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平成24年11月29日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官
平成23年(ワ)第9836号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日平成24年9月6日
判決
原告明杏産業株式会社
同訴訟代理人弁護士久保田理子
被告ユニチカトレーディング
株式会社
同訴訟代理人弁護士村上創
同松本久美子
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(1)被告は,原告に対し,1億2561万5295円及びこれに対する平成
23年6月3日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
(3)(1)につき仮執行宣言
2被告
主文同旨
第2事案の概要
1前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者
原告は,原糸の加工及び販売等を目的とする株式会社である。
被告は,繊維原料並びに各種繊維製品の製造,加工,売買及び輸出入等を
目的とする株式会社である。
(2)原告及び被告間の取引
ア原告は,かねてより,被告から直接又は他社を介して135D(デ
ニール:糸の太さの単位)の原糸を仕入れ,これを染色した上で,「ソ
フィーナ135D」の名称の下,ユニフォーム用ネクタイ等の原材料と
して販売していた。
「SOFINA」「ソフィーナ」は,糸を指定商品とする被告の登録商標
(以下「本件商標」という。)であり,原告は上記販売につき,被告か
ら本件商標の通常使用権の許諾を受けていた。
イ原告は,このほか,被告から,40Dの黒色原糸も仕入れ,「ユニチ
カ40」の名称で,その販売も行っていた。
(3)東レ75D原糸の取扱い
一方,原告は,かねてより,東レ株式会社又はその関連会社から,75D
の原糸(以下「東レ75D原糸」という。)を仕入れ,同じく染色した上で,
その販売を行っていた。
(4)サンプル帳へのシール貼付
被告は,平成18年8月の前から,「ソフィーナ135D」のサンプル帳
(乙1。以下「本件サンプル帳1」という。)を作成し,原告に提供してい
た。本件サンプル帳1の表面には,中央付近右寄りの箇所に,上から
「DYEDYARNFORNECKWEAR」「SOFINA®」「POLYESTER
WOOLLY135D」「COLORSAMPLE」の順で4段の表示がされ,さらに底
辺部には原告及び被告の会社名が記載されていたが,原告は「COLOR
SAMPLE」の表示の下方に,「POLYESTERWOOLLY75D」と記載された
シールを貼付した上で,顧客に配布した。
被告は,平成19年,新たにサンプル帳(乙2。以下「本件サンプル帳
2」という。)を作成し,有限会社シモムラ(以下「シモムラ」という。)
を介して,原告に提供した。本件サンプル帳2の表面には,上から「DYED
YARNFORNECKWEAR」「SOFINA®」「POLYESTERWOOLLY」
「150dtex(135D)84dtex22dtex」「COLORSAMPLE」の順で5段の表示
がされ,さらに底辺部には被告の会社名のみが記載されていたが,原告は,
当該記載の上方に,原告の会社名とあわせて「ソフィーナ135D・75
D」と記載されたシールを貼付した上で,顧客に配布した。
(5)取引の停止
被告は,平成20年3月以降,原告に対して原糸の販売を行っていない。
(6)原告から被告に対する申入れ
原告は,被告に対し,平成22年12月28日付の「通知書」と題する書
面にて,(5)の取引停止が原告に対する債務不履行及び不法行為に当たると
して,損害賠償を求めたが,被告は,原告に対し,平成23年1月19日到
達の書面にて,その求めには応じられない旨回答した(甲3)。
2原告の請求
原告は,被告において,継続的な取引契約に基づき,135D原糸及び40
D黒色原糸を原告に販売すべき義務を負っていたにもかかわらず,平成20年
3月以降,この義務に反してその販売を停止したとして,被告に対し,債務不
履行に基づき,1億2561万5295円の損害賠償及びこれに対する催告後
である平成23年6月3日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅
延損害金の支払を求めている。
3争点
(1)被告の債務不履行の有無(争点1)
(2)原告の損害(争点2)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(被告の債務不履行の有無)について
【原告の主張】
(1)原糸を継続的に供給すべき義務
ア「ソフィーナ135D」は,昭和59年ころ以降,被告が提供する原糸
に,原告が染色加工することで作り上げた商品である上,被告は,原告
がこれを販売するに当たり,本件商標の通常使用権を許諾した。
このような背景の下,長期間に亘って被告から原告に対し,「ソ
フィーナ135D」の原料である135D原糸が販売されてきたという
経過に照らせば,被告は,原告に対し,135D原糸を継続的に供給す
る義務を負っていたというべきである。
イ40D黒色原糸も,原告と被告が協力して作り上げた商品であり,また,
被告は,ネクタイを用途としたものとしては,原告にのみ同糸の使用を
認めていた。
このような背景の下,長期間に亘って被告から原告に対し,40D黒
色原糸が販売されてきたという経過に照らせば,被告は,原告に対し,
40D黒色原糸を継続的に供給する義務を負っていたというべきである。
(2)商標の不正使用の有無
ア原告において,東レ75D原糸を素材とする染色糸に係る告知のため,
本件商標が付された本件サンプル帳1に75D染色糸の記載をしたシー
ルを貼付していたことは事実であるが,これは被告の了解を得て長年
行っていたことである。被告からの抗議を受けて謝罪したことがあるが,
それはメーカーと取引先という力関係ゆえであったし,また,謝罪の趣
旨は,誤解を与えたことに対するものであって,東レの原糸を素材とし
た染色糸をソフィーナとして販売したことを認めたわけではない。
イ被告は,原告において,本件商標を使用して,東レ75D原糸を素材
とした染色糸を販売した旨主張するが,そのような事実は一切ない。原
告は,染色糸を販売するに当たり,請求書等でもソフィーナと東レとを
明確に区別していたし,顧客へも製造元に関する説明を行っていた。
また,原告が,本件サンプル帳2に原告名を記載したシールを貼付し
たのは,本件サンプル帳に原告名の記載がなかったためであり,また,
同シールに「ソフィーナ135D・75D」と記載したのは,被告から
の求めに応じ,被告からも75D原糸を仕入れることとしたためである。
現に原告は,平成19年12月には,シモムラから,被告製の75D染
色糸13色を各12Kg仕入れ,在庫として準備していた。
ウしたがって,原告には商標の不正使用はなく,原告との取引を停止す
る正当な理由はない。また,継続的な供給取引を恣意的に停止すること
は,権利の濫用であるともいえる。
【被告の主張】
(1)原糸を継続的に供給すべき義務
被告は,原告との間で,135D原糸と40D黒色原糸を継続的に供給す
る旨の契約書等を交わしたことはない。原告は,被告において,これら原糸
の継続的供給義務を負っている旨主張するが,法的根拠や義務発生時期が不
明である。
したがって,そもそも被告は原告に対し,135D原糸と40D黒色原糸
を継続的に供給する義務など負っていなかった。
(2)商標の不正使用の有無
ア原告は,シールの貼付につき,被告から承諾を得ていた旨主張するが,
否認する。競合他社の製造する糸を原糸とする染色糸について,本件商標
の使用を承諾するはずがないし,そもそも本件サンプル帳1へのシール貼
付が発覚した際,そのような主張がされることはなかった。
イ原告は,平成18年8月に東レ75D原糸を販売しながら,被告に無断
で,本件サンプル帳1に75Dを表示したシールを貼付した。
原告は,このことが問題とされた以降も,平成19年3月ころ,東レ7
5D原糸を扱う一方,被告製の75D原糸を販売していなかったにもかか
わらず,再び被告に無断で,本件サンプル帳2に「ソフィーナ135
D・75Dメイキョウco.,Ltd.」とのシールを貼付した上,被告から,被
告の75D原糸にシフトしないのであればシールを直ちに剥がすよう再三
求められていたにもかかわらず,それに応じなかった。
この点,原告は,本件サンプル帳2に関し,仮に顧客からソフィーナ7
5Dの注文があれば,これを仕入れて販売することとしていたなどと主張
するが,実際に被告製の75D原糸が使用された染色糸が原告の顧客に販
売された事実はなく,このサンプル帳に基づき東レ75Dの染色糸を販売
したことに変わりはない。原告は,平成19年12月になって初めて,被
告から75D染色糸のサンプルを購入した程度で,被告製の75D原糸へ
積極的に切り替えていくという態度を有していなかったのである。
ウ原告と被告との信頼関係は,このような原告の行為によって破壊された
のであるから,取引停止に正当な理由があることは明白である。
2争点2(原告の損害)について
【原告の主張】
原告は,被告の債務不履行により,以下のとおり,●年分の得べかりし利益
を失った。その合計は,以下のとおり,1億2561万5295円(●●●●
●●●●●円×●年)である。
(1)平成20年の取引実績によると,ソフィーナ135Dは,1Kg換算で,
仕入額(染色代を含む)が●●●●円,平均売上が●●●●円で,粗利は●
●●円である。同様に,ユニチカ40は,1Kg当たり仕入額が●●●●円,
平均売上が●●●●円で,粗利は●●●円である。
(2)供給打ち切り前の平成15年から平成19年までの原告の仕入量はソ
フィーナ135Dが年当たり●●●●●●●●Kg,ユニチカ40が●●●
●●●Kgであるため,前記(1)の粗利単価からすると,売上利益は,ソ
フィーナ135Dが年当たり●●●●●●●●●円,ユニチカ40が●●●
●●●●●円となり,両者による原告の売上利益は平均●●●●●●●●●
円である。
〔計算式〕
●●●●×(●●●●●)+●●●●×(●●●●●●●)=●●●●●
このことは,平成21年の決算において,供給打ち切りの影響のなかった
平成19年の決算に比し,●●●●●●●●●円の減益となっていることか
らも裏付けられる。
【被告の主張】
原告の主張する事実関係については不知であり,損害発生の主張は争う。
第4当裁判所の判断
1争点1(被告の債務不履行の有無)について
(1)はじめに
前提事実,証拠(甲3~6,甲8の1・2,甲17,18,乙4,証人P
1,証人P2,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,平成元年ころから,
被告が原告に135D原糸及び40D黒色原糸を供給し,原告がその売買代
金を支払うとの関係が継続してきたこと,しかも,原告は,当該135D原
糸を染色した製品の販売において,本件商標の通常使用権の許諾を受けてい
たことが認められるが,このような事実関係に照らせば,契約書こそ交わさ
れていないものの,原告と被告との間には,平成元年ころ,被告から原告に
対し,135D原糸及び40D黒色原糸を継続的に供給し,原告がその対価
を支払うとの期限の定めなき継続的売買契約が成立したものと認めるのが相
当である。
ところで,被告は,原告に対する135D原糸及び40D黒色原糸の供給
を平成20年3月に停止した。この点,被告は,原告による本件商標の不正
使用により,原告及び被告間の信頼関係が破壊されたため,取引停止に正当
な理由がある旨主張するが,この主張は,原告による本件商標の不正使用が
債務不履行に当たり,被告に継続的売買契約の解除権が発生し,被告はその
解除権の行使として取引を停止したとの趣旨,あるいは,同様の事情が期限
の定めなき継続的売買契約を解約するための正当な事由に当たり,かかる解
約権の行使として取引を停止したとの趣旨と解される。
この点につき,当裁判所は,原告において,かかる解除権を発生させるよ
うな債務不履行があったといえると判断する。理由は,以下のとおりである。
(2)取引停止に至る経緯
前提事実,証拠(甲3~6,甲16の1~4,甲17,18,乙1,2,
4,証人P1,証人P2,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以下の
事実が認められる。
ア被告は,平成18年8月の前から,本件サンプル帳1を作成し,原告に
提供していた。本件サンプル帳1の表面には,中央付近右寄りの箇所に,
上から「DYEDYARNFORNECKWEAR」「SOFINA®」
「POLYESTERWOOLLY135D」「COLORSAMPLE」の順で4段の表
示がされ,さらに底辺部右寄りには原告及び被告の会社名が記載されて
いたが,原告は「COLORSAMPLE」との表示の下方に,「POLYESTER
WOOLLY75D」と記載されたシールを貼付した上で,顧客に配布した。
しかし,当時原告が仕入れていた75D原糸は,すべて東レ75D原糸
であり,被告からの仕入れはなかった。
被告は,平成18年8月29日,原告に対し,本件サンプル帳1に上
記のようなシールを貼付することは,本件商標を使って東レ75D原糸
を素材とする製品を販売するもので,商標の不正使用に当たるとして抗
議するとともに,本件サンプル帳1の回収を求めた(甲4)。これに対
し,原告は,同年9月,被告に対し,上記シール貼付を認めた上で,
「全く弊社ミスで,故意に東レの原糸を,ユニチカ『ソフィーナ』とし
て販売したつもりは全くありません。得意先にも東レ75として報告し
ていたつもりですが,確かに誤解を与えてしまったことは,弊社の不徳
の致すところです。」「貴社に対し大変ご迷惑おかけ致しました事を,
重ね重ねお詫び申し上げます。」などと記載した書面(甲6)を送付し
た。原告は,同月,顧客に対しても「サンプル帳シールの件」と題する
書面(甲5)を送付し,上記シール貼付が商標不正使用に当たる旨被告
から指摘があったことを知らせるとともに,本件サンプル帳1を返却す
るか,上記シールをはがすよう依頼した。
イその後原告は,被告から,原告の販売する75D染色糸の原糸として,
被告の75D原糸を仕入れるよう求められた。原告は,この求めに応じ
ることも検討するとしたが,一方で,東レ75D原糸の仕入れやその染
色糸の販売は従前どおり継続した。
ウ被告は,平成19年10月,新たに本件サンプル帳2を作成し,シモム
ラを介して,原告に提供した。本件サンプル帳2の表面には,中央付近
右寄りの箇所に,上から「DYEDYARNFORNECKWEAR」
「SOFINA®」「POLYESTERWOOLLY」「150dtex(135D)84dtex
22dtex」「COLORSAMPLE」の順で5段の表示がされ,さらに底辺部右
寄りには被告名が記載されていたが,原告名は記載されなかった。しか
し,原告は,被告名記載の上方に,原告名とあわせて「ソフィーナ13
5D・75D」と記載されたシールを貼付した上で,同月以降顧客に配
布したが(乙2),このようなシール貼付につき,被告へは報告せず,
その承諾を得ることもなかった。また,本件サンプル帳2には,サンプ
ルとして144色分の染色糸が添付されていた。
原告が本件サンプル帳2を顧客に配布し始めた平成19年10月の時
点で,原告が被告の75D原糸を仕入れたことはなく,その在庫はな
かった。原告は,同年12月に,シモムラから,被告の75D原糸を
使った染色糸を13色分,各12Kg仕入れたが,色味,風合いともに十
分でないとの感想を持った。これら13色分の染色糸は,顧客に販売さ
れることのないまま,すべて原告の在庫として残っている。他に原告が
被告の75D原糸あるいはこれを使った染色糸を仕入れたことはない。
エ被告は,平成20年3月,原告による本件サンプル帳2の使用が,本件
商標の不正使用に当たると考え,原告に対する135D原糸及び40D
黒色原糸の供給を停止した。
(3)検討
前記(1)のとおり,原告及び被告間の継続的売買契約においては,原告が
被告から仕入れた135Dを素材とした染色糸を販売するに当たり,被告の
有する本件商標の通常使用権を許諾されていたものであるが,そのような状
況下で,原告が,当該許諾の範囲外で本件商標を使用することは,上記継続
的売買契約における付随義務に違反するというべきである。
ところが原告は,本件商標が表示されている本件サンプル帳1に,
「POLYESTERWOOLLY75D」と記載されたシールを貼付した上で,顧客に
配布していたものであるが,当時原告が取り扱っていた75D染色糸は,す
べて東レ75D原糸を素材とするもので,被告から仕入れたものはなかった。
つまり,原告は,被告にとっての競合他社製品を販売するための広告に,本
件商標を使用していたものといえ,被告の許諾の範囲外で本件商標を使用し
たというべきである。
さらに原告は,その後被告が作成した本件サンプル帳2にも,元々自社名
の記載はなかったにもかかわらず,被告の承諾を得ることもないまま,原告
名及び「ソフィーナ135D・75D」との記載がされたシールを貼付し,
これを顧客に配布した。当時原告は,75D原糸を被告から仕入れることも
検討はしており,この点で本件サンプル帳1にシールを貼付したときとの違
いがあることは確かである。しかし,原告は,本件サンプル帳2の顧客への
配布開始時には,被告の75D原糸やその染色糸の仕入実績はなかった上,
その後も平成19年12月に被告の75D染色糸を13色分,各12Kg仕
入れたものの,これらを実際に販売することはなく,さらに,被告の75D
原糸や他の色の染色糸(本件サンプル帳2には,サンプルとして144色の
染色糸が添付されている。)を仕入れることはなかった一方で,東レ75D
原糸を素材とした染色糸の販売を従前どおり継続していたものである。この
ような当時の原告の在庫,販売の実態に加え,上記のとおり,原告がサンプ
ル帳1において,東レ75D原糸を素材とした染色糸を表示するものとして
本件商標を使用していたという経過も考えあわせると,原告の顧客の立場か
らは,本件商標が付された本件サンプル帳2のシール上で言及されている7
5D染色糸の素材が,被告から仕入れた原糸か,それとも従前同様東レ75
D原糸のことか,判然としないものであったといわざるを得ない。つまり,
原告は,75D染色糸につき,そのような混同のおそれがあるシールを,本
件商標が付された本件サンプル帳2に貼付し,顧客に配布したものであるが,
その際,被告の承諾を得ていなかったというのであるから,やはり被告の許
諾の範囲外で本件商標を使用したというべきである。
以上によれば,原告は,平成18年,本件商標を被告の許諾の範囲を超え
て使用し,そのことについて,被告から注意を受けたにもかかわらず,再び,
平成19年,同様の行為を繰り返していたもので,この行為は継続的売買契
約における付随義務に違反するということができ,原告及び被告間の信頼関
係を破壊するに足るものであったといわざるを得ない。
したがって,平成20年3月の時点で,被告は,原告との継続的売買契約
の解除権を有していたというべきである(以上の事情は,期限の定めなき継
続的売買契約の被告による解約を正当とする事由としても十分である。)。
(4)原告の主張について
この点,原告は,東レ75D原糸を素材とする染色糸の宣伝のため,本件
サンプル帳1など本件商標が付されたサンプル帳に75D染色糸の記載をし
たシールを貼付することにつき,被告の承諾を得ていた旨主張するが,その
ような事実を認めるに足りる証拠はない上,平成18年8月に本件サンプル
帳1へのシール貼付が発覚した際にも,かかる承諾に言及することなく謝罪
していることに照らせば,上記主張は採用できない。
また,原告は,東レ75D原糸を素材とした染色糸を本件商標の下で販売
したことは一切ない,請求書等でもソフィーナと東レとを明確に区別してい
たし,顧客へも製造元について説明していたなどと主張する。しかし,被告
が債務不履行として問題にしているのは,本件サンプル帳1及び本件サンプ
ル帳2という広告媒体上での本件商標の使用方法であり,原告の上記主張は,
当を得た反論になっていない。具体的な商談時や請求書等で原告の主張する
ような説明や区別がされていたとしても,原告の債務不履行を否定する事情
とはいえず,この主張も採用できない。
(5)小括
以上より,被告が平成20年3月に原告への135D原糸及び40D黒色
原糸の供給を停止したことは,原告の債務不履行によって生じた解除権を行
使したものである。また,被告の解除権は,原告の債務不履行に起因して発
生したものなのであるから,この権利を行使することが権利の濫用に当たる
ともいえない。
したがって,被告は,上記解除が効力を生じた平成20年3月以降,原告
に対して135D原糸及び40D黒色原糸を供給すべき義務を負っておらず,
債務不履行責任が発生する余地はない。
2結論
以上の次第で,原告の請求は,その余の争点について判断するまでもなく理
由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官山田陽三
裁判官松川充康
裁判官西田昌吾

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