弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人東中光雄、同佐藤哲、同山田一夫の上告趣意第一について。
 所論は、本件のうち南税務署関係の事件について、原判決の違憲、法令違反およ
び事実誤認を主張するものであるが、これを要約すると、次のとおりである。すな
わち、本件は、南税務署および大阪国税局が、被告人らのA労働組合(以下A労組
という。)の団体交渉権を無視し、これを一方的に拒否したことから生じた若干の
混乱にすぎず、被告人らの行為は、憲法二八条によつて保障された正当な団体交渉
の範囲を出でるものではない。したがつて、被告人らに退去を要求した税務署当局
者らの行動は、憲法二八条、国家公務員法九八条二項(昭和四〇年法律第六九号に
よる改正前のもの、以下おなじ。)に違反する。しかるに、原判決が、労働組合の
嫌悪に基づく予断偏見によつて、証拠の取捨選択を誤り、判示のような各犯罪の成
立を認めたのは、憲法二八条、三七条一項、七六条三項および前記国家公務員法の
規定に違反し、かつ、事実を誤認したものである、というにある。
 しかし、記録を精査するも、原審が、所論のような予断偏見に基づいて証拠の取
捨選択を誤り、事実を誤認した違法は認められないから、所論のうち、憲法三七条
一項、七六条三項違反をいう点は、前提を欠き、適法な上告理由とならない。そし
て、原判決および原判決の支持する第一審判決の認定した事実によれば、原判示の
被告人らは、昭和三四年五月一日のメーデー行進の解散後、一〇〇名に達するA労
組員らとともに、赤旗やプラカードを持つて勤務評定や休暇制限問題に関し、抗議
をするために南税務署に押しかけ、それぞれ判示のような暴力行為に及んだもので
あるから、被告人らの行為が、たとえ憲法二八条にいう団体行動として行なわれた
ものであるとしても、正当なものといえないことは、当裁判所昭和二二年(れ)第
三一九号同二四年五月一八日大法廷判決(刑集三巻六号七七二頁)の示すところで
ある(昭和三一年(あ)第一六四九号同三四年四月二八日第三小法廷判決、刑集一
三巻四号四六六頁、昭和四〇年(あ)第三九九号同四二年二月七日第三小法廷判決
参照)。したがつて、所論のうち、憲法二八条違反を主張する点は、理由がなく、
その余の点は、単なる法令違反および事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の
上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二について。
 所論は、本件のうち此花税務署関係の事件について、原判決の違憲および法令違
反を主張するものであるが、これを要約すると、次のとおりである。すなわち、本
件の被告人らの行為は、此花税務署長が、A労組との団体交渉の席上、組合側の条
件違反を口実に、一方的に団体交渉を打ち切り、退去しようとしたので、これを説
得してその退去を制止したにすぎないものであり、かかる制止行為は、憲法二八条
によつて保障され、国家公務員法九八条二項によつて認められた公務員の団体交渉
権の範囲内における正当な行為である。また、被告人らが同署長による退去要求が
出された後も、同署建物内に滞留したのは、同署長に対して、正当な団体交渉に応
ずるよう要求するための行動であるから、右と同様に憲法の保障する正当な行為で
ある。しかるに、原判決が、被告人らに対し、判示のような各犯罪の成立を認めた
のは、憲法二八条に違反し、かつ、前記国家公務員法の規定の解釈、適用を誤つた
ものである、というにある。
 しかし、国家公務員も憲法二八条にいう勤労者であつて、原則的には、その保障
を受けるべきものであるけれども、その団体交渉その他の団体行動が、暴力を伴う
場合には、もはや右憲法の規定に保障された正当な行為の限界をこえるもので刑事
制裁を免れないものであることは、当裁判所昭和三九年(あ)第二九六号同四一年
一〇月二六日大法廷判決(刑集二〇巻八号九〇一頁)および前に引用した昭和二四
年五月一八日大法廷判決の明らかにするところである。本件において、原判決認定
の事実によれば、原判示の被告人らは、昭和三四年五月一四日数十名のA労組員や
此花商工会員らとともに、此花税務署において、同署署長Bに対し、勤務評定や事
故調査問題に関し面談することを要求し、同署長から同署一階会議室において、さ
きにA労組員らと三〇分間、ついでC商工会員らと三〇分間別個に面談する条件の
もとに、右要求に応ずる旨の回答を得たのであるから、その限度において、同署長
と団体交渉をもつことができるに至つたということができる。しかし、原判決認定
の事実によれば、被告人らの側に右条件を無視する行動があつたため、同署長が右
会議室から退去しようとするや、原判示の被告人らは、ほか数名の者と共同して、
同人を取り囲み、そのネクタイをつかんで締めつけ、あるいは同人の手や服をつか
んで引つ張り、同人の身体を押えるなどの暴行を加えたというのであるから、それ
が、たとえ同署長に対し、右の団体交渉に応ずるよう要求するための行為であつた
としても、もはや正当な団体交渉権の限界をこえるものというべきである。したが
つて、原判決が、右会議室内における右被告人らの行為について、暴力行為等処罰
ニ関スル法律違反の罪の成立を認め、また、右暴力行為による同署内の混乱を収拾
するために、同署長が行なつた退去要求に応じなかつた原判示の被告人らの行為に
ついて、建造物侵入罪の成立を認めたことは、結局、正当である。以上のように、
所論のうち、憲法二八条違反を主張する点は、理由がなく、その余の点は、単なる
法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 また、記録を調べても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
  昭和四二年六月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎

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