弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、第一審判決添付第二物件目録(一)に関する部分を破棄する。
     右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人徳満春彦の上告理由について。
 不動産に関する代物弁済一方の予約にあつては、その予約上の権利につき請求権
保全の仮登記をしても(もつとも、本件では停止条件付代物弁済契約として不動産
登記法二条一号の仮登記がされているが、正しくは所有権移転請求権保全の仮登記
として、同条二号の仮登記がなされるべきである。しかし、この程度の登記上の誤
りは、仮登記の効力に影響のないことは当裁判所の判例とするところである(最高
裁判所昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻六号九三六頁)。)、仮登
記は、後にそれに基づく本登記がされた場合にその本登記の順位が仮登記の順位に
よることになる順位保全の効力があるにすぎなく(不動産登記法七条二項)、代物
弁済の完結しないうちは代物弁済による所有権取得をもつて第三者に対抗すること
ができないから、たとえ該不動産の所有権が第三者によつて取得されたときでも、
代物弁済予約権者はその完結の意思表示を当初の予約の当事者に対してすることを
要するものというべく、不動産登記法一〇五条も、仮登記に基づく本登記は、仮登
記の権利者と義務者の間でされるべきことを前提として規定している。したがつて、
本件代物弁済の予約完結の意思表示は、被上告人から第一審判決の第一物件目録記
載建物については訴外D観光株式会社、同第二物件目録(一)記載建物については訴
外Eに対してなさるべきものといわなければならず、これと同趣旨の原判決の判断
は正当である。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
 つぎに、本件は、被上告人が代物弁済の予約完結の意思表示をして第一審判決添
付第一物件目録記載の建物および同第二物件目録(一)記載の建物の所有権を取得し
たことを前提として、上告人らに対し、不動産登記法一〇五条一項の定める承諾を
請求するものであるから、この点について職権をもつて調査する。
 思うに、貸金債権担保のため、不動産に抵当権を設定するとともに、右不動産に
つき停止条件付代物弁済契約または代物弁済の予約を締結した形式がとられている
場合において、契約時におけるその不動産の価額と弁済期までの元利金額とが合理
的均衡を失するようなときは、特別の事情のないかぎり、右契約は、債務者が弁済
期に債務の弁済をしないとき、債権者において、目的不動産を換価処分してこれに
よつて得た金員から債権の優先弁済を受け、残額はこれを債務者に返還する趣旨で
あると解すべきであり、この場合、代物弁済の形式がとられていても、その実質は
担保権と同視すべきことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和
四二年一一月一六日第一小法廷判決、民集二一巻九号二四三〇頁)。したがつて、
このような場合、清算型代物弁済の予約上の権利者たるものが完結権を行使したと
き、この者に帰属する権利の実質は、目的物を自己の名において換価処分し、その
売得金から優先弁済を受けることを内容とする一種の担保権と解すべきものであり、
その処分の前提として目的物を自己の名義となしうるにすぎないのである。しかし
て、このような観点に立つて本件を見るとき、原審の認定したところによれば、被
上告人は訴外D観光株式会社に対する貸金担保のため本件建物に債権元本極度額五
千万円の根抵当権を設定してその旨の登記をなし、かつ、右貸金債務を履行しない
ときは代物弁済としてこれらの建物の所有権を被上告人に移転する旨の代物弁済の
予約をなし、その旨の仮登記をなしたというのであるから、被上告人の有する代物
弁済予約上の権利なるものの実質は、右にいう一種の担保権に非ざるかとも解され
る余地が存するのであり、しかも、この点は原審が何等明らかにしていないところ
である。
 転抵当は、原抵当権者の把握した担保価値の全部又は一部を転抵当権者に創設的
に移転し、これに対して優先的地位を与えるものであるが、右説示のとおり、清算
型代物弁済予約なるものは、目的物を金銭に換価してその換価金につき優先弁済を
受けることを本質とするものであるからには、転抵当のある場合には、代物弁済の
予約完結権者はその完結権を行使したにせよ、その換価金につき優先弁済を主張で
きる範囲は、僅かに目的物の価格中原抵当権の被担保債権額から転抵当権の被担保
債権額を差し引いた金額についてのみであるにすぎないのである。しかして、原審
の認定したところによれば、被上告人は訴外D観光株式会社に対する五千万円を限
度とする根抵当債権のため、本件建物につき抵当権を設定していたところ、F信用
金庫に対する三億円を限度とする根抵当債務のため、右抵当権を転抵当の目的とし
たというのであるから、本件においては、転抵当権によつて担保される債権額は原
抵当権によつて担保される債権額を超過するものと思われる。しからば、被上告人
の有する代物弁済予約が清算型代物弁済予約であるならば、被上告人は前記各建物
に対し予約上の権利行使をする利益を有するものといい難く、したがつて、右権利
行使は許されないものといわなければならない。しかるに、原判決が叙上のこれら
の点について思いを致すことなく、被上告人主張の代物弁済予約をもつて直ちに清
算義務を負わない本来の代物弁済の予約と解したことは、審理不尽の違法をおかし
たものといわなければならず、原判決はこの点に関し不服申立の限度において破棄
を免れない。
 よつて、本件について更に審理させるため、民訴法四〇七条一項により、原判決
中本判決の主文第一項に記載の部分を破棄し、右部分につき本件を原審に差し戻す
こととし、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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