弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人佐藤義弥、同久保田昭夫、同福島等、同根本孔衛の上告趣意第一点の一は、
憲法判断を遺脱したというのである。しかし、所論の点に関する原判示は、簡に失
するきらいがあるが、その趣旨とするところは、憲法二八条の保障する団結権、団
体行動権の行使も正当なものでなければならないとの前提に立つて、被告人らの所
為は正当なものとはいえないから、第一番判決は憲法二八条に違反しないというに
あるものと認められる。したがつて、所論のような違法はなく、上告適法の理由に
当らない。
 同第一点の二について。
 所論は、原判決が暴力行為等処罰ニ関スル法律を適用したのが違憲(二八条違反)
であるというのである。ところで、原判決の認定した事実によると、被告人らは、
Aらと団体交渉をした際、同人らが団体交渉を打ち切ろうとしたことに憤激し、約
二〇名の組合員らとともに、口ぐちにその継続を求めて、Aのみぞおちのあたりを
手拳で突いたり、Bの腕をねじあげたり、同人らの体に強く体当りをしたりなどし
て、多衆の威力を示して暴行を加えたというのであつて、このような所為は、後記
第一点の三について述べるように、団体行動の正当な限界を超えた違法なものとい
わなければならない。そして、このような違法な所為に対して暴力行為等処罰ニ関
スル法律を適用しても憲法二八条に違反しないことは、当裁判所の判例(昭和二九
年四月七日大法廷判決―刑集八巻四号四一五頁)の明示するところである。もとよ
り、右法律は、本件のような違法行為のみを対象にしたものでないことはいうまで
もないが、このような行為にその適用を排除すべき理由は見出しえない。所論は理
由がない。
 同第一点の三について。
 所論は、原判決が被告人らの所為を組合活動としては行き過ぎであるとしたのが
違憲(二八条違反)であるというのである。しかし、憲法二八条は、勤労者の団体
交渉その他の団体行動で、正当な限界をこえないものを保障しているのであり、正
当な団体行動は刑事制裁の対象とならないが、暴力が行使されたときは刑事免責を
受け得ないものであることは、当裁判所の判例(昭和四一年一〇月二六日大法廷判
決―裁判所時報四六〇号所載)とするところである。しかるところ、被告人らは、
前記のとおり、多衆の威力を示してAらに暴行を加えたというのであるから、同条
の保障する団体行動とみることはとうていできず、これを違法なものとした原判断
は当然であり、所論は理由がない。
 所論は、公共企業体等労働関係法一七条が違憲(二八条違反)であるともいうが、
原審で判断のなかつた事項であり(その違憲でないことは、前記昭和四一年一〇月
二六日大法廷判決の判示するとおりである。)、その余は、事実誤認、単なる法令
違反の主張であつて(なお、所論は、公共企業体等労働関係法によつて争議行為が
禁止されている以上、労働者の団体交渉権は、通常の労働者のそれに比してより強
く保障されなければならないのであつて、使用者側が団体交渉に応じないような場
合には、団体交渉を続行するための適切な措置が大幅に認められるべきであるとし、
本件における被告人らのこの程度の所為をもつてしては、いまだ暴力の行使に当ら
ないというのであるが、同法下の労使関係における団体交渉が、その他の労使関係
における団体交渉と異なるものと認むべき根拠は存在しないのみならず、被告人ら
の所為をもつて暴力の行使でないとするのは独自の見解であつて採るを得ない。)、
いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第二点について。
 所論は、原判決の判断が昭和二四年五月一八日大法廷判決(刑集三巻六号七七二
頁)に違反するというのである。しかし、原判決は、前記のとおり、被告人らは多
衆の威力を示してAらに暴力を加えたものであり、その所為は、当局側の態度に批
判されるべきものがあるとしても、明らかに行き過ぎた暴力の行使であり、社会的
に相当な行為で違法性がないものとは認められないと判示しているのであつて、な
んら右判例に反する判断をしているものではない。所論は理由がない。
 同第三点は、判例違反をいうが、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切
でなく、その余は、単なる法令違反の主張であつて(なお、原審が、当時における
当局側の態度や諸般の事情を考慮しているものであることは、後記第六点について
述べるとおりである。)、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第四、五点は、判例違反をいうが、所論引用の昭和三九年三月一〇日第三小法
廷判決は、論旨はいずれも上告適法の理由に当らないとして上告を棄却したもので
あり、昭和四〇年五月一七日大阪高裁判決は、原判決には事実誤認がないとして控
訴を棄却したものであつて、いずれも所論の点についてはなんらの判断をも示して
いないものであるから、所論は前提を欠き、いずれも上告適法の理由に当らない。
 同第六点は、違憲(二八条、三七条違反)をいうが、実質は、単なる法令違反の
主張てあつて(なお、原判決には、措辞に妥当を欠くところもあるが、当時の当局
側の態度や諸般の状況を考慮してみても、被告人らの所為が構成要件に該当しない
ものであるとか、社会的に相当な行為で違法性がないものであるとは認められない
と判示しており、これらの点について判断をしていることが明らかであるから、所
論のような法令違反があるものとは認められない。)、上告適法の理由に当らない。
 同第七点は、条約およびILO実情調査調停委員会の勧告違反を前提として違憲
(九八条二項違反)をいうのであるが、原審において主張判断のなかつた事項であ
り、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、いずれも上告適法の理
由に当らない。
 同第八、九点のうち、判例違反をいう点は、所論引用の各判例が、証拠の取捨選
択の基準ないしその理由の判示の要否に関するものであるところ、原判決は、所論
の点についてはなんらの判示もしていないものであるから、所論は前提を欠き、そ
の余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて(証拠の取捨選択は、事実審裁
判所の自由裁量にまかせられているところであり、その取捨選択の理由をいちいち
判示する必要はないものと解するのが相当である―昭和三五年一二月一六日第二小
法廷判決、刑集一四巻一四号一九四七頁参照。なお、原審における証拠の取捨選択
が、所論のように経験則に違背しているものとは認められない。)、いずれも上告
適法の理由に当らない。
 同第一〇点は、判例違反をいうが、その判例を具体的に示していないばかりでな
く、実質は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、上告適法の理由に当らな
い。
 被告人六名の上告趣意のうち、違憲(二八条違反)をいう点は、原判決の認定に
沿わない事実を前提とするものであり、その余は、単なる法令違反、事実誤認、営
林署当局および検察官の措置に対する違憲・違法の主張であつて、いずれも上告適
法の理由に当らない。
 なお、弁護人佐藤義弥、同久保田昭夫、同福島等、同根本孔衛は、昭和四一年二
月二七日に上告趣意補充書を提出したが、上告趣意書差出期間経過後のものである
から、判断を加えない。
 また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり
判決する。
 裁判官草鹿浅之介は、病気のため評議に関与しない。
 検察官 高橋正八公判出席
  昭和四一年一二月二三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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