弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主     文
     被告人を懲役2年に処する。
この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
          理     由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成15年3月11日午前10時50分ころ,神戸市a区b通c丁目d番e
号fビル7階所在の株式会社C書店g店内において,同店店長A管理にかかる書籍
2冊(販売価格合計1万5000円相当)を窃取した
第2 同日午前10時52分ころ,前記fビル9階に停止したエレベーター内にお
いて,前記株式会社C書店の保安員であるB(当時61歳)に対し,右膝でその左
下腹部を1回膝蹴りする暴行を加えた
ものである。
(証拠の標目)ー括弧内の甲,乙に続く数字は検察官請求証拠番号ー
省略
(補足説明)
1 弁護人は,判示第2の事実について,被告人の公判供述等に基づき,被告人が
判示エレベーター内から逃走する際,これを妨げようとしたBに対し,これをふり
ほどくなどある程度暴れたことは事実であろうが,被告人は被害者を蹴っていない
から,被告人は無罪であると主張するが,前掲関係各証拠によれば,判示第2の犯
罪事実を認めるに十分である。以下,その理由について補足して説明する。
2 関係証拠によれば,被告人は判示第1のとおり,被害店舗から判示書籍2冊を
所掲の手提げ鞄に入れて万引し,店外に通じるエレベーターに乗り込み,これを目
撃した被害者が被告人に続いて同エレベーターに乗り込んだこと,エレベーターは
下に向かい,その間,被害者は被告人に対し,被害店舗の従業員(保安員)である
旨身分を明らかにして,前記鞄の中をあらためさせて欲しい旨申し入れ,被告人の
腕あるいは鞄を押さえながら,7階のボタンを押して同行に応じるよう求めたこ
と,7階でいったんエレベーターは停止し,被害者は被告人に対し降りるよう求め
たが,被告人は応じず,再びエレベーターは上昇し9階で停止したこと,同所で,
被告人は鞄を持ったまま被害者の制止を振り切ってエレベーターから降りて逃走を
開始し,9階フロアー
で二度ほど被害者に追いつかれたものの,いずれも振りほどいて,下り用エスカレ
ーターを徒歩で2階フロアーまで逃走したが,同所で待ち受けていた被害店舗の保
安員Dらに制止され,なおも,被告人は逃げようと必死に暴れ回ったが,最終的に
は同人や被害者を含め5名の被害店舗関係者により制圧され,現行犯人逮捕された
ことが認められる。これらの事実は弁護人及び被告人においても格別争っていな
い。
3 被害者は,当公判廷において,エレベーターが9階で停止した際,被告人が右
膝で被害者の左下腹部を蹴った旨供述するところ,同供述は,鞄を押さえて被告人
の逃走を阻止しようとした際,蹴られてのけぞり,その隙に逃走された旨の自然な
流れの供述であって,その内容自体に具体性,迫真性があるだけでなく,前掲Eの
司法警察員に対する供述調書(甲11),Dの司法巡査に対する供述調書(甲1
0)等によれば,被害直後から被害者は一貫して同旨の供述をしていると認められ
ることに照らし,その信用性は十分である。
4 ところで,被告人は,捜査段階の当初を除き,本件暴行の事実を否認し,大
要,冒頭記載のような弁解をするが,判示第2の事実について,その供述経過をみ
るに,逮捕翌日である平成15年3月12日付け供述調書(乙2)中には,「掴ま
れていた手を振りほどいたり,向かい合った状態で,右膝で被害者の左脇腹付近を
1回蹴りつけた。」旨(以下「本件自白」という。),翌13日付け検察官に対す
る弁解録取書(乙8)中には,「逃げるために,右膝で被害者の左脇腹辺りを1回
蹴りました。」旨,同日付け勾留質問調書中には,「蹴ったかどうかはわかりませ
ん。」旨,その後,しばらくの間供述調書は作成されなかったところ,同月18日
付け供述調書(乙3)中には,「被害者から逃れようとして全身の力を込めて体を
よじったり,手で振り
払ったりしたことは事実であるが,膝蹴りした事実はない。(同月12日に)これ
を認めた調書作成に応じたのは,暴れたことは事実であるので,その際,もしかし
たら被害者を蹴ったかも知れない,記憶にはなかったが,その可能性もあると思っ
たためである。」旨の各供述記載が認められる。被告人は,本件自白は取調官から
暴行を受けたため作成に応じた自白であるというが,調書作成経過に関する被告人
の供述は信用できず,被告人自身が前記同月18日付け供述調書(乙3)で述べる
とおり,本件自白をした理由は,「エレベーターが9階で停止した際,暴れて逃げ
たことは事実であるので,その際,もしかしたら被害者を蹴ったかも知れない,記
憶にはなかったが,その可能性もあると思ったためである。」と認められるのであ
って,被告人に被害
者を蹴った記憶がなかったことが仮に事実であるとしても,逆に,被告人にこれを
明確に否定しうる記憶がなかったことは疑いの余地がない。そうすると,判示第2
の暴行を否定する被告人の捜査段階及び当公判廷における供述は,前記十分信用で
きる被害者の公判供述の信用性に合理的疑いを生じさせるものではない。
5 以上のとおり,十分信用できる被害者の公判供述その他前掲関係各証拠によれ
ば,判示第2の犯罪事実は優に認められる。弁護人及び被告人の主張は理由がな
い。
(法令の適用)
 罰    条  第1 刑法235条
第2 同法208条
 刑種の選択  懲役刑選択(第2につき)
 併合罪加重  同法45条前段,47条本文,10条(重い第1の罪の刑に同法
47条ただし書の制限内で法定の加重)
 宣告刑  懲役2年
 刑の執行猶予  刑法25条1項(4年間猶予)
 訴訟費用  刑事訴訟法181条1項本文(全部負担させる。)
(量刑の理由)
 本件は,被告人が格別の理由なく書籍2冊を万引し,被害店舗の保安員に暴行を
加えた窃盗及び暴行の事案であるところ,殊に,万引行為を発見された後に保安員
らから執拗に逃走しようとして第2の犯行に及んだ点において悪質であり,その刑
事責任は重いというべきであるが,被告人には前科前歴がないこと,被害書籍は被
害店に還付されたこと,被告人なりの反省悔悟の情等被告人のために酌むべき事情
をも十分に考慮し,主文のとおり量定した上,その刑の執行を猶予することとし
た。
 よって,主文のとおり判決する。
  平成15年10月15日
    神戸地方裁判所第11刑事係甲
          裁 判 官  杉 森 研 二

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