弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの上告趣意第一点について。
 記録によると原審において裁判長は被告人Aのために弁護士対馬郁之進を弁護人
に選任したことは明らかである、そして原審第一回公判に出頭した同弁護人は公判
期日の延期を申請し裁判長は右申請により延期する旨を告げ次回期日を来る五月七
日午前一〇時に指定告知し五月七日の第二回公判期日には同弁護人は出頭しなかつ
たが同日第三回公判期日を六月二八日午前一〇時と指定告知してあり第三回公判に
おいて結審しているのであるから対馬弁護人に対しては第二回及び第三回公判期日
につき改めて召喚手続をするの要なく同弁護人は右期日に出頭して弁論をする機会
を与えられているのにかかわらず期日を懈怠したものである、従つて原審が同弁護
人の弁論を聴かずして弁論を終結し判決を言渡しても弁護権を不法に制限した違法
あるものとはいえない。それゆえ論旨は理由がない。
 同第二点について。
 しかし所論被告人Aに対する司法警察官の聴取書(記録第三冊第一一八丁以下)
とあるのは司法警察官の訊問調書の誤記であることは判示引用の記録第三冊第一一
八丁以下と対照して明らかであるから論旨は理由がない。
 同第三点について。
 公判廷で証拠調をした書類を公判調書に記載するには如何なる書類につき証拠調
がなされたかを明確にすれは足り必ずしも書類の一々について個別具体的に掲記す
る必要はない、原審第二回公判調書には所論のように各聴取書各訊問調書各被害届
及各被害顛末書等と記載してあつて個別的具体的に記載していないけれども右の記
載をもつて証拠調をした書類を明確にしたものと認められるから原判決には所論の
違法なく論旨は理由がない。
 同第四点について。
 しかし所論は結局量刑不当の主張に帰するから上告適法の理由にならない。
 被告人Aの弁護人山田盛の上告趣意第一点について。
 しかし共謀というのは数人相互の間に共同犯行の認識があることをいうのである
が原判決挙示の証拠を総合すると所論判示第一事実について被告人等に共同犯行の
認識があつたことを認定できるのであるから所論は結局証拠の判断及び事実の認定
の非難に帰し上告適法の理由とならない。
 同第二点について。
 しかし原判決挙示の証拠を総合すると判示第三の事実につき被告人等に強盗の犯
意のあつたことを認定できるのであるから論旨も亦証拠の判断及び事実の認定の非
難に帰し上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 所論聴取書が訊問調書の誤記であることは被告人Aの上告趣意第二点について説
明したとおりである次に右訊問調書は刑訴応急措置法八条に基き司法警察官が逮捕
状によつて逮捕された被告人Aに対する訊問調書であつて現行犯処分として為され
たものでないことは所論のとおりである。しかし刑訴応急措置法に基く逮捕状の執
行による被疑者逮捕の場合には同法八条四号の規定により同条三号掲記の旧刑訴一
二七条及び一二九条所定の手続を準用し逮捕された被疑者を受け取つた司法日警察
官又は検察官はその被疑者を訊問することができることは当裁判所の判例(昭和二
四年(れ)第七七六号同二六年三月二八大法廷判決)とするところであるから所論
訊問調書は適法で証担能力を有するものというべく従つて論旨は理由がない。
 同第四点について。
 所論は量刑不当の主張であるから上告適法の理由にならない。
 被告人Bの弁護人鍛治利一同早稲田逸郎の上告趣意第一点について。
 裁判所が被告人の精神状態を認定するには必ずしも専門家の鑑定による必要はな
く他の証拠資料によつても差支えはない、原審は被告人Bが昭和二〇年二月一五日
から同年三月二五日まで結核性脳膜炎で入院していた横浜市立C病院に勤務してい
た医師Dを鑑定証人として訊問したのである。そして原審は同証人の証言中昭和二
〇年二月一五日被告人は結核性脳膜炎で入院し非常に危険な状態であつたが九死に
一生を得て同年三月二五日退院した結核性脳膜炎の死亡率は九五パーセント乃至九
七パーセントで仮令生命を取止めても完全に回復するということはなく予後は絶対
に不良なもので必ず後遺症がある、後遺症としては意思能力が弱く思考判断力が低
下する又感情も普通でなく激し易く怒りぽくなる記憶力は減退し数学等の成績は悪
くなる而して精神病学上脳膜炎の後遺症のあるものは中間者と称し一種の精神異状
者として取扱われる旨の証言によつて被告人Bを心神耗弱者と判断しているのであ
る。そして被告人Bが昭和二二年四月にはE師範の本科に入学(尤も二年に進級で
きなかつた)した事実等を参酌すると被告人Bが心神喪失の程度に達しているもの
とは認められないのであつて、原審が心神耗弱と判断したことは必ずしも不当であ
るとは認められない、また原審が右判断をするにつき前示鑑定証人の外に必ず専門
家の鑑定を命じなければならないものではないのであるから原審が弁護人の精神鑑
定の申請を却下したからといつて所論のような違法ありということはできない論旨
は理由がない。
 同第二点について。
 しかし原判決挙示の証拠を総合すると原判示第一事実を認定できるのであるから
所論は証拠の判断及び事実の認定を非難するに帰し上告適法の理由とならない。
 同第三点について。
 しかし原判示第二事実はFがG夫妻を縛つた趣旨を判示しているので被告人Bが
縛つたという判示ではない、所論は原判示の誤解に基づくものであつて採用の限り
でない。
 同第四点について。
 原判決に第二事実認定の証拠の一つとして挙げた被告人Hに対する司法警察官聴
取書(記録録第三冊一一〇丁以下)とあるのは記録第一冊一一〇丁以下の同被告人
に対する司法警察官の訊問調書の誤記であることが明らかであるからこれをもつて
虚無の証拠であるということはできない、次に右訊問調書は横浜市山手警察署にお
いて司法警察官警部補Iが司法警察吏巡査J立会の上訊問作成したもので末尾にI
警部補の署名捺印があるがJの署名捺印のないことは所論のとおりである。そして
旧刑訴一三九条但書は司法警察官訊問を為す場合においては司法警察吏をして立会
はしむべしと規定しているのであるが立会人が調書に署名捺印すべき規定はないの
であるから立会人の署名捺印がないからといつてその調書は同条の規定に違反して
無效であると解することはできない、従つて論旨はその理由がない。
 同第五点について。
 所論Aに対する司法警察官の聴取書が訊問調書の誤記であることは被告人Aの上
告趣意第二点について説明したとおりであるから論旨は採用できない。
 同第六点について。
 原判決は判示第一及び第二事実認定の証拠として被告人Kの原審第一回公判調書
における判示同趣旨の供述記載と判示しているが原審第一回公判は弁護人の申請に
より延期になつたのであるから右は原審第二回公判調書の誤記であること明らかで
ある、従つて論旨は採用できない。
 同第七点について。
 所論は結局量刑不当の主張に帰するから上告適法の理由にならない。
 よつて刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により主文のとおり判決する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二六年七月六日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
 裁判長裁判官塚崎直義は退官につき署名押印することができない。
            裁判官    霜   山   精   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛