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平成12年(ワ)第1974号不正競争差止等請求事件(甲事件)
同年(ワ)第12240号損害賠償等請求事件(乙事件)
口頭弁論終結日 平成14年2月1日
判決
原告(甲・乙事件)   株式会社バシーン・インターナショ
ナル
訴訟代理人弁護士   谷口達吉
同           向井理佳
訴訟復代理人弁護士   金藤 力
補佐人弁理士   坂上好博
被告(甲・乙事件)   エコー金属株式会社
訴訟代理人弁護士   相馬 卓
補佐人弁理士   牛木 護
主文
1 被告は、原告に対し、金89万9556円及びこれに対する平成12年11
月19日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを4分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担
とする。
4 この判決は、第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1(甲事件)
 被告は、原告に対し、金747万1184円及びこれに対する平成12年3
月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2(乙事件)
 被告は、原告に対し、金340万円及びこれに対する平成12年11月19
日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 甲事件は、原告が被告に対し、被告の販売する2本組ワイヤーブラシセット
は、原告の商品の形態を模倣したものであるとして、不正競争防止法2条1項3
号、4条に基づき損害賠償を請求した事案、乙事件は、原告が被告に対し、被告の
2本組ワイヤーブラシセットの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に反すると
して損害賠償を請求した事案である。
1 争いのない事実等
(1) 原告は、作業工具、庭園用工具、自動車工具、空気工具、電動工具の輸出
入等を目的とする株式会社である。
 被告は、家庭用金物の販売等を目的とする株式会社である。
(2)ア 原告は、平成10年7月以降、被告に対し、別紙「原告商品A目録」記
載の物件(検甲1、以下「原告商品A」という。)及び別紙「原告商品B目録」記
載の物件(検甲3、以下「原告商品B」という。)を販売し、被告は、原告商品
A、Bを100円均一ショップを営む株式会社大創産業(以下「大創産業」とい
う。)に販売した。
イ 被告は、平成11年6月下旬ころ、別紙「被告商品A目録」記載の物件
(検甲2、以下「被告商品A」という。)及び別紙「被告商品B目録」記載の物件
(検甲4、以下「被告商品B」という。)を、原告以外の会社に対して発注し、同
年9月下旬ないし10月初旬ころからこれを仕入れて、大創産業に販売している。
(3)ア 原告商品A及び被告商品Aの各構成は、別紙「原告商品A及び被告商品
Aの構成目録」記載のとおりであり、原告商品B及び被告商品Bの各構成は、別紙
「原告商品B及び被告商品Bの構成目録」記載のとおりである。
イ 被告商品Aと原告商品Aとの対比は、以下のとおりである。
(ア) 両商品の共通点は、次のとおりである。
a 縦形長方形の厚紙製台紙に、金属製ワイヤーブラシ及びナイロン製
ワイヤーブラシの2本のブラシを包み込むように成形されたブリスターパックから
なる陳列用包装済商品であって、
b 台紙の上部に赤地に白抜き文字で「2本組ワイヤーブラシ」の記載
があり、その下部左には薄赤地に赤文字で大きく「BENRI BRUSH」の記
載があり、「BRUSH」の文字の右横には、赤文字で小さく「ナイロンブラシ…
サンディング後の掃除・汚れ落とし等に。」及び「真鍮ブラシ…ガスレンジの目づ
まり・プラグのカーボン取り等に。」の文字が記載されており、右には「・使い易
い角度付きハンドル・ガンコな汚れも落とし易い」と赤文字でブラシの湾曲に沿っ
た形で記載されている。
c 各ブラシは、線材を植毛したブラシ部とこれに続く穏やかに湾曲す
るハンドルからなる。2本のブラシは台紙の略中央線に沿って並べて置かれてい
る。
d 金属製ワイヤーブラシのブラシは真鍮製である。
e 台紙の背面下部には、被告の商品メーカーコード(499120
3)、バーコード及び作業時の注意書きが記載されている。
f 台紙及びブリスターパックの上部には、陳列用のフック掛用孔が設
けられている。
(イ) 両商品の相違点は、次のとおりである。
a 原告商品Aには、台紙の左上(「2本組ワイヤーブラシ」の「2本
組」の記載の上)に「BE-205B」の記載が白抜文字でなされているのに対
し、被告商品Aにはかかる記載がない。
b 台紙の右側「・使い易い角度付きハンドル・ガンコな汚れも落とし
易い」の赤文字の記載とブラシの湾曲との沿い方が相違し、原告商品Aは文字の記
載がブラシ湾曲に平行であるのに対し、被告商品Aでは少し傾斜している(ブリス
ターパックにより台紙とブラシをセッティングした場合に、原告商品Aの方が被告
商品Aに比べて、ブリスターパックの凸部の縁と文字列の左側縁部とが重なるため
に、文字が読みにくくなる傾向がある。)。
c 原告商品Aには、台紙裏面下部バーコードの記載の上に「BE-2
05B」の記載があるのに対し、被告商品Aにはかかる記載がない。
ウ 被告商品Bと原告商品Bとの対比は、以下のとおりである。
(ア) 両商品の共通点は、次のとおりである。
a 縦形長方形の厚紙製台紙に、金属製ワイヤーブラシ及びナイロン製
ワイヤーブラシの2本のブラシを包み込むように成形されたブリスターパックから
なる陳列用包装済商品であって、
b 台紙の上部に緑地に白抜き文字で「2本組ワイヤーブラシ」の記載
があり、その下部左には黄色地に緑文字で大きく「BENRI BRUSH」の記
載があり、「BRUSH」の文字の右横には、赤文字で小さく「ナイロンブラ
シ」、緑文字で小さく「…サンディング後の掃除・汚れ落とし等に。」、赤文字で
小さく「ステンレスブラシ」、緑文字で小さく「…錆取り・ペンキはがし・プラグ
のカーボン取り等に。」の文字が記載されており、右には「・使い易い角度付きハ
ンドル・ガンコな汚れも落とし易い」と赤文字でブラシの湾曲に沿った形で記載さ
れている。
c 各ブラシは、線材を植毛したブラシ部とこれに続く穏やかに湾曲す
るハンドルからなる。2本のブラシは台紙の略中央線に沿って並べて置かれてい
る。
d 金属製ワイヤーブラシのブラシはステンレス製である。
e 台紙の背面下部には、被告の商品メーカーコード(499120
3)、バーコード及び作業時の注意書きが記載されている。
f 台紙及びブリスターパックの上部には、陳列用のフック掛用孔が設
けられている。
(イ) 両商品の相違点は、次のとおりである。
a 原告商品Bには、台紙の左上(「2本組ワイヤーブラシ」の「2本
組」の記載の上)に「BE-110S」の記載が白抜文字でなされているのに対
し、被告商品Bにはかかる記載がない。
b 台紙の右側「・使い易い角度付きハンドル・ガンコな汚れも落とし
易い」の赤文字の記載とブラシの湾曲との沿い方が相違し、原告商品Bは文字の記
載がブラシ湾曲に平行であるのに対し、被告商品Bでは少し傾斜している(ブリス
ターパックにより台紙とブラシをセッティングした場合に、原告商品Bの方が被告
商品Bに比べて、ブリスターパックの凸部の縁と文字列の左側縁部とが重なるため
に、文字が読みにくくなる傾向がある。)。
c 原告商品Bには、台紙裏面下部バーコードの記載の上に「BE-1
10S」の記載があるのに対し、被告商品Bにはかかる記載がない。
エ 以上のとおり、原告商品A、B及び被告商品A、Bの各商品形態は、ワ
イヤーブラシの形態、台紙の配色、記載文言、文字書体、文字の色・配置、商品メ
ーカーコード及びバーコードの表示等が同一であって、異なる点は「BE-205
B」又は「BE-110S」の表示の有無と、台紙の右側の「・使い易い角度付き
ハンドル・ガンコな汚れも落とし易い」との文字の配置がわずかに異なる程度であ
り、それぞれの共通点及び相違点からすれば、被告商品Aと原告商品Aの商品形
態、及び被告商品Bと原告商品Bの商品形態は、それぞれ、不正競争防止法2条1
項3号にいう「模倣」の客観的要件としての実質的同一性を有しているといえる。
2 争点
(1) 原告商品A、Bの商品形態は、不正競争防止法2条1項3号によって保護
されるべき「商品の形態」に当たるか(甲事件)。
(2) 原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の「他人の
商品」に該当するか(甲事件)。
(3) 被告の被告商品A、Bの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に違反す
るものか(乙事件)。
(4) 損害の発生及び額(甲、乙事件)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(原告商品A、Bの商品形態は、不正競争防止法2条1項3号によっ
て保護されるべき「商品の形態」に当たるか。)について
〔原告の主張〕
(1) 商品の容器や包装の形態に工夫が凝らされ、この点について開発の労力や
費用が傾注されることは稀ではないことから、商品の容器や包装についても、商品
自体と一体のものとして不正競争防止法2条1項3号により保護されると解すべき
である。
 原告商品A、Bの商品形態は前記第2の1(3)記載のとおりであり、そのブ
ラシ本体及び包装(台紙及びブリスターパック)と一体となった商品形態は、不正
競争防止法2条1項3号により保護されるものである。
(2) 被告は、原告商品A、Bのブラシ及び包装は、同種商品が通常有する形態
にすぎず、不正競争防止法2条1項3号の保護の対象にならないと主張するが、同
主張は以下のとおり失当である。
ア ブラシ本体について
 ブラシにおける「通常有する形態」とは、持ち手があり、持ち手の先に
ブラシの毛が植毛されているだけの何ら工夫のなされていない形態をいうと解すべ
きである。
 原告商品A、Bのブラシは、穏やかに湾曲する持ち手(ハンドル)を有
し、しかもハンドル部分には、握りやすいように波型状の細工が施されているか
ら、原告商品A、Bのブラシの形態は「通常有する形態」に当たらない。
イ 包装(台紙及びブリスターパック)について
 原告商品A、Bにおけるブリスターパックは、2本組のブラシが固定さ
れるような形態を有し、しかも台紙には説明文が記載されており、そうした包装形
態及び台紙デザインは「通常有する形態」に当たらない。
〔被告の主張〕
 原告商品A、Bの商品形態は、次のとおり、不正競争防止法2条1項3号に
よって保護されるべき「商品の形態」に当たらない。
(1) ブラシ本体について
 原告商品A、Bのブラシ本体の形状、大きさ、色彩その他の外観は、その
用途である「サンディング後の掃除・汚れ落し」、「ガスレンジの目づまり・プラ
グのカーボン取り」、「錆取り」、「ペンキはがし」等に用いられるために市場に
おいて販売されているナイロンブラシ、ステンレスブラシ又は真鍮ブラシが一般的
に備えているありふれた外観を有しているにすぎず、外観上独自の特徴を有してい
ないから、同種の商品が通常有する形態(不正競争防止法2条1項3号かっこ書)
に当たる。
 しかも、原告商品A、Bのブラシは、6年前から中国で製造されていたブ
ラシと比べると、そのハンドルの厚さが部分的に約1.5㎜~2㎜程度薄いという違
いが存するにすぎず、従前から存在する同種のブラシの形態の域を出ないものであ
る。
(2) 包装(台紙及びブリスターパック)について
ア 不正競争防止法2条1項3号が、他人が商品化のために資金と労力を投
下した「商品の形態」の模倣を禁止する趣旨からすれば、商品の形態が需要者の購
買動機に影響を与え得るような独自の特徴を有するものであって初めて、同号によ
る保護の対象とされると考えるべきである。
 商品本体と包装とを対比した場合、需要者の購買動機に影響を与えるの
は、通常、本体の品質、機能、形態その他の本体の特徴であって、包装の形態が本
体たる商品とともに、あるいは、商品自体より以上に需要者の購買動機において重
視されることは多くない。
 原告商品A、Bは、100円均一ショップにおいて2本100円で販売
されるブラシであり、需要者は、ブラシの用途、機能等に着目して購買するもので
あり、包装の形態いかんによってその購買動機が左右されることは通常想定できな
い。
イ ブリスターパックについて
 原告商品A、Bのようなブラシとその他の棒状の商品が複数本で一組と
なり、それぞれが固定されるようなブリスターパックは何年も前からごく普通に見
られることは周知の事実であり、原告が独自に考案した形態でないことは明らかで
ある。
ウ 台紙デザインについて
 原告商品A、Bに用いられている台紙のデザインは、配色、文字の配
置、書体、印刷の質等のいずれの点を見ても、100円均一ショップに陳列されて
いる日用雑貨品に良く見られるタイプのものであり、格別の特徴があるとはいえな
い。
2 争点(2)(原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の
「他人の商品」に該当するか。)について
〔原告の主張〕
(1) 不正競争防止法2条1項3号の他人の商品における「他人」とは、商品の
形態を創作した者ではなく、商品としてこれを市場に送り出した者、すなわち商品
化を行った者をいうと解すべきである。
 原告は、被告に対し、原告商品A、Bの見本品を提示して、その取引を持
ちかけたところ、それを見て気に入った被告から、「後はよろずよろしく頼む。」
と言われ、本件商品の発注を受けたのであり、①日本人の好みに合うようにハンド
ルを細くした、②100円均一ショップでの売買に適するように2本セットでの販
売を提案した、③輸入商品自体に付されていた説明文(宣伝文句)を日本人向けに
新設あるいは修正した表現にした、④ブリスターパックでの包装を提案した、⑤台
紙の色彩や、説明文の配置、表現の強弱について考案したものである。
 したがって、原告商品A、Bの商品化を行ったのは原告であり、原告商品
A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に該当す
る。
(2) 被告は、原告商品A、Bには原告が販売主体であることを示す表示はな
く、その台紙裏面に被告会社を示すバーコードが付されていること、原告は、原告
商品A、Bの商品台紙を被告所在地の近隣の印刷業者にデザインさせ、その印刷と
包装を中国で行わせて、被告に対し納入するために中国から輸入したにすぎないこ
とを理由として、原告商品A、Bは、原告の商品ではないと主張する。
 しかし、原告商品A、Bに、原告が販売主体であることを示す表示がない
ことや被告会社を示すバーコードを付されていることと、原告と被告のどちらが商
品化したか否かとは別の議論である。
 また、原告商品A、Bの商品台紙のデザインは、原告が、新潟県燕市の近
隣の印刷業者と共同で考案し、原告が、印刷業者に対しデザイン料を支払っている
し、印刷と包装を中国で行わせていることについても、単に、原告の考案に従って
現実的な製造や作業を中国の製造工場が行ったというにすぎない。
〔被告の主張〕
(1) 不正競争防止法2条1項3号が「他人の商品」の形態を模倣した商品を譲
渡する等の行為を不正競争行為とした趣旨は、他人が資金・労力を投下して開発し
た商品の形態を模倣して先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為を規制
することによって、先行者の開発利益を保護することにあるから、同号にいう「他
人」とは、当該商品を自ら開発・商品化して市場に置いた者であり、同号の上記趣
旨からすると、「他人」に当たるか否かは、当該商品を商品化して市場に置くに際
し、費用や労力を投下した者といえるか否かを吟味して決すべきである。
 原告は、商品台紙を被告所在地の近隣の印刷業者にデザインさせ、その印
刷と包装を中国で行わせて、被告に対し納入するために中国から輸入したにすぎな
いものであって、原告商品A、Bの開発及び商品化のために費用や労力を投下した
者とはいえない。
 しかも、原告は、被告から原告製品A、Bの注文を受けた後、中国の業者
に対し生産を指示して、これを輸入しているものであって、被告からの注文がない
のに自ら在庫及び売れ残りリスクを負って商品を輸入しているものではなく、この
点からしても、原告商品A、Bの商品化の費用及びリスクを負っていたのは被告で
あって、原告ではない。
(2) 原告が原告商品A、Bに関し費用や労力を投下したと主張する点について
次のとおり反論する。
ア 原告商品A、Bのブラシは、6年前から中国で製造されていたブラシよ
り、そのハンドルの厚さを部分的に約1.5㎜~2㎜程度薄くしたものにすぎない。
イ ブラシを2本セットにしたこと、日本人向けの説明文(宣伝文句)を付
加したこと、ブリスターパックでの包装にしたことは、原告独自の発想ではなく、
ごく普通に行われていることであるから、こうした事項は、商品形態の開発又は商
品化のために投下された費用や労力とはいえない。
ウ 台紙の色彩や説明文の配置、表現の強弱については、これを現実に文章
化したのは印刷会社の担当者である。原告代表者は、台紙に印刷する商品名、商品
の特徴、使用方法、使用上の注意の概略を口頭で印刷会社に告げたにとどまり、一
方、被告は、デザインが適当か、日本語による文言及びバーコード番号が正しく印
刷されているかを最終的に点検しており、原告のみならず、被告も労力を投下して
いる。
(3) 被告は、被告自身の商品として日本国内において卸売りするために、原告
から原告商品A、Bを仕入れたものであり、原告商品A、Bは、その台紙裏面に被
告が財団流通システム開発センターに登録した被告を示す商品メーカーコード(4
991203)のバーコードを付して包装されている。そして、原告商品A、Bの
台紙には、その商品の製造又は販売の主体を表示するものは、被告会社を示すバー
コード以外には何ら表示はない。
 したがって、原告商品A、Bは、需要者に対しその販売主体が被告である
ことを示す表示はあるが、原告が販売主体であることを示す表示は何もなく、原告
商品A、Bは、そもそも被告が日本国内で販売するために、原告から仕入れていた
商品であって、被告の商品にほかならないから、原告商品A、Bは、不正競争防止
法2条1項3号にいう「他人の商品」に該当しない。
3 争点(3)(被告の被告商品A、Bの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に
違反するものか。)について
〔原告の主張〕
(1) 原告は、平成10年3月16日、被告との間で「BENRI BRUS
H」と称する金属製ワイヤーブラシとナイロン製ワイヤーブラシをセットにした原
告商品A、Bを、原告が被告に対し継続的に売り渡す旨の契約を締結した(以下
「本件契約」という。)。
 仕入数量、単価等については、発注の都度協議してこれを定めることとな
っていたが、被告は、原告商品A、Bと同種の商品を原告以外の業者から仕入れる
ことはできない旨、了解していた。
(2) 原告は、被告に対し、本件契約に基づき、平成10年7月8日及び同年9
月17日、原告商品A、Bを納入し、その後も、被告から発注があるごとに本件商
品を納入していた。原告商品A、Bは、被告によって100円均一ショップで販売
され、よく売れていた。
(3) しかるに、被告は、平成11年6月ころ、原告商品A、Bの値下げを求
め、原告から値下げには応じられない旨の回答を受けたことを奇貨とし、一方的に
原告に対し本件契約を解約する旨の通告をして本件商品の発注を打ち切り、原告以
外の他社から被告商品A、Bを仕入れて販売するようになったものである。
(4) 上記の一方的な解約行為は、原告の手法を学んで模倣することができるよ
うになった被告が、より多くの利益を目指して行った信義誠実にもとる行為であ
り、解約権の濫用であり、被告による被告商品A、Bの販売行為は、原告商品A、
Bないしこれと同種の商品を原告以外の業者から仕入れることはできないとの上記
合意に反するものである。
〔被告の主張〕
(1) 原告と被告との間で、原告商品A、Bについて継続的取引契約が締結され
たこと、被告が原告に対し原告商品A、Bの取引を打ち切ったことが解約権の濫用
に当たるとの原告の主張は否認する。
(2) 100円均一ショップ業界においては、同種同様の商品を取り扱う業者が
複数存在している上、もともと商品の単価が安いため、同種の商品について提示す
る単価が他社と比べて数円違うだけでも業者間の競争に負けてしまうようなシビア
な業界である。
 被告会社のように、100円均一ショップ販売用の商品(輸入品)を仕入
れ、それを卸売りする業者としては、他社と同等ないしは有利な価格を提示する輸
入業者と取り引きし、取引の相手方の提示価格が他社と比べて高い場合には、指し
値や減額の交渉をし、相手方がそれに応じなければ取引の相手方を変更すること
は、合理的な経済人として当然の行動である。
 このように、価格競争の熾烈な100円均一ショップ業界において商品を
供給する側は、変動の激しい同業他社の提示価格に追随できて初めて反復継続した
取引を行うことができるのであり、この点を度外視して、継続的な取引契約など期
待し得ない。
(3) 被告が、原告との取引を打ち切ったのは、他の業者が提示する価格に比
べ、原告の提示価格がおよそ2割も高かったため、被告側から原告に対して適正な
価格を指し値としたが、原告がこれに応じなかったので、原告との取引を中止した
ものである。
 100円均一ショップ業界における価格競争は上記のとおり熾烈であっ
て、被告の行為は合理的な経済人としては当然のことであって、正当な理由なしと
非難されるいわれはなく、同解約行為が信義誠実にもとる行為であり、解約権の濫
用であるとの原告の主張は理由がない。
4 争点(4)(損害の発生及び額)について
〔原告の主張〕
(1) 甲事件について
 被告は、平成11年6月初旬以降、平成13年6月末日までの間に、被告
商品A、Bを少なくとも合計27万9984個以上販売し、1個当たり25.97円
の利益を得ている。
 被告が被告商品A、Bの金型費用として80万円を支出したことを考慮す
ると、被告が被告商品A、Bの販売により得た利益は、合計647万1184円
(25.97円×27万9984個-80万円)となり、原告は、被告の上記販売行
為により、同額の損害を被ったものと推定される(不正競争防止法5条1項)。
(2) 乙事件について
 被告は、平成11年6月初旬以降平成11年12月末日までに、被告商品
A、Bを少なくとも16万個以上販売している。
 原告が本件商品を被告に売り渡す場合には、本件商品1個当たり15円の
利益を仕入価格に上乗せしていたから、原告は、被告が原告との取引を打ち切った
ことにより、240万円(15円×16万個)の損害を被った。
〔被告の主張〕
(1) 原告の主張事実(1)及び(2)は、いずれも否認する。
 なお、被告が平成11年12月末日までに被告商品A、Bを販売した数量
は、5万1012個である。
(2) 甲事件に係る原告の損害主張について、次のとおり反論する。
ア 原告が、被告の不正競争行為により現実に営業上の利益を被っていない
ことが明らかな場合には、不正競争防止法5条1項の推定規定の適用はないと解す
べきである。
 そして、原告は原告商品A、Bを被告に対してのみ販売していたもので
あるから、原告が、被告による被告商品A、Bの販売行為により何らかの営業上の
影響を受けるとすれば、それは、被告が被告商品A、Bを販売したからではなく、
被告が原告から原告商品A、Bを買わないという不作為によるものというべきであ
って、仮に被告による被告商品A、Bの販売が不正競争行為に当たるとしても、当
該行為によって原告が営業上の損害を被るという事実関係を認めることはできな
い。
イ 仮に被告による被告商品A、Bの販売行為が不正競争防止法2条1項3
号の不正競争行為に当たるとしても、原告商品A、Bの商品形態のうち包装形態の
みが保護の対象とされるべきであり、原告商品A、Bに占める包装の寄与度は多く
とも10%までは至らないというべきであるから、損害の算定に当たってはこの寄
与度を考慮すべきである。
第4 争点に対する判断
1 争点(1)(原告商品A、Bの商品形態は、不正競争防止法2条1項3号によっ
て保護されるべき「商品の形態」に当たるか。)について
(1) 原告商品A、Bの外観及び構成は、別紙「原告商品A目録」及び別紙「原
告商品A及び被告商品Aの構成目録」中の原告商品A欄、別紙「原告商品B目録」
及び別紙「原告商品B及び被告商品Bの構成目録」中の原告商品B欄に各記載のと
おりである。
(2) ブラシ本体について
ア 証拠(甲1、2、乙5~9、13、14、検乙1、2)によれば、次の
事実が認められる。
(ア) 原告は、既存の中国製のブラシセット(ブラシ3本がブリスターパ
ックに包装された商品。以下「3本ブラシセット」という。)に含まれていたブラ
シに修正を施して、原告商品A、Bのブラシの形態にしたものであるが、その修正
を施した点は次のとおりである。
a 中国製の3本ブラシセットは、ステンレスブラシ、真鍮ブラシ及び
これらより二回りくらい小さいナイロンブラシの3点セットであったが、ナイロン
ブラシをステンレスブラシや真鍮ブラシと同じ大きさにするようにした。
b ブラシのハンドル部分を、1.5㎜から2㎜薄くした。
(イ) 原告商品A、Bのブラシは、線材を植毛したブラシ部とこれに続く
穏やかに湾曲するハンドルからなり、ハンドル部分には握りやすいように波型状の
細工が施されているものであるが、線材を植毛したブラシ部とこれに続くハンドル
部を有するというのはブラシの基本的形状であり、原告商品A、Bのブラシの特徴
はハンドルの形状にあるというべきところ、同形態を有するブラシは、1994年
(平成6年)5月21日ころ、既に中国で製造されていた。
イ そうすると、原告商品A、Bのブラシ本体は、その商品形態の特徴がハ
ンドル部の微細な形状にあるにすぎず、しかも、平成6年ころ中国において同形態
のブラシが製造されていたことに加え、原告が加えた修正の程度がほとんど看者の
注意を惹かない部分に及ぼされているにすぎず、その程度も小さいことなどを考慮
すると、それ自体では、同種の商品が通常有する形態(不正競争防止法2条1項3
号かっこ書)を有するにすぎないというというべきである。
(3) 包装(台紙及びブリスターパック)について
ア 不正競争防止法2条1項3号にいう「商品の形態」とは、商品の形状、
模様、色彩、光沢等外観上認識できるものをいうが、商品の容器や包装について
も、商品と一体となっていて、商品自体と容易に切り離せない態様で結びついてい
る場合には、同号の「商品の形態」に含まれると解すべきである。しかるところ、
原告商品A、Bは、その包装(台紙及びブリスターパック)が商品と一体となり、
商品自体と容易に切り離せない態様で結びついており、このように包装された形態
で市場に流通しているものであるから、原告商品A、Bの包装は不正競争防止法2
条1項3号にいう「商品の形態」に含まれるものというべきである。
 原告商品A、Bにおけるブリスターパックは、2本組のブラシが固定さ
れた形態を有し、台紙は、緑地と黄色地あるいは赤地と薄赤地の2色に配色され、
白抜き文字、緑文字及び赤文字で商品名や説明文が記載されており、各記載部分の
文字は種々の大きさの書体が選択され、文字の配列も、横書き、縦書きのほか、ブ
ラシの湾曲に沿った形で配されている部分もある。
イ 被告は、原告商品A、Bのブラシのような棒状の商品が複数本で一組と
なって固定されるようなブリスターパックや、台紙のデザインは、格別の特徴がな
く「通常有する形態」に当たると主張するが、ブラシを2本組みにしてブリスター
パックで包装する場合でも、ブラシの並べ方には種々の配置が考えられ、また、台
紙のデザインについても、記載文言の内容や、その配色、文字の配置、書体、印刷
の質等をどうするかについては、種々の選択が考えられるのであって、原告商品
A、Bの包装形態が「通常有する形態」に当たるということはできず、他に、原告
商品A、Bの包装形態が「通常有する形態」であることを認めるに足りる証拠はな
い。
(4) そうすると、原告商品A、Bは、その包装(台紙及びブリスターパック)
部分を含めた商品形態において、不正競争防止法2条1項3号により保護される商
品形態に当たるというべきである。
2 争点(2)(原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項3号の
「他人の商品」に該当するか。)について
(1) 不正競争防止法2条1項3号は、「他人の商品」の形態を模倣した商品を
譲渡し、貸し渡し、輸入する行為等につき不正競争行為とする旨規定するが、その
趣旨は、費用や労力を投下して商品を開発して市場に置いた者が、これを回収する
に必要な期間(最初に販売された日から3年間)、投下した費用や労力の回収を容
易にし、商品化への社会的意欲を高めるために、費用や労力を投下することなく先
行者の開発した商品の形態を模倣する行為を規制することとしたものである。
 したがって、同号の保護を受けるべき者に当たるか否かは、当該商品を商
品化して市場に置くに際し、費用や労力を投下した者といえるか否かを検討するこ
とによって決すべきことになる。
 そして、仮に、甲、乙それぞれが、当該商品を商品化して市場に置くため
に、費用や労力を分担した場合には、第三者の模倣行為に対しては、両者とも保護
を受けることができる立場にあることはいうまでもないが、甲、乙間においては、
当該商品が相互に「他人の商品」に当たらないため、当該商品を譲渡等する行為を
不正競争行為ということはできないというべきである。
 そこで、こうした観点から、原告商品A、Bの商品化して市場に置くにつ
いて、原告ないし被告が費用や労力を投下したか否かについて検討する。
(2) 証拠(甲4、10~13、16、乙5、15、16の1~3、乙17、1
8)によれば、次の事実が認められる。
ア 原告は、海外の様々なメーカー等から素材となる道具類等を探し出し、
その素材を日本向けにアレンジして新しい商品を開発し、それを日本の卸売業者や
100円均一ショップ等の小売店に納入するという業務を中心に行っている。
 被告は、中国や東南アジア等の国で生産される価格の安い日用雑貨類を
輸入商社から仕入れ、それを国内の100円均一ショップを経営する会社に卸売り
するという業務を行っている。
イ 原告は、従前、上記日本向けの商品を株式会社タマハシ(以下「タマハ
シ」という。)を通じて、日本の卸売業者や小売店に販売しており、タマハシ以外
の会社に商品を納入することはなかったが、平成4年2月ころ、タマハシの社長が
死亡したことを契機に、被告との間で取引をするようになった。
ウ 原告と被告との関係は、かつてのタマハシとの関係と同様に、原告が商
品を開発し、これを被告が販売するというものであった。
 原告代表者は、商品開発に際し、海外の商社を通じてメーカーと折衝
し、被告の意見を聞いた上で最終的な商品化に至るという方法を採っており、商品
によっては概ね1年くらいの商品開発の期間が必要となり、原告代表者は、その作
業のために海外出張を繰り返していた。
エ 原告商品A、Bが商品化されるまでの経緯は次のとおりである。
(ア) 原告は、中国で販売されていた3本ブラシセットを2本組セットに
して100円均一ショップ向けの製品にし、被告に対して販売することを企画し
た。
(イ) 原告は、前記1(2)記載のとおり、中国製の3本ブラシセットのブラ
シ本体について、ステンレスブラシ、真鍮ブラシ及びナイロンブラシをいずれも同
じ大きさにするとともに、ブラシのハンドル部分を1.5㎜から2㎜薄くする修正を
し、原告は、その修正のための金型代の一部として30万円を支払った。なお、金
型代のその余の部分は、原告と中国の製造業者との間に介在する商社が負担し、同
商社はその費用を販売単価に上乗せして回収することとした。
(ウ) 原告は、原告商品A、Bの台紙のデザインを印刷会社に依頼し、そ
の印刷製版費用として、7万2000円を支出した。
 原告代表者は、日本語の読み書きが十分にできないこともあって、印
刷原版ができた段階でこれを被告のもとに持ち込み、被告代表者が、同台紙のデザ
インが100円均一ショップで販売するのにふさわしいか、日本語による商品名、
商品の特徴の表示、使用方法の説明書き、使用上の注意、被告の商品メーカーコー
ド(4991203)等が正しく印刷されているかどうかを確認した上で、原告代
表者は、同原版を用いて台紙の印刷を発注し、原告商品A、Bを商品化した。
オ 原告は、被告に対し、①原告商品A、Bを、平成10年3月16日に各
3万6000個の注文を受けて、同年7月8日に各1万8000個(単価54
円)、同年9月17日に各1万8000個(単価50円)を納品し、②同年9月9
日に各3万9600個の注文を受けて、同年11月11日に同数量(単価51円)
を納品し、その納品数量の合計は各7万5600個(合計15万1200個)であ
る。
 なお、原告は、被告から原告商品A、Bの注文を受けてから、製造業者
に受注数量分の製造を依頼して、でき上がった製品を被告に納入したものであり、
原告が在庫を抱えることはなかった。一方、被告は、大創産業に対して毎月数千個
単位の数量を納品していることからすると、原告から一括して仕入れた原告商品
A、Bを在庫として抱え、その中から月々大創産業に納品していたものと推認でき
る。
カ その後、被告は、他の輸入商社と比較して原告からの仕入価格が約2割
近く高かったため、平成11年6月ころ、原告に対して原告商品A、Bの仕入価格
の減額を求めたが、原告がこれに応じなかったことから、同月下旬ころ、原告以外
の他社に被告商品A、Bを発注し、これを仕入れることとした。
キ 被告は、平成12年6月ころ、被告商品A、Bとは異なる新たな台紙の
デザインを依頼し、その後は、被告商品A、Bは販売していない。
(3) 以上の事実関係に基づいて、原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防
止法2条1項3号の「他人の商品」に該当するかについて検討する。
ア 前記1記載のとおり、原告商品A、Bの商品形態は、ブラシを2本組に
してブリスターパック及び台紙によって包装した包装形態をとることによって、不
正競争防止法2条1項3号の保護の対象となるものというべきところ、原告は、原
告商品A、Bの開発に際し、台紙の印刷製版費用として7万2000円を負担し、
中国の業者との間で数度にわたり打ち合わせを重ねたものにすぎず、しかも、原告
は商品在庫を抱えるなどの販売リスクを負っているものではない。
イ 一方、被告は、100円均一ショップを経営する会社に卸売りするとい
う業務を行っており、日本語の読み書きが十分にできない原告代表者に代わり、原
告が中国から持ち込んだ原告商品A、Bを100円均一ショップにおいて販売する
のに適するか否かという視点で台紙のデザインを確認した上、これを仕入れ、被告
会社が有する大創産業に対する販売ルートを通じて流通に置き、また、商品在庫を
抱えるという販売リスクを負っていたものである。
ウ 上記のような原告及び被告が負担した費用、労力、リスクの程度を考慮
すると、原告商品A、Bを商品化して流通に置くについて、原告のみがその費用や
労力を負担したということはできず、被告においても一定の労力、リスクを負担し
たものと評価できるから、原告及び被告のそれぞれが費用や労力を分担したものと
いうべきである。
エ そうすると、原告商品A、Bは、被告にとって不正競争防止法2条1項
3号の「他人の商品」に該当しないというべきであるから、同号を理由とする原告
の請求(甲事件)は理由がない。
3 争点(3)(被告の被告商品A、Bの販売行為は、原被告間の継続的取引契約に
違反するものか。)について
(1)ア 上記2(2)記載のとおり、原告は、原告商品A、Bの開発に際し、台紙
の印刷製版費用として7万2000円を負担し、中国の業者との間で数度にわたり
打ち合わせを重ね、金型費用として30万円を支出するなどし、原告と被告とが、
費用や労力を分担して原告商品A、Bを商品化し流通に置いたものである。
イ しかも、原告商品A、Bは、次のような商品(包装)の形態から、被告
のみに専属的に納入することが想定されていたものである。
(ア) 原告商品A、Bは、台紙に被告の商品メーカーコード(49912
03)及びバーコードが印刷されている。
(イ) 原告は、原告商品A、Bのほかに、黄色の地に緑色の帯に白地で
「BENRI GOODS」と記載し、裏面に被告の商品メーカーコードを記載し
た台紙及びブリスターパックを用いた金具類(甲6及び7の各1~12)を被告に
納入していたが、これらの金具の台紙と原告商品Bの台紙は、色、字体などが同一
であり、同じコンセプトの商品として出所が同一であるか、同じグループであると
の印象を消費者に抱かせるものである。
ウ 以上によれば、原告と被告との間では、定期的に一定数量の商品を被告
が原告から購入することを義務付けるような約束はなかったから、そのような意味
での継続的取引契約が締結されたものとは認められないけれども、原告商品A、B
を原告から被告のみに専属的に納入し、被告はこれを買い受けることを内容とする
継続的な取引契約が成立するに至ったものと認めるのが相当である。
 そして、甲12によれば、原告は、原告商品A、Bを被告に納入するこ
としか想定していなかったので、被告による突然の取引打切りに対応して、すぐに
新しい販売ルートを見つけることはできても、商品の仕様を変えなければならない
ため、売上の大幅減は免れなかったことが認められる。
エ 前記認定事実によれば、原告と被告の間には原告商品A、Bについての
継続的取引契約が成立するに至っていたものであるから、被告がこの契約関係を解
消するに当たっても、信義則上、被告は、合理的期間内は原告商品A、Bと実質的
に同一の商品形態を有する商品を原告以外から仕入れて販売することはできないと
解するのが相当である。
 そして、原告が原告製品A、Bの商品化等に投下した費用や労力の程
度、原告が被告との取引打切りに対応して商品の仕様を変えなければならないかっ
たこと等を考慮すると、上記合理的期間は、被告が原告との取引を打ち切った平成
11年6月下旬ころから約6か月の間、すなわち平成11年12月末日までとする
のが相当である。
(2) 被告は、他の業者が提示する価格に比べ、原告の提示価格がおよそ2割も
高かったため、被告側から原告に対して適正な価格を指し値としたが、原告がこれ
に応じなかったので、原告との取引を中止したものであると主張する。
 確かに、被告が定期的に一定数量の原告商品A、Bを購入することが義務
付けられるような継続的取引契約が締結されたことを認めることはできないことは
上記のとおりであるから、被告が原告との取引を中止したとの一事をもって直ちに
契約違反に当たるということはできない。
 しかし、被告が、原告と費用や労力を分担して商品化した原告商品A、B
の商品形態と実質的に同一と評価されるような商品形態を有する商品を原告以外の
会社に製造させてこれを仕入れることが許されないことは上記のとおりであり、被
告が仮にワイヤーブラシを販売するのであれば、被告が平成12年6月ころ以降に
販売しているワイヤーブラシのように、原告商品A、Bとは異なる包装形態にして
販売すべきであったというべきである。
 したがって、被告の主張は理由がない。
(3) 被告商品Aは原告商品Aの商品形態と、被告商品Bは原告商品Bの商品形
態と、それぞれ、実質的に同一といえる程度に類似した商品形態を有していること
は前記第2の1(3)記載のとおりであるから、被告が、被告商品A、Bを原告以外の
会社から仕入れて販売したことは、上記取引契約に付随する信義則上の義務に反す
る行為であり、被告は、上記義務を負う合理的期間である平成11年12月末日ま
での間は、同契約違反の仕入行為により、原告が得ることができたであろう損害を
賠償する責任を負うものというべきである。
4 争点(4)(損害の発生及び額)について
(1) 被告商品A、Bの販売数量について
 大創産業が被告から仕入れた2本組ワイヤーブラシセットの数量について
調査嘱託を受けて回答した書面(甲16)によれば、大創産業は、平成10年7月
から平成11年12月末日までの間に被告から、2本組ワイヤーブラシセットを2
1万5592個(原告商品A、B及び被告商品A、Bの合計仕入数量)仕入れてい
ることが認められ、前記2(2)オ記載のとおり、原告が被告に納品した原告商品A、
Bの数量は15万1200個であるから、被告が平成11年12月末日までに販売
した被告商品A、Bの数量は、6万4392個(21万5592個-15万120
0個)であると認められる。
 なお、平成13年11月13日付文書提出命令(平成13年(モ)第721
4号)に従って被告が提出した被告商品A、Bの販売台帳によれば、被告は、大創
産業に対し、平成11年12月末日までの間に、被告商品Aを2万6496個、被
告商品Bを2万4516個、合計5万1012個を納品しているとの集計結果が示
されているが、上記甲16の書面は第三者である大創産業の作成に係るものであっ
て、より信用性が高いと認められるから、被告提出の販売台帳に基づく上記集計結
果をもってしても、上記認定を覆すには足りない。
(2) 原告が得られたであろう利益額について
ア 前記のとおり、原告が原告商品A、Bを被告に対して販売したのは、平
成10年7月8日の各1万8000個、同年9月17日の各1万8000個、同年
11月11日の各3万9600個であるが、さらに被告との間で継続的取引が続い
た場合における原告が得られたであろう利益の算定に当たっては、最終時点の取引
価格を前提にするのが相当である。
イ 原告の被告に対する原告商品A、Bの上記最終時点の販売価格は、前記
2(2)オ記載のとおり、1個当たり51円であった。
ウ 甲15及び18の各3によれば、原告の原告商品A、Bの上記最終時点
の仕入価格は0.23米ドルであり、同時点における円相場(1米ドル当たり12
6.3429円)を基に円換算すると、29.06円となる。
エ 甲19の1~6によれば、原告が原告商品A、Bを各3万9600個輸
入した際の輸送コストは、海上運賃が15万円(1.89円/個)、関税が16万7
800円(2.12円/個)、消費税が12万3200円(1.56円/個)、陸揚げ
料が11万6725円(1.47円/個)、陸上輸送費が7万3500円(0.93円
/個)であり、1個当たりの輸送コストの合計は、7.97円であることが認められ
る。
オ 上記の原告商品A、Bの販売価格、仕入価格、輸送コストを基に、原告
が原告商品A、Bの販売により得られた利益を算出すると、1個当たり13.97円
(51円-29.06円-7.97円)となり、被告が原告以外の他社から被告商品
A、Bを仕入れるのではなく、これを原告から仕入れた場合に原告が得られたであ
ろう利益も同額であるとするのが相当である。
(3) そうすると、被告が上記のとおり原告以外の他社から被告商品A、B6万
4392個を仕入れてこれを大創産業に販売したことにより被った原告の損害は、
89万9556円(6万4392個×13.97円)となる。
5 以上によれば、原告の被告に対する継続的取引契約の違反を理由とする請求
(乙事件)は、金89万9556円及びこれに対する乙事件訴状到達の日の翌日で
ある平成12年11月19日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合に
よる金員の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、原告の乙事件のその
余の請求及び甲事件の請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、主文の
とおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官   小松一雄
裁判官   阿多麻子
裁判官   前田郁勝
(別紙)
原告商品A目録原告商品B目録被告商品A目録被告商品B目録原告商品A及び被告
商品Aの構成目録原告商品B及び被告商品Bの構成目録

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