弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人外務大臣が控訴人に対して平成16年3月31日付けでした昭和4
「」8年4月付けで外務省条約局・アメリカ局が作成した日米地位協定の考え方
及びその後の改定版に関する不開示決定を取り消す。
3被控訴人国は,控訴人に対し,100万円及びこれに対する平成16年3月
31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件事案の概要は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」
中「第2事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。
1原判決3頁11行目の「行政文書」の次に「後記本件旧文書及び本件新文(
書を14行目の当該不開示決定の次に後記本件決定を18行)」,「」「()」,
目の次に行を改めて次のようにそれぞれ加える。
「原審は,控訴人の本件請求のうち,本件決定の取消請求については,本件決
定時に外務省が本件旧文書を保有していたものと認めることができず,本件新
文書は情報公開法5条3号所定の不開示事由に該当するとして,請求を理由が
ないものとし,損害賠償請求については,開示又は不開示の決定の遅滞は7日
間であり,この程度の遅滞は社会通念上金銭賠償に値するほどのものと評価す
ることができず,請求は理由がないとして,いずれも棄却したので,控訴人が
控訴した。
当裁判所も,後記のとおり,控訴人の本件請求はいずれも理由がないものと
判断する」。
2原判決6頁1行目の「6日」を「16日」に,3行目の「判決」から4行目
「()。,,。」末尾までを判決がされた甲11なお同判決は同年7月1日確定した
,「」「,」。にそれぞれ改め22行目の後記の前に次に摘示するほかを加える
3原判決7頁5行目の次に行を改めて次のように加える。
「(控訴人の主張)
被控訴人外務大臣は,情報公開法に基づき,本件開示請求に対し平成15年
11月7日までに本件各文書の開示又は不開示の応答をすべき義務があったに
もかかわらず,平成16年3月31日に本件決定を行うまでの145日間その
義務の履行を怠った。被控訴人外務大臣は,平成15年11月14日付けで当
初不開示決定を行ったが,その瑕疵の存在を認め,これを職権で取り消したの
であるから,当初不開示決定により本件開示請求に応答したということはでき
ない。情報公開法に基づく開示請求に対し,行政機関が同法の許容する期限内
に応答する義務を遵守することは適正手続の基本であって,上記のような恣意
的な制度運用による応答の実質的遅延は,控訴人が同法に基づき行政文書の開
示を求める法律上の利益を侵害するものであり,かつ,被控訴人外務大臣の故
意又は過失によるものにほかならないから,被控訴人国は,控訴人が被った少
なくとも100万円の損害を賠償すべき責任を負う。
(被控訴人国の主張)
ア被控訴人外務大臣は,本件開示請求を受け付けた際,本件新文書の存在を
公にすれば,日米地位協定に関して日米間で無用の議論を生じさせることと
なり,米国との信頼関係を損ない,日米両国による安全保障体制の円滑な運
用を阻害し,ひいては我が国の安全を害するおそれがあると判断し,平成1
5年11月14日付けで当初不開示決定を行った。その後,平成16年1月
13日付けA朝刊において本件報道1がされ,同月30日,照屋寛徳衆議院
議員提出の質問主意書に対する答弁書(乙16の2)において,昭和48年
4月に作成したとされる「日米地位協定の考え方」と題する文書は保有して
いない,1980年代に作成された「日米地位協定の考え方」増補版に該当
すると思われる文書は保有しているとの回答がされ,政府は,本件新文書の
存在を明らかにしなかった従来の方針を変更した。被控訴人外務大臣は,そ
のような政府の方針変更を踏まえて,平成16年3月31日付けで,当初不
開示決定を取り消し,本件決定を行った。
上記のとおり,情報公開請求に対し,事情の変更に応じて,当初の不開示
決定の当否を検討し,より相当な開示又は不開示の判断をすることは,情報
公開法10条に反するものではない。そうすると,被控訴人外務大臣が本件
開示請求に応答したのが情報公開法の許容する期限経過後であったとして
も,その遅滞は当初不開示決定までの7日間にすぎない。
イ本件において,控訴人は精神的利益を侵害された旨主張するものと理解さ
れるが,情報公開法の目的が適正な行政運用の監視,確保という国民全体の
一般的利益の実現にあることに照らせば,控訴人の精神的利益は適正な行政
権の発動に関する各人の正義感情の満足というような主観的な満足であっ
て,情報公開法に基づく開示請求権の周辺的・派生的な事実上の利益にすぎ
ず,国家賠償法上保護すべき権利利益とはいい難い」。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件旧文書の存否)及び争点(2)(本件新文書の情報公開法5条3
号該当性)について
,,本件決定の取消請求に関する当裁判所の判断は次のとおり補正するほかは
原判決の「事実及び理由」中「第3争点に対する判断」の1及び2(原判決
7頁7行目から19頁12行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用
する。
(1)原判決7頁21行目の昭和49年から24行目末尾までを昭和54「」「
年法律第69号による改正前の外務省設置法(昭和26年法律第283号。
ただし,昭和43年法律第99号による改正後のもの)5条1項並びに昭和
54年政令第295号による改正前の外務省組織令(昭和27年政令第38
5号。ただし,昭和44年政令第9号による改正後のもの)15条及び17
条によれば,アメリカ局安全保障課であった(乙4,5」に改める。)。
(2)原判決8頁1行目の北米局安全保障課にの次に乙67を3「」「(,)」,
行目の「北米局地位協定課に」の次に「乙8」をそれぞれ加え,4行目か()
ら5行目にかけての「北米局日米安全保障課に」を「北米局日米安全保障条
約課に乙9に7行目の北米局から8行目末尾までを北米局日米()」,「」「
安全保障条約課に日米地位協定室が置かれ,同室がこれを所管することとな
った(乙10」に,14行目の「日米安全保障条約課」から15行目末尾)。
までを「北米局日米安全保障条約課日米地位協定室がこれを所管することと
なった(乙11,12」に,17行目の「昭和49年」から19行目末尾)。
までを「昭和59年政令第205号による改正前の外務省組織令(昭和27
年政令第385号。ただし,昭和47年政令129号による改正後のもの)
1条1項及び3条(昭和59年政令第205号による改正後においては15
条1項及び18条)によれば,大臣官房文書課であった(乙5,7,8」)。
にそれぞれ改め,22行目の「変更となった」の次に「乙9」を,24行()
目の「定められている」の次に「乙11」をそれぞれ加える。()
(3)原判決9頁2行目の昭和36年9月1日施行を昭和6年5月18日「」「
制定,昭和36年9月13日改正」に,3行目から4行目にかけての「昭和
36年9月1日施行」を「昭和6年5月18日制定,昭和36年8月30日
改正」に,5行目の「引き継がれる前の文書は」を「引き継がれる前の文書
の保管又は廃棄は」にそれぞれ改め,7行目の「訓令第6号」の次に「,同
」,「」「,」年7月1日施行を14行目の弁論の全趣旨の前に乙16の1・2
をそれぞれ加え,23行目の「既に廃棄されたとみるのは不自然ではない」
を「本件開示請求がされた平成15年9月8日以前に既に廃棄済みとなって
いたものと推認するのが相当である」に,末行の「本件旧文書の外形的内容
及び本件新文書を控訴人は本件各文書について昭和48年4月付で」「,,「
外務省条約局・アメリカ局が作成した「日米地位協定の考え方」およびその
後の改定版と特定しているところ乙1そのような作成時期作成部局」(),,
及び文書の表題等(以下,これらを「文書の外形的事実等」ということがあ
るにより一般に想定される本件旧文書の体裁及び内容や後記2(1)ウ原。),(
判決12頁)に認定されるような本件新文書」にそれぞれ改める。
(4)原判決10頁3行目から4行目にかけてのこれらによってもの次に前「」「
記推認を覆すことはできないというべきであって」を加える。
「」「,(5)原判決14頁7行目の本件報道2から9行目末尾までを控訴人は
情報公開法5条3号所定の不開示事由の前提となる「おそれ」があると行政
機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報というためには,当該情
報が公になっていないことが要求され,既に一般に公開されている情報を不
開示とすべき相当の理由はないというべきところ,本件新文書の内容は,本
件報道2によって公にされており,情報公開法5条3号所定の「おそれ」が
生じることはないから,本件新文書を不開示とすべき相当の理由はない旨主
。」,「」「」張するに20行目の上記(イ)と同様にから21行目のからである
までを「上記のような控訴人主張は,上記(イ)と同様に,情報公開法5条3
号所定の情報を不開示情報として定めた同法の趣旨を没却することとなる審
理及び判断を前提とするものであって,採用することができないというべき
である」に,24行目の「これが」を「本件報道2が」にそれぞれ改める。
「」「」(6)原判決15頁17行目の第1回から18行目の協議内容については
までを「昭和35年の第1回日米合同委員会において,同委員会の公式議事
録についてさえ,同委員会における協議内容について」に改める。
(7)原判決18頁2行目の「なお」から13行目末尾までを削る。
2争点(3)(控訴人の損害賠償請求の可否及びその額)について
(1)控訴人は被控訴人外務大臣は情報公開法に基づき本件開示請求に対,,,
し平成15年11月7日までに本件各文書の開示又は不開示の応答をすべき
義務があったにもかかわらず,本件においては,平成16年3月31日に本
件決定を行うまでの145日間,実質的に応答義務の履行を怠ったとして,
そのような恣意的な制度運用による応答の実質的遅延は,控訴人が同法に基
づき行政文書の開示を求める法律上の利益を侵害するものであり,国家賠償
法1条1項所定の違法がある旨主張する。
(2)情報公開法10条によれば被控訴人外務大臣は本件開示請求に対し平,,
成15年11月7日までに本件各文書の開示又は不開示の応答をすべきであ
ったものである。
ところで,当初不開示決定と本件決定は,別個独立の行政処分ではあるも
のの,いずれも本件開示請求に応答するものであり,当初不開示決定が「存
否応答拒否」により不開示としたのに対し,本件決定は,本件旧文書につい
て不存在本件新文書について情報公開法5条3号該当により不開示「」,「」
,,とする旨理由を改めたものであって当初不開示決定の取消しと本件決定は
上記のような不開示理由の変更に伴う処分の変更を控訴人に対し正確に告知
したものにすぎず,証拠(甲10の1∼3,乙16の1・2)及び弁論の全
趣旨によれば,この処分変更の措置は,平成16年1月30日にされた政府
の答弁書により,本件各文書の存否を明らかにしなかった政府の従来の方針
が変更されたことを踏まえた結果であると認めることができる。また,上記
政府の従来の方針の下においても,本件各文書につき「存否応答拒否」によ
り不開示としたことが情報公開法8条の趣旨に照らし適正なものであったか
どうか議論の余地はあるが,日米地位協定の日本国及びアメリカ合衆国双方
に対して持つ政治的性格(前記のとおり補正の上引用の原判決15頁)を考
慮すると,当初不開示決定及び同決定から本件決定への変更をもって,直ち
に恣意的な制度運用と評価することはできないというべきである。
(3)そうすると以上の事実関係の下においては被控訴人外務大臣は平成1,,
5年11月14日付けの当初不開示決定の時点で本件開示請求に対する応答
義務を履行したものというべきであり,被控訴人外務大臣が,上記のような
政府の方針の変更という事態を踏まえ,文書の存否を明らかにして不開示理
由の説明をすべく,平成16年3月31日,本件決定をするために当初不開
示決定を取り消した事実をもって,控訴人主張のように,同日の本件決定ま
での間,恣意的な制度運用により本件開示請求に対する応答を遅延したもの
ということはできない。
また,被控訴人外務大臣が,本件開示請求に対し平成15年11月7日ま
でに応答すべきであったにもかかわらず,同月14日までの7日間その応答
をしなかったことをもって,国家賠償法1条1項所定の違法があるというこ
とはできない。その理由は次のとおりである。
情報公開法1条によれば,同法は行政文書の開示を請求する権利につき定
めるとし,同法3∼6条,9∼12条等によれば,同法4条に基づく開示請
求があった場合,開示請求に係る行政文書を保有する行政機関の長は,同法
の規定に従い,一定の期限内に開示請求に係る行政文書の全部又は一部につ
いて開示又は不開示の決定をしなければならないものと規定しているのであ
るから,開示請求者は,原則として同法10条所定の期限内にその開示請求
に対する開示又は不開示の決定を受けるべき法律上の地位を与えられている
ものといわなければならないしかしその一方で同法は行政文書の開。,,,「
示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一
層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全
うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民
主的な行政の推進に資すること」を情報公開制度の目的としているのであっ
て同法1条これによれば開示決定等の期限の定めは上記のような情(),,,
報公開制度の窮極の目的である適正な行政運用の監視,確保という国民全体
の一般的利益の実現に資するための目的的な規制であり,上記開示請求者の
法律上の地位もそのような目的的な規制と表裏の関係にあるものにすぎない
と解するのが相当である。そうすると,開示請求者が所定の期限内にその開
示請求に対する開示又は不開示の決定を受けることができなかったとして
も,それによって直ちに開示請求者の個人的な権利利益が侵害されたものと
解すべきではなく,当該開示請求に対する開示又は不開示の決定の期限の不
遵守が社会通念上一般人において受認すべき限度を超えない限り,国家賠償
法上の違法行為を構成することはないと解するのが相当である。
そして,前記のとおり,本件開示請求に対する応答は情報公開法10条所
定の期限よりも7日間遅れたものにすぎないから,そのような遅延は社会通
念上一般人において受認すべき限度を超えていないものというべきである。
そうすると,そのような応答の遅れをもって,国家賠償法1条1項所定の違
法があるということはできない。
(4)したがって控訴人の被控訴人国に対する国家賠償法に基づく損害賠償請,
求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
3以上によれば,控訴人の本件請求はいずれも理由がないから棄却すべきであ
り,これと同旨の原判決は相当である。
よって,本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主
文のとおり判決する。
東京高等裁判所第22民事部
裁判長裁判官石川善則
裁判官倉吉敬
裁判官徳増誠一

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