弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人代表者委員長Dの上告理由第二点及び第三点について。
 論旨は、本件選挙のa選挙区第二投票所及び第一投票所の設備が不備であつて公
職選挙法施行令三二条に違背し、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある旨を主張し、
この点に関する原判示を非難するのである。
 所論第二投票所の午後二時頃までの設備について原判決の確定するところによれ
ば、右投票所は県立E高等学校F分校の東端の一教室に設けられ、右教室の中央に
生徒用腰掛をほぼ南北に一列に並べて教室を東西に仕切り、其の仕切つた両側に、
いずれも南側硝子窓に向けてこれに接して三個宛の生徒用机を配列し且これに腰掛
をそえ、東側の三個をb町長選挙の、西側の三個を町議会議員選挙の、各投票記載
所として使用し、その机相互の間隔は約六〇糎程であつて、前記南北一列の腰掛の
ほかには、記載所を相互に遮断する障壁はなく、また南側窓の硝子障子は閉められ
ていたけれどもカーテンは開かれたままになつており、窓外から投票の記載内容を
のぞき見ることは窓と机の高さの関係から標準身長の者には特別の姿勢をとらない
限り容易ではなかつたけれども、室内においては、投票者が他の投票者の記載をの
ぞき見ようとすれば、他の投票者が隠蔽手段をとらない限り容易にこれをなし得る
状況にあつたというのである。かかる設備が、前記施行令三二条に違背するのは勿
論であつて、原判決も、同条の要求する相当の設備をなしたものということはでき
ない旨を判示しているのである。
 しかしながら、右の選挙の規定違反が結果に異動を及ぼす虞があるかないかは、
その場合の投票所の諸般の状況をもあわせ勘案して判断すべく、上述のような規定
違反があつても、選挙人がその自由な意思に従つて投票し選挙の自由公正が害され
ることもなかつたと認められる状況にあつたとすれば、選挙の結果に異動を及ぼす
虞はなかつたものというべく、この点について原判決の認定するところによれば、
右第二投票所における投票人数は五一五人に過ぎず投票状況は極めて閑散で、朝方
一時混雑した際も受付係員が入場を制限、調節したため場内の混雑も起らず、投票
記載中の他人の後を徘徊したり或は他人の投票記載をのぞき込んだりした者は一人
も見当らなかつたし、南側の窓の外からのぞき込んだ者もなく、投票は極めて平穏
に行われたというのである。かかる状況においては、前述選挙の規定違反も選挙の
結果に異動を及ぼす虞がなかつたものというべく、たまたま、選挙人のうちに一、
二、他人の投票記載が見えたというものがあつたからといつて、右の結論に影響が
あるものではない。論旨援用の判決は、本件と全く場合を異にし本件の先例になる
ものではない。原判決は正当であつて論旨は理由がない。
 次に、所論第一投票所について、原判決は、代理投票記載所が管理者の席から三
米の距離にあり何等の障壁も設けられなかつたため、投票所の代理投票補助者に対
する候補者氏名の告知が管理者並びに立会人に一、二聞知された事実を認定し、他
の投票者にその声が聞えたことも想像に難くない旨を判示しているのであるが、そ
れだけで、選挙人の自由な意思が表明されなかつたとか、選挙の自由公正が害され
たものということもできず、よつて選挙の結果に異動を及ぼすにあるといえないこ
とは原判示のとおりである。論旨は採用できない。
 同第四点について。
 論旨は、原判決は憲法一五条に反する旨を主張するのである。
 公職選挙法施行令三二条が秘密投票の趣旨にそうための規定であることは明白で
あるが、同条違反が直ちに投票の秘密を害するものではなく、前述のように、原判
決の認定するところによれば、本件の場合、右の規定違反は認められるけれども、
まだ本件選挙の自由公正が害されたとはいえないというのであるから、結局、投票
の秘密が広くそこなわれたような事実はないと認めた趣旨であつて、所論違憲の主
張はその前提において理由がない。
 論旨は、原判決のように解するならば、投票の秘密を保障した憲法の規定は空文
に帰する旨を主張するのであるが、原判決も右施行令三二条違反が常に選挙の無効
原因にならない旨を判示しているのではなく、本件の場合には、規定違反が選挙の
結果に異動を及ぼす虞がない旨を判示したのに止まるから、論旨は、結局、原判示
にそわない主張であつて採用できない。
 同第五点及び第六点について。
 論旨は、第二、第一投票所の設備の不備によつて選挙の自由公正が害されたこと
を前提としているのであつて理由がない。また、所論違憲、判例違反の主張の理由
がないことは前述のとおりである。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛