弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     被告人Aの本件控訴を棄却する。
     原判決中被告人Bに関する部分を破棄する。
     被告人Bを懲役一年に処する。
         理    由
 本件控訴の趣旨は、末尾添附の弁護人宮城実同榊純義同高沢正治各作成名義の控
訴趣意書と題する書面記載のとおりであつてこれに対して当裁判所は、次のとおり
判断する。(尚高沢弁護人作成名義の控訴趣意書補足追完書は趣意書提出期間後の
提出にかかるから、同人の控訴趣意書に包合される部分についてのみ判断する。)
 宮城弁護人控訴趣意第一点、高沢弁護人控訴趣意第二点について、
 仍つて按ずるに、訴因は起訴にかかる公訴事実を法律的に整備したものであつ
て、裁判所及び訴訟当事者を拘束する結果、起訴状にこれを明示するにはできる限
り、日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してすることを要するこ
と、刑事訴訟法第二五六条に規定するとおりである。而して各所論指摘の起訴状記
載の訴因につき検討するに、孰れも犯罪の日時、場所、方法、目的物及び被害者名
等の記載の存するとと洵に明らかなところであるが、只騙取の日時の因子につき、
不明確なものがおり、訴因の明示として必らずしも完全なものとは謂うことができ
ない。然し乍らとれについては原審第十四回公判廷において検察官より具体的に判
然と補足追完しているとと同日の公判調書の記載に徴し明白であつて(同公判調書
中検察官補足陳述の追起訴状中第二の十第二の六第二の七第二の十一第二の十三第
二の十四とあるは追起訴状第十第七第六第十一第十三第十四の明らかな誤認と認め
る)、訴因の特定として毫も欠くるところがない。或は訴因につき補足追完が許さ
るべきか否につき異論の存するものあるも、訴因が訴因として全然不特定のもので
あり、何が起訴されたか訴訟の物体が判明せず、従つて亦被告人において再訴の抗
弁をしてよいか否か判らない程度のものたらんか、固より其の起訴は無効でおつて
斯くの如き訴因の記載につき、補足追完の許すべからざるは勿論であるが、本<要
旨>件訴因の如く、因子の一部に聊か不明確なものあるとも、全体としては訴訟の物
体が判明し、再訴の抗弁につき疑義を抱く余地たき程度に特定して居り、且
つ被告人の防禦の面においても全然無関係と認め得られる以上、これを積極に解し
起訴の効力を認むべきことこそ訴訟経済の原則にも添う所以であつて、原審が、所
論指摘の各訴因中の不明確なものにつき検察官をして、補足追完せしめて、審理判
決したのは、正に右と同趣旨に出たる当然の措置であつて、原審には毫も所論の如
き違法なく、各論旨はその理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫荘太郎 判事 渡辺好人)

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