弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
被告人Aを懲役2年6月及び罰金100万円に処する。
同被告人に対し,この裁判確定の日から4年間その懲役刑の執行を猶予する。
同被告人において,その罰金を完納することができないときは,金5000円を1
日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人Bを懲役2年に処する。
同被告人に対し,この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人Aは,船舶の売買,仲介等を業とするA会社の取締役として同社の業務を
統括する者であり,被告人Bは,A会社の社員として同社の業務に従事する者であ
るが,被告人両名は,同社がB会社の代表取締役C及び同社従業員Dから,朝鮮民
主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)に輸出する冷凍運搬船の売買の仲介
を依頼され,Eが同人の妻F名義で所有する,漁ろう設備を有する中型イカ釣り漁
船「第三十一博洋丸」をB会社に売却するに際し,船舶輸出承認の申請代理等を業
とするC会社の代表取締役であるGに依頼してインドネシア共和国を仕向地とする
書類を作成して通商産業大臣(以下「通産大臣」という。)から無効の輸出承認を
得た上で同船を北朝鮮に密輸出することを企て,
第1 Gと共謀の上,平成12年6月下旬ころ,同人において,埼玉県春日部市の
同人方において,行使の目的で,ほしいままにインドネシア共和国運輸省発行の暫
定船籍証明書様の用紙及び暫定計測証明書様の用紙に,それぞれ英文タイプで船名
欄に「ATILA-1」等と打ち込んで記入するなどし,作成者の署名欄に黒色ボ
ールペンで「H」等と冒書した上,駐日本国インドネシア共和国大使館の公印様の
丸型印を冒捺するなどして,同大使館海事担当のH及び同国マナド港管理者I共同
作成名義の暫定船籍証明書1通及び暫定計測証明書1通をそれぞれ偽造した上,同
月28日,福島県いわき市所在の横浜税関小名浜税関支署において,「第三十一博
洋丸」の船舶資格変更届を提出するに際し,情を知らないJをして,同支署統括監
視官Kに対し,これ
らの文書があたかも真正に成立したもののように装って,提示させて行使した
第2 C,D及びGと共謀の上,「第三十一博洋丸」の輸出通関手続を行うに当た
り,真実は北朝鮮を仕向地として同船を輸出するのにインドネシア共和国を仕向地
として輸出するように装い,同月27日,上記横浜税関小名浜税関支署において,
同支署長に対し,情を知らない通関士Lをして,インドネシア共和国を仕向地とし
て同船の輸出申告を行わせ,もって,輸出申告に際して偽った申告をした
第3 C,D,G及び大韓民国釜山市において船舶運航等を業とするD会社を経営
するMと共謀の上,通産大臣の承認を受けないで,同年8月6日「第三十一博洋
丸」を同市所在の小名浜港から,大韓民国墨湖港経由で北朝鮮に向けて出港させ,
もって,通産大臣の承認を受けないで漁ろう設備を有する船舶を輸出した
ものである。
(量刑の理由)
 本件は,判示のとおり,被告人Aが,B会社のDから,北朝鮮の会社に中古漁船
を冷凍運搬船として売却する仲介を依頼された際,そのままでは通産大臣の輸出承
認を得ることができない実情にあったことから,船舶輸出承認の申請代理等を業と
していたGと図った上で,日本国と漁場競合等の問題の生じないインドネシア共和
国を仕向地に仮装し,通産大臣の輸出承認を得ることなく,第三十一博洋丸を北朝
鮮に密輸出することを計画し,Gにおいて判示暫定船籍証明書及び暫定計測証明書
を偽造した上で,A会社が依頼した通関業者の社員をしてこれを税関職員に提示さ
せて行使するとともに(第1の事実)輸出通関手続をするに際し仕向地を偽った輸
出申告を行わせ(第2の事実),通産大臣の有効な輸出承認を得ないまま,漁ろう
設備を有する第三十
一博洋丸を北朝鮮に密輸出したという事案であって,極めて計画的かつ巧妙な犯行
というだけでなく,その結果,我が国漁業との間で漁場調整上の問題が発生するの
を未然に防止し,かつ,国際漁業協定に基づく漁業秩序を維持して有限な漁業資源
の保護を図ることを目的とする輸出承認制度の実効性を失わせたものであって,悪
質な犯行である。その中で,被告人Aは,多額の報酬を得る意図から「第三十一博
洋丸」の北朝鮮への密輸出を成功させようと企図し,GやM等を巻き込むなど本件
各犯行における中心的な役割を果たしており,その刑事責任は本件共犯者中でも最
も重い。これに対し,被告人Bは,A会社の社員として被告人Aの指示に基づき本
件各犯行に関与したもので,酌むべき事情があるとはいえ,本件の重大性,悪質性
を考えると,被告人
Bの責任も軽視することはできない。
 他方,被告人AやA会社が中古漁船を北朝鮮に密輸出したのは今回が初めてであ
って,被告人両名とも,本件で逮捕されるなどしたことで初めて事態の重大性に気
付き,今では本件に及んだことを深く反省悔悟し,2度と同じ過ちは繰り返さない
旨誓っている。しかも,被告人Aは,A会社をできる限り早期に閉鎖して中古漁船
の売買仲介等の仕事から手を引き,これからは保釈後勤め始めた旧友の経営する会
社で仕事をしていきたい旨,被告人Bは,既にA会社を退職し保釈後は実家に戻っ
て近くのホテルで働き始めていて,今後もこの仕事を続けていきたい旨それぞれ述
べている。さらに,被告人両名とも,本件が新聞等において大きく報道されたこと
で家族共々様々な影響を受けており,既に一定の社会的制裁を受けていると評価で
きる。その他被告人
両名にはこれまで前科前歴がないことなどを考慮すると,被告人両名に対しては今
回に限りその懲役刑の執行を猶予し,社会内において更生する機会を与えるのが相
当である。
(検察官 倉又 彰出席)
(求 刑 被告人Aに対し懲役2年6月及び罰金100万円,被告人Bに対し懲役
2年)
  平成13年11月12日
    東京地方裁判所刑事第1部
           裁  判  官   川  口  宰  護

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛