弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 大阪高等検察庁検事長代理次席検事安西光雄の上告趣意第一点について。
 そもそも、横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託
の任務に背いて、その物につき、権限がないのに、所有者でなければできないよう
な処分をする意思をいうのであり、必らずしも、占有者が自己の利益の取得を意図
することを必要とするものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭
和二三年(れ)第一四一二号、同二四年三月八日第三小法廷判決、集三巻三号二七
六頁、昭和二三年(れ)第九三〇号、同二四年六月二九日大法廷判決、集三巻七号
一一三五頁)。従つて、他人の金員を保管する者が、所有者の意思を排除して、こ
れをほしいままに自己の名義をもつて他に預金するが如き行為は、また、所有者で
なければできないような処分をするに帰するのであつて、場合により、横領罪を構
成することがあるのは、論旨のいうとおりである。
 しかしながら、右の如き保管者の処分であつても、それが専ら所有者自身のため
になされたものと認められるときは、不法領得の意思を欠くものとして、横領罪を
構成しないことも、また、当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)
第五〇五二号、同二八年一二月二五日当小法廷判決、集七巻一三号二七二一頁)。
 本件につき、原判決の判示するところを見るに、本件電気料金の預金は、専ら、
会社側のためにする保管の趣旨の下になされたものと認められ、その保管の安全を
期する点に主たる目的があつたというのであり、この判断は、原判決が証拠によつ
て適法に確定した諸般の事情から十分首肯できるところである。すなわち、原判示
によれば、いわゆる集金ストに代え、特に、本件納金ストを実施するに当つては、
組合側は銀行に対し納金スト実施の経緯を説明し、争議解決後は、直ちに、預金を
電力会社に返還すること、また、争議中は預金の引き出しは一切これを行わないこ
との条件で、すなわち、電気料金を一時保管の意味で、A分会執行委員長B名義で
預金したい旨を申出た事実、組合側はC配電局における会社側利益代表者に対し納
金ストを実施している旨を何回となく伝えているという事実、本件預金が従来会社
と取引関係のある銀行になされていた事実、会社側がいわゆる業務命令を発するや、
組合側においても、納金スト中止指令を出し、本件預金はそのまま全額が会社口座
に返還せられるに至つた事実が認められるというのであるから原判決が、本件につ
き、被告人らに不法領得の意思がないものと判断したのは相当であり、本件が労働
争議の手段としてなされたとの一事をもつて、直ちに、被告人らに不法領得の意思
があつたものと推断することはできない。
 所論は、原判決の大審院判例違反をいうけれども、右に述べたところによつて明
らかなとおり、横領罪の主観的構成要件たる不法領得の意思に関しては、論旨引用
の大審院諸判例のほかに、既に、前記の如き最高裁判所の判例があるのであつて(
それが必らずしも大審院の判例を変更したものでないことは、論旨の自ら認めると
おりであり)、原判決は前示当裁判所の判例の趣旨に従つて判断していると認めら
れることその判文上明らかであるから、所論判例違反の主張は採用することができ
ない。
 同第二点について。
 所論は、原判決の生産管理の違法性に関する当裁判所の判例違反をいうけれども、
原判決は本件納金ストが正当な争議行為の範囲内のものであるか否かについては、
何ら判断を加えていないのであり、業務上横領または同幇助として起訴を見た本件
につき、被告人らには不法領得の意思がないものとして横領罪の成立を否定する以
上、敢えて、進んで、被告人らの行為が正当争議行為の限界を逸脱したものか否か
を論議する要のないものであることは、原判示のとおりであるから、、所論は原判
示に副わない主張であつて、前提を欠き、採用できない。
 同第三点について。
 所論は、原判決の理由そご、経験則違背、事実誤認をいうに過ぎず、刑訴四〇五
条の上告理由にあたらない。
また記録を調べても、本件につき、同四一一条を適用すべき事由ありとは認められ
ない。
 よつて、同四一四条、三九六条に則り、裁判官全員一致の意見で、主文のように
判決する。
検察官宮崎三郎および同神山欣治公判に出席
  昭和三三年九月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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