弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人川本赳夫の上告理由第三点について。
 論旨は、原判決の確認判決の効力の及ぶ人的範囲が不明確であるという。
 思うに、民訴法七一条の規定に基づく参加人が原告および被告の双方を相手方と
して参加の申出をして確認の請求をした場合において、相手方である原告または被
告の一方が事実上参加人の主張・請求を全部認めて争わないときでも、他の一方が
参加人の主張・請求を争つているかぎり、民訴法六二条の準用により、相手方(原
告および被告)の双方において、参加人の主張・請求を争つていることになり、参
加人は、右確認の請求について、相手方双方に対し合一に確定する関係上(実際上
参加人の請求を争つていない者に対しても)、当然確認の利益を有するものと解す
べきである(第三小法廷判決昭和二六年(オ)第一五号、同二七年三月四日民集六
巻三号二八九頁は本件に適切でない)。
 これを本件について検討するに、第一審判決および原判決ならびに一件記録によ
ると、本件訴訟の経過は、次のとおりであることが認められる。すなわち、第一審
原告(上告人。以下単に原告という)Aは、本件各不動産の契約義務の履行および
所有権を原因として第一審被告(被上告人。以下単に被告という)Bに対し、本件
各不動産の所有権移転登記ならびにその明渡および賃料相当損害金の請求訴訟を提
起し、被告Bは、右主張事実を争い、原告Aの請求を棄却する旨の判決を求めた。
そして、第一審参加人(被上告人。以下単に参加人という)Cは原告Aおよび被告
Bの両名を相手方として民訴法七一条の規定による参加の申出をし、本件各不動産
についての所有権の確認を請求したところ、原告Aは、参加人Cの主張事実を全面
的に争つたが、被告Bは参加人Cの主張事実についてとくに答弁をしなかつた。
 以上の訴訟関係のもとにおいて、原判決は、参加人Cと被告Bとの間では、本件
各不動産が参加人Cの所有であることが当事者間に争いのないことは弁論の全趣旨
に徴し明らかであるとして、参加人Cから被告Bに対する確認の請求は確認の利益
を欠くものとして却下したうえ、原告Aと被告Bおよび参加人Cと原告Aとの間の
各請求について、実体上の判断を下して判決をしている。
 以上認定した訴訟の経緯に徴すれば、参加人Cは原告Aおよび被告Bの双方を相
手方として民訴法七一条による参加の申出をして本件各不動産の所有権の確認を請
求しているのであるから、被告Bにおいて事実上参加人Cの主張・請求を認めて争
わないことが原判決の説示するとおりであつたとしても、原告Aにおいて右主張・
請求を争つている以上、民訴法六二条の準用により、被告Bにおいてもこれを争つ
ていることになり、したがつて、参加人Cの前記所有権の確認の請求は、原告Aに
対する関係のみならず、被告Bに対する関係においても、確認の利益の存すること
は、前段で説示したところから明らかなところといわねばならない。
 しかるに、原判決は、これと異なり、参加人Cの被告Bに対する所有権確認の請
求について、確認の利益がないとしてこれを却下したのは、法令の解釈をあやまつ
た違法があるというべきである。
 そして、原告および被告の双方を相手方として民訴法七一条による参加の申出が
された場合においては、同法六二条の準用により、関係当事者間において全部合一
的に確定する必要があるから、前記違法は、原判決の結論に影響を及ぼすことは明
らかであり、この意味において、論旨は理由があるといわねばならない。
 よつて、その余の論旨に対する判断を省略して、民訴法四〇七条一項により原判
決を破棄して本件を原審に差し戻すこととし、裁判官全員の一致で、主文のとおり
判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
 裁判官山田作之助は外国出張中につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    奥   野   健   一

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