弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決および第一審判決を破棄する。
     被告人らは無罪
         理    由
 被告人A本人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法
四〇五条の上告理由にあたらない。
 被告人両名の弁護人松岡良俊の上告趣意は、判例違反を主張するが、引用の判例
は、本件と事案を異にして適切でないから、所論は、その前提を欠き、また、憲法
三一条、三九条違反を主張するが、実質は、単なる法令違反の主張であり、その余
は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたら
ない。
 しかし、所論にかんがみ職権をもつて調査すると、原判決が、公職選挙法一三八
条一項にいう「戸別訪問」には、候補者もしくは選挙運動者が、選挙人の居宅また
は屋外の敷地内に立ち入る意思がなく、終始道路上にあつて、たまたま屋外の敷地
内に出ていた選挙人に声をかけ、投票を依頼する場合も含まれるとした判断は、こ
れを是認し難いものと考える。
 けだし、公職選挙法が戸別訪問を禁止する所以のものは、およそ次のとおりであ
ると考えられる。すなわち、一方において、選挙人の居宅その他一般公衆の目のと
どかない場所で、選挙人と直接対面して行なわれる投票依頼等の行為は、買収、利
害誘導等選挙の自由公正を害する犯罪の温床となり易く、他方、選挙人にとつても、
居宅や勤務先に頻繁に訪問を受けることは、家事その他業務の妨害となり、私生活
の平穏も害せられることになるのであり、それのみならず、戸別訪問が放任されれ
ば、候補者側が訪問回数を競うことになつて、その煩に耐えられなくなるからであ
る。
 しかしながら、本件被告人らのように、選挙人の居宅またはその敷地内に立ち入
る意思は全くなく、それまで連呼行為に使用していた自動車を乗り入れることがで
きない道路に来たため、下車して、部落内の道を徒歩で廻りながら、路上で出会つ
た者や、たまたま居宅の屋外の敷地内に出ていた者に声をかけて投票を依頼したに
すぎない場合には、戸別訪問から生ずるとされる前記弊害と結びつくおそれはなく、
このような行為まで、公職選挙法が禁じているものとは解し難い。もつとも、行為
者が終始道路上にあつたとしても、屋内にいる選挙人をわざわざ呼び出して投票を
依頼すれば、私生活の平穏を害するおそれがあり、戸別訪問罪が成立すると解して
よいであろう。
 原判決は、第一審判決判示(7)のB方、(8)のC方ならびに(9)のD方の
所為については、いずれも同人らが居宅の屋内にいたのを被告人らが呼び出したも
のと認定している。しかし、右D方の件については、原判決の是認した第一審判決
は、同人は用便のため、自ら屋外に出ていたものであると認定しているのであり、
B方の件も、同人は第一審の証人として、子供と一緒に屋外で鳩を見ていたところ
に被告人らが来た旨供述しているのであつて、C方の件を除いては、被告人らが、
屋内にいる選挙人をわざわざ呼び出して投票を依頼したものと認めるに足りる証明
はないものというべきである。また、右三名を除く他の六名については、一、二審
判決ともに、いずれも、屋外の敷地内に出ていた同人らに、被告人らが声をかけた
ものであると認定しているのであつて、前記の理由により、これを戸別訪問にあた
るとすることはできない。
 そうすると、本件起訴にかかる被告人らの所為のうち、前記C方の一件を除いて
は、いずれも戸別訪問の要件を満たさないことになり、また、およそ、戸別訪問罪
が成立するためには、少くとも二戸以上を訪問することが必要であると解すべきで
あるから、本件被告人らの所為は、公職選挙法一三八条一項に該当しないものとい
うべきである。
 しかるに、被告人らについて、同条違反の罪の成立を認めた第一審判決およびこ
れを是認した原判決には、事実誤認および法令の解釈適用をあやまつて、被告事件
が罪とならないのにこれを有罪とした違法があり、判決に影響を及ぼすことが明ら
かであるから、刑訴法四一一条一号、三号により、これを破棄しなければ著しく正
義に反するものと認める。
 よつて、刑訴法四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三六条により、裁判官全
員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 山本清二郎公判出席
  昭和四三年一一月一日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛