弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士堀切真一郎の上告理由は別紙のとおりである。
 上告理由第一点について。
 論旨は、原判決が、町村合併促進審議会の意見を聴かないで知事が本件第二次勧
告及び住民投票請求をした違法を認めながら、右勧告及び請求が無効でない旨を判
示したのを非難するのである。
 しかし町村合併促進法によれば、町村合併促進審議会は知事の諮問機関たること
を主たる任務とするものであつて、同法一一条の三によるもこれらの行為に関する
議決機関ではなく、また、同法四条二項によれば右審議会はその構成から見て所論
のように関係者の利益代表機関ともいえないのであつて、同法は知事の行為を一層
適切妥当なものとするため、知事の一定の行為についてその意見を聴くべき旨を規
定したに過ぎないと解するのが相当である。町村の境界変更の勧告、住民投票の請
求に関し知事が全く審議会の意見を聴かなかつたような場合は格別、本件の場合、
知事は第一次勧告についてはその意見を聴いており、大体において地域を縮少した
に過ぎない第二次勧告及びこれを実現するための住民投票請求について、知事が法
令の解釈を誤りあらためて意見を聴く必要のないものと判断し意見を聴かないでこ
れらの行為をしたからといつて、すでに住民投票も行われ住民の意思も明示された
後に、かかる違法を理由に本件第二次勧告及び住民投票請求を無効ということはで
きない。論旨援用の当裁判所の先例は、選挙の管理執行そのものに関する規定違反
があつた場合の判示であつて、本件に適切でない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 論旨は、原判決が選挙管理委員会は選挙の事前手続について判断する権限がない
とし被上告人がした本件訴願裁決を支持したことを非難する。
 選挙管理委員会は選挙や住民投票を行うべき場合であるかどうかについて判断権
を持ち、従つて、住民投票の請求が権限のない者によつて行われたような場合、そ
の無効を判断しなければならないことは所論のとおりである。しかし、本件の場合
は、住民投票を請求する権限のある知事の請求があつたのであつて、前述のように
その前提手続には違法の点はあるけれども請求が無効とは考えられず、知事の権限
の行使に対し、選挙管理委員会がその手続上の適否を審査し原判決認定のような違
法を理由に住民投票の実施を拒否できるものではない。されば、原審が本件におい
て、被上告委員会が知事の賛否投票の請求の当否を判断する権限なしとして上告人
等の訴願を棄却したことを是認した判断は結局正当である。のみならず、住民投票
は住民の意思を尊重する趣旨に因るものであるから、すでに住民投票が行われ住民
の意思が表明された後に、その投票手続に違法の点があつて住民の意思が正当に表
明されていないと判断される場合は格別、そのような主張もない本件において、所
論のように、住民投票の前提手続の本件のような違法のみを理由に住民投票を無効
とすることはできない。論旨援用の大審院判決、当裁判所判決及び高等裁判所の判
決は、いずれも本件と場合を異にし本件の先例となるものではない。論旨は理由が
ない。
 以上説明のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇
一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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