弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
被告人を罰金7万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算し
た期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,平成12年4月24日午後3時7分ころ,道路標識によりその最高速
度が60キロメートル毎時と指定されている神戸市a区b町cd番地付近道路にお
いて,その最高速度を37キロメートル超える97キロメートル毎時の速度で普通
乗用自動車を運転して進行したものである。
(証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―
省略
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は,被告人が判示の日時場所において97キロメートル毎時の速度で走
行していないとして,本件速度測定の正確性を争い,被告人は無罪である旨主張す
るところ,前掲関係各証拠によれば,弁護人主張の点を含め,判示の事実は優に認
められるのであるが,その理由について,補足説明する。
2 前掲関係各証拠によれば,次の事実が認められる。
 (1) 兵庫県有馬警察署の警察官10名(現場責任者・測定兼記録係A,記録装置
操作係B,停止係C,取調係D,Eら)は,平成12年4月24日午後2時32分
ころから,神戸市a区b町cd番地付近道路(以下,「本件現場付近道路」とい
う。)において,定置型レーダスピードチェッカー(F株式会社製,製造番号××
-××××。以下「本件速度測定装置」という。)を使用して,北方から湾曲した
道路を進行してきて,測定地点付近においては直線道路である本件現場付近道路を
東方から西方に向け進行してくる車両について,速度違反の取締りを行っていた。
本件現場付近道路は,県道e線,通称f道路(自動車専用道路)で,交通量の頻繁
な,片側1車線往復2車線の直線道路であり,道路標識により最高速度60キロメ
ートル毎時の速度規制
がなされている。
 (2) 本件速度測定装置は,走行中の車両に,離れた場所から電波(連続マイクロ
波)を発射してその反射波を受信し,送信波の一部と混合して得られるドップラ周
波数の計測値に速度演算処理を加え,自動車の速度を測定する装置である。
 (3) 本件速度測定装置については,本件前の平成11年12月6日にG株式会社
の担当者により定期点検・試験が行われ,正常に動作することが確認されている。
また,本件当日の速度取締り実施前において,マニュアルどおり,前記A警察官ら
において,適切なレーダ設置場所を選定し,道路に対して電波の発射角度が10度
になるように設置し,音叉試験を行い電波が正常に発射されていることを確認する
などの始業点検が行われ,本件速度測定装置が正常に作動することが確認された
し,終業時の点検においても本件速度測定装置が正常に作動していたことが確認さ
れた。
 (4) 被告人は,本件当日の午後3時7分ころ,普通乗用自動車(以下,「被告人
車両」という。)を運転して,本件現場付近道路を東方から西方に向け進行し,本
件速度測定装置の測定の結果,97キロメートル毎時の速度であったとして検挙さ
れた。
 (5) 「速度取締用通報記録紙」(検察官請求証拠番号19はその謄本)は,当日
検挙された速度違反車両15台について,その特定事項,走行状況及び測定速度等
を一覧表形式で捜査用の定型用紙にそれぞれその項目別に順次記載された書面であ
るが,被告人車両分として,番号7に,「車種・H(普通乗用自動車を意味す
る),塗色・コン,4桁番号・○○○○,その他車両の特徴・ワンボ(ワンボック
スカーを意味する),測定速度97㎞/h」旨の記載がある。
 (6) 被告人は現場において前記取調係の警察官Eの取調べを受け,供述調書が作
成されたが,同調書(検13)中には,要旨,「・・メーターで速度を確かめ毎時
約70キロメートルで走行していた。私の車が止められて毎時97キロメートルで
走行していたと言われたが納得できない。自分の車はそのような速度は出せな
い。」旨の記載がある。
 以上の事実が認められる。
3 前記2認定の事実を前提に検討する。
 (1) 本件速度測定装置の測定原理自体等に欠陥があるとの主張について
   弁護人は,①本件速度測定装置は,ドップラ周波数計測そのものの正確性を
検証できないという原理的欠陥がある,②本件速度測定装置は,実際に移動する物
体に接触してその速度を測定するものではないから,どの車両の速度を測定したか
については絶対的な識別機能がない,③測定値は最大値を測定するが,その最大値
測定前後のデータを記録していないから,誤作動等の検証ができない,④プラス誤
差を排除することは不可能であるなどとして,本件速度測定装置の測定原理自体等
に致命的な欠陥があると主張するが,証人Jの公判供述その他関係証拠によれば,
本件速度測定装置は,ドップラ効果を応用して,送信した電波ビーム内を走行する
自動車に反射した電波を受信し,その周波数の変化から自動車の速度を測定する装
置であって,発信し
た電波が走行する自動車のうちどれに反射したものか識別する機能を有するもので
はないことは所論のとおりであるが,その測定原理や性能自体に格別の問題はな
く,その用法を誤らない限りは正確な速度測定をなしうる装置であると認められ
る。本件速度測定装置が,その測定原理や性能自体に欠陥があるから,本件速度測
定の結果が正確でないとの主張は理由がない。
 (2) 本件速度測定装置が正常に作動していたとはいえない旨の主張について
   前認定のとおり,本件時の約5か月前の定期点検の際に異常がなく,かつ本
件時の始業点検,終業点検において,本件速度測定装置が正常に作動していたこと
が確認されているところ,本件速度測定装置が正常に作動していなかったのではな
いかと疑う事情が何ら認められない本件にあっては,冒頭の事実に速度測定に従事
した警察官らの供述その他の関係証拠を併せ考慮すると,本件測定当時,本件速度
測定装置が正常に作動していたものと認めるに十分である。弁護人は,本件速度測
定時に本件速度測定装置が正常に作動していたことの立証が尽くされていないと主
張するが,理由がない。
 (3) 測定方法の不的確性による誤測定の可能性について
   前記Aは約4年間の交通違反取締の経験を有し,約1年間の本件速度測定装
置の取扱経験のある警察官であるところ,同人が本件時に行っていた違反車両の現
認,速度測定装置の操作,記録等の一連の作業が機械的であり,かつ専門的業務行
為であること,同人の公判供述の内容に不自然な点はないこと等にかんがみると,
同人ら本件速度測定に従事した警察官らの一連の速度測定の結果は,誤認や誤記等
が考えにくい性質のものであると認められるから,何らかの誤測定があったとの合
理的な疑いを容れる事情のない限り,本件速度測定の結果は正確なものであるとい
うべきである。
   もっとも,前記のとおり,本件速度測定装置は,原理的には,発信した電波
が走行する自動車のうちどれに反射したものか識別する機能を有するものではない
から,複数の車両が前後や左右等接近して走行している場合には,それらの他車両
の速度を測定した可能性や,発射した電波がその発射方向に存在する建物等に反射
して対向車線や遠くを走行する他の車両との間で多重に反射して受信されるなどの
誤測定の可能性があることを原理的には否定できないので,さらに検討する。
  ① 他車両の速度を測定した可能性について
    前記Aは,当公判廷において,本件速度測定当時,被告人車両の前後に他
の車両はなく,単独走行する被告人車両に向け電波を発射した旨供述するところ,
前認定の速度取締用通報記録紙の謄本(検19)中の記載とも矛盾なく,その供述
の信用性は十分である。なお,被告人及び証人Iは,当公判廷において,被告人車
両の前方に単車が1台走行していたというのであるが,その各供述によっても,被
告人車両と前記単車とは相当の車間距離があったというのであるから,前記単車の
速度を誤って測定したと疑う余地はなく,被告人の公判供述によっても,被告人車
両に近接した位置関係に他の車両があったことを疑う事情は認められない。
    そうすると,本件速度測定装置が被告人車両以外の他の車両の速度を測定
した可能性はなかったと認めるに十分である。
  ② 多重反射による誤測定の可能性について 
    弁護人は,本件速度測定装置が発射した電波が,その発射方向に存在する
道路両端の騒音防止用の防音壁等に反射し,多重反射して複雑な波となり,これを
本件速度測定装置が受信して誤測定がなされた可能性が残る旨主張するが,証人J
及び同Kの当公判廷における各供述によれば,本件速度測定装置自体に,多重反射
した電波と被測定車両から直接反射してきた電波とを識別する機能があり,通常は
多重反射した電波はこれを排除して測定しないシステムになっていること,稀に
は,識別できずに多重反射した電波を測定する可能性は残るが,その場合でも,例
えば,二重反射の場合には,その速度測定値は実際の速度の2倍となるから,これ
が誤測定であることは容易に判別できること,その他,弁護人が問題とする防音壁
の位置関係に照らすと
,前記防音壁等による多重反射による誤測定の可能性はなかったものと認められ
る。
  ③ 以上のとおり,被告人車両の本件速度測定に際し,何らかの誤測定があっ
たとの合理的疑いを容れる余地は存しない。
 (4) 弁護人は,被告人車両が本件速度測定当時70キロメートル毎時くらいの速
度で走行していたもので,97キロメートル毎時もの速度は出していない旨の被告
人供述は信用できると主張する。
① 被告人の公判供述並びにその検察官調書(検14)及び警察官調書(検1
3)並びに同乗者である証人Iの公判供述によれば,被告人は97キロメートル毎
時もの速度は出しておらず,70キロメートル毎時くらいの速度で走行していたと
いうのであり,その理由として,本件現場の道路状況,被告人車両の運行状況,被
告人車両の積載状況・積載量及び被告人車両の停車状況からして,97キロメート
ル毎時の速度での走行はそもそも不可能だったというのであるが,本件現場の道路
状況から物理的に被告人車両が97キロメートル毎時の速度での走行が不可能だっ
たといえないことは明らかであり,結局のところ,「メーターを見ていたわけでは
なく」(検14),70キロメートル毎時位の速度しか出ていないはずである旨の
被告人供述は,被告
人の漠然とした感覚を述べるものというほかはない。
② 前記I及び被告人の各公判供述中,被告人車両は,その天井キャリアに括
りつけていたアルミ製2連梯子等の固定状況が気になったため,同車両に同乗して
いたL某がいわゆる箱乗りをする形で梯子の固定状況を確認するなどして,いった
ん30キロメートル毎時程度に減速をした後に加速し,その加速後すぐに検挙され
た旨をいう部分は,公判段階に至ってはじめてなされたものであり信用しがたい。
また,犯行当時被告人車両は,同乗者6人の他に,塗装材料等重量のある多くの建
築資材を積載しており,その積載量は合計650キログラム近くに及んでいたなど
とする部分は,捜査段階から一貫した供述であると窺われるが,被告人が犯行直後
にこの事実を積極的に捜査官に告げ,被告人車両の見分を申し入れた事実がないこ
と等の事情を併せ考
慮すると,この事実は本件犯行当時の被告人車両の速度が97キロメートル毎時で
なかったのではないかと疑わせる事情となるものではない。
  ③ 弁護人は,種々の事項を前提にして,停止合図を受けてから停止するまで
の距離を計算するなどして,本件速度測定当時,被告人車両が97キロメートル毎
時の速度で走行していたとすれば,本件最終停止位置で停止することは不可能であ
ると主張し,これをもって,被告人車両が本件速度測定当時70キロメートル毎時
くらいの速度で走行していた旨の被告人供述の信用性を支える事実であるという
が,そもそも,本件一連の速度違反者取締りにおいて,違反車両の発見・速度測
定,停止合図,最終停止位置への停止誘導等の設定自体に問題があったものとは全
く考えられず,他の違反車両の停止位置が被告人車両のそれとは明らかに異なると
いうような事情の全く認められない本件にあって,被告人車両の最終停止位置を云
々して,被告人車両が9
7キロメートル毎時の速度で走行することが不可能だった証左とすることには無理
があるというほかはなく,この弁護人の主張は理由がない。
  ④ 以上のとおり,被告人車両が本件速度測定当時70キロメートル毎時くら
いの速度で走行していた旨の被告人供述は,被告人車両の本件速度測定に際し,何
らかの誤測定があったとの合理的疑いを容れる事情となるものではない。
5 以上のとおりであるから,前掲関係各証拠によれば,被告人が,判示のとお
り,本件速度違反の罪を犯したことを認めるに十分である。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は平成13年法律第51号による改正前の道路交通法118条
1項2号,22条1項,4条1項,道路交通法施行令1条の2第1項に該当するの
で,所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で,被告人を罰金7万円に処
し,その罰金を完納することができないときは,刑法18条により金5000円を
1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,訴訟費用については,刑事訴訟法1
81条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,普通乗用自動車を運転中,指定速度に違反する速度で進行し
たという事案であるが,一般道路において,何ら緊急性がないにもかかわらず,指
定速度を約37キロメートル毎時超過して運転した行為の危険性は低くないから,
被告人の刑事責任を軽視することはできないが,その速度違反の程度,古いものを
除き前科がなく,交通前科は皆無であること等被告人のために酌むべき事情も十分
に考慮し,主文のとおり量定した。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成15年10月22日
神戸地方裁判所第11刑事係甲
裁 判 官  杉 森 研 二

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