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平成12年(行ケ)第139号商標登録取消決定取消請求事件
平成12年8月22日口頭弁論終結
判決
原告X
代表者代表取締役【A】
訴訟代理人弁護士岩出誠
同中村博
同村林俊行
同小林昌弘
被告特許庁長官【B】
指定代理人【C】
同【D】
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
特許庁が平成11年異議第90915号事件について平成12年3月2
8日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2被告
主文と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は、商品区分第18類の「皮革、かばん類、袋物、携帯用化粧道具
入れ、かばん金具、がま口口金、傘、ステッキ、つえ、つえ金具、つえの柄、
乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品とする、別紙本件商標欄表示の「黒
塗りの象」の図形から成る登録第4260224号商標(平成9年12月9日
登録出願。以下「本件商標」という)の商標権者である。本件商標につき、。
平成11年7月13日に、商標法4条1項10号、11号、15号及び19号
の全部又はその一部に該当するとして、異議申立てがあり、特許庁は、同申立
てを平成11年異議第90915号として審理した結果、平成12年3月28
日に「登録4260224号商標の登録を取り消す」との決定をし、その謄。
本は同年4月15日原告に送達された。
2決定の理由
別紙決定書の理由の写しのとおり、本件商標をその指定商品に使用する
場合には、これに接する取引者・需要者は、容易に後記各引用商標ないしハン
ティングワールドエルエルシー(以下「ハンティングワールド社」という)。
を想起するから、同社又は同社と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業
、、務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれがあり
、、。したがって本件商標は商標法4条1項15号に該当すると認定・判断した
3引用各商標
、(、ハンティングワールド社は別紙AないしE商標欄表示の各商標以下
別紙A商標欄表示の商標を「引用A商標」といい、他についても、これにな、
らう。また、各商標を総称して「引用各商標」という)の商標権者である。。
引用A商標は、昭和48年6月8日に登録出願され、旧第21類「バン
ド類、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花」を指定商品
として昭和62年1月28日に設定登録された。
引用B商標は、平成元年8月22日に登録出願され、旧第21類「装身
具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具」を
指定商品として平成4年5月29日に設定登録された。
引用C商標は、平成6年2月7日に登録出願され、第18類「皮革、か
、、、、、、、ばん類袋物携帯用化粧道具入れかばん金具がま口口金傘ステッキ
つえ、つえ金具、つえの柄、乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品として
平成9年9月12日に設定登録された。
引用D商標は、平成6年4月14日に登録出願され、第18類「スーツ
ケース、アタッシュケース、書類入れかばん、手提げかばん、肩掛けかばん、
ハンドバッグ、その他のかばん類、財布(貴金属製のものを除く、札入れ、。)
小銭入れ、キーケース、その他の袋物、携帯用化粧道具入れ」を指定商品とし
て平成9年11月28日に設定登録された。
引用E商標は、平成6年2月7日に登録出願され、第18類「皮革、か
、、、、、、、ばん類袋物携帯用化粧道具入れかばん金具がま口口金傘ステッキ
つえ、つえ金具、つえの柄、乗馬用具、愛玩動物用被服類」を指定商品として
平成9年9月12日に設定登録された。
第3原告主張の決定取消事由の要点
決定は、出所の混同のおそれについての認定・判断を誤ったものであっ
て、この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り
消されるべきである。
1引用各商標の周知・著名性について
(1)被告が証拠として提出したハンティングワールド社のブランド商品
、「」、「」の宣伝広告はいずれもハンティングワールドの宣伝広告であって象
の図形を紹介しているものではないから、引用各商標の周知・著名性を根拠付
けるものではない。
、、(2)被告はハンティングワールド社の商品を販売した取扱者を列挙し
各種書籍やハンティングワールド社自身が出稿した各種新聞等の広告を証拠と
して提出するが、それはあくまでハンティングワールド社の商標である「HU
NTINGWORLD」を著名にしただけで、象のマークを有名にしたとは
いえない。
(3)被告は、ハンティングワールド社の商標を付した商品の偽物が出回
った事実を指摘するが、これはあくまで「HUNTINGWORLD」の商
標の偽物であり、本件商標とは関係がない。
2出所の混同のおそれについて
本件商標については商品の出所の混同のおそれはない。
、。、、(1)本件商標は象の図形だけのものであるこれに対し引用各商標は
すべてが、象の図形と「HUNTINGWORLD」の文字との組合せであ
って、象の図形だけのものはない。
(2)象は、動物として子供から大人まで広く知られた有名なものであるか
ら、一企業が使用したとしても、それに独占的な権利が発生することはない。
(3)本件商標と引用各商標の象の図形は次の点で大きく異なる。
①本件商標の象は「アフリカ象」の特徴である大きな耳がよく見え、
る。引用各商標の象は、耳が明確に描かれておらず、かえって小さく、そのた
め「東南アジアの象」に見える。
②本件商標の象は目が描かれているのに対し、引用各商標の象にはそ
れがない。
③本件商標の象は、立ち止まっているのに対し、引用各商標の象は早
足で移動している。
④本件商標の象は、鼻を空に大きく振り上げているのに対し、引用各
商標の象は、鼻を巻き取っている。
⑤本件商標の象は、横向きであるのに対し、引用各商標の象は、後ろ
向きである。
⑥本件商標の象は、尻尾が短いのに対し、引用各商標の象は、尻尾が
長い。
⑦本件商標の象は、足が太いのに対し、引用各商標の象は、象にして
は足が細すぎる。
第4被告の反論の要点
本件決定の認定・判断は正当であり、同決定に原告主張の違法はない。
1引用各商標の周知・著名性について
引用各商標は、周知・著名性を有する。
(1)ハンティングワールド社のバッグ等の販売取扱者は、全国的規模に
及んでいる。ハンティングワールド社の、バッグは昭和54年ころから、腕時
、、、計は平成7年1月ころから継続して販売されており同社は他にキーケース
財布等をも販売している。
(2)ハンティングワールド社は、探検家、冒険家、狩猟家として知られ
る【E】により1965年に設立された。同社のバッグは、同氏の狩猟等の経
験に基づく創意工夫によって作られたものであり、特に「バチュークロス」と
呼ばれる、三層構造を採用したバッグは、防水、断熱などの耐久性に優れてい
るほか、バッグ内のカメラやめがねを保護する柔軟性、クッション性にも優れ
ている旨、紹介されている。このように、ハンティングワールド社は、独自の
機能性、耐久性を有するバッグの製造会社として広く取引者・需要者に認識さ
れている。
(3)ハンティングワールド社のバッグ、腕時計、キーケース、財布等に
は、引用C商標及び引用E商標が使用されている。これらの商標に描かれた
「象」の図形については「E】がデザインしたアフリカ象「トレードマー、【」、
」、「『』」、クのアフリカ象ハンティング・ワールドのロゴマークは牙のない子象
「ハンティングワールドは『牙のない子象』のマークで知られる「牙のな。」、『
い子象』が同社のシンボルマーク「シンボルである牙のない子象」などの形」、
で紹介がされている。
このように、引用各商標中に描かれた「象」の図形部分は「アフリ、
カ象「牙のない子象」をモチーフにしたものであって、ハンティングワール」
ド社のシンボルマーク、トレードマークとして、取引者・需要者に広く認識さ
れている。
(4)ハンティングワールド社のバッグについては、偽物が出回っている
事実があり、このことは新聞でも報道されている。これは、ハンティングワー
ルド社のバッグが模倣の対象となるほどに周知・著名性を既に獲得しているこ
とを示すものである。
(5)以上の事実によれば、引用各商標は、遅くとも、本件商標の登録出
願時には、ハンティングワールド社の製造に係る機能性、耐久性に優れたバッ
グ等に使用される商標として、取引者・需要者に広く認識されていたことが明
らかである。
2商品の出所の混同のおそれについて
(1)引用各商標中の「アフリカ象「牙のない子象」をモチーフとする図」
、「」形は円輪郭及び円輪郭に沿うように描かれたHUNTINGWORLD
の欧文字の中心に置かれて大きく描かれるなど、引用各商標の構成上、見る者
の注意を引くように顕著に描かれ、看者に強い印象を与え、ハンティングワー
ルド社のシンボルマーク、トレードマークとして、取引者・需要者に広く認識
されている。
そうすると、引用各商標中の象の図形は、ハンティングワールド社の
商品を識別する標識として、極めて強い自他商品の識別力を有するから、引用
各商標に接する取引者・需要者は、象の図形部分のみに着目して識別すること
があり得る。
(2)本件商標と引用各商標中の象の図形を比較すると、次の共通した特
徴が見い出せる
①象を側面からシルエット風に表していること
②象は、鼻を振り上げ、前足の一本を上げるなど、体全体に動きを感
じさせること
③象には、牙が描かれていないこと
④象に牙がないため、未熟な子象らしさを感じさせること
⑤本件商標は、耳が大きく描かれ、アフリカ象の特徴を感じさせ、引
用各商標の図形部分はアフリカ象を表したものとして知られていること
⑥象の全体的な表現が擬人化したものでないこと
このように、本件商標は、特徴となる多くの点で引用各商標と共通し
ているから、引用各商標中の「象」の図形部分を容易に連想、想起させ得る。
(3)商標等をバッグに直接に付する方法として、商標等を円輪郭の中に
表示する方法は、ハンティングワールド社以外の会社も普通に採用している。
本件商標を上記の方法でバッグに使用した場合には、本件商標は、引用各商標
中の象の図形部分を容易に連想・想起させ得る。
(4)本件商標の指定商品中「かばん類」は、引用各商標の使用に係る商
品である「バッグ」と同種の商品である。そして、本件商標をその指定商品で
ある「かばん類」について使用した場合、取引者・需要者は、(1)ないし(3)の
事情により、その商品がハンティングワールド社又は同社と何らかの関係を有
する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じる
おそれがある。
第5当裁判所の判断
1本件商標の商標登録出願時における商品の出所の混同のおそれについて
(1)証拠(乙1ないし36号証、第37号証の1ないし4)及び弁論の
全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ハンティングワールド社は、アメリカの探検家、狩猟家として著名な
【E(1937年(昭和12年)生まれ。以下「E」という)によって、】【】。
1965年(昭和40年)に設立された【E】は、同人の探検、狩猟の体験。
に基づき、耐水性、対暑性、防塵性等の耐久性に優れた、軽く機能的なバッグ
の素材として「バチュークロス(ウレタンコーティングしたナイロンオック」
スフォードに、厚さ1ミリのウレタンをはさみ、裏からナイロンジャージを貼
り合わせた三層構造)を考案した。バチュークロスを用いたハンティングワー
ルド社製造のバッグは、日本国内では、遅くとも昭和54年1月ころには、東
京をはじめ、横浜、大阪、福岡等の有名百貨店等において販売されており、昭
和60年までには、名古屋、神戸、広島、福岡、札幌、仙台、新潟、岐阜、金
沢、京都、高知の有名百貨店や専門店等において、全国的に販売されるように
なり、今日まで継続して、全国的規模で販売されている。
引用各商標は、いずれも、象の図柄と「HUNTINGWORLD」
の文字が組み合わされた商標であり、かつ、別紙引用AないしE商標欄表示の
、。とおり中央部に同一形状の象の図形が描かれている点において共通している
引用C商標は、円形の皮ラベル上に打ち出され、あるいは商品上に円形の模様
で打ち出されるなどして、ハンティングワールド社製造のバッグ等に付されて
使用されている。また、引用E商標は、ハンティングワールド社の商品の広告
に用いられている。これらの商標中に描かれた象の図形は、書籍等において、
Eが自らデザインしたものでアフリカゾウをモチーフにしてあるマ「【】、。」、「
ークのアフリカ象は(中略【E】のデザイン「トレードマークのアフリカ、)」、
象「ハンティングワールドのロゴマークは、牙のない子象「牙のない子象」、」、
のマーク(中略)で知られるハンティングワールド「牙のない仔象が同社の」、
シンボルマーク」などと紹介されている。
昭和61年発行の「世界の一流ブランド本物・ニセモノ大図鑑」と
題する書籍には、引用各商標に酷似した標章を付したハンティングワールド社
のバッグの偽物が出回っていることが紹介され、平成5年には、大手量販店で
同様のハンティングワールド社のバッグの偽物が販売されたことが新聞で報道
され、平成7年にも、日本国内でハンティングワールド社のバッグの偽物が出
回っている旨が新聞で報道された。また、平成2年、5年、6年には、引用各
商標に酷似した標章を付したハンティングワールド社のバッグの偽物を販売し
た卸業者が摘発されるという事件が発生した旨が、新聞で報道された。これら
の紹介や報道を総合すると、ハンティングワールド社の引用各商標は、本件商
標の登録出願時までに、これを模倣する者が現われるほどに顧客吸引力を有す
るに至っていたということができる。
以上の事実によれば、引用各商標中の、アフリカ象ないし牙のない子
象の図形は、ハンティングワールド社及びその製造に係るバッグのシンボルマ
ークとして著名であったことが認められる。
原告は、前記書籍等により著名になったのは、引用各商標のうち「H
UNTINGWORLD」の部分のみであって、象の図形自体が著名になっ
たとはいえない旨主張するが、前記認定・判断に照らし採用することができな
い。
(2)一般に、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際においては、商標は、各構成
部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどまで
に不可分的に結合していない限り、常に必ずその構成部分全体によって称呼、
、、、観念されるというわけではなくしばしばその一部だけによって簡略に称呼
観念され、その結果、一個の商標から二個以上の称呼、観念の生ずることがあ
るのは、経験則の教えるところである(最高裁判所第1小法廷昭和38年12
月5日判決・民集17巻12号1621頁参照。)
また、本件商標が使用される商品のうち「かばん類」等の商品の主た
、、「」る需要者は老人から若者までを含む一般大衆であってその商品かばん類
等に係る商標やブランドについて、詳しくない者や中途半端な知識しか持たな
い者も多数含まれている。そして、このような需要者が購入する際は、恒常的
な取引やアフターサービスがあることを前提にメーカー名、その信用などを検
討して購入するとは限らず、そのような検討もなくいきなり小売店の店頭に赴
いたり、ときには通りすがりにバーゲンの表示や呼び声につられて立ち寄った
りして、短い時間で購入商品を決定することも少なくないものである(以上の
事実は、当裁判所に顕著である。。)
したがって、本件商標についての混同のおそれの判断に当たっては、
以上のような経験則、及び取引の実情における需要者の注意力を考慮して判断
すべきである。
(3)原告は、本件商標は象の図形だけのものであるのに対し、引用各商
標は、すべてが象の図形と「HUNTINGWORLD」の文字との組合せ
であるから、本件商標を使用しても商品の出所の混同のおそれがない旨主張す
る。
しかし、引用各商標は、象の図形を中央部に大きく表示し、文字部分
を図形の周囲ないし上方にやや小さめに表示することにより、象の図形部分が
独立して看る者の注意を引くように構成されていると認められる。また、引用
各商標中の象の図形部分が、それ自体として、ハンティングワールド社及びそ
の製造に係るバッグのシンボルマークとして著名であることは前記説示のとお
りである。このような事実関係の下では、引用各商標の図形と文字とは、それ
らを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどまでに不可分
的に結合しているものと認めることはできない。したがって、原告の前記主張
は、混同のおそれを否定する根拠とはならず、失当である。
(4)本件商標の象と引用各商標の象は、いずれも象の全身の輪郭を側面
方向から見たものを、シルエット風に表したものであること(原告は、引用各
商標の象は後ろ向きであると主張するが、見る方向は微妙に異なるものの、お
。)、、おむね側面から見たものといって差し支えない象が右側を向いていること
鼻を振り上げており、振り上げた鼻が左向きに曲がり、先端が上方を向いてい
ること、鼻の付け根の部分に下顎の輪郭が突き出て、口の部分を表現している
こと、象の牙が描かれていないこと、前足の一本をやや上げていることにおい
、。、、て共通点を有することが認められるまた前記認定のとおり引用C商標は
円形の皮革製のラベル上に打ち出される等して商品に付されており、このよう
に、商標等をバッグに直接に付する方法として、商標等を円輪郭の中に表示す
る手法が、一般的に採用されている方法であることは、当裁判所に顕著な事実
である。このことに、前記認定の、引用各商標中の象の図形がハンティングワ
ールド社のシンボルマーク、トレードマークとして取引者・需要者に認識され
著名であることや、取引の実情における需要者(一般消費者)の注意力等を併
せ考慮すると、本件商標が、円輪郭の中に標示される方法で、その指定商品で
ある「バッグ類」等に使用された場合などには、これに接した需要者は、象の
図形部分に着目して、引用各商標及びこれらを使用する特定の出所を想起し、
その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
原告は、本件商標の象の図形と引用各商標の象の図形との相違点を指
摘し、混同のおそれが認められない旨主張する。確かに、本件商標と引用各商
標との間には原告主張のような相違点があることが認められるから、看者が注
意深い者であるならば、あるいは看者がこれらを並べて同時に対比して看るな
らば、両者を混同することは生じ得ないかもしれない。しかしながら、本件で
問題となる看者である需要者には注意深くない者も少なくないことは前述のと
おりであり、商標法における混同のおそれが、時と所を異にした離隔的観察に
おける問題であることはいうまでもないことであって、これらを前提にした場
合には、上記混同のおそれを否定することはできない。引用各商標の象の図形
が特定の出所に係るものとして周知であるという前認定の状況のもとでは、こ
れとの間に相違点を有する商標も、その相違点が、象を擬人化して漫画的に表
現するなど、これに接した需要者に明らかに上記特定の出所とは無関係のもの
であるとの観念を生じさせるようなものでない限り、混同のおそれを否定する
ことはできないというべきであるのに、原告主張の相違点はいずれもそのよう
(、、なものとは認められないからであるなお本件商標の象の耳の輪郭や目は
皮革上に周囲と同一色で打ち出された場合などにはほとんど目立たないと認め
られるので、相違点としてさほど重視することができない。。)
(5)また、仮に、上記相違点により、本件商標と引用各商標とを取
り違えることがなく、商標自体同士の間では混同のおそれが認められないとし
ても、その場合には、前記の事情に鑑みると、本件商標に接した需要者は、引
用各商標を使用する特定の出所又はそれと組織的、経済的に何らかの関係を有
する者が使用する他の商標の一つであると誤認するおそれがあるというべきで
ある。
(6)原告は、象のような有名な動物の図形については、一企業が使用し
たとしても、それに独占的な権利が発生することはない旨主張する。しかし、
ある商標が有名な動物の図形を用いているというだけで、商標法等による保護
。。の対象とならないなどとは到底いうことができない原告の主張は失当である
2決定時における商品の出所の混同のおそれについて
本件商標の商標登録時から決定時までの間に、前記1の認定に係る事情
に変化があったものと認めるに足りる証拠はないから、決定時においても、前
記1の認定に係る混同のおそれは、なお継続していたものと認められる。
3以上のとおりであるから、原告主張の取消事由は理由がなく、その他決
定にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない(なお、上述したところによれ
ば、本件商標には商標法4条1項11号に該当する事由があることになり、し
たがって、同15号の適用はないことになるはずであるから(同15号括弧書
き、決定には法令の適用を誤った瑕疵があることになる。しかし、これは、)
決定の結論に影響を及ぼすものでないことが明らかであるから、決定を取り消
すべき瑕疵には当たらない。。)
第6よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件
訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官山下和明
裁判官山田知司
裁判官阿部正幸

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