弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 弁護人豊田孝知の陳述した控訴の趣旨は同弁護人提出の控訴趣意書記載の通りで
あるから茲にこれを引用する。
 控訴の趣旨第一点(1)について
 記録を精査するに被告人等の原審に於ける供述(自白)が錯誤に基くもの又は虞
偽の自白と認めるに足る資料がない。各被告人の供述内容、各供述を各比較対照し
検討するに原審における被告人等の供述が錯誤に基くもの又は虚偽の自白とは認め
られない。
 論旨は理由がない。
 同第一点(2)について、
 原判決挙示の証拠を綜合すると判示事実を認めることが出来る。被告人が昭和二
十年九月頃から判示拳銃を所持していたとしても、銃砲等所持禁止令が施行になつ
たのは昭和二十一年六月十五日であるから同日以後の所持を不法所持であると認定
することは正当である。
 論旨は理由がない。
 同第一点(3)について
 被告人Aが昭和二十年九月頃本件拳銃を取得し天井裏に匿しておき昭和二十三年
三月上旬頃まで忘れていたとしても所持の意思を以てこれを取得し自己支配内であ
る個所に匿しておいた以上所持したと認めるに十分である。
 論旨は理由がない。
 同第二点に付いて。
 本件拳銃が甚だ小型で骨董品、美術品として、或は有害鳥獣駆除上、許可を申請
すれば許可される可能性があつたとしても許可を得ず所持した以上不法所持となる
ことは議論の余地のないところである。
 昭和二十三年二月二十四日附米国第八軍司令部の日本政府警保局長宛「日本の刀
剣並に銃砲の回収、類別及処分」と題する指令は捜査機関に対する行政命令であり
銃砲等所持禁止令の効力を左右するものでなく右指令指定の昭和二十三年六月一日
迄に許可申請をした場合訴追を見合わされるにすぎない(最高裁判所昭和二十四年
五月十四日言渡同年(れ)第一九一五号事件判決)故に許可を得ず判示拳銃を所持
した以上前記指令の存在に拘らず銃砲等所持禁止令違反の罪を構成することは明ら
かである。
 原判決挙示の証拠を綜合すると被告人Bの判示事実を認定することが出来る。原
判決に事実の誤認はない。
 論旨は総て理由がない。
 同第三点に付て
 鑑定人C作成の鑑定書によると本件拳銃が銃砲等所持禁止令第一条同令施行規則
第一条に所謂弾丸発射<要旨>の機能を有する装薬銃砲であることが明らかである。
所論の如く本件拳銃がオーストラリヤ製小型自動拳銃であつてこれに装填す
る弾丸が入手すること不可能のものであり今後使用することが出来ず実害を生ずる
虞のないものであつても本件拳銃が前記銃砲たることの妨げとなるものではない。
 論旨は理由がない。
 同第四点について、
 原判決には何等理由を附してないから違法である旨主張されているが原判決書に
は罪となるべき事実を掲げこれを認定するに至つた証拠を挙示してあるから判決に
理由を附さない違法はない。弁護人の右主張が、各証拠の具体的内容を挙示してい
ないから違法であるというのであればその当らないこと刑事訴訟法第三百三十五条
第一項の規定に徴し明らかである。
 論旨は理由がない。
 他に原判決を破棄すべき理由がないから刑事訴訟法第三百五十六条に則り本件控
訴を棄却することとし主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 仲地唯旺 裁判官 青木亮忠 裁判官 藤田哲夫)

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