駆動によ
り回転する送りねじ19aと,モータ15bの駆動により回転する送りねじ19b
とが,矢印13方向に配設され,送りねじ19aには,送りねじ19aの回転によ
り矢印13方向に移動する送りテーブル12aが係合し,送りねじ19bには,送
りねじ19bの回転により矢印13方向に移動する送りテーブル12bが係合し,
送りテーブル12aにはスピンドル20aが配設され,送りテーブル12bにはス
ピンドル20bが配設されていることが記載されている(第3図,2頁右上欄15
行∼左下欄17行)。
d特開昭61−65754号(乙16の4)には,DCモータ3Lの駆動によ
り回転するボールスクリュ等の送り軸を含む送り装置4Lと,DCモータ3Rの駆
動により回転するボールスクリュ等の送り軸を含む送り装置4Rとが,図中左右方
向に配設され,送り装置4Lには,送り装置4Lの送り軸の回転により図中左右方
向に移動するヘッド2Lが係合し,送り装置4Rには,送り装置4Rの送り軸の回
転により図中左右方向に移動するヘッド2Rが係合し,ヘッド2Lにはスピンドル
5Lが配設され,ヘッド2Rにはスピンドル5Rが配設されていることが記載され
ている(第1図,2頁右下欄9∼16行)。
e特開平4−122501号(乙16の5)には,サーボモータ4の駆動によ
り回転するボールねじと,サーボモータ5の駆動により回転するボールねじとが,
Z軸方向に配設され,一方のボールねじには,一方のボールねじの回転によりZ軸
方向に移動する第1主軸台2が係合し,他方のボールねじには,他方のボールねじ
の回転によりZ軸方向に移動する第2主軸台3が係合し,第1主軸台2には第1主
軸が配設され,第2主軸台3には第2主軸が配設されていることが記載されている
(第1図,3頁左上欄1∼12行)。
f特開平4−372302号(乙16の6)には,サーボモータ110の駆動
により回転するボールネジ120と,サーボモータ210の駆動により回転するボ
ールネジ220とが,Z軸方向に配設され,ボールネジ120には,ボールネジ1
20の回転により軸Z1方向に移動するテーブル20(第1の主軸台30)が係合
し,ボールネジ220には,ボールネジ220の回転により軸Z2方向に移動する
第2の主軸台50が係合し,第1の主軸台30には第1の主軸35が配設され,第
2の主軸台50には第2の主軸55が配設されていることが記載されている(図4,
【0008】,【0009】)。
(イ)上記刊行物の各記載によれば,Y軸方向に対向配置された2つのスピンド
ルを移動させるための機構として,「一方のモーターの駆動により回転する一方の
ネジと,他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配
設され,該一方のネジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一の
スピンドル支持部材が係合し,該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸
方向に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し」との構成は,周知であるとい
うことができる。
カ本件発明の容易想到性
以上を前提に,上記ウの各相違点につき,当業者が本件発明の構成を容易に想到
することができたか否かについて検討する。
(ア)相違点1について
a引用発明1の移動機構は明らかではないが,本件発明のように,Y軸方向に
対向配置された2つのスピンドルを移動させるための機構として,「一方のモータ
ーの駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動により回転する他方
のネジとが基台のY軸方向に配設され,該一方のネジには,該一方のネジの回転に
よりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し,該他方のネジには,
該他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二のスピンドル支持部材が係合
し」との構成を採用することは,上記オ認定のとおり,周知の構成である。
また,引用発明1の具体的な切削方法は明らかでないが,「第一のブレードがチ
ャックテーブルに保持された半導体ウエハの端部に位置付けられ,第二のブレード
が該半導体ウエハの中央部に位置付けられ,スピンドルを下降させると共に,チャ
ックテーブルをX軸方向に移動させ,該半導体ウエハの端部及び中央部に形成され
たストリートをX軸方向に2本同時に切削し,該第一のブレードと該第二のブレー
ドとの間隔を維持したまま,該チャックテーブルをY軸方向に割り出し送りし,該
チャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつ切削する」方法は,
上記エ認定のとおり,引用発明2に開示されている。
b上記イ,エ認定のとおり,引用発明1は「ICに使用されるシリコンウエー
ハーや圧電基板等の切削や切断加工に好適なダイシングソウに関するもの」であり,
引用発明2も「半導体ウエハを切断して個々の半導体ペレットに分割するときに使
用されるダイシングソウに関する」ものであって,両者の技術分野は同一である上,
引用発明1は「圧電基板などの切り出しや切削などの加工が短時間にできるように
して生産性を向上することを目的とする」ものであり,引用発明2も「半導体ウエ
ハの全体を切断して個々の半導体ペレットに分割する時間が短縮される」ことを目
的とするものであって,両者は切削時間の短縮という目的においても共通している。
よって,引用発明1に対し,具体的な切削方法として引用発明2の方法を採用する
ことは,当業者が容易に想到することができたというべきである。
なお,引用発明1が,第一のスピンドルの先端に第一のブレードが装着され,第
二のスピンドルの先端に第二のブレードが装着されるとの構成を備えていることを
勘案すれば,引用発明1に対し引用発明2を適用することにより,引用発明2の
「スピンドルを下降させる」ことは,本件発明の「該第一のスピンドル及び該第二
のスピンドルを下降させる」こととなり,引用発明2の「該第一のブレードと該第
二のブレードとの間隔を維持」することは,本件発明の「該第一のスピンドルと該
第二のスピンドルとの間隔を維持する」こととなることは,当然であるということ
ができる。
また,引用発明2の切削方法においては,引用発明1と異なり,チャックテーブ
ルをY軸方向に割り出し送りすることとなっているところ,上記のとおり,引用発
明1は,2つのスピンドルをY軸方向に移動させるものであるから,チャックテー
ブルをY軸方向に割り出し送りすることに代えて,第一のスピンドル及び第二のス
ピンドルをY軸方向に割り出し送りすることは,設計上の選択事項として,当業者
が適宜になし得たことである。
そして,本件発明の移動機構は,前記オ認定のとおり,従来周知の技術であるか
ら,結局,相違点1に係る構成は,当業者が容易に想到することができたものであ
る。
(イ)相違点2について
本件発明における「該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが
配設され,該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され」
る構成は,当業者が適宜に採用すべき設計事項である。
なお,本件発明では,2つのスピンドル支持部材の下部にそれぞれスピンドルを
配設することにより,スピンドルの自重による先端部の下方変形を防止する作用効
果を奏するとしても,上記作用効果は,構造上自明な効果にすぎない。
キ控訴人の主張について
(ア)控訴人は,引用発明1に引用発明2の切削方法を適用することの動機付け
がないと主張する。
しかしながら,上記カ判示のとおり,引用発明1と引用発明2は,いずれも技術
分野が同一であるだけでなく,両者は切削時間の短縮という目的においても共通し
ている。加えて,引用発明1と引用発明2は,2枚のブレードによって切削位置を
2本ずつ切削することができるといった作用の点でも共通しているということがで
きるから,引用発明2を知り得た当業者にとって,引用発明1に引用発明2を組み
合わせようと試みることは自然なことである。
そして,引用発明2のような円形の半導体ウェーハの端部と中心部とを同時に切
削する場合に切削ストロークに無駄が生じること,それに対し,引用発明1のよう
な矩形の被加工物であれば,円形のものと比較して各ストロークに無駄が生じない
ことは技術的に自明な事項であって,当業者が容易に理解できる事項である。
そうすると,切削時間の短縮という目的のために,矩形の被加工物をその対象と
した引用発明1に引用発明2を適用する動機付けが存在するということができ,控
訴人の主張は,理由がない。
(イ)また,控訴人は,引用発明1に引用発明2の切削方法を適用することに,
阻害要因があると主張する。
しかし,引用例1の実用新案登録請求の範囲には,「…ダイシングソウにおいて,
一つのワークに対し個々に制御,あるいは連動される二以上のカツトホイールを配
設するか,一つのワークを一または複数のカツトホイールが加工しているときのあ
きスペースに別のワークが位置していて別の一または複数のカットホイールが加工
を行つていることを特徴とするダイシングソウ。」と記載され,二つの運転形式が
選択的に記載されているものである。控訴人主張の運転は選択肢のうちの一つで,
それが不可能となることだけをもって阻害要因が存するとまではいえない。引用発
明1に,引用発明2を適用したものと同様の位置関係をとり得ることは,引用例1
(乙9)に第2及び3図に係る実施例として開示されている。
よって,引用発明1に引用発明2を適用することに阻害要因が存在するというこ
とはできないから,控訴人の主張は,理由がない。
ク小括
したがって,相違点1及び2に係る構成は,周知技術に基づいて当業者が容易に
想到し得たものであり,本件発明は,引用発明1,2及び周知技術に基づいて,当
業者が容易に発明することができたものといわざるを得ない。
(2)訂正による無効理由の解消の有無
ア控訴人は,訂正により本件発明の無効理由が解消した旨主張する。
しかしながら,特許法104条の3の抗弁に対する再抗弁としては,①特許権者
が,適法な訂正請求又は訂正審判請求を行い,②その訂正により無効理由が解消さ
れ,かつ,③被控訴人方法が訂正後の特許請求の範囲にも属するものであることが
必要である。
本件において,被控訴人方法は,前記のとおり,文言上も,均等論によっても,
本件発明の技術的範囲に属するものではないから,本件発明の特許請求の範囲を更
に減縮した,第1次訂正発明及び第2次訂正発明との関係でも,文言上も,均等論
によっても,第1次訂正発明及び第2次訂正発明の技術的範囲に属するものでなく,
上記③の要件を欠くものといわなければならない。
イなお,本件事案にかんがみ,上記②の要件についても判断を加えると,以下
のとおりである。
(ア)第1次訂正
a第1次訂正は,特許請求の範囲について,まず,「第一のスピンドル」,
「第二のスピンドル」について,ともに,「Y軸方向に移動する」を「Y軸方向に
個別に移動する」に,「端部の方向に割り出し送りし」を「端部の方向に個別に割
り出し送りし」に訂正するものである。
しかし,上記訂正は,「第一のスピンドル」及び「第二のスピンドル」の移動態
様を特定するものにすぎず,前記無効理由の解消に関連する訂正とはいえない。
b第1次訂正は,特許請求の範囲について,また,「精密切削装置」を,「半
導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と,該半導体ウェーハの表面に形成された
切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備え」,「半導体ウェーハ
が該アライメント手段の直下に位置付けされ,該アライメント手段によって該半導
体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され」るものとし,切
削されるストリートが「アライメント手段によって検出され」るものに訂正するも
のである。
しかし,上記訂正についても,「半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と,
該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメン
ト手段」を備え,「半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ,
該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきスト
リートが検出され」,そのストリートを1つのブレードにより切削するものは,検
出手段として周知である(乙19の9・10)。引用発明1に,引用発明2及び周
知の移動機構を適用した本件発明において,切削位置を正確に定めることは当然の
課題であるところ,これに上記のような周知の検出手段により,1つのブレードが
切削すべきストリートに適切に位置決めされるものであるから,上記訂正は,周知
の検出手段を特定したものにすぎず,これにより,前記無効理由が解消するもので
はない。
cよって,第1次訂正によって,無効理由が解消するものではない。なお,当
裁判所は,本日,第1次訂正を認めた上その特許を無効とする旨の審決(乙20)
に関し,控訴人がその取消しを求める訴訟(平成21年(行ケ)第10046号)
について,その請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
(イ)第2次訂正
a第2次訂正は,特許請求の範囲について,第1に,スピンドルの先端にブレ
ードがフランジによって固定され,ブレードカバーによって覆われて切削手段が構
成されるという切削手段(スピンドル及びブレード)の構造を限定するものである。
しかし,上記訂正が,仮に特許請求の範囲の減縮に当たるとしても,安全の観点
からブレードをカバーで覆うことは一般的に行われている事項にすぎないし,スピ
ンドルの配設位置も,当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。
b第2次訂正は,特許請求の範囲について,第2に,「第一,第二のブレード
を最も接近させた場合の両ブレードの間隔より,切削しようとする2本のストリー
ト間の距離の方が狭くなる」ような半導体ウェーハを切削するという切削対象を限
定するものである。
しかし,上記切削対象の限定に係る半導体ウェーハもなお通常の半導体ウェーハ
に変わりはないものと解されるし,引用発明1及び2から想到できる発明のブレー
ド配置や移動の仕方からして,請求項1,2に係る発明のような支障が生じ得ない
ことは技術的に明らかである。よって,そのようなストリート間隔の狭い半導体ウ
ェーハを切削対象とすることは,格別の困難を伴わない適宜選択できる事項に含ま
れるものと解される。
ウしたがって,仮に,第1次訂正及び第2次訂正がされたとしても,本件特許
が無効にされるべきことに変わりはないといわなければならない。
(3)小括
以上の次第で,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められ
るから,控訴人は,特許法104条の3により,被控訴人に対し,本件特許権を行
使することができない。
3結論
以上の次第であるから,控訴人の本訴請求に理由がないとした原判決は結論にお
いて正当であって,本件控訴は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官高部眞規子
裁判官杜下弘記
(別紙)
物件目録
1図面の説明
図1シンギュレーションシステムの全体を示す略示的な斜視図
図2同システムにおけるダイシング装置の要部を示した斜視図
図3同ダイシング装置の第一,第二の切削手段の要部を略示的に示した説明図
2符号の説明
Aダイシング装置
B検査装置
C整列・包装装置
1一方のモーター
2一方のネジ
3他方のモーター
4他方のネジ
5基台
6第一のスピンドル支持部材
7第二のスピンドル支持部材
8第一のスピンドル
9第二のスピンドル
10第一のブレード
11第二のブレード
12チャックテーブル
12a治具
12b溝
13半導体パッケージ
13aブロック部(半導体パッケージの一部)
14撮像手段
15アライメント手段
16フランジ
17ブレードカバー
18第一の切削手段
19フランジ
20ブレードカバー
21第二の切削手段
3構造の説明
図1において,本件のシンギュレーションシステムは,一方の側に半導体パッケ
ージを個々のチップにカットするダイシング装置Aと,カットされたチップの良否
を検査して振り分ける検査装置Bと,振り分けられたチップを揃えて整列させ所要
量ずつ計測して包装する整列・包装装置Cとから構成されている。
そのシンギュレーションシステムの内,ダイシング装置Aは,半導体パッケージ
をチップ状に切削するものであり,図2に示したように,一方のモーター1により
回転する一方のネジ2と,他方のモーター3により回転する他方のネジ4とが基台
5のY軸方向に,その先端が上下に所要の間隔をもって重なる状態で平行に配設さ
れている。
一方のネジ2には,該一方のネジ2の回転によりY軸方向に移動する第一のスピ
ンドル支持部材6が係合し,他方のネジ4には,該他方のネジ4の回転によりY軸
方向に移動する第二のスピンドル支持部材7が係合している。
第一のスピンドル支持部材6の下部には第一のスピンドル8が配設され,第二の
スピンドル支持部材7の下部には第二のスピンドル9が配設されている。
第一のスピンドル8の先端には第一のブレード10が装着され,第二のスピンド
ル9の端部には第二のブレード11が装着されている。
第一のスピンドル8と第二のスピンドル9とは,第一のブレード10と第二のブ
レード11とが対峙するようにY軸方向に略一直線上に配設されている。
また,半導体パッケージの表面を撮像する撮像手段14と,半導体パッケージの
表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段15とを備え
ている。
半導体パッケージ13を吸引保持する治具12aを載置したチャックテーブル1
2が,X軸方向に移動可能に配設されているダイシング装置Aを用いて半導体パッ
ケージ13からその一部である正方形または長方形のブロック部13aを切り出し,
チップ状に切削するものである。なお,治具12aは,切削すべきブロック部13
aの切削線(ストリート)に対応した溝12bが設けられている。
図3に示すように,第一のブレード10がフランジ16によって固定されブレー
ドカバー17によって覆われて第一の切削手段18が構成され,第二のブレード1
1がフランジ19によって固定されブレードカバー20によって覆われて第二の切
削手段21が構成されている。
図1
図2
図3
(別紙)
被控訴人方法目録(1)
被控訴人の製造・販売に係るシンギュレーションシステム装置(商品名「MCS
−8000」)を使用した1ブロックタイプの半導体パッケージの切削方法。
1図面の説明
図4半導体パッケージの切削しようとする2本のストリート間の距離と第一,
第二のブレードの間隔との関係を示す説明図
図5物件目録に記載されたダイシング装置の要部における切削方法を略示的に
示した説明図
2符号の説明
8第一のスピンドル
9第二のスピンドル
10第一のブレード
11第二のブレード
12チャックテーブル
12a治具
12b溝
13半導体パッケージ
13aブロック部(半導体パッケージの一部)
14撮像手段
15アライメント手段
16フランジ
17ブレードカバー
18第一の切削手段
19フランジ
20ブレードカバー
21第二の切削手段
3切削方法の説明
①前処理工程
シンギュレーションシステムに組み込まれているダイシング装置Aにおいて,図
2のチャックテーブル12を構成する治具12aに保持されている半導体パッケー
ジ13におけるブロック部13a周縁を,第一及び第二のブレード10,11で切
削し,その周縁部を除去して,正方形又は長方形のブロック部13aを切り出す。
なお,ブロック部13aに反りがある場合には,その反りを緩和するために,
複数のストリートを適宜切削する。これらの切削においては,一方のブレードで1
本のストリートを切削することもある。
前処理工程で切削されるストリートは,その切削前に半導体パッケージ13がア
ライメント手段15の直下に位置付けされ撮像手段14によってその表面が撮像さ
れた上でアライメント手段15によって検出される。
②主たる切削工程
図4に示した半導体パッケージ13について,例えばブロック部13aのストリ
ートS1,S2を第一のブレード10及び第二のブレード11によって同時に切削
しようとすると,第一のブレード10及び第二のブレード11の先端にフランジ1
6,19が装着され第一のブレード10及び第二のブレード11がブレードカバー
17,20によって覆われているために,図4のように第一のブレード10と第二
のブレード11とを最も接近させた場合においても第一のブレード10と第二のブ
レード11との間隔D1より切削しようとする2本のストリートS1,S2間の距
離D2の方が狭くなる。
このような半導体パッケージ13のブロック部13aのストリートを切削する際
には,図5の(A),(B),(C)に示したように,第一のブレード10がチャックテー
ブル12を構成する治具12aに保持されている正方形または長方形のブロック部
13aの端部に位置付けされ,第二のブレード11がブロック部13aの中央部に
位置付けられ,
第一のスピンドル8及び第二のスピンドル9を下降させるとともに,チャックテ
ーブル12をX軸方向に移動させ,ブロック部13aの端部及び中央部に形成され
たストリートをX軸方向に2本同時に切削し,
第一のスピンドル8と第二のスピンドル9との間隔を維持したまま,第一のスピ
ンドル8及び第二のスピンドル9をもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし,
チャックテーブル12をX軸方向に移動させてストリートを2本ずつ切削する。
主たる切削工程で切削されるストリートは,その切削前に半導体パッケージがア
ライメント手段15の直下に位置付けされ撮像手段14によってその表面が撮像さ
れた上でアライメント手段15によって検出される。
③補完工程
上記主たる切削工程で,基本的には2本のストリートを第一及び第二のブレード
10,11で同時に切削するものの,切削すべきストリートが奇数である場合には,
最後に一方のブレードで,残った1本のストリートを切削して,主たる切削工程を
補完する。
補完工程で切削されるストリートは,その切削前に半導体パッケージがアライメ
ント手段15の直下に位置付けされ撮像手段14によってその表面が撮像された上
でアライメント手段15によって検出される。
図4
図5
(別紙)
被控訴人方法目録(2)
原判決添付の別紙「被告方法目録(2)」を引用する。
(別紙)
特許請求の範囲目録(1)
「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動によ
り回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,
該一方のネジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一のスピン
ドル支持部材が係合し,該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸方向に
移動する第二のスピンドル支持部材が係合し,
該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され,該第二の
スピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され,
該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され,該第二のスピンドル
には第二のブレードが装着され,
該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレードと該第二のブ
レードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,
半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが,X軸方向に移動可能に配設
されている精密切削装置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する
切削方法であって,
該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工
物の端部に位置付けられ,該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ,
該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,該チャックテ
ーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部に形成されたストリー
トをX軸方向に2本同時に切削し,
該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,該第一のス
ピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に割り出し送りし,該チ
ャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつ切削する切削方
法。」
(別紙)
特許請求の範囲目録(2)
「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動によ
り回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,
該一方のネジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一の
スピンドル支持部材が係合し,該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸
方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し,
該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され,該第二の
スピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され,
該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され,該第二のスピンドル
には第二のブレードが装着され,
該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレードと該第二のブ
レードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,
半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが,X軸方向に移動可能に配設
され,半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と,該半導体ウェーハの表面に形
成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備えた精密切削装
置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって,
半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ,該アライメント手
段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され,
該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工
物の端部に位置付けられ,該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ,
該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,該チャックテ
ーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメ
ント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し,
該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,該第一のス
ピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし,
該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出され
たストリートを2本ずつ切削する切削方法。」
(別紙)
特許請求の範囲目録(3)
「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと,他方のモーターの駆動によ
り回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され,
該一方のネジには,該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一の
スピンドル支持部材が係合し,該他方のネジには,該他方のネジの回転によりY軸
方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し,
該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され,該第二の
スピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され,
該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され,該第一のブレードが
フランジによって固定されブレードカバーによって覆われて第一の切削手段が構成
され,該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され,該第二のブレードがフ
ランジによって固定され該第二のブレードがブレードカバーによって覆われて第二
の切削手段が構成され,
該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは,該第一のブレードと該第二のブ
レードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され,
半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが,X軸方向に移動可能に配設
され,半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と,該半導体ウェーハの表面に形
成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備えた精密切削装
置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって,
該第一のブレード及び該第二のブレードの先端にフランジが装着され該第一のブ
レード及び該第二のブレードがブレードカバーによって覆われているために,該第
一のブレードと該第二のブレードとを最も接近させた場合においても該第一のブレ
ードと該第二のブレードとの間隔より切削しようとする2本のストリート間の距離
の方が狭くなる半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ,該ア
ライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリー
トが検出され,
該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工
物の端部に位置付けられ,該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ,
該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に,該チャックテ
ーブルをX軸方向に移動させ,該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメ
ント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し,
該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま,該第一のス
ピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし,
該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出され
たストリートを2本ずつ切削する切削方法。」

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ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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