弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人吉本英雄上告趣意第一、二点について。
 憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とはその組織構成等において
偏頗や不公平のおそれのない裁判所の裁判という意味であつて、個々の裁判の具体
的内容の公平を指称するものではない。この見解は既に当裁判所大法廷判決が屡々
判示したところである。さればこれと反対の見地に立つて憲法三七条の違反を主張
する所論の採用し得ないことは明らかである。のみならず論旨は要するに原審が判
示第一及び第三の事実を認定するにつき審理を尽さず、判示事実を認むるに足りな
い証拠を羅列して事実認定をなしたのは結局証拠の説示をしないのと同一であり刑
訴三三五条に違反するものであるといい、また事実点に関し多くの疑問あるに拘わ
らず第一審審理の結果をそのまゝ採用して判決をなしたのは、明らかに裁判の公平
を欠くものであるといい、以て憲法三一条三七条の違反あることを主張するものに
外ならない。しかし、原判決挙示の証拠によれば原審の事実認定はこれを肯認する
に難くないのであり、原判決には所論のような訴訟法違反も存在しない。所論は原
審の裁量権に属する証拠の限度の裁定若くは証拠の取捨選択を非難するに帰着する。
されば憲法違反の所論はすべて、その実質は理由なき単なる訴訟法違反を主張する
に過ぎないものであり、明らかに刑訴四〇五条所定の上告適法の理由とならない。
 よつて刑訴四一四条、三八六条一項に従い主文のとおり決定する。
 この決定は裁判官全員の一致した意見である。
  昭和二五年一一月二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    澤   田   竹 治 郎
            裁判官    齋   藤   悠   輔

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