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平成14年(行ケ)第507号 審決取消請求事件
平成15年5月22日口頭弁論終結
判          決
    原      告     アンホイザー ブッシュ
インコーポレイテッド
訴訟代理人弁護士     古 田 啓 昌
同            城 山 康 文
同            浅 井 孝 夫
訴訟代理人弁理士     神 林 恵美子
被        告   ブジェヨビキ ブドバール ナロドニ
ポドニック
訴訟代理人弁護士     鼎   博 之
同            北 沢 義 博
同            二 関 辰 郎
同            横 山 和 俊
主          文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30
日と定める。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が無効2001-35124号事件について平成14年6月4日にし
た審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
被告は,別紙審決書の写し末尾に別掲として示すとおりの構成より成り,商
標法施行令1条別表の商品及び役務の区分第32類の「ビール」を指定商品とする
登録第3371385号商標(1995年4月6日チェコ共和国においてした商標
登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して平成7年4月25日登録出
願。平成12年11月2日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であ
る。
原告は,本件商標の登録を無効にすることについて審判を請求した。
特許庁は,これを無効2001-35124号事件として審理し,その結
果,平成14年6月4日に,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決を
し,同年6月14日にその謄本を原告に送達した。
2 審決の理由の要点
別紙審決書の写し記載のとおりである。要するに,①本件商標の商標法4条
1項10号該当性については,本件商標と,「Budweiser」の文字から成
る商標(以下「引用商標1」という。)及び「Bud」の文字から成る商標(以下
「引用商標2」という。)とは,その称呼,外観及び観念のいずれにおいても、十
分に区別し得る差異を有し,互いに相紛れることはない,とし,②同15号該当性
については,引用商標2の周知性を認めることはできず,かつ,本件商標と引用商
標1,2(以下,両商標を併せて「引用各商標」ということがある。)とは,何ら
相紛れるおそれのない別異の商標であるから,本件商標をその指定商品について使
用しても,引用各商標を連想・想起させるものではなく,本件商標をその指定商品
に使用した場合,その商品が請求人又は同人と組織的又は経済的に何らかの関係を
有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生ずるお
それはない,とし,③同19号該当性については,本件商標と引用各商標とは類似
しない別異の商標であり,本件商標を構成する「Budejovicky」
(「e」の文字の上に「」の記号が,「y」の文字の上に「」の記号がそれぞれ
付されているが,省略する。以下,同様に表示する。)は,チェコ語(形容詞)と
認められ,また「Budvar」の文字は,被請求人(商標権者)の創造に係る造
語であるから,被告が本件商標を採択し出願した行為に,請求人(原告)の業務に
係る商品に使用する商標の出所表示機能を希釈化させたり又はその名声を毀損させ
るなどの不正の意図があったものとは認められない,として,請求人(原告)の主
張する無効理由をいずれも排斥するものである。
第3 原告の主張の要点
審決は,本件商標の商標法4条1項10号,15号,19号該当性のいずれ
についても,その判断を誤った(取消事由1ないし3)。これらの誤りは,それぞ
れ,結論に影響することが明らかであるから,審決は,違法なものとして取り消さ
れるべきである。
1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)
(1) 審決は,「本件商標は,・・・,その構成にかかる「Budejovic
ky」及び「Budvar」の欧文字は,肉太の線で表された正四角形の枠内の中
心部分に顕著に,かつ,同じ書体でまとまりよく一体的に表されており,殊更,こ
れを「Budejovicky」と「Budvar」,「Bud」と「ejovi
cky」又は「Bud」と「var」とに,それぞれ分離して称呼,観念しなけれ
ばならない特段の事由が存するものとは認められないものであり,むしろ,該正四
角形内に書かれた文字全体をもって,被請求人(商標権者)の商号の一部を表した
ものとみるのが相当である。」(審決書10頁25行~33行)と述べた。
しかし,「Budejovicky」の欧文字と「Budvar」の欧文
字は,二段に分けて表示され,いずれも大文字の「B」で始まることから,二単語
で構成されていることは明らかである。これらの二語は,異なる大きさで表記され
ていることから,別々の独立した単語として認識されることになり,両者を一体的
に認識することは困難である。審決の論理に従えば,一つの正四角形の枠内の中心
部分に同じ書体で二語が表記されていれば,原則として二語を一体的に認識すべき
であるということになる。このような理由付けには,根拠がない。
審決は,「「Bud」と「ejovicky」又は「Bud」と「va
r」とに,それぞれ分離して称呼,観念しなければならない特段の事由が存するも
のとは認められない」と述べた。
しかし,審決の上記判断は,「Bud」の周知・著名性を全く考慮に入れ
ていない点において,十分な検討が欠けている。
「Budejovicky」及び「Budvar」は,いずれも語頭に
「Bud」の欧文字を含んでいる。「Bud」の欧文字は,原告のビールの商標と
して,あるいは原告の周知・著名な「Budweiser」商標の略称・愛称とし
て,本件商標の出願に係る優先権主張日(以下「本件優先日」という。)より前か
ら,既に世界各国及び我が国において取引者・需要者間で周知・著名である。「B
udejovicky」及び「Budvar」中の「Bud」の欧文字は,各単語
の語頭にあるため,接頭語であるかのように認識され,「ejovicky」及び
「var」の語頭に原告のビールを表す「Bud」を連結させたものと認識され
る。
「Budejovicky」及び「Budvar」のいずれも,「B」の
みが大文字で強調され,特に上段の「Bud」の文字の下には,「ejovick
y」の部分に比べて太いアンダーラインが引かれている。このように,本件商標に
おいては,冒頭の「Bud」の欧文字が注目されるようにデザインされている。
「Budvar」の欧文字は,「Budejovicky pivova
r」の最初の3文字「Bud」と最後の3文字「var」とを組み合わせたもので
ある。そうである以上,「Budvar」が「Bud」と「var」とに分離して
認識されるのは当然である。被告自身が「Budejovicky」の語頭の「B
ud」を分離したことからみても,「Budejovicky」が「Bud」と
「ejovicky」とに分離して認識されてもおかしくない。
審決は,合理的な理由もなく,「Budejovicky」と「Budv
ar」とを一体的なものと判断したものであって,誤りである。
(2) 審決は,「本件商標は,該「Budejovicky」と「Budva
r」の文字に相応して,「バデジョビッキーバドバー」又は「ブジェヨビキブドバ
ール」の一連の称呼のみを生ずる商標と認められるものである。」(審決書10頁
34行~36行)とした上で,「本件商標より生ずる「バデジョビッキーバドバ
ー」,「ブジェヨビキブドバール」の称呼と引用商標1より生ずる「バドワイザ
ー」及び引用商標2より生ずる「バド」の各称呼は,その音構成,構成音数が著し
く相違するものであるから,称呼上,明らかに区別し得るものである。」(審決書
11頁4行~7行)と述べている。
しかし,この判断は,「Budejovicky」と「Budvar」と
を合理的理由なく一体的なものとした誤った判断を前提にしている点において,既
に誤りである。
「Budejovicky」及び「Budvar」は,日本人にとって判
読音読が困難なチェコ語であることもあいまって,冒頭の著名な「Bud」の欧文
字部分に相応して,「バド何とか」と称呼され,あるいは認識されることが多いと
いうべきである。この点においても,本件商標が上記一連の称呼のみを生ずるとし
た審決の判断は,誤りである。
(3) 審決は,「本件商標と引用各商標は,・・・外観においては,十分に区別
し得る差異を有するものであり,観念においても,相紛れるおそれのないものであ
る。」(審決書11頁8行~10行)と認定判断した。
しかし,「Budejovicky」は,ドイツ語である「Budwei
ser」のチェコ語訳にすぎない。両者が同一の都市名を表す名詞に対応する形容
詞であって,同一の観念を有していることは,被告も認識し主張しているところで
ある(甲第19,第20号証)。
「Budejovicky」と「Budweiser」とが観念において
相紛らわしい類似の商標であることは,被告自身,世界各国で認めている。本件商
標が原告のビールの商標である「Budweiser」と同一の観念を有すること
は明らかである。
(4) 本件商標と引用商標1,2とが類似することは,アンケート調査の結果
(甲第59号証)からも明らかである。
2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)
(1) 審決が「Bud」(引用商標2)の著名性を否定したのは誤りである。
原告は,日本において,本件商標の出願日前から「Bud」(バド)ブラ
ンドを用いており,同ブランドは,我が国の取引者・需要者間に浸透しており,周
知・著名性を獲得している(甲第3号証,第5号証の3,第12号証,第13号証
の1ないし4,8,第14号証の1,第15号証,第30ないし第44号証,第5
7号証の1ないし4等参照)。
(2) 他人の著名商標を一部に含む商標は,原則として当該他人の業務にかかる
商品又は役務と混同を生じるおそれがあり,商標法4条1項15号に該当する。
本件商標を構成する「Budejovicky」の欧文字と「Budva
r」の欧文字は,いずれも冒頭に著名な「Bud」の欧文字部分を含んでいる。
「Bud」ブランドは,「BudDry」等のように語頭に使用されていることが
多いことからすれば,その「Bud」の文字を語頭部分に有する本件商標からは,
必然的に原告の「Bud」ブランド又は「Budweiser」ブランドが想起さ
れることになる。特に,チェコ語を判読音読することができない一般需要者は,本
件商標について,冒頭の著名な「Bud」の欧文字部分に相応して「バド何とか」
と称呼され,あるいは認識されるため「バド」の発音を共通とする原告の「Bu
d」(バド)及び「Budweiser」(バドワイザー)商標と称呼上相紛らわ
しいものである。
(3) 本件商標中の「Budvar」中の「var」とは,醸造所を意味するチ
ェコ語「pivovar」から採用されたものである。「Bud」がビールの商標
として著名であることからすれば,醸造所の観念を有する文字と組み合わされるこ
とにより,より一層原告の業務にかかる商品であると誤認されるおそれが高くな
る。
本件商標中の「Budejovicky」は,原告の著名商標である「B
udweiser」に対応するチェコ語を意味する。チェコ語を判読音読し得る需
要者にとっては,両者は同一の観念を有することが分かるので,原告の「Budw
eiser」(引用商標1)及び「Bud」(引用商標2)商標とは一層紛らわし
いものとなり,原告又は原告に関係ある者の業務に係る商品であると誤認されるお
それが大きくなる。
(4) 商標法4条1項15号該当性を判断するに当たっては,様々な取引の実情
を考慮しなければならない(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決 民集5
4巻6号1848頁)。
原告の著名商標は,本件商標の指定商品であるビールそのもの,その中で
も,外国ブランドビールという同じ範疇に属する商品に関するものである。
被告は,本件商標の実際の使用に際し,「Budweiser Budv
ar,National Corporation」との表示を本件商標上に付し
て使用している。この表示は,原告の著名商標「Budweiser」を含むもの
で,原告の業務にかかるビールとの誤認混同のおそれを非常に強めている。
現実にも,本件商標を付したビールと原告との関係について,誤認混同が
生じている(甲第24号証参照)。
(5) 本件商標と引用商標1,2との間で誤認混同が生ずることは,アンケート
調査の結果(甲第59号証)からも明らかである。
(6) 以上のとおり,本件商標は,原告又は原告に関係ある者の業務に係るもの
と混同されるおそれのある商標であり,商標法4条1項15号に該当する。
3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)
(1) 審決は,本件商標と引用各商標とが類似せず,別異の商標であるとの判断
を前提に,本件商標の商標法4条1項19号該当性を否定する。しかし,この判断
は,その前提において既に誤りであることは,1,2で述べたとおりである。
(2) 審決は,「本件商標を構成する「Budejovicky」の文字は,チ
ェコ語(形容詞)と認められ,「Budvar」の文字は,被請求人(商標権者)
の創造に係る造語といえる」(審決書11頁31行~33行)ことを理由に,被告
に不正の意図があったものとは認められないとの結論を導いている。
しかし,被告に不正の意図があったことは,本件商標の出願に至るまでの
経緯等から明らかである。
ア 原告は,1876年又はそれ以前に本件商標の使用を開始し,それ以
来,全世界で「Budweiser」ビールの販売を展開しており,我が国におい
ても,第二次世界大戦直後から販売展開を行い,1951年には「Budweis
er」商標について商標登録を受けた。
これに対し,被告の前身となる法人が設立されたのは,1895年であ
り,被告により「Budejovicky Budvar」の商号が採用されたの
は1967年のことである。
このような商標の使用開始の経緯や,被告自身が本件商標が引用各商標
と相紛らわしく類似するものであることを認めていること(甲第19,第20号
証)に照らすと,被告が原告の引用各商標の著名性を利用しようという意図で,そ
の商号及び本件商標を採択したことは明白である。
イ ボヘミア地方に,かつて「Budweis」と呼ばれた町が存在したも
のの,一般に知られた地名ではなかった。1918年にチェコ共和国が成立した後
は,かつての「Budweis」の町の名称は,チェコ語使用地域の住民が数百年
にわたり町の名称として使用してきた「Ceske Budejovice」に正
式に変更された。1945年のチェコスロバキア共和国の成立以降は「Budwe
is」の地名は完全に廃止され,使用が禁止された。
原告が「Budweiser」ブランドを採用する以前には,同ブラン
ド名を採用したビールは世界中のどこにも存在しておらず,「Budweise
r」の名前は,世界中で長年にわたり原告の販売に係るビールのブランドとしての
み,一般に認知されている。
被告は,1911年になした宣誓供述書(甲第27号証)において,
「Budweiser」が原告のビールを意味すること,原告が米国のみならず欧
州以外の各国において「Budweiser」を使用する権利を有することを認め
ていた。
被告は,1939年に締結した原告との契約(甲第28号証)におい
て,原告が世界で初めて「Budweiser」を商標又は商号として使用したも
のであること,被告は北米,中米,サモア,フィリピンでは「Budweise
r」のみならず「Bud」との結合を含むすべての商標をも使用することが許され
ないことを認めていた。
本件商標の登録出願がなされたのは,町の名前としての「Budwei
s」の使用が完全に廃止されてから約50年も経過した後の1995年である。被
告が,町の名前としては使用されなくなって久しい「Budweis」に由来する
「Budweiser」や,町の名前として使用されてきた「Ceske Bud
ejovice」ではなく,単なる「Budejovice」に由来する「Bud
ejovicky」のみを使用することには何ら合理的な意味は認められない。
被告が,他にではなく特に,「Ceske Budejovice」に
設立され,1967年に「Budejovicky Budvar」の商号を採用
したという事実は,原告の引用各商標の著名性を利用しようという被告の不正の意
図を推認させるものである。
ウ 本件商標は,商品のビールのラベルとして使用される商標であり,実際
の使用状況においては,ビールラベルの下方に「Budweiser Budva
r」の文字が赤地に白抜きで明瞭に表されている。当該ラベルの上方には,「金
賞:100%モルト・チェコのオリジナルのバドワイザー」と書かれたシールが貼
り付けられている。上記「Budweiser」は原告の周知・著名な引用商標1
と同一のものであり,上記「バドワイザー」は引用商標1の読みに相当する言葉で
ある。
このように,本件商標は,殊更,原告の著名商標である「Budwei
ser」を想起させるような態様で使用されているものであり,これに接した需要
者は,当然に当該商品が原告又はその関連会社がチェコ国向けに出荷した商品又は
チェコ国内で生産した商品が何らかのルートにより日本に入ってきたものと誤解
し,原告の「Budweiser」のチェコ版ビールを試してみようという発想
で,当該商品を購入することになる。
(3) 以上のとおり,本件商標は,原告の業務に係るビールを表示するものとし
て日本国内及び世界中で広く認識されている商標と類似の商標であって,引用各商
標の著名性を利用しようという不正の目的をもって現に使用されているものである
から,商標法4条1項19号に該当する。
第4 被告の反論の要点
原告の主張はすべて争う,審決の認定判断は正当であり,審決に,取消事由
となるべき誤りはない。
1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)につい

(1) 本件商標は,上部に「Budejovicky」,下部に「Budva
r」の太字筆記体の欧文字(チェコ語)で構成され,それぞれの頭文字である
「B」が大文字で記載されている以外は,小文字で記載され,この一連の文字は,
同じ書体でまとまりよく一体的に表現されている。本件商標は,一体となった用語
であり,この二つの語が一つのコンビネーションとなって,他と識別することが可
能なものとして,出所表示機能を構成している。これを,殊更,「Budejov
icky」と「Budvar」,「Bud」と「ejovicky」,「Bud」
と「var」とに,それぞれ分離して称呼,観念しなければならない特段の事由が
存するとは認められず,むしろ,全体をもって,被告の商号の一部を表したとみる
のが相当である。
本件商標の「Budejovicky」は11文字,「Budvar」は
6文字の,合わせて17文字で構成されているのに対し,引用商標1(「Budw
eiser」)は9文字,引用商標2(「Bud」)は3文字であることから,外
観において全く異なるというべきである。
原告は,引用商標2(「Bud」)が周知・著名であることを考慮に入れ
るべきである,と主張する。しかし,「Bud」の周知・著名性を認めることはで
きない。
原告は,本件商標の「Budejovicky」及び「Budvar」の
いずれにおいても「B」が大文字で強調され,特に上段の「Bud」の下には,
「ejovicky」の部分に比べて太いアンダーラインが引かれていることか
ら,本件商標においては,冒頭の「Bud」の欧文字が注目されるようにデザイン
されている,と主張する。しかし,本件商標において,上記アンダーラインは,
「Budejovicky」の「j」の部分で切れているものの,次第に細くなっ
ていくデザイン及びアンダーラインの位置が同じ高さにあることから,「j」の後
から生じるアンダーラインと一体となった印象を視覚的に与え,「Budejov
icky」の語の一体性をむしろ強調するものである。「j」の前のアンダーライ
ンは,「Bude」部分の下部に共通に引かれれており,しかも「B」から「e」
にかけてほぼ均等に次第に細くなって「j」につながっているのであるから,仮に
「Budejovicky」の一部のみを同アンダーラインが際だたせる効果を持
っているとしても,「Bud」の3文字を際だたせる効果は一切なく,むしろ「B
ude」の4文字あるいは,「Budej」の5文字を一連のものとして認識させ
る効果を持っている。
(2) 外国語に通暁しない通常の日本人としては,特に,英語にない「」,「
」などのチェコ文字が使用されている場合,それをそのままローマ字読みして
「エ」とか「イー」と音読するよりないと理解するのが妥当である。本件商標をロ
ーマ字読みした場合には「ブデジェヨヴィキブドバール」,英語の表音に従った場
合には「バデジョヴィッキーバドバー」,チェコ語の表音に従った場合には「ブジ
ェヨビキーブドバー」等の称呼を生ずるのであり,いずれにしても引用商標1
(「Budweiser」)の称呼である「バドワイザー」,引用商標2(「Bu
d」)の称呼である「バド」とは,その音数,音構成が著しく相違するものである
から,称呼上類似しないことが明らかである。
(3) 通常の日本人の取引者・需要者にとって,本件商標は特別の観念を生じる
ものではないから,引用各商標と本件商標とで観念が同一であるということはあり
得ない。
(4) アンケート調査の結果(甲第59号証)には信頼性がない。
2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)につい

(1) 「Bud」の語が原告のビールを表す語として著名である,との原告の主
張は争う。我が国において,「Bud」の語は,それにより直ちに原告のビールを
連想するほどの著名性はない。英語を母国語としない日本人にとって,「Bud」
が「Budweiser」の略語であるという認識を有している者はそう多くな
い。
(2) 被告の販売するラベル上に記載された「Budweiser Budva
r」の表示は,それのみで記載されているわけではなく,「National C
orporation」という国有企業であるという表示とともに記載されてお
り,商標ではなく商号としての表示であることが明らかになるような態様で記載さ
れている。
上記商号の記載は,本件商標と同一のラベルの下の欄に小さく表示されて
いる。本件商標と上記の商号の表示とでは,その寸法が大きく異なり,縦方向の寸
法は,本件商標が約2センチメートルであるのに対し,商号の表記は約2ミリメー
トルであって,約10分の1である。
本件商標は,文字自体がデザイン化されているうえ,背景に中世の騎士と
紋章を描いた図柄が描かれており,商標として使用されている。これに対し,上記
商号の表示は,すべてゴシック体で統一され,文字のサイズも上記のとおり小さ
く,図柄との併用もない。さらに,「BREWED AND BOTTLED B
Y THE BREWERY」(〔以下の〕醸造所により醸造および瓶詰め」)と
いう記載に続けて上記商号が記載されており,それに続けて,所在を示す「CES
KE BUDEJOVICE(BUDWEIS)CZECH REPUBLIC」
(チェコ共和国チェスケー・ブジェヨビツェ(バドワイス))という地名が記載さ
れている。
このように被告の上記商号の記載は,商標的機能を有することが明らかな
本件商標より下部に,それよりはるかに小さな寸法で記載されており,製造主体を
示す「BREWERY」(醸造所)という記載及び所在を示す地名の記載の間に記
載されているのであるから,当該商号は,商標的機能を有しておらず,純粋に製造
者の名称を表示する機能しか有していないことが明らかである。
このような,「Budweiser」という記載がなされていることを理
由に,原告の業務に係るビールと誤認混同を生じるおそれがある,ということはで
きない。
原告は現実に誤認混同が生じている例として本件ビールが「あのバドワイ
ザーの元祖」とのコメントとして紹介されていること(甲第24号証)を指摘す
る。しかし,「Budweiser」の語は,700年のビール醸造の歴史を有す
るチェコの「Budweis」の地名に由来するものであり,1911年の原被告
のそれぞれの前身会社の合意(乙第10号証)によっても,原告は,日本語の「元
祖」に相当する「オリジナル」という用語を使用することはできない。取引者・需
要者において,原告の商標が「Budweis」の地名に由来するという認識を持
ったとしても,それは何ら混同ではなく,むしろ,原告のビールと被告のビールと
を正しく区別していることの証拠というべきである。
(3) アンケート調査の結果(甲第59号証)には信頼性がない。
3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)につい

被告は,700年以上のビール醸造の伝統を有するボヘミヤ王国の「Bud
weis」(チェコ語では「Ceske Budejovice(チェスケ ブジ
ェヨビツェ)」)の町で生まれたバドワイザービール(Budweiser Bi
er)の歴史と伝統ある醸造者の承継会社である。「Budweis」(チェコ語
では「Ceske Budejovice(チェスケ ブジェヨビツェ)」)の町
では,原告がBudweiserの使用を開始したと主張する1875年よりも6
00年も前から,Budweiser Bierとして有名なビールが生産されて
きたのである。
原告は,ボヘミア王国の町である「Budweis」におけるビール醸造の
永い伝統を十分に認識した上で,ビールの産地として有名なこの「Budwei
s」の名称をあえて使用することにしてBudweiserの商標を採用したもの
である。しかも,原告は,被告が700年以上の歴史を持つオリジナルの「バドワ
イザービール」の製造者の承継会社であるという事実も十分に認識している。この
ような原告が,被告による「Budejovicky Budvar」というチェ
コ語の本件商標の使用に対して,不正の目的を主張することは,それ自体,むしろ
背理というべきである。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について
(1) 本件商標の構成は,別紙審決書の写し末尾の別掲(本件商標)に示された
とおりのものである。すなわち,太く濃く描かれた四角の枠の中の上部中央に円形
の紋章様の模様が描かれ,上記四角の枠の中の白抜き部分の中央に背景として薄く
複数の人物像が描かれ,この人物像の上に重ねて,白抜き部分の上下の中間部分
に,左右に,「Budejovicky Budvar」を表す筆記体の欧文字が
上下2段(上段に「Budejovicky」,下段に「Budvar」)にわた
って太字で描かれている。「Budejovicky」の「e」の上には「」様
の,「y」の上には「」様の文字記号が描かれ,「Budejovicky」の
下には,「Bude」の下と,「vicky」の下に下線が描かれている。同下線
は,「B」の下の部分が最も太く,末尾に行くに従って,徐々に細くなるよう描か
れており,「jo」の文字によって分けられているものの,全体として左から右に
向かって徐々に細くなる一本の下線として認識されるものである。
このように,本件商標は,図形部分と,デザイン性を持った文字部分とを
結合して成る結合商標である。
(2) 本件商標から,称呼が生じるのか,生じるとしてどのような称呼がどのよ
うな形で生じるのか,について検討する。
本件商標の図形部分は,上記のとおり,四角の枠の中に,紋章様の模様と
複数の人物像が描かれているだけの抽象的な図形である。これから特定の称呼が生
じるとは認められない。特定の称呼が生じるとすれば,文字部分からである。
そこで,本件商標の文字部分についてみる。本件商標の文字部分がチェコ
語による表記であることは,当事者間に争いがない。我が国において,チェコ語に
接する機会は極めて乏しく,チェコ語を解することのできる者がごく少数にとどま
ることは,当裁判所に顕著な事実である。また,本件商標の文字部分は,太字の筆
記体で書かれたデザイン性を持ったものであるため,文字部分を構成する個々の文
字のすべてを一見して明確に把握することは困難であり,同部分がチェコ語による
表記であることとあいまって,本件商標に接した我が国の取引者・需要者が,その
文字部分をローマ字風の読み方で称呼することも容易には行うことができないもの
と認められる。
このように,本件商標の文字部分は,我が国に住むほとんどの者にとって
なじみのないチェコ語が用いられたものである上に,その形状も特殊なものである
ことを前提にすると,同部分に接した取引者・需要者にとって,これに相当する呼
び方を引き出すことは,不可能とはいえないとしても,相当程度以上の困難を伴う
ことである,ということができる。そして,本件商標の文字部分がこのようなもの
であるとすれば,これに接する取引者・需要者は,格別の必要がない限り,称呼に
よってこれを認識することなく,日本人にとって見なれない文字で書かれたものと
して把握するとみるのが相当である。この意味で,もし,称呼という文言を,そこ
から格別の苦労なく自然に生じてくる呼び方を意味するものとして用いるならば,
本件商標の文字部分からは,称呼は生じない,というべきである。
以上に述べたところによれば,本件商標から,上記の意味で,これを構成
する文字,図形に相当する称呼は生じない,というべきである。
審決は,本件商標は「Budejovicky Budvar」の文字に
相応して、「バデジョビッキーバドバー」又は「ブジェヨビキブドバール」の称呼
を生ずる,と述べる(審決書10頁下から5行~3行)。審決が,称呼という文言
を,そこから格別の苦労なく自然に生じてくる呼び方を意味するものとして用いて
いるとすれば,当裁判所は,この点について,審決と見解を異にする。しかし,審
決の説示全体(特に「・・・むしろ,該正四角形内に書された文字全体をもって,
被請求人(商標権者)の商号の一部を表したものとみるのが相当である。そうとす
れば,本件商標は,該「Budejovicky」と「Budvar」の文字に相
応して,「バデジョビッキーバドバー」又は「ブジェヨビキブドバール」の一連の
称呼のみを生ずる商標と認められるものである。」(審決書10頁下から8行~3
行)との部分)をみれば,審決も,本件商標の文字部分は全体として一塊りのもの
としてしか把握されないとしていることが明らかであり,そのことから逆に,審決
自身,上記「バデジョビッキーバドバー」又は「ブジェヨビキブドバール」は,本
件商標の文字部分から引き出そうとすれば引き出すことができる呼び方ではあると
はいえ,格別の苦労なく自然に生じてくる呼び方ではないため,本件商標の文字部
分は全体が一体のものとして把握される,と理解しているからこそ,上記のように
説示したのである,と考えることができる。
次に,本件商標から,どのような観念が生じるかについてみる。本件商標
の図形部分が抽象的なものであること,取引者・需要者が本件商標の文字部分を判
読することが困難であることは,上記のとおりである。本件商標に接した取引者・
需要者は,太い四角とそれに囲まれた中に紋章様の模様と複数の人物像が記載され
た図形と、判読困難な筆記体の欧文字が記載されていることを認識するにとどま
り,そこから特定の意味内容を思い浮かべることはほとんどない,というべきであ
る。本件商標から,これを構成する文字,図形に相当する特定の観念は生じない,
と解するのが相当である。
以上を前提に,本件商標と引用商標1,2とを対比する。本件商標につい
ては,上記の意味で特定の称呼も観念も生じないと解すべきことは,上記のとおり
である。このようなとき,本件商標と引用商標1,2との類否を判断するに当た
り,を称呼及び観念において対比することはできないというべきであるから,本件
商標と引用商標1,2とは,称呼においても,観念においても,似ている,という
ことはできない。
本件商標と引用商標1,2とが外観において相紛れるほどに似ているとい
うこともできないことは,明らかである。
本件商標は,引用商標1,2のいずれとも,称呼,観念及び外観のいずれ
においても,似ているということはできず,引用商標1,2のいずれと対比
しても,類似するということはできない。
(3) 原告は,「Bud」(引用商標2)の欧文字は,原告のビールの商標とし
て,あるいは原告の周知・著名な「Budweiser」商標の略称・愛称とし
て,本件商標の出願日前から,既に世界各国及び我が国において取引者・需要者間
で周知・著名であり,取引者・需要者は,本件商標の文字部分の「Budejov
icky」及び「Budvar」の冒頭部分の「Bud」に着目して,「バド何と
か」と称呼するから,本件商標と引用商標1,2とは称呼上類似する,と主張す
る。
しかしながら,本件商標の文字部分は,「Budejovicky」と
「Budvar」とに分けて観察しても,それぞれ,太字の筆記体でつながれたデ
ザイン性を持った一体の語として書かれており,かつ,我が国に住むほとんどの者
にとってなじみのない語であって,いずれも,前記のとおり,全体として我が国の
取引者・需用者に判読困難な語であることに照らすと,仮に,「Bud」の商標が
周知・著名であるとしても,我が国の取引者・需用者が,本件商標中の「Bud」
の部分のみに着目して,あえてこの部分を分離して,「バド何とか」と称呼するこ
とは,ほとんどないというべきである(もっとも,「Bud」の商標の周知・著名
性が極めて高度のものであって,「Bud」に結び付く要素が少しでもあるもので
あればすべて「Bud」を連想させる程度にまで至っていれば,別に考える余地は
あろう。しかし,本件優先日(1995年4月6日)当時,「Bud」にそのよう
な程度の周知・著名性が備わっていなかったことは,当裁判所に顕著である。)。
(4) 念のため,本件優先日(1995年4月6日)当時において,「Bud」
(引用商標2)が、我が国内において,周知、著名であったと認められるか否かに
ついて,検討する。
1987年ないし88年版の「世界の名酒辞典」(甲第3号証)には,
「バド・ライト」の記載がある。しかし,これは商品名の一部として「バド」が用
いられていることを示すものにすぎず,「Bud」商標の周知・著名性の根拠とは
なり得ない。
1998年に発行された小学館プログレッシブ英和中辞典(甲第5号証の
2)及び2000年に発行されたジーニアス英和辞典(甲第5号証の3)には,
「Bud」が「Budweiser」の略称であることが記載されており,199
4年3月10日に発行された小学館ランダムハウス英和大辞典(甲第12号証)に
は,「Bud」について,「《商標》=Budweiser Bud Light
(バドライト)は低アルコール低カロリービール」、「《米俗》バドワイザービー
ル;(一般に)ビール」と記載されている。しかしながら,これらの記載からは,
「Bud」の語が「Budweiser」の略語として用いられることがあること
が認められるにとどまり,我が国内において,「Bud」の語が周知,著名性を取
得していることを直ちに示すものとはいえない。
1989年(平成元年)に我が国内でなされたバドワイザービールの広告
(甲第29ないし第35号証)中には,バドワイザービールのキャンペーン品の名
称として「Bud Box」との記載がある。
1990年(平成2年)から1991年にかけてに我が国内でなされたバ
ドワイザービールの広告(甲第13号証の1ないし4,甲第36ないし第44号
証)中には,バドワイザービールの600mlボトルの製品が「BIG BUD」
の名で表示されている。
1991年(平成3年)に我が国内でなされたバドワイザービールの広告
(甲第45ないし第47号証)中には,宣伝文句として「スペースシャトルよ、バ
ドは積んだかい?」との記載がある。
1992年(平成4年)に我が国内でなされたバドワイザービールの広告
(甲第13号証の8)中には,宣伝文句として「見る、感じる、楽しむ・・・バド
があるところには必ず興奮がある。」との記載がある。
1995年(平成7年)に我が国でなされた広告(甲第14号証の1,
3)中には,バドワイザービールのいわゆるキャンペーンガールを掲載した同ビー
ルの広告中に,「Bud Girls’95」,「GENUINE BUD GI
RLS」との記載がある。
しかしながら,上記広告において用いられた「Bud」の語は,いずれ
も,商品名,キャンペーン品の名,キャンペーンガールの名の一部に「Bud」を
用いたものか,宣伝文句の一部にバドワイザービールを表す語として「バド」の語
を用いたものにずぎず,これらを,「Bud」がバドワイザービールの略称として
わが国内で周知・著名性を獲得していることを認めるための有料な資料とすること
はできない,というべきである。
我が国において1989年(平成元年)から1995年(平成7年)にか
けてテレビで放映されたバドワイザービールのコマーシャル中に,「Bud」の文
字が強調された映像や,バドワイザービールを「バド」と呼んでいる映像が存在す
ることが認められるものの(甲第15号証),この程度の映像が含まれていること
をもって,我が国において,「Bud」がバドワイザービールの略称として周知・
著名性を獲得していることを認める上での有力な資料とすることはできない,とい
うべきである。
原告は,平成4年に「BudDry」,平成9年に「BUD JAPA
N」,平成12年に「BUDWATER」,平成11年に「Buddy’s/バデ
ィーズ」の各商標について,我が国において,商標登録を受けた(甲第57号証の
1ないし4)。しかしながら,これらの商標登録の事実が,「Bud」商標の周
知・著名性を裏付けるものとはなりえないことは明らかである。
原告の提出した各証拠の証明力は,以上のとおりであり,これらを総合し
ても,「Bud」商標の周知・著名性を認めることはできない。他に,これを認め
るに足る証拠もない。
この点からも,原告の主張は,失当である。
(5) 原告は,本件商標の「Budejovicky」は,ドイツ語である「B
udweiser」のチェコ語訳であり,同一の都市名を表す名詞に対応する形容
詞であるから,同一の観念を有している,と主張する。しかし,「Budejov
icky」が,ドイツ語である「Budweiser」のチェコ語訳であること
(逆にいえば,「Budweiser」がチェコ語である「Budejovick
y」のドイツ語訳であること)が客観的な事実であるとしても,ここで問題とされ
るべき「観念」とは,本件商標に接した我が国の取引者・需要者が思い浮かべる意
味内容のことである。前記のとおり,我が国において,チェコ語を理解する者はご
くわずかであることからすれば,本件商標に接した我が国の取引者・需要者が「B
udejovicky」が,ドイツ語である「Budweiser」のチェコ語訳
であり,同一の都市名に由来する形容詞であることを理解することは,ほとんどな
いというべきである。「Budejovicky」と「Budweiser」とが
同一の観念を有するということはできない。
(6) 原告は,本件商標と引用商標1,2とが類似することの根拠として,一般
の需要者が本件商標を付したビールと原告の「Budweiser」ブランドのビ
ールとを誤認混同しているとのアンケート調査の結果(甲第59号証)を挙げる。
しかしながら,同アンケート調査は,平成15年1月16日から20日までの間に
実施されたものであり,本件優先日当時の一般の需要者の認識内容を立証するもの
ではない。仮に同アンケート調査の結果を採用することができるとしても,その結
果を,本件優先日当時における本件商標と引用商標1,2との類似性の根拠とする
ことはできないというべきである。
原告の上記主張はいずれも採用することができない。
他にも,上記認定判断の妨げとなるべきものは,本件全資料を検討しても
見いだすことができない。
取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について
(1) 本件商標と引用商標1,2とは,外観上相違していること,称呼,観念に
おいても共通性が認められないこと,「Bud」商標の周知・著名性が認められな
いこと,我が国の取引者・需用者が,本件商標中の「Bud」の部分に着目して,
この部分を分離して認識することはほとんどないことは,1で述べたとおりであ
る。これらの点を総合すると,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接し
た取引者・需要者が引用商標1,2を想起し,その商品の出所について混同を生ず
るおそれがあると認めることはできないというべきである。
(2) 原告は,被告が,本件商標の実際の使用に際し,本件商標上に「Budw
eiser Budvar,National Corporation」との表
示を付して使用することによって,原告の著名商標である「Budweiser」
との誤認混同のおそれを非常に強める行為をしていることを,商標法4条1項15
号の適用に当たり考慮すべきである,と主張する。
しかしながら,仮に,本件商標の使用に際して,同時に,他の表示である
上記「Budweiser Budvar,National Corporat
ion」が用いられ,それにより,本件商標の付された商品と原告の商品との間に
誤認混同のおそれが生じているとしても,上述したところに照らすと,それは,本
件商標自体に原因があるのではなく,これと同時に用いられた「Budweise
r」にあるとみるのが相当であり,そのことは,不正競争防止法の適用の有無等の
問題となり得る可能性があることは別として,商標法4条1項15号の適用に当た
っては問題とならないというべきである。
原告の主張は採用することができない。
(3) 原告は,本件商標と引用商標1,2との間で誤認混同が生ずることの根拠
として,前記アンケート調査の結果(甲第59号証)を挙げる。しかしながら,同
アンケート調査は,平成15年1月16日から20日までの間に実施されたもので
あり,本件優先日当時の一般の需要者の認識内容を立証するものではない。仮に同
アンケート調査の結果を採用することができるとしても,その結果を,本件優先日
当時において本件商標と引用商標1,2との間で誤認混同のおそれがあることの根
拠とすることはできないというべきである。
取消事由2も理由がない。
3 取消事由3(商標法4条1項19号該当性判断の誤り)について
商標法4条1項19号との関係でも,本件商標を引用商標と類似する商標と
することができないことは,既に述べてきたところから,明らかというべきであ
る。
取消事由3も理由がない。
4 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,その他審決には,こ
れを取り消すべき誤りは見当たらない。
第6 結論
以上のとおりであるから,原告の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の
負担,上告及び上告受理の申立てのための付加期間について行政事件訴訟法7条,
民事訴訟法61条,96条2項を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官     山   下   和   明
裁判官     設   樂   隆   一
裁判官     阿   部   正   幸

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