弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     1 原判決を破棄する。
     2 被告人を罰金七、〇〇〇円に処する。
     3 右罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算
した期間被告人を労役場に留置する。
     4 原審ならびに当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人松井道夫が差し出した控訴趣意書に記載してあるとお
りであるから、これを引用し、これに対して当裁判所は、次のように判断をする。
 論旨第二点(事実誤認)について。
 所論は、被害者は本件自動車に接触して受傷したものでなく、自ら顛倒してはげ
しく庭石に頭を打ちつけて受傷した可能性があると主張するが、原判決中「弁護人
の主張に対する判断」の欄で原審が説示しているとおり、被害者が被告人の車に接
触した結果顛倒して受傷したものであることを十分窺うことができるので、所論は
採用し得ない。論旨は理由がない。
 論旨第一点(事実誤認および法令適用の誤り)について。
 所論は、原判決は、被告人が本件自動車を後退させるについて、「助手席に同乗
していたAを下車させ、進路上に障害のないことを確認させたうえ、誘導させなが
ら後退すべき業務上の注意義務がある云々」と判示しているが、この判断は誤りで
あつて、被告人にはかような義務を科することはできない、したがつて原判決に
は、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認があると主張する。 そこで考察
するに、
 一、原審および当審の各検証調書
 一、司法警察員の各実況見分調書
 一、原審および当審の証人Aに対する証人尋問調書
 一、被告人の原審および当審の公判廷における各供述
 一、被告人の司法警察員に対する供述調書および検察官に対する供述調書(二
通)
 を総合すれば
 一、原判示私道はやや南北に走る市道からやや西方に向つて、市道とほぼ直角に
通ずるもので、入口の幅員は約五米であるが、約一一米進んだ個所で、ほぼ並行し
て二又に別れており、その西側を通ずるものは幅員が約三米で、先が行き止まりに
なつており、沿道には人家が数軒しかないこと
 一 右私道の右分岐点から西側を通ずる私道の南側には、市道から約二〇米の個
所に原判示のB方作業場があり、その東南角には「はさ木」が数十本位立て掛けて
あり、またその東方には、右私道の南沿いに高さ一、〇五米ないし〇、五米、幅
一、四米ないし〇、八米位の庭石が六個殆んど密着して置かれており、なお右庭石
の東方には、右私道の南沿いに「はさ木」が数十本横に積み重ねてあつたこと
 一、右私道の北側は一面畑であり、また右庭石や「はさ木」の南側も一面畑であ
ること
 一、右私道はもち論、前記市道も車両や人の往来が極めて少いこと
 一、被告人が後退進行を開始した前記作業場前からは、右作業場の東南角等が邪
魔になつて、右私道の南側の西寄りの一部は見通せないが、その他は殆んど視界を
遮るものがなく、見通しが十分であること
 <要旨>がいずれも明らかであるが、このような場所的条件のもとにおいて、自動
車を後退進行させる場合においても、できれば、原判示のように、助手を下
車させて、道路上に障害のないことを確認させたうえ、誘導させることが望ましい
ことは論をまたないと思われるものの、右のような場所的条件を考慮すれば、本件
においては、被告人に対して、原判示のように、助手を下車させ、道路上の障害の
ないことを確認させたうえ、誘導させるべき業務上の注意義務があつたことまで認
定するのは酷を強いるものといらべきであり、被告人にこのような注意義務を認め
た原判決の事実認定には、事実の誤認があり、ひいては法律の解釈適用の誤りがあ
り、これらの誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は破棄
を免れない。
 もつとも、検察官から訴因変更の請求があつたので考察するに、自動車を後退進
行させるに当つては、前進進行する場合とは違つて、その進路の安全の確認が極め
て困難であるから、特段の注意を払つて、車両の周囲の状況を十分に注視してその
進路の安全を確認しながら運転すべき業務上の注意義務があるものというべきとこ
ろ、
 一、司法警察員の昭和四一年一〇月一三日付の実況見分調書
 一、原審および当審の証人Aに対する各証人尋問調書
 一、被告人の原審および当審の公判廷における供述
 一、被告人の司法警察員に対する供述調書および検察官に対する供述調書(二
通)
 を総合すれば
 一、 被告人は、乗車直前に、助手Aと共に荷台の後端でロープを片付けながら
後方を見たが、人影が見えなかつたので、通行人等はないものと信じ、かつ左後方
は、助手席に同乗した右Aがその安全を確認してくれるものと軽信して、運転台に
乗るや、直ちに左バックミラーで左後方を瞥見した後、運転席の右窓から右後方の
安全を確認しただけで、時速約四キロの速度で後退進行を開始し、約四米進行した
地点で、本件事故をひき起したこと、
 一、右Aは助手席に乗り、本件車の発進後間もなく助手席の左窓から顔を出し
て、左後方の安全を確認していたが、主として市道の交通の安全を確認していたも
のであつて、私道の南側には十分の注意を払つておらず、なお本件事故発生まで被
害者の存在に全く気付いていないこと、
 一右私道の南側の畑には、右私道の南沿いに置いてあつた前記庭石の西側から第
一番目と第二番目の中間の少し南寄りに、被害者のものと思われる小さな足跡があ
ること、
 一、被害者は赤い洋服を着た生後一年六月の幼児であり、おそらく、よちよち歩
きながら右庭石の西側から第一番目と第二番目の間を通り抜けて、私道に出て来た
ものと思われること
 <要旨>を総合すれば、被告人が左バックミラーで左後方を瞥見するに止めず、十
分に左後方の安全を確認するかまたは助手のAが乗車後直ちに助手席の左窓
から左後方の安全を十分確認していたならば、被害者が前記のようによちよち歩き
ながら庭石の間を通り抜けて私道に出て来るのを発見し得たものと思われる。しか
るに、被告人は左後方の安全は右Aが確認してくれるものと軽信し、自分は左バッ
クミラーで左後方を瞥見しただけで、左後方の安全を十分に確認しないまま後退進
行したのであるから、この点において被告人には前記の業務上の注意義務を怠つた
過失があるというほかはない。
 よつて、本件控訴は理由があるから、刑事訴訟法第三九七条第一項、第三八二
条、第三八〇条により、原判決を破棄した上、(主文1)同法第四〇〇条但書の規
定に従い、さらに、自ら、次のように判決をする。
 (罪となるべき事実)
 被告人は、自動車運転の業務に従事する者であるが、昭和四一年一〇月七日午前
九時四五分頃、新潟市ab番地B方作業場前の私道上において、同作業場入口付近
に駐車しておいた普通貨物自動車を約二〇メートル後方(東方)の市道に後退させ
るに際し、自動車運転者たるものは、常に自車の進路の安全を確認し、もつて事故
の発生を未然に回避すべき注意義務があるのに拘わらず、これを怠り、乗車直前に
助手Aと共に荷台のロープを整理しながら後方を見たが、人影が見えなかつたとこ
ろから通行人等はないものと軽信し、かつ左後方は助手席に同乗したAがその安全
を確認してくれるものと軽信し、被告人は左バックミラーを瞥見した後、直ちに運
転席の右窓から右後方の安全を確認しただけで、左後方の安全を確認しないまま、
時速約四キロメートルの速度で後退した過失により、折柄、C(生後一年六月)が
左側道路端に並べておかれてあつた庭石の間を通り抜けて、自車の進路に進入して
来るのに気付かなかつたため、約四メートル後退した地点において、自動車後部を
同児に衝突させて、路上に転倒させ、よつて同人に対し、頭部打撲、頭蓋底骨折の
疑いのある傷害を与え、同日午前一〇時半ごろ、D大学付属病院において、該傷害
にもとづく出血により、窒息死させたものである。
 (証拠の標目)
 原判決挙示の証拠を全部引用し、その後に、次の各証拠を加える。
 「一、当審の検証調書
 一、当審証人E、同Aに対する各証人尋問調書
 一、被告人の当審公判廷における供述」
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法第二一一条前段、罰金等臨時措置法第二条、第三条に該
当するところ、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内において被告人を罰金
七、〇〇〇円に処し(主文2)、右罰金を完納することができないときは、刑法第
一八条により金五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し(主文
3)、なお、原審及び当審の訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文に従い、
全部被告人に負担させることとして(主文4)主文のように判決をする。
 (裁判長判事 河本文夫 判事 東徹 判事 藤野英一)

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