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主文
1原判決を次のとおり変更する。
2控訴人ファイターズは,被控訴人に対し,3357万5221円及びこれに
対する平成24年7月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
3被控訴人の控訴人ファイターズに対するその余の請求並びに控訴人札幌ドー
ム及び控訴人札幌市に対する各請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,第1,2審を通じて,控訴人ファイターズと被控訴人との間に
おいては,これを4分し,その1を被控訴人の,その余を控訴人ファイター
ズの各負担とし,控訴人札幌ドーム及び控訴人札幌市と被控訴人との間にお
いては,全部被控訴人の負担とする。
5この判決の第2項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。
2被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,被控訴人が,札幌市豊平区所在の全天候型多目的施設である「札幌
ドーム」(以下「本件ドーム」という。)において平成22年8月21日に
行われたプロ野球の試合(以下「本件試合」という。)を1塁側内野自由席
18番通路10列30番の座席(以下「本件座席」という。)で観戦中に,
打者の打ったファウルボールが被控訴人の顔面に直撃して右眼球破裂等の傷
害を負った事故(以下「本件事故」という。)について,本件ドームには通
常有すべき安全性を備えていない瑕疵があった,控訴人らは観客をファウル
ボールから保護するための安全設備の設置及び安全対策を怠ったなどと主張
して,①本件試合を主催し,本件ドームを占有していた控訴人ファイターズ
に対しては,(a)工作物責任(民法717条1項),(b)不法行為(民法709
条)又は(c)債務不履行(野球観戦契約上の安全配慮義務違反)に基づき,②
指定管理者として本件ドームを占有していた控訴人札幌ドームに対しては,
(d)工作物責任(民法717条1項)又は(e)不法行為(民法709条)に基づき,
③本件ドームを所有していた控訴人札幌市(以下「控訴人市」という。)に
対しては,(f)営造物責任(国家賠償法2条1項)又は(g)不法行為(民法709
条)に基づき,損害賠償金4659万5884円及びこれに対する平成22年
8月21日(本件事故の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
原審は,本件ドームにおける安全設備等の内容は本件座席付近で観戦してい
る観客に対するものとしては通常有すべき安全性を欠いており,本件ドーム
には工作物責任ないし営造物責任上の瑕疵があったと認められるなどと判断
して,被控訴人の控訴人らに対する上記(a),(d)及び(f)の各請求を4195
万6527円及びこれに対する上記遅延損害金の連帯支払を求める限度で認
容し,被控訴人のその余の請求をいずれも棄却した。
これに対し,控訴人らが各敗訴部分を不服として控訴した。
2前提事実,主たる争点及び争点に関する当事者の主張等は,以下のとおり補
正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の2及び3,
並びに「第3争点に関する当事者の主張等」に記載のとおりであるから,こ
れを引用する。
(1)原判決書5頁8行目の「観戦チケットを購入し」の次に「て,控訴人フ
ァイターズとの間で本件試合に係る野球観戦契約(以下「本件観戦契約」と
いう。)を締結し」を加える。
(2)原判決書5頁16行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「本件試合以前に,多数の観客との間で画一的に適用されるものとして控訴
人ファイターズを含むプロ野球12球団らが策定した試合観戦契約約款(乙
イ2。以下「本件契約約款」という。)には,免責条項として,以下のよう
な定めが存在した(第13条。以下「本件免責条項」という。)。
1項主催者及び球場管理者は,観客が被った以下の損害の賠償について責
任を負わないものとする。但し,主催者若しくは主催者の職員等又は
球場管理者の責めに帰すべき事由による場合はこの限りでない。
ホームラン・ボール,ファール・ボール,その他試合,ファンサー
ビス行為又は練習行為に起因する損害
暴動,騒乱等の他の観客の行為に起因する損害
球場施設に起因する損害
本約款その他主催者の定める規則又は主催者の職員等の指示に反し
た観客の行為に起因する損害
第6条の入場拒否又は第10条の退場措置に起因する損害
前各号に定めるほか,試合観戦に際して,球場及びその管理区域内
で発生した損害
2項前項但書の場合において,主催者又は球場管理者が負担する損害賠償
の範囲は,治療費等の直接損害に限定されるものとし,逸失利益その
他の間接損害及び特別損害は含まれないものとする。但し,主催者若
しくは主催者の職員等又は球場管理者の故意行為又は重過失行為に起
因する損害についてはこの限りでない。」
(3)原判決書5頁25行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「(6)過失相殺の当否(争点6)」
(4)原判決書5頁26行目の「(6)」を「(7)」と,「争点6」を「争点7」
とそれぞれ改める。
(5)原判決書9頁15行目の「ある。」の次に「しかも,①の本件契約約款
については,その存在が観客にアナウンスされておらず,事前のチェックを
促すような注意喚起もなされていなかったし,②のチケット裏面の記載につ
いては,被控訴人のように入場直前にチケットを受け取り,すぐに試合観戦
を開始する観客にとっては,何ら警告の役割を果たしえないものであった。」
を加える。
(6)原判決書18頁10行目の「発生するおそれがある」の次に「上,控訴
人ファイターズは,ファウルボールの危険性を理解していない女性や子供な
どの新しい客層を積極的に開拓するという営業戦略を展開しており,野球に
関心のない被控訴人が本件試合を観戦したのも,控訴人ファイターズが親に
よる引率を前提として小学生である被控訴人の子らを本件試合に招待したた
めであったのである」を加える。
(7)原判決書18頁12行目の「設けるべき」を「設けたり,上記の客層に
含まれる被控訴人に対して,上記危険性に関する十分かつ具体的な注意喚起
を行うべき」と改め,14行目の「安全設備を設置する」を「安全設備の設
置及び具体的な注意喚起等の安全対策を行うべき」と改める。
(8)原判決書18頁18行目の「前記2(2)及び3(2)のとおり,」の次に
「本件ドームに設置された安全設備と控訴人ファイターズが行っていた安全
対策等の諸施策等からすれば,観客に対する安全確保が適切に行われていた
ことが明らかであるから,」を加える。
(9)原判決書19頁24行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「6争点6(過失相殺の当否)について
(1)控訴人らの主張
本件ドームの内野席前方に座る観客には,ファウルボールが衝突す
る事故が発生する危険を回避するため,試合の状況に意識を向け,投
手が投球し,打者が打撃する可能性があるタイミングにおいては,可
能な限りグラウンド内のボールの所在や打球の行方(少なくとも,打
者が打つ瞬間を見たのであれば,その後の打球の行方)を目で追うべ
き相応の注意義務があった。
ところが,被控訴人は,本件当時,ファウルボールが観客席に飛ん
でくると危ないという認識を有しており,しかも,打者が本件打球を
打った瞬間を見ていたにもかかわらず,その後,漫然と本件打球から
目を離し,本件打球の行方を目で追うことをしなかった。
また,被控訴人において,打者が本件打球を打った後も本件打球の
行方を目で追っていれば,自らの方向にボールが飛来することは予見
可能であり,かつ,十分に回避可能であった。
したがって,被控訴人には本件事故の発生につき過失があったから,
仮に控訴人ファイターズに損害賠償責任があるとしても,相応の過失
相殺がなされるべきである。
(2)被控訴人の主張
野球に関する知識が乏しく,ファウルボールの危険性を十分に認識
していなかった被控訴人にとって,高速のファウルボールが飛来して
くることは予見できなかったし,約2秒間という短時間の間に高速で
飛来する打球の軌道を的確に予測し,回避行動をとることもできなか
ったから,被控訴人には過失がない。」
(10)原判決書19頁25行目の「6争点6」を「7争点7」と改める。
(11)原判決書20頁2行目の「主催者及び球場管理者」から4行目の「成立
していた」までを「本件免責条項所定の合意が成立していた」と改める。
(12)原判決書20頁7行目末尾を改行して,次のとおり加える。
「工作物責任については,故意又は重大な過失という主観的要件による限
定は無意味であること,人身損害を想定していながら,重傷の場合や後遺障
害が残るような場合,更には生命侵害の場合さえも想定されるのに,賠償す
る損害の範囲を治療費等の直接損害に限定することには全く合理性がないこ
と,野球場において通常考えられる本件事故のような場合には,実務上人身
損害につき損害賠償額の基準が確立されているから,主催者側にとって損害
額の総額の事前予測が困難であるとはいえないこと等に鑑みると,本件免責
条項は,消費者契約法8条,10条により無効である。」
第3当裁判所の判断
1当裁判所は,被控訴人の控訴人ファイターズに対する前記(c)の請求(債務
不履行に基づく損害賠償請求)を3357万5221円及びこれに対する平成
24年7月20日(控訴人ファイターズに対する訴状送達日の翌日)から支払済
みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,
被控訴人の控訴人ファイターズに対するその余の請求並びに控訴人札幌ドーム
及び控訴人市に対する各請求をいずれも棄却するのが相当であると判断する。
その理由は,以下のとおりである。
2争点1(本件事故の態様)について
以下のとおり補正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第4当裁判
所の判断」の1に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決書20頁13行目の「小学生を招待する企画」の次に「(以下「本
件企画」という。)」を加え,15行目の「原告は,」の次に「野球に関す
る知識も関心もなかったが,」を加える。
(2)原判決書20頁23行目末尾に次のとおり加える。
「本件企画においては,内野自由席の中から保護者が自由に席を選択できる
ものとされており,被控訴人の夫が選択した本件座席を含む上記各座席も,
本件企画において選択可能とされていた席であった。」
(3)原判決書21頁16行目の「打者が本件打球を打った後,」を「打者が
本件打球を打った瞬間は見ていたが,その後は」と改める。
3争点2(本件ドームについての「瑕疵」の有無)について
(1)民法717条1項にいう土地の工作物の設置又は保存の「瑕疵」,及び
国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の「瑕疵」とは,それぞれ
当該工作物又は営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい,上記
各「瑕疵」の有無については,当該工作物又は営造物の構造,用法,場所的
環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断すべき
である。
(2)ア本件においては,土地の工作物かつ公の営造物である本件ドームの設
置又は保存若しくは管理に「瑕疵」があったか否かが問題となっている
ところ,本件ドームは,プロ野球に限らず,サッカー等各種の興業が実
施されている多目的施設であるものの,本件球団の本拠地としてプロ野
球の試合が頻繁に行われることが予定されている球場施設(以下「プロ野
球の球場」ということがある。)であって,これが主要な用途の一つであ
り,本件事故もプロ野球の観戦中に起きたものであるから,本件ドーム
の「瑕疵」の有無については,プロ野球の球場としての一般的性質に照
らして検討すべきである。
イプロ野球は,野球競技を専門的・職業的に行うプロ野球選手が所属す
る複数の球団が複数の球場において一定数の試合を行ってその勝敗を競
い,各球場において観客が対価を支払って試合を観戦することを基本と
して成立している。プロ野球の試合を観戦するための各球場の観客席は,
プロ野球選手がプレーするグラウンドを取り囲む形で設けられており,
プロ野球の試合においては,ボールとして硬式球が使用され,上記プロ
野球選手たちがプレイをするため,試合中に使用されるボールは常に1
個であるが,投手が投じるボールは,スピードのかなり速いものや鋭い
変化をするものが多く,打者がバットを振る際のスイングスピードもか
なり速く,しかも,打者は,投手が投じたボールをバットで守備側の選
手に捕球されないようなエリア(ホームランとなる外野席を含む。)に打
ち返そうとし,他方,投手は,打者に向けて,打者の意図する打撃をさ
せないように意図してボールを投じるものであるから,1試合につき合
計約20球程度は,打者の打ったボールが観客席に飛来することがある
(乙イ65,86)。もし一切の安全設備がなければ,観客席の位置によ
っては様々なスピード及び軌道の打球が飛来する可能性があり,広い球
場で1個のボールが観客の身体の枢要部に衝突する確率は低いものの,
観客に硬式球であるボールが衝突した場合には,当該観客が重大な傷害
を負ったり,死亡する危険さえあり,実際にも,プロ野球の球場では,
観客にファウルボール等が衝突する事故が少なからず発生しており,当
該観客が救急車で搬送されたり,骨折等の比較的重い結果が生じるケー
スも,多くはないものの,本件事故前にも毎年数件はあった(甲32,3
9,乙イ65,乙ハ1ないし5)。打球は,観客席のどこに落ちた場合で
あっても危険であるものの,一般的には,ボールの滞空時間が長ければ
長いほど,空気抵抗により減速し,衝突時の速度や衝撃も弱くなるから,
バッターボックスから離れれば離れるほど,相対的には上記危険の程度
も低くなると考えられる(甲13,乙イ100)。球場におけるプロ野
球の試合の観戦は,本質的に上記のような危険性を内在しているもので
ある(以上につき,顕著な事実,弁論の全趣旨)。
したがって,プロ野球の球場の所有者ないし管理者は,ファウルボール
等の飛来により観客に生じ得る危険を防止するため,その危険の程度等に
応じて,グラウンドと観客席との間にフェンスや防球ネット等の安全設備
を設けるなどの安全対策を講じる必要があると解される。
ウ他方で,プロ野球は,我が国において長年にわたり親しまれ,広く普及
しているプロスポーツであって,その観戦は,テレビ等のメディアを通じ
たものも含め,国民的な娯楽の一つとなっているから,プロ野球の試合を
球場で観戦する場合の上記の本質的・内在的な危険性も,少なくとも自ら
積極的にプロ野球の試合を観戦するために球場に行くことを考える観客に
とっては,通常認識しているか又は容易に認識し得る性質の事項であると
解され,観客は,相応の範囲で,プロ野球というプロスポーツの観戦に伴
う上記の危険を引き受けた上で,プロ野球の球場に来場しているものとい
うべきである。
したがって,上記の本質的・内在的な危険性を回避するため,プロ野球
の球場に設置された相応の安全設備及びそれを補完するものとして実施さ
れている他の安全対策の存在を前提としつつ,観客の側にも,基本的にボ
ールを注視し,ボールが観客席に飛来した場合には自ら回避措置を講じる
ことや,それが困難となりそうな事情(幼い子供を同伴していること等)が
観客側に存する場合には,予め上記危険性が相対的に低い座席(バッター
ボックスからなるべく離れた座席等)に座ることなどの相応の注意をする
ことが求められており,本件当時も,そのことが前提とされていたという
べきである。
もっとも,多数来場する観客らの中には,野球に関する知識や経験が乏
しいことや年齢等の理由により,上記の危険性をあまり認識していない者
や自ら回避措置を講じることを期待し難い者も含まれていると解されるも
のの,そのような者に対する上記危険性の具体的な告知や追加の安全対策
等は,プロ野球の試合を主催する球団による興業の具体的な運営方法の問
題というべきであって,仮にそれが十分に行われなかったとしても,当該
球団と当該観客との関係で個別に安全配慮義務違反となる余地があり得る
ことは別として,通常の観客を前提として通常有すべき安全性を欠いてい
るか否かを判断すべき上記「瑕疵」の有無を左右する事情とはいえない。
エまた,プロ野球の試合の観戦については,近時,選手に近い目線で野球
観戦を楽しめるよう,グラウンドの最前線(ファウルゾーン)までせり出
す形で観客席を設けている球場も複数あり,それらの観客席が好評を博し
ていること,上記の危険性を踏まえつつも,より一層の臨場感を求める観
客らの要望を受けて,防球ネットの全部又は一部を撤去するなどした球場
も複数あること(以上につき,乙イ29,30,65,66,乙ロ2)等
に鑑みると,臨場感も球場におけるプロ野球観戦にとっての本質的な要素
となっており,これが社会的にも受容されていたものと認められる。した
がって,安全性の確保のみを重視し,臨場感を犠牲にして徹底した安全設
備を設けることは,プロ野球観戦の魅力を減殺させ,ひいては国民的娯楽
の一つであるプロ野球の健全な発展を阻害する要因ともなりかねない。
これに対し,被控訴人は,臨場感の確保は観客の生命・身体の安全に反
しない限りで考慮され得るものである旨主張するが,上記「瑕疵」の有無
は,上記(1)のとおり,当該施設の構造,用法,場所的環境及び利用状況
等諸般の事情を総合考慮して具体的,個別的に判断されるべきものである
以上,プロ野球の球場として通常の観客がどの程度の安全設備を備えるこ
とを求めているか及びどのような野球場が現実に社会的に受容されている
かということも,当然考慮されるべきであるから,臨場感の確保が安全性
の確保とともに重要な判断要素となることは否定できない。
なお,本件事故後に実施された各種調査の結果によれば,最近でも,臨
場感よりも観客の安全性の方を優先すべきであるか否かについて,プロ野
球ファンの中でも意見が割れている状況であり(甲45,乙イ75の4,
81の3,109),ましてや本件事故当時においては,社会通念上,臨
場感を犠牲にしてでも,安全性の確保を重視して,徹底した安全設備を設
けるべきであるとの考えが一般的であったとは認められない。
オ以上の諸事情に鑑みると,プロ野球の球場の「瑕疵」の有無につき判断
するためには,プロ野球の試合を観戦する際の上記危険から観客の安全を
確保すべき要請,観客に求められる注意の内容及び程度,プロ野球観戦に
とっての本質的要素の一つである臨場感を確保するという要請,観客がど
の程度の範囲の危険を引き受けているか等の諸要素を総合して検討するこ
とが必要であり,プロ野球の球場に設置された物的な安全設備については,
それを補完するものとして実施されるべき他の安全対策と相まって,社会
通念上相当な安全性が確保されているか否かを検討すべきである。
(3)以上を前提として,本件ドーム(特に本件座席付近)における安全設備及
びそれを補完するものとして実施されるべき他の安全対策について検討する
と,本件ドームの1塁側内野席前に設置されていたグラウンドと観客席との
間の内野フェンスの高さが,本件座席付近の前において,約2.9メートル
であったこと,かつては上記フェンスの上部に設置されていた防球ネット
(本件座席付近の前において,グラウンドからの高さが約5メートルであっ
たもの)は,より一層の臨場感を求める観客らの要望を受けて,平成18年
に撤去されたこと,仮に上記防球ネットが設置されたままであったとしても,
本件打球の本件座席への飛来を遮断することはできなかったこと,本件当時
に本件ドームにおいて実施されていた他の安全対策の内容(ファウルボール
の危険性に関する観客に対する注意喚起の放送,及び観客席に入りそうなフ
ァウルボールが放たれた際に観客に対してそのことを知らせるための警笛を
含む。),本件当時の本件ドーム以外のプロ野球の各球場における内野席前
のフェンス及び防球ネットの高さ,並びに公益財団法人日本体育施設協会が
作成した「屋外体育施設の建設指針」(平成24年改訂版)では,硬式野球
場における内野フェンスの高さに関し,バックネットの延長上に外野席に向
かって高さ3メートル程度の防球柵を設けるものと定められていたこと等は,
原判決30頁24行目から32頁9行目まで,32頁25行目冒頭から33
頁3行目の「(乙イ5,6,36)。」まで,35頁24行目の「掲記の証
拠」から36頁19行目末尾までに各記載のとおりである(ただし,原判決
31頁5行目の「平成18年」の次に「より一層の臨場感を求める観客らの
要望を受けて」を加え,6行目の「ものである」の次に「(乙イ84,85,
94,乙ロ2)」を加える。)。
そして,上記の各事実によれば,本件当時,本件ドームにおける上記内野
フェンスの高さは,上記指針及び他のプロ野球の球場におけるフェンス等と
比較しても,特に低かったわけではないことが認められる。
上記の諸事情に照らすと,本件当時,本件ドーム(特に本件座席付近)にお
ける上記内野フェンスは,本件ドームにおいて実施されていた他の上記安全
対策を考慮すれば,通常の観客を前提とした場合に,観客の安全性を確保す
るための相応の合理性を有しており,社会通念上プロ野球の球場が通常有す
べき安全性を欠いていたとはいえない。
(4)以上によれば,本件ドームに民法717条1項ないし国家賠償法2条1
項所定の「瑕疵」があったとは認められないから,被控訴人の控訴人らに対
する前記(a),(d)及び(f)の各請求はいずれも理由がない。
(5)これに対し,被控訴人は,①本件ドームに多数来場する観客らの中には,
野球に関する知識がほとんどない観客,子供の世話をしながら観戦する観客,
高齢者,年少者(幼児)など,上記の危険性を認識していない者や,打球を
注視した上で危険性を察知し,適切な回避行動をとることを期待し難い者も
多数含まれているから,そのような者に対する打球の衝突事故を回避し得る
だけの安全設備を設けるべきである,②本件ドームにおける観戦状況からす
れば,観客の誰もが常時試合に集中し続けることは想定し難く,聴覚や視覚
によって打球による危険性を認識するには限界があり,打球の軌道予測を的
確に行って衝突を回避することも困難である,③本件ドームの内野席前方は
前の席の客が視線の障害となることや,打球が照明と重なること等により,
観客の回避行動には限界があり,最低限期待される程度の注意を尽くしたと
しても,回避し得ない打球が観客席に飛来することはあり得るから,本件ド
ームにおいては,そのような打球による衝突事故を回避し得るだけの安全設
備を設けることが求められている,④本件打球は,観客に期待し得る反応速
度よりも早く本件座席に到達したものであるから,観客の注意をもって衝突
を回避することはおよそ不可能なものであった,⑤控訴人ファイターズが実
施していた注意喚起等の安全対策(本件契約約款による警告,観戦チケット
裏面の記載による警告,本件ドーム内の大型ビジョンの映像による注意喚起,
場内アナウンスによる注意喚起,警笛による警告)は,観客に対して十分に
野球観戦の危険性を絶えず心掛けさせる効果のあるものではなかったなどと
して,本件ドームには,少なくとも本件打球を回避し得るだけの安全設備が
設置されるべきであったから,民法717条1項及び国家賠償法2条1項所
定の「瑕疵」がある旨主張する。
しかしながら,本件全証拠によっても,通常の観客にとって,基本的にボ
ールを注視し,ボールが観客席に飛来した場合には自ら回避措置を講じるこ
とが困難であるとは認められないし,本件打球が通常の観客の注意をもって
衝突を回避することがおよそ不可能なものであったとも認められない。そし
て,上記「瑕疵」の有無については,通常の観客を前提として判断すべきも
のであること,多数来場する観客の中には上記危険性をあまり認識していな
い者や自ら回避措置を講じることを期待し難い者が含まれているとしても,
そのような者を前提として,危険がほとんどないような徹底した安全設備を
設けることを法律上要求することは,プロ野球観戦の娯楽としての本質的な
要請に反する面があり,相当とはいえないこと,本件当時,本件ドーム(特
に本件座席付近)における上記内野フェンスは,他の安全対策を考慮すれば,
通常の観客を前提とした場合に,観客の安全性を確保するための相応の合理
性を有しており,通常有すべき安全性を欠いていたとはいえないから,本件
ドームに上記「瑕疵」があったとは認められないことは,上記(2)ないし(4)
で説示したとおりである。被控訴人の上記各主張を考慮しても,上記の判断
は左右されない。
4争点3(本件ドームの管理・運営における過失の有無)について
被控訴人は,ファウルボールが観客に衝突する事故の発生を防止するための
安全対策として,控訴人らは共同して少なくとも高さ5.75メートル以上
の防球ネットを設置するなどの十分な安全設備を設置するべき注意義務を負
っていたのに,これを怠った旨主張する。
しかしながら,他の実施されるべき安全対策の存在を考慮すれば,本件事故
について推測した態様から算出された5.75メートル以上という数値に客
観的合理性があるものとは認め難いから,控訴人らに上記注意義務違反があ
ったとは認められない。
したがって,被控訴人の控訴人らに対する前記(b),(e)及び(g)の各請求は
いずれも理由がない。
5争点4(野球観戦契約上の安全配慮義務違反の有無)について
(1)前記認定の各事実,証拠(甲1,3,37,乙イ100,102,原審
における被控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,野球に関
する知識も関心もほとんどなく,野球観戦の経験も硬式球に触れたこともな
く,硬式球の硬さやファウルボールに関する上記危険性もほとんど理解して
いなかったこと,そのような被控訴人が本件試合を観戦することになったの
は,控訴人ファイターズが,新しい客層を積極的に開拓する営業戦略の下に,
保護者の同伴を前提として本件試合に小学生を招待する企画(本件企画)を実
施し,小学生である被控訴人の長男(当時10歳)及び長女(当時7歳)が
本件試合の観戦を希望したため,被控訴人ら家族が本件企画に応じることと
し,被控訴人も,長男及び長女の保護者の一人として,幼児(当時4歳)で
ある二男を連れて,本件ドームに来場したという経緯であったこと,本件座
席は,内野席の最上部や外野席等と比較すると,相対的には上記のファウル
ボールが衝突する危険性が高い座席であったが,本件企画において選択可能
とされていた席であったことが認められる。
(2)上記(1)の事実並びに前記2及び3記載の諸事情を前提とすると,本件企
画を実施した控訴人ファイターズとしては,本件企画に応じて本件ドームに
来場する保護者らの中には,被控訴人のように,ファウルボールに関する上
記危険性をほとんど認識していない者や,小学生やその兄弟である幼児らを
同伴している結果として,ファウルボールが観客席に飛来する可能性が否定
できない場面であっても,試合中に多数回にわたってそのような場面が発生
する度に,ボールを注視して自ら回避措置を講じることが事実上困難である
者が含まれている可能性が相当程度存在することを予見していたか又は十分
に予見できたものと解される。
そして,控訴人ファイターズは,そのような者が含まれていることを暗黙
の前提として本件企画を実施する以上,通常の観客との関係では,観客が上
記危険性を認識した上で危険を引き受けているものとして,観客が基本的に
ボールを注視して自ら回避措置を講じることを前提に,相応の安全対策を行
えば足りるとしても,少なくとも上記保護者らとの関係では,野球観戦契約
に信義則上付随する安全配慮義務として,本件企画において上記危険性が相
対的に低い座席のみを選択し得るようにするか,又は保護者らが本件ドーム
に入場するに際して,上記3(2)イ記載のような危険があること及び相対的
にその危険性が高い席と低い席があること等を具体的に告知して,当該保護
者らがその危険を引き受けるか否か及び引き受ける範囲を選択する機会を実
質的に保障するなど,招待した小学生及びその保護者らの安全により一層配
慮した安全対策を講じるべき義務を負っていたものと解するのが相当である。
本件においても,控訴人ファイターズは,被控訴人に対し,本件観戦契約
に信義則上付随するものとして,上記安全配慮義務を負っていたところ,本
件全証拠によっても,控訴人ファイターズが上記のような招待した被控訴人
ら家族の安全により一層配慮した安全対策を講じていたとは認められない。
したがって,控訴人ファイターズは,上記安全配慮義務を十分に尽くしてい
たとは認められないから,被控訴人に対し,債務不履行(上記安全配慮義務
違反)に基づく損害賠償責任を負うというべきである。
(3)これに対し,控訴人ファイターズは,①本件契約約款により,予め観客
に対してファウルボールが飛来する危険性と損害が発生する可能性について
警告しており,来場者はいつでも本件契約約款を見ることができる状態にあ
ったこと,②試合観戦チケットの裏面には,ファウルボールが飛来すること
の警告が記載されていたこと,③被控訴人が本件試合を観戦する契機となっ
た案内状には,事故のないよう配慮すべき旨の注意が記載されていたこと,
④本件ドーム内の大型ビジョンの画像,⑤場内アナウンス及び⑥警笛音によ
れば,被控訴人を含む観客は,試合前及び試合中を通じて,視覚及び聴覚に
より,観客席に飛来する打球の危険性を認識することができたものであり,
本件事故は,被控訴人が本件打球を見ていなかったため,衝突を回避するた
めの防御活動を全くしなかったことが原因で生じたものであるなどとして,
控訴人ファイターズには野球観戦契約上の安全配慮義務違反はなかった旨主
張する。
しかしながら,上記①については,本件当時,本件契約約款の内容を印刷
した資料が本件ドームの各入場ゲート内側の受付カウンターに平置きされ,
入場者への販促物とともに並べられていただけであって,その横に約款があ
ることを告知する表示が掲示されており,入場者は上記資料を手にすること
ができる状態にはあったものの,試合観戦チケットの購入や本件ドームへの
入場等に際し,担当者らが被控訴人に対して本件契約約款の存在や内容等を
説明するなどの対応は一切とられていなかった。また,控訴人ファイターズ
等のホームページには本件契約約款の内容が掲載されていたものの,よく目
に付くように表示されているわけではなく,利用者が検索すれば表示できる
というだけの状態であった。上記②については,試合観戦チケット裏面に2
0個以上の多数の注意事項の一部として小さな文字で記載されていたにすぎ
ない上,試合当日にチケットを購入して直ちに本件ドームに入場する場合等
については,上記保護者らが上記記載を読むことによって上記危険性を具体
的に認識することは通常期待し難いというべきである。上記③記載の案内状
(甲1)における記載も,本件ドーム内で起こり得る危険に留意するように
との注意を一般的・抽象的に促すものにすぎず,上記保護者らに上記危険性
を具体的に告知するものとはいえない(以上につき,甲1,2,原審におけ
る被控訴人本人,弁論の全趣旨)。それらに加えて,上記(2)記載の控訴人
ファイターズと被控訴人との関係及び安全配慮義務の内容等を総合考慮する
と,上記①ないし⑥のような措置を講じたからといって,被控訴人が上記危
険を引き受けるか否か及び引き受ける範囲を選択する機会を実質的に保障す
るなど,招待した被控訴人ら家族の安全により一層配慮した安全対策を講じ
るべき義務を尽くしたとはいえない。また,被控訴人の不注意の点は,過失
相殺の有無及び程度において考慮すべきものであって,上記(1)の認定ない
し判断を左右するものではない。よって,控訴人ファイターズの上記主張は
採用できない。
6争点5(損害)について
原判決書「事実及び理由」欄の「第4当裁判所の判断」の3に記載のとお
りであるから,これを引用する。ただし,原判決40頁12行目末尾を改行
して,次のとおり加える。
「(5)以上の合計は3815万6527円となる。」
7争点6(過失相殺の当否)について
(1)本件試合における本件事故に至るまでの間の内野席へのファウルボール
への飛来状況,その中には本件座席の後方の観客のいない壁か床に落下した
ファウルボールもあり,被控訴人がその行方を目で追ったこともあったこと,
それゆえ,本件試合を観戦していた被控訴人を含む観客は,ファウルボール
が観客席に飛来する危険があることを認識する機会があり,被控訴人も,フ
ァウルボールが観客席に飛んでくることが分かり,少し危ないのかなと思っ
たこと等は,原判決40頁18行目から41頁9行目の「(原告本人[調書
18,19頁])。」までに記載のとおりである。
また,前記認定のとおり,本件企画においては,内野自由席の中から保護
者が自由に席を選択できるものとされていたところ,内野自由席の中でも相
対的な危険性が高いと考えられるグラウンドに比較的近い位置に存する本件
座席及びその付近の席を選択したのは被控訴人の夫であり,被控訴人は夫の
上記選択をそのまま受け入れて本件座席に座っていたものであること,本件
事故の際,被控訴人の夫は,本件座席及びその近くの席に被控訴人,二男及
び長女を残し,長男と共に離席していたこと,上記3(3)のとおり,本件当
時,本件ドームにおいては,ファウルボールの危険性に関する観客に対する
注意喚起の放送が流れたり,観客席に入りそうなファウルボールが放たれた
際には,観客に対してそのことを知らせるための警笛が鳴ったりしていたこ
と,それにもかかわらず,本件事故の際,被控訴人は,打者が本件打球を打
った瞬間は見ていたものの,その後は,本件打球の行方を見ておらず,隣り
の席の二男の様子をうかがおうとして僅かに下に顔を向け,視線を上げた時
には,衝突の直前であったことが認められる。
上記各事実によれば,本件当時,被控訴人は,野球に関する知識や関心が
ほとんどなく,ファウルボールに関する上記の具体的な危険性を十分認識し
ていなかったことを考慮しても,本件事故の発生については,被控訴人側
(被控訴人の夫を含む。)にも過失があったものと認められる。
そして,本件事故の態様,控訴人ファイターズの安全配慮義務違反の内容
及び程度,被控訴人側の上記過失の内容及び程度,その他の諸事情を総合考
慮すると,本件事故における過失割合は,控訴人ファイターズが8割,被控
訴人側が2割と認めるのが相当である。
そうすると,上記過失相殺後の損害額は3052万5221円(≒381
5万6527円×0.8。円未満切捨て)となる。
(2)これに対し,被控訴人は,野球に関する知識が乏しく,ファウルボール
の危険性を十分に認識していなかった被控訴人にとって,高速のファウルボ
ールが飛来してくることは予見できなかったし,約2秒間という短時間の間
に高速で飛来する打球の軌道を的確に予測し,回避行動をとることもできな
かったとして,被控訴人には過失がない旨主張する。
しかしながら,本件全証拠によっても,被控訴人において打者が本件打球
を打ったのを見た後も本件打球の行方を注視し続けたとしても,被控訴人の
方に向かって本件打球が飛来してくることの予見可能性がなかったとか,本
件打球が顔面に衝突することの回避可能性がなかったとまでは認められない。
また,被控訴人のその余の主張を考慮しても,上記(1)の判断は左右されな
い。
8争点7(免責条項適用の有無)について
(1)控訴人ファイターズは,被控訴人との間においては,本件契約約款(乙
イ2)中の本件免責条項により,主催者及び球場管理者は,観客が被ったフ
ァウルボールに起因する損害について責任を負わない旨の合意が成立してい
たから,控訴人ファイターズは本件事故について責任を負わない旨主張する。
(2)しかしながら,以下のとおり,本件において上記合意が成立したとは認
められない。
前記認定の各事実,証拠(甲2,乙イ2,原審における被控訴人本人)及
び弁論の全趣旨によれば,本件契約約款は,日本プロフェッショナル野球組
織,セントラル野球連盟,パシフィック野球連盟及び連盟を構成する12球
団によって平成17年に設けられたものであるが,内容的には観客の観戦マ
ナーに重点があったこと,本件当時,本件契約約款については,入場者であ
れば誰でもその内容を印刷した資料を手にすることができる状態にはあった
ものの,試合観戦チケットの購入や本件ドームへの入場等に際し,担当者ら
が被控訴人に対して本件契約約款の内容等を説明した上で,それについての
実質的な同意を得るなどの対応は一切とられていなかったこと,控訴人ファ
イターズ等のホームページには本件契約約款の内容が掲載されていたものの,
利用者が検索すれば表示できるというだけであった上,本件企画に係る案内
状の送付又は試合観戦チケット購入の際に,本件契約約款の内容を閲覧する
ことが試合観戦の前提条件である旨が告知されていたわけでもなかったこと,
被控訴人が購入した試合観戦チケットについても,裏面に小さな文字で記載
された注意事項の中に,観戦マナーに関連して引用されていただけであり,
現実にも被控訴人は本件契約約款(特に本件免責条項)の存在及び内容を了
知していなかったことが認められる。
各球団において多数の観客との間のチケット購入契約を大量にかつ平等に
処理するためのものとして,本件契約約款の有用性は否定できないが,本件
のような具体的な法的紛争において上記のような免責条項による法的効果を
主張するためには,観客である被控訴人において,当該条項を現実に了解し
ているか,仮に具体的な了解はないとしても,了解があったものと推定すべ
き具体的な状況があったことが必要であるところ,本件においてはかかる状
況は認められない。
したがって,本件において上記(1)の合意が成立したとは認められない。
(3)仮に上記合意が成立したとしても,本件免責条項1項但書は,主催者の
責めに帰すべき事由による場合は同項による免責の対象とならない旨を定め
ているところ,本件において,主催者たる控訴人ファイターズに責めに帰す
べき事由があり,被控訴人に対して債務不履行(安全配慮義務違反)に基づ
く損害賠償責任を負うことは,上記5で説示したとおりであるから,本件免
責条項1項による免責の対象とはならない。
(4)また,本件免責条項2項は,1項但書により主催者が免責されない場合
の損害賠償の範囲について,主催者等の故意又は重過失に起因する損害以外
は治療費等の直接損害に限定しているが,控訴人ファイターズが,試合中に
ファウルボールが観客に衝突する事故の発生頻度や傷害の程度等に関する情
報を保有し得る立場にあり(甲39,乙イ65,乙ハ1ないし5),ある程
度の幅をもって賠償額を予測することは困難ではなく,損害保険又は傷害保
険を利用することによる対応も考えられることからすれば,このような対応
がないまま上記の条項が本件事故についてまで適用されるとすることは,消
費者契約法10条により無効である疑いがあり,この点に関する控訴人ファ
イターズの主張は採用することができない。
9弁護士費用について
以上の諸事情を踏まえると,本件事故と相当因果関係の存する弁護士費用と
しては305万円を認めるのが相当である。
10結論
以上によれば,被控訴人の控訴人ファイターズに対する前記(c)の請求は3
357万5221円及びこれに対する平成24年7月20日(控訴人ファイ
ターズに対する訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,被控訴人の控訴人フ
ァイターズに対するその余の請求並びに控訴人札幌ドーム及び控訴人市に対
する各請求はいずれも理由がない。
そうすると,被控訴人の控訴人らに対する上記(a),(d)及び(f)の各請求を
一部認容した原判決は失当であって,本件各控訴はいずれも理由がある。ま
た,被控訴人の控訴人ファイターズに対する前記(c)の請求は上記の限度で認
容し,被控訴人の控訴人ファイターズに対するその余の請求並びに控訴人札
幌ドーム及び控訴人市に対する各請求はいずれも棄却すべきである。よって,
原判決を変更することとして,主文のとおり判決する。
札幌高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官佐藤道明
裁判官細島秀勝
裁判官古河謙一は転補につき署名押印することができない。
裁判長裁判官佐藤道明

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