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裁判例


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主文
1山形県村山総合支庁長が平成16年7月12日付けで行った別紙物件目録記
載の建物の不動産取得税賦課決定処分のうち,課税標準額1億0603万90
00円,納付すべき税額318万1100円を超える部分を取り消す。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用は,これを4分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担
とする。
事実及び理由
第1請求
1山形県村山総合支庁長が平成16年7月12日付けで行った別紙物件目録記
載の建物の不動産取得税賦課決定処分のうち,課税標準額8459万3000
円,納付すべき税額253万7700円を超える部分を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,原告が新築し取得した別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」
という)について,山形県村山総合支庁長が行った課税標準額1億1367。
万4000円,納付すべき税額341万0200円とする不動産取得税賦課決
定処分に対し,原告が,その一部取消しを求めた事案である。
2法令等の定め
不動産取得税の課税標準額に関する法の規定
不動産取得税の課税標準は,不動産を取得した時における不動産の価格で
あり(地方税法(平成18年法律第7号による改正前のもの。以下「法」と
いう)73条の13第1項,この価格とは適正な時価をいう(法73条。)
5号。都道府県知事は,当該不動産の取得時において,固定資産課税台帳)
に固定資産の価格が登録されている不動産については,原則として当該価格
により,固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産につ
いては,法388条1項の固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第15
8号。以下「評価基準」という)により,当該不動産に係る不動産取得税。
の課税標準となるべき価格を決定するものとされている(法73条の21第
1項,第2項。)
平成15年に新築された建物の不動産取得税の課税標準額は,平成15年
度の評価基準により決定されることになる。
平成15年度の評価基準が定める家屋の評価方法の概要は,以下のとおり
である。
ア家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」
という)の区分に従い,各個の家屋についての評点数を付設し,当該評。
点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によ
る(評価基準第2章第1節一。各個の家屋の評点数は,木造家屋再建築)
費評点基準表評価基準別表第8又は非木造家屋再建築費評点基準表評()(
価基準別表第12。乙2)を適用して算出した当該家屋の再建築費評点数
を基礎とし,これに家屋の損耗の状況による減点を行って付設し,家屋の
状況に応じ必要があるものについては,更に家屋の需給事情による減点を
行う。なお,前記各評点基準表に所要の評点項目及び標準評点数がないと
き,その他家屋の実態からみて特に必要があるときは,前記各評点基準表
について所要の補正を行い,これを適用することができる(評価基準第2
章第1節二,六。)
イ非木造家屋の再建築費評点数は,部分別による再建築費評点数の算出方
法又は比準による再建築費評点数の算出方法のいずれかによる。部分別に
よる再建築費評点数の算出方法による場合は,当該非木造家屋の用途及び
構造の区分に応じ,当該非木造家屋について適用すべき再建築費評点基準
表によって求めるものとし,具体的には,非木造家屋について適用すべき
前記評点基準表によって当該非木造家屋の各部分別(主体構造部,基礎工
事,外周壁骨組,間仕切骨組,外部仕上,内部仕上,床仕上,天井仕上,
屋根仕上,建具,特殊設備,建設設備,仮設工事及びその他の工事の合計
14の部分)に標準評点数を求め,これに補正項目について定められてい
る補正係数を乗じて得た数値に計算単位の数値を乗じて算出した部分別再
建築費評点数を合計して求める(評価基準第2章第3節二。)
標準評点数は,評点項目の区分に従い,標準量(標準的な非木造家屋の
各部分別の単位当たり施工量をいう)に対する工事費を基礎として算出。
した評点数であって,評点項目とは,非木造家屋の構造に応じ,前記各部
分ごとに一般に使用されている資材の種別及び品等,施工の態様等の区分
によって標準評点数を付設するための項目として設けられているものであ
る。再建築費評点数の付設に当たっては,非木造家屋の各部分を調査し,
各部分の使用資材の種別,品等,施工の態様等に応じ,該当する評点項目
について定められている標準評点数を求めることとなる。標準評点数は,
基準年度の賦課期日の属する年の2年前の1月現在の東京都(特別区の区
),域における物価水準により算定した工事原価に相当する費用に基づいて
その費用の1円を1点として表している(評価基準第2章第3節二。)
ウ経過措置として,家屋の評価については,床面積が10平方メートルを
超える非木造家屋に係る評点1点当たりの価額は,1円10銭(1円に物
価水準による補正率1.00及び設計管理費等による補正率1.10を乗
じたもの)とされている(評価基準第2章第4節二。)
3前提事実(証拠等の摘示のない事実は当事者間に争いがない)。
原告は,平成15年10月8日,本件建物を新築により取得した。
山形県村山総合支庁長は,平成16年7月12日付けで,本件建物の取得
に対し事務所店舗及び百貨店用建物に適用される再建築費評点基準表以,,(
下「本件評点基準表」という)により本件建物の再建築費評点数を1億0。
334万0901点と付設し,この評点数に評点1点当たりの価額1円10
銭を乗じ,1000円未満の端数を切り捨てて,本件建物の課税標準額を1
億1367万4000円とし,これに標準税率100分の3を乗じ,納付す
べき税額を341万0200円とする不動産取得税賦課決定処分(以下「本
件処分」という)をした。。
本件建物の床仕上げには,中華人民共和国(以下「中国」という)福建。
省産の花崗岩(G635,600ミリメートル角,厚さ20ミリメートル,
磨き仕上。以下「本件石材」という)が使用されている。山形県村山総合。
支庁長は,本件処分において,本件石材を使用した部分(施工量1100.
06平方メートル)の床仕上について「花崗岩,並,磨き仕上」と評価し,
1平方メートル当たりの評点数として2万9350点(うち,資材費評点
数1万9000点,労務費評点数9847点,下地その他の評点数506
点である)と付設した(甲1,乙1,2の2,5の2)。。
前記事務所等に適用される本件評点基準表においては,床仕上げ部分の
評点項目として,大理石,花崗岩,人造石ブロックなどが設けられ,花崗
岩については,上,中,並の3つの項目に分けられ,さらに磨き仕上と小
叩仕上に分けられ,それぞれ標準評点数が定められている「花崗岩,並,。
磨き仕上」となる場合の標準評点数は2万9350点である。
原告は,本件処分を不服として,平成16年8月3日付けで,山形県知事
に対し審査請求をなし,同知事は,平成17年2月10日付けで,前記審査
請求を棄却する旨の裁決をした。
原告は,平成17年8月9日,本件処分の一部取消しを求めて,山形地
方裁判所に本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著な事実)。
本件石材を使用した床仕上げ以外の評点が評価基準に従ったものであるこ
とについては争いがない。
4争点
法388条1項は,課税要件法定主義に反するか。
評価基準が課税要件明確主義に反するか。
評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することが
できない「特別の事情」があるか否か。
本件処分が評価基準に適合しているか否か。
5争点に対する当事者の主張
争点について
ア原告の主張
租税の賦課徴収は,財産権に直接影響を与えるものであるから,恣意的
な課税を排し,財産権に対する不当な侵害を防止し,予測可能性と法的安
,。定性を与えるためその手続に関する事項は法律で定めなければならない
憲法もかかる見地から,法律に基づいて納税の義務を負うことを定め(憲
法30条,新たに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又)
は法律の定める条件によることを必要としている(同84条。よって,)
不動産取得税の課税要件等も,法律によって規定されなければならないの
が原則である(課税要件法定主義。もっとも,租税法が対象とする経済)
事象は,極めて多種多様であり,時の経過により激しく変動することがあ
るため,法律の形式をもって完全に対応することは困難であり,具体的・
細目的定めを下位規範に委任し,事象の変遷に伴って機動的に対応する必
要があることは否定できない。しかし,その場合でも,租税法律主義にか
んがみ,一般的包括的な白紙委任は禁止され,個別具体的な委任のみが許
されるというべきであり,授権法たる法律には,その「目的」と受任者の
よるべき「基準」が定められなければならない。
ところで,家屋の評価方法には,再建築方式のほか,取得価格法,収益
還元法,売買実例価格法及び積算価格法があり,どの評価方法によるべき
かは評価の基本原則というべきものであって,再建築方式によるか,それ
以外の方法によるかで実際には相当かけ離れた価格となることが少なくな
い「適正な時価」が一義的ではなく,再建築方式によることもそれ以外。
の方法によることも許容される幅の広い概念であるとすれば,幅広く総務
大臣の定める告示に委任することは,恣意的な課税を許すこととなって租
税法律主義の趣旨に反する。他方,これを法律で定めても,経済事象への
機動的な対応を阻害することにはならず何ら差支えはないはずである。よ
って,法388条1項は,受任者たる総務大臣がよるべき「基準」たる評
価の基本原則(家屋の評価方法)を定めることなく,包括的に総務大臣の
定める告示に委任した白紙委任規定であり,課税要件法定主義に反する。
イ被告の主張
法388条1項は,白紙委任規定とは認められず,課税要件法定主義に
は反しない。
争点について
ア原告の主張
租税法律主義の趣旨は,恣意的な課税を排し,国民の財産に対する不当
な侵害を防止して,予測可能性と法的安定性を与えることにある。とすれ
ば,課税要件及び租税の賦課徴収の手続は,具体的な税額を算定する過程
に課税権者の恣意的な裁量を入れる余地がなく,かつ,納税義務者が自己
に賦課される税額が一定程度予測でき,不当又は違法な課税処分に対して
行政上の不服申立てや訴えの提起をすべきかについて合理的な判断を可能
ならしめる程度に一義的かつ明確に規定されることが要請される。本件建
物に適用される個々の評点についても,一義的かつ明確に定められる必要
があるというべきである。
しかるに,低廉な中国産花崗岩資材が市場に大量に流通しているにもか
かわらず,同資材を明確に想定した評点項目はなく,その結果,各都道府
県は独自の判断で評価せざるを得なくなり,評価方法及び結果が区々にな
っている。かかる状況に照らせば,現行評価基準のうち「床仕上「花,」
崗岩」に属する評点項目は,課税庁の恣意を排し,納税者の予測可能性を
担保する程度に,課税要件が一義的かつ明確に定められているとは到底評
価できず,課税要件明確主義に反している。
イ被告の主張
評価基準の定めが不明確であるとは認められず,課税要件明確主義にも
反しない。
争点について
ア原告の主張
評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定できない
特別の事情が認められる場合には,評価額が適正な時価であると推認され
ることはなく,評価額が適正な時価を超えていれば,その限度で違法とす
べきである。そして,評価基準は,あくまで地方税法より下位の法規範で
あり,適正な時価を算定する道具にすぎず,評価基準の採用する再建築方
式にもほかの評価方法と同様に長所短所があるのであるから,特別な事情
を極小化して解釈すべきではない。
本件では,①床仕上げの項目の評価に関しては,石材産業年鑑には資材
価格が3000円を大きく割り込む中国産花崗岩があるとの記載があり,
本件評点基準表の中に広く流通している中国産花崗岩を想定した評点が置
かれているかが不明である。②本件建物の床仕上げに使用されたのと同等
の資材について,石材店,輸入商社及び施工業者によりなされた見積価格
が評価基準の定める資材費評点と大きくかい離している。③不動産鑑定士
は,中国産花崗岩を使用した床工事のメーカー設計見積価格を1平方メー
トル当たり1万0200円と算定して,国産花崗岩を使用した場合よりか
なり安価にしている。④他の都道府県において,本件石材を使用した店舗
について「人造石ブロック,テラゾーブロック,タイル」相当ないしこ,
れに近似する評価をした例が70存在する。⑤労務費の評点についても,
評価基準において想定される労務内容と実際に行われている労務内容とが
大きく異なっている。以上の諸事情のうち,①は一般に流通する資材を十
分に考慮した評点が定められていない点で「床仕上「花崗岩」の評点方」
法に一般的合理性がないことを示し,また,①ないし⑤の事情は,同項目
に定められた評点を中国産花崗岩に適用すると,その市場価格を上回るこ
とを示すものであり,相まって前記「特段の事情」を構成している。よっ
て,本件処分が評価基準を適用した結果であっても「適正な時価」と推,
認されることはなく,当事者から提出された資料により時価を認定すべき
である。
石材業者による平均的な見積価格が3000円余りであり,不動産鑑定
評価では1平方メートル当たり1万0200円であると査定され,他の都
道府県の評価の多くが「人造石ブロック,テラゾーブロック・タイル」の
基準を準用するか,これに近似する単価でなされていることから,本件床
仕上げ工事の単価は,本件評点基準表において「人造石ブロック,テラゾ
ーブロック・タイル」の基本評点として定められている1万1200円を
超えないと考えられる。
イ被告の主張
評価基準の定める方法によっては再建築費を適切に算定できない特段の
事情を主張立証するには,原告の主張する価格が,個別事情及び特別事情
に基づく価格ではなく,一般的・正常的価格であることを具体的に主張立
証する必要がある。しかるに,原告が「特別の事情」を構成するとして主
張する各事情は,次のとおり,個別事情及び特別事情にすぎず,原告の主
張する価格が一般的・正常的価格であることの根拠とはならない。
①の事情にある石材産業年鑑での価格は,そのような価格もあるという
個別事情にすぎず,当然その価格が一般的な価格になるわけではない。
②の事情にある見積書については,品質及び価格等に特殊な条件が付さ
れており,さらには現実的な見積もりといえるかすら疑わしく,②の事情
も,特殊な条件下では低価格で販売する業者もいるという個別事情にすぎ
ない。
③の事情にある不動産鑑定士の算定した価格は,一般的具体的な根拠を
有するとはいえない。
④の事情については,他の都道府県が,何をもって「特別の事情」とし
ているか,他の都道府県における評価基準の細目及び実態が不明であり,
これをもって本件処分における評価が不合理であるとするには,根拠とし
。,,て不十分であるまた他の都道府県が中国産花崗岩を評価するに当たり
原告の提供する見積書のみを基礎資料にしているとすれば,それは,個別
事情を斟酌しているだけで「特別の事情」にはあたらない。,
⑤の事情については,本件において実際に行われた作業工程が一般的な
ものであるとは認められず「特別の事情」には当たらない。,
争点について
ア被告の主張
課税庁は,本件評点基準表に「中国産花崗岩」の評点項目がなかったこ
とから,本件評点基準表に所要の補正を行うか否かの判断を,中国産花崗
岩の一般的な取得価額を参考にする方法により行った。取得価額を参考に
する場合は,当該評価対象家屋における取得価額ではなく,平成13年1
月の東京都特別区における一般的な取得価額を参考にするとされているこ
とから「積算資料」2001年2月号389頁により,平成13年1月,
の東京都特別区における中国産花崗岩の一般的な資材費を確認した。それ
,,「」「」「」「」「」によれば中国産花崗岩は花崗岩床厚20㎜本磨並級品
に分類されており,その資材費は2万0400円であった。本件評点基準
表の評点項目の「花崗岩,並,磨き仕上」における資材費の評点数が1万
9000点であり,物価水準による補正率1.00を乗じて求めた資材費
が積算資料の資材費2万0400円を下回るため,課税庁は特に補正の必
要はないと判断したものであり,本件処分は評価基準に適合したものであ
る。
また,本件石材と同規格の石材について見積書のみ提出され,カタログ
等の証拠すら提出されておらず,前記石材の一般的な市場価格が幾らであ
るかは判然としていない(立証されていない)のであるから,本件石材に
ついて,評点項目及び標準評点数が予定する注文品と大きく異なる市場価
格が形成されていたとは認められない。原告が本件建物を取得した当時,
その床仕上げの施工の結果が花崗岩による床仕上げとして通常期待されて
いるよりも劣る態様であったことはうかがわれない。そうすると,本件石
材は,本件建物の建築当時において,前記評点項目及び標準評点数が予定
する範囲内のものであると評価することができるというべきであり,本件
石材の評価に当たって花崗岩の評点項目「並,磨き仕上」の標準評点数を
付設したことが評価基準の適用を誤ったものとはいえない。
イ原告の主張
本件処分が適法といえるためには,評価基準が本件建物に適切にあては
められていることが大前提となる。評価基準において,再建築費評点基準
表に示されている評点項目が,家屋の建築に当たって使用頻度の高い資材
について示されており,すべての建築資材を網羅していないこと,再建築
費評点基準表に示されている評点項目に係る標準評点数は,標準的な施工
態様により積算されているので,特殊な施工がなされる地方では,その施
工方法が一般的なものと異なるため,評点項目に係る標準評点数がその実
態に適合せず,工事原価と異なる場合も考えられることから,そのような
場合に,新たに評点項目及び標準評点数を追加したり,示されている標準
評点数を修正して再建築費評点基準表に所要の補正を行って適用すること
ができるとされている。このように,評価基準は,すべての工事内容を網
羅していないのであるから,評価基準を適切に適用するためには,形式的
に適用するにとどまらず「所要の補正」を十分に活用する必要がある。,
本件において,本件建物の床仕上げに適用された評点と実際の施工単価と
の間には顕著な差があり,他の都府県では中国産花崗岩を使用した店舗に
ついて「人造石ブロック,テラゾーブロック,タイル」に近似する評価が
されていることからすれば,花崗岩の評点を形式的に適用せず「人造石,
ブロック,テラゾーブロック,タイル」の評点項目を準用する方法で「所
要の補正」が加えられるべきであったのに「所要の補正」がされなかっ,
た。
被告は「所要の補正」の要否を判定する際「積算資料」を唯一の根,,
拠としているが,同誌が一般的な指標になりうるものではない上,同誌の
「花崗岩」の資材費は,中国産花崗岩のうちオーダー品(現場単位で発注
され加工された製品)を調査対象としており,本件建物で使用される規格
()。,品予め工場で一定のサイズに加工された製品には妥当しない被告は
平成15年に新築された物件の一般的な取得価格を検討する際,平成13
年1月時点の価格を基準としているが,最高裁判決(平成15年6月26
日)はこのような考え方を明確に否定しており,同誌によっても平成13
年1月時点から本件建物が新築された平成15年10月までの間に「花崗
岩「並級」の取引価格に大きな変動があったとされており,仮に同誌を」
参照するとしても,平成15年10月時点の価格を参照すべきであった。
被告が本件建物の床仕上げに適用している評点においては「仮据え」,
,「」の工程が予定されているのに対し本件建物の床工事においては仮据え
の工程が取られておらず,一般的にも本件建物と同様の方法で工事がされ
ているケースが多く「仮据え」の工程の有無によって労務費の算定にも,
大きな影響を及ぼすから,労務費の評点に着目しても,本件建物に「花崗
岩」の評点を適用するのは妥当ではない。また,仮に「花崗岩」の評点を
適用する場合であっても,仕上げ内容が評価基準が想定する内容と大きく
,(.)。異なるのであるから減点補正×09などが加えられるべきである
第3当裁判所の判断
1争点について
憲法30条は,国民の総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負う
ことを定め,同84条は,新たに租税を課し,又は現行の租税を変更するには
法律又は法律の定める条件によることを必要とすることを定めている。それゆ
え,課税要件(納税義務者,課税物件,課税標準及び税率等)並びに租税の賦
課徴収に関する手続は法律によって規定されなければならない。
しかしながら,租税法が対象とする経済事象は,極めて多種多様であり,か
つ,激しく変遷するため,これに対応する定めをすべて法律の形式で整えるこ
とは困難である。よって,憲法は,公平な課税を実現するため,一定の範囲で
課税要件及び租税の賦課徴収に関する手続を命令に委任することを許容してい
るというべきである。
もっとも,租税法律主義の原則に照らせば,課税上基本的な事項は法律で定
めることが求められ,命令の定めるところに委任できるのは,技術的,かつ,
細目的な事項に限られると解される。
そこで,これを不動産取得税についてみるに,法は,納税義務者を不動産の
取得者(法73条の2第1項,課税物件を不動産の取得(法73条の2第1)
項,課税標準を不動産取得時の適正な時価(法73条の13第1項,法73)
条5号,税率を3パーセント(法附則11条の2第1項)と定めた上で,不)
動産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を総務大臣の告示に委ねて
いるのであって,法は課税要件のうち,納税義務者,課税物件,課税標準及び
税率といった基本的な事項を定め,不動産の評価の基準,評価の実施方法,そ
の手続といった技術的,かつ,細目的な事項を総務大臣の告示に委任している
にすぎない。
したがって,評価基準について総務大臣の告示に委ねる法388条1項は,
租税法律主義を定める憲法30条,同84条に違反するものではなく,この点
に関する原告の主張は理由がない。
2争点について
租税法律主義は,租税要件を法定することにより,恣意的な課税を防止し,
国民の財産権が不当に侵害されることを防止するとともに,国民の経済生活に
法的安定性と予測可能性を付与することを目的とするものであって,憲法30
条及び同84条は,租税法律主義の原則を規定している。租税法律主義の目的
及び憲法の趣旨にかんがみれば,法律における課税要件の定めは,可能な限り
明確なものでなければならないというべきである。
そこで,これを不動産取得税についてみるに,法は,納税義務者を不動産の
取得者,課税物件を不動産の取得,課税標準を不動産取得時の適正な時価,税
率を3パーセントなどと明確に規定しており,評価基準は,適正な時価を算出
するための技術的,かつ,細目的な基準の定めにすぎないのであるから,評価
基準が低廉な中国産花崗岩資材を想定して定められておらず,同資材の評価が
各都道府県ごとに区々になっているとしても,課税要件の定め自体が不明確で
あるとはいえない。
したがって,不動産取得税の課税要件に関する定めが課税要件明確主義に違
反しているとは認められず,原告のこの点に関する主張も理由がない。
3争点について
不動産取得税の課税標準は,不動産を取得した時における不動産の適正な
時価であり,適正な時価とは,正常な取引条件の下で成立する当該不動産の
取得時におけるその取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解され
る。不動産の取得時において固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録され
ていない不動産については,評価基準によって当該不動産に係る不動産取得
税の課税標準となるべき価格を決定するものとされているところ,評価基準
が定める部分別による再建築費評点数の算出方法は,主観的な個別事情等を
排した家屋の客観的な交換価値を評価する方法として一般的な合理性を有す
るものといえるから,評価基準に従って算出された価格は,評価基準が定め
る方法によっては再建築費を適切に算定することができないなどの特別の事
情が存しない限り,適正な時価であると推認されるべきものである(最高裁
平成11年(行ヒ)第182号同15年7月18日第二小法廷判決・裁判集
民事210号283頁参照。そこで,評価基準が定める評価の方法によっ)
ては再建築費を適切に算定することができない「特別の事情」として原告が
主張する事情について検討する。
原告は,床仕上げの評価について,本件評点基準表の中に広く流通してい
る中国産花崗岩を想定した評点がおかれているか不明であることが「特別,
の事情」として考慮されるべきであると主張する。
しかしながら,評価基準においては,本件評点基準表を適用して家屋の再
建築費評点数を算出するに当たり,本件評点基準表に所要の評点項目及び標
準評点数がないとき,その他家屋の実態からみて特に必要があるときは,本
件評点基準表について所要の補正を行い,これを適用することができる旨定
められており,当該家屋に使用されている資材が本件評点基準表に示されて
いない場合には本件評点基準表に所要の補正をして適用することとなる(乙
3の2。原告の主張するとおり,本件評点基準表には中国産花崗岩という)
表示の評点項目は示されていないが,花崗岩などを使用した床仕上の評点項
目及び標準評点数が示されており,これに所要の補正をして適用すれば,再
建築費を適切に算定できるものであり,原告の主張する事情は「特別の事,
情」には該当しない。
原告は,本件石材について,評価基準の定める資材費評点が石材店,輸入
商社及び施工業者によりなされた見積価格と大きくかい離していることが,
「特別の事情」として考慮されるべきであると主張する。
しかしながら,見積価格は契約当事者の間の個別的な事情の下で提示され
るものである上,石材店,輸入商社及び施工業者によりなされた見積もりの
中には「日本主要港渡し「運賃を含まない「年間契約」を前提とする,」,」,
などの条件が付されているものがあることに照らせば(甲8の1ないし5,
10の1ないし3,原告の主張する見積価格には一般化できない個別的な)
事情による偏差を排除できないおそれがあり,原告の主張する事情は,評価
,「」基準に認められる一般的な合理性を否定する根拠にはならず特別の事情
には該当しない。
原告は,不動産鑑定士が中国産花崗岩を使用した床工事のメーカー見積設
計価格を1平方メートル当たり1万0200円と算定して,国産花崗岩を使
用した場合よりかなり安価にしていることが「特別の事情」として考慮さ,
れるべきであると主張する。
証拠(甲14)によれば,不動産鑑定士山田毅が,原告が大分県内に建設
した別店舗について,中国産御影石G635を使用した床工事のメーカー見
積設計価格を1平方メートル当たり1万0200円であると算出しているこ
とが認められるが,前記見積設計価格が個別事情及び特別事情を排した当事
者間の正常な価格交渉により形成される価格と同一であることを認めるに足
りる証拠はない。よって,原告の主張する事情は,評価基準に認められる一
般的な合理性を否定する根拠にはならず「特別の事情」には該当しない。,
原告は,他の都道府県において本件石材を使用した店舗について「人造,
石ブロック,テラゾーブロック,タイル」相当ないしこれに近似する評価を
した例が存在することが「特別の事情」として考慮されるべきであると主,
張する。
証拠(甲13の1ないし70)によれば,本件石材を使用した部分の床仕
上げについて「人造石ブロック,テラゾーブロック,タイル」相当などと,
評価して,低い評点数を付設している都道府県がある事実が認められるが,
これは,評点項目の「花崗岩」を選択することに問題があることをうかがわ
せるにとどまり,評価基準における評点項目の選択の適否の問題にすぎない
というべきである。よって,原告の主張する事情は,評価基準に認められる
,「」。一般的な合理性を否定する根拠にはならず特別の事情には該当しない
原告は,評価基準において想定される労務内容と実際に行われている労務
内容とが大きく異なっていることが「特別の事情」として考慮されるべき,
であると主張する。
証拠(甲1,2,25,27,28)及び弁論の全趣旨によれば,本件建
物と類似の建物において,仮据え等の工程を省略して床仕上げ工事が行われ
ており,原告においては多数の類似店舗について建築仕様を統一している事
実が認められ,本件建物においても,同様の工程によって床仕上げ工事が行
われたものと推認できるものの,原告が本件建物を取得した当時,その床仕
上げの施工の結果が花崗岩による床仕上げとして通常期待されるものよりも
劣る態様であったことを認めるに足りる証拠はないのであるから,原告が安
価な労務費で足りる工法を採用して床仕上げを行ったとしても,それは不動
産の価格の評価を左右するものではないのであり,原告の主張する事情は,
「特別の事情」には該当しない。
以上のように,原告が主張する事情は,いずれも「特別の事情」に該当す
るものとは認められない。
4争点について
本件において,前記「特別の事情」に該当する事実が認められないので
あるから,評価基準に従って決定された価格が本件建物の「適正な時価」
であると推認されるところ,原告は,本件建物の床仕上げに,花崗岩の評
,「,,」点項目を形式的に適用せず人造石ブロックテラゾーブロックタイル
の評点項目を準用する方法で「所要の補正」をすべきであったなどと主張
している。そこで,本件処分が評価基準に適合しているか否かを検討する。
証拠(甲1,2,3の1ないし4,4,5の1ない3,6,7,8の1
ないし5,9,10の1ないし3,11の1ないし8,12の1ないし4,
13の1ないし70,14,19,20,22,23の1ないし6,24,
25,26の1・2,27,28,乙1,2の1・2,3の1ないし3,
4の1ないし3,5の1・2,7の1ないし3,8の1ないし3,10,
11の1ないし3,12の1ないし3,13の1ないし3)及び弁論の全
趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア原告は,平成15年10月8日に本件建物を新築した。本件建物の床に
は,原告が中国から輸入した本件石材が使用されている。本件石材は,あ
らかじめ中国国内の工場において600ミリメートル角,厚さ20ミリメ
ートルに加工された規格石材である(甲1,乙1)。
イ平成14年1月ころ財団法人経済調査会が発行した「2002建築資材
データベース」には,理邦株式会社が,中国産花崗岩(G635,400
ミリメートル角,厚さ12ミリメートル)につき,最低注文量約600平
方メートル,日本主要港渡しの条件を付けて,1平方メートル当たり24
00円の価格で販売している旨の記事が掲載されていた(甲6)。
平成14年10月ころ財団法人経済調査会が発行した「建築施工単価
’02/10」には,同時期における名古屋通商というメーカーの中国産
(,,)花崗岩G603中国白400ミリメートル角厚さ13ミリメートル
を使用した床工事の材工共の公表価格が1万0700円である旨掲載され
ていた(甲19)。
原告が,平成15年3月31日付け買付注文書に基づき,福建省宏發集
団公司との間で締結した売買契約(平成13年8月15日付けのみかげ石
・大理石売買契約書に基づくもの)においては,本件石材の価格は12米
ドルとされている(甲4)。
原告が平成15年11月ころ作成を依頼した本件石材の見積書において
は,1900円から2350円の見積もりがなされている。ただし「仕,
上げ精度については打合せを要する「日本主要港渡し「降ろす作業」,」,
料は含まない「運賃は含まない」などの条件が付されている(甲8の」,。
1ないし5)
原告が平成16年3月ないし5月ころ作成を依頼した本件石材の見積書
においては,2200円から4950円の見積もりがなされている。ただ
し,年間契約を前提とする,運賃は含まないなどの条件が付されている。
(甲10の1ないし3)
平成16年8月ないし9月ころ,河本工業株式会社,株式会社崎山組,
岡部建設工業株式会社,株式会社加賀田組,佐藤産業株式会社及び山田建
設株式会社が作成を依頼した本件石材の見積書においては,資材費として
2400円から4800円の見積もりがなされている(甲11の1ない。
し8)
ウ本件評点基準表に示されている評点項目は,非木造家屋の構造に応じ,
非木造家屋の各部分ごとに一般に使用されている資材の種別及び品等,施
工の態様等の区分によって標準評点数を付設するための項目として設けら
れているものである。
事務所,店舗及び百貨店用建物について適用される本件評点基準表にお
いては,床仕上げの部分の評点項目として大理石,花崗岩及び人造石ブロ
ック(セメントに砂や砕石,砂粒及び顔料を混合し,水で練り固めて成型
したブロック状の製品をいう)などが設けられている。磨き仕上げ(材。
料の表面を研磨し光沢を出す仕上げをいう)の花崗岩については,上,。
中,並の3つの項目に分けられている。前記評点項目「並」の花崗岩の標
準評点数は2万9350点であり,資材費評点数1万9000点,労務費
評点数9847点,下地その他の評点数506点から成る(合計点は10
点未満切捨て(乙2の2,5の2,11の2))。
本件評点基準表に示されている標準評点数のうち資材費については,財
団法人経済調査会が発行する「積算資料(以下「積算資料」という)」。
及び財団法人建設物価調査会が発行する「建設物価」に掲載されている価
格のうち,平成13年2月号に掲載されている価格を基礎として定められ
ている。その積算資料によれば,花崗岩のランクは,上級品,中級品及び
並級品に区別され,本件石材と同じ厚さ(20ミリメートル)で本磨き仕
上げの花崗岩のうち最も安価な並級品の1平方メートル当たりの価格は,
平成13年1月時点において,仙台市のものは2万1400円,東京都の
ものは2万0400円であった。この価格は,国産及び中国産(福建省産
のものを含む)の花崗岩を対象とするものであるが,現場単位で発注さ。
れた寸法に応じて加工される注文品を対象とするものであり,あらかじめ
工場で一定の寸法に整えられた規格石材を対象とするものではない(甲。
20,乙4の2,8の2)
そして,積算資料によれば,本件石材と同じ厚さで本磨き仕上げが施さ
(。)(),れた花崗岩並級品国産及び中国産を含むの価格仙台市のものは
その後下落し,1平方メートル当たり,平成13年11月ころからは1万
8100円,平成14年2月ころからは1万5900円,同年5月ころか
らは1万4400円,同年8月ころから平成15年8月までは1万270
0円,平成15年11月からは1万1900円となっていた(甲20,。
乙10,弁論の全趣旨)
前記認定事実によれば,本件評点基準表に設けられた評点項目は,各部
分ごとに一般に使用されている資材の種別及び品等,施工の態様等の区分
によって標準評点数を付設するための項目として定められたものであると
いうのであるから,各部分の資材の種別及び品等,施工の態様等が,ある
評点項目及び標準評点数の予定する範囲内のものであると評価することが
できる限り,当該評点項目の標準評点数を付設することができるというべ
きである(最高裁平成18年(行ヒ)第283号同19年3月22日第一
小法廷判決参照。)
これを本件についてみるに,前記のとおり,中国産花崗岩のカタログ価
格や公表価格が掲載された公刊物の中には,本件石材とは異なる寸法の規格
石材の価格が記載されたものが存在するが,本件石材と同じ寸法の規格石材
のカタログ価格及び公表価格が記載された資料は提出されていないし,見積
書は契約当事者間の個別的な事情の下で作成されるものである上,原告が作
成を依頼した見積書には特殊な条件が付され,原告以外の会社が作成を依頼
した見積書は平成16年8月ないし9月に作成されているため,前記見積書
はいずれも本件建物が建築された平成15年10月当時の一般的な市場価格
を反映したものとはいえない。したがって,以上の資料をもってしては,原
告が本件建物を取得した平成15年10月当時において,本件石材と同じ寸
法の規格石材の一般的な市場価格を推定できず,本件石材について,注文品
の価格を掲載している積算資料に記載されていた花崗岩並級品(中国産を含
む)の価格と大きく異なる市場価格が形成されていたとみることはできな。
い。
しかしながら,本件評点基準表に定められた評点項目「花崗岩,並,磨き
仕上」が前提とする資材費の標準評点数は1万9000点であるのに対し,
平成14年7月以降に発行された積算資料に掲載されていた花崗岩並級品
(中国産を含む)の価格(仙台市のもの)は,1平方メートル当たり1万。
2700円となっており(なお,東京都特別区における価格は,1平方メー
トル当たり1万2400円である。甲20,さらにその後の平成15年1)
1月からは1万1900円と下落している。
そこで,前記資材費の標準評点数1万9000点と前記花崗岩の価格1万
,,2700円と比較検討してみると数値的に約3割以上の下落が生じており
しかも下落はその後も継続することが見込まれる状況にあったから,前記下
落の程度は,本件建物の評価に当たり,軽視できないものであるということ
ができ,前記資材費の標準評点数は,前記花崗岩の価格とはその水準を異に
することが明らかである。
そうすると,本件石材についての標準評点数の付設に関しては,本件建物
が建築された平成15年10月当時,前記資材費の標準評点数の予定する範
囲内にあったとは評価できず,前記資材費の標準評点数をそのまま付設する
ことはできないというべきである。この点において,前記資材費の標準評点
数をそのまま付設して本件石材が使用された床仕上げ工事を評価した本件処
分は評価基準に適合したものとはいえない。
,,したがって本件石材が使用された床仕上げ工事を評価するに当たっては
本件評点基準表に所要の補正を加える必要があるところ,本件石材について
の資材費評点数を前記花崗岩の価格に対応して1平方メートル当たり1万2
700点と付設すべきである。
そして,前記3のとおり,本件建物の床仕上げ工事において仮据え等の
工程が省略されたと推認できるものの,施工の結果が花崗岩による床仕上げ
として通常期待されるものよりも劣る態様であったことを認めるに足りる証
拠はないのであるから,労務費評点数及び下地その他の評点数については,
本件評点基準表に定められた評点項目「花崗岩,並,磨き仕上」の評点数と
同じ1万0353点と付設すべきである。
以上により本件建物の床仕上げに付設すべき評点数は2万3050点(1
0点未満切捨て)となる。
被告は,課税庁が平成13年1月の東京都特別区における中国産花崗岩の
取得価額を参考にして本件評点基準表に所要の補正をするか否かを判断した
ところ,その中国産花崗岩の取得価額が2万0400円であり,本件評点基
準表に定められた評点項目「花崗岩,並,磨き仕上」における資材費の評点
数1万9000点がこれを下回ったため,所要の補正が行われなかったので
あり,本件処分は評価基準に適合したものである旨主張する。
,,,しかしながら本件建物の各部分の資材の種別及び品等施工の態様等が
本件評点基準表に設けられた評点項目及び標準評点数の予定する範囲内のも
のであると評価できなければ,当該評点項目の標準評点数を付設することが
できず,本件評点基準表について所要の補正を加える必要があると解される
ところ,本件建物が建築された平成15年10月当時における花崗岩並級品
(。),中国産を含むの価格や花崗岩並級品の価格の下落状況にかんがみれば
本件石材が,本件評点基準表に設けられた「花崗岩,並,磨き仕上」の評点
項目及び標準評点数の予定する範囲内のものであるとは評価できないのであ
るから,所要の補正を加える必要があったといわざるをえない。
したがって,本件処分が評価基準に適合しているとは認められず,被告の
前記主張は理由がない。
原告は,本件建物の床仕上げの評価に当たって「人造石ブロック,テラ,
ゾーブロック,タイル」の評点項目を準用する方法で「所要の補正」が加え
られるべきであった旨主張する。
しかしながら,本件評点基準表に設けられた評点項目「人造石ブロック,
テラゾーブロック,タイル」の標準評点数は1万1200点であり,資材費
評点数4050点,労務費評点数6780点,下地その他の評点数379点
から成り立っている(合計点は10点未満切捨て)ところ(乙5の2,原)
告が本件建物を取得した平成15年10月当時において,本件石材が,前記
評点項目の標準評点数が前提とする資材費評点数とほぼ同じ水準であったこ
とを認めるに十分な資料はないし,ことに,本件建物の床仕上げ工事におけ
る施工の結果が花崗岩による床仕上げとして通常期待されるものよりも劣る
態様であったとは認められないのであるから,本件建物の床仕上げの評価に
当たって「人造石ブロック,テラゾーブロック,タイル」の評点項目を準,
用して,本件建物の床仕上げについて1万1200点の評点数を付設すべき
であったとはいえない。よって,原告の前記主張も理由がない。
5小括
以上の判断を前提とすると,本件建物の評価は以下のとおりとなる。
本件石材を使用した床仕上げ工事の施工割合が98パーセント(乙1,そ)
の評点数が2万3050点であり,角タイル・200ミリメートル・色物を使
用した床仕上げ工事の施工割合が1パーセント,その標準評点数が1万031
0点であり(乙1,合成樹脂塗・塩化ビニルを使用した床仕上げ工事の施工)
割合が1パーセント,その標準評点数が1960点であり(乙1,面積等に)
よる連乗補正割合が0.98であるから(乙1,本件建物における床仕上げ)
の1平方メートル当たりの評点数は,次のとおり,2万2257点(1点未満
切捨て)となる(乙13の2。)
23,0500.9810,3100.011,9600.010.9822,257(×+×+×)×=
したがって,本件建物の再建築費評点数は,別紙「評点数一覧表」中の「再
建築費評点数」記載のとおり,9639万9312点となるから(乙1,13
の2,これに1点当たりの価格1円10銭を乗じ,1000円未満を切り捨)
てると,同「課税標準額」欄記載のとおり,1億0603万9000円が課税
標準額となる(法20条の4の2第1項。これに標準税率100分の3(法)
附則11条の2第1項)を乗じ,100円未満を切り捨てると(法20条の4
の2第3項,同「税額」欄記載のとおり,318万1100円が本件建物の)
不動産取得税の税額となる。
第4結論
以上の次第であるから,原告の請求は,本件処分のうち,課税標準額1億06
03万9000円,納付すべき税額318万1100円を超える部分の取消しを
求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却すべき
である。
よって,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文
を適用して,主文のとおり判決する。
山形地方裁判所民事部
裁判長裁判官片瀬敏寿
裁判官鈴木和典
裁判官田中良武
物件目録
所在山形県寒河江市ab番地
家屋番号未登記
種類店舗
構造鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺平家建
床面積1147.37平方メートル
評点数一覧表
延床面積1147.37平方メートル
計算単位が延床面積以外のもの計算単位が延床面積によるもの評価項目
16,086,624主体構造部
1,948基礎
3,550外周壁骨組
783間仕切骨組
2,481外部仕上
2,668内部仕上
22,257床仕上
3,444天井仕上
4,319,906屋根仕上
5,107,973建具
24,547,125建築設備
1,591仮設工事
1,664その他の工事
50,061,62840,386合計①②
1147.3796,399,312再建築費評点数①+②×=⑤
1.11点当たりの価格⑦
106,039,243評価額⑤×⑦=
106,039,000課税標準額⑨
0.033,181,170税額⑨×=

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