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平成30年7月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成29年(ワ)第30499号不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日平成30年5月16日
判決
原告株式会社PETTERS5
同訴訟代理人弁護士浅村昌弘
同松川直樹
同和田研史
同和田嵩
被告株式会社マキシム10
同訴訟代理人弁護士若本修一
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由15
第1請求
1被告は,別紙1被告商品目録記載1ないし6の商品を譲渡し,譲渡のために展
示し(インターネットショッピングサイトにおける譲渡のための展示を含む。)又は
輸入してはならない。
2被告は,別紙1被告商品目録記載1ないし6の商品を廃棄せよ。20
3被告は,原告に対し,3298万6800円及びこれに対する平成29年9月
16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,被告において別紙1被告商品目録記載1ないし6の
各ブラウス(以下,個別には同目録記載の番号に応じて「被告商品1」などといい,25
これらを併せて「被告各商品」という。)の譲渡,譲渡のための展示又は輸入(以下
「譲渡等」という。)をする行為は,別紙2原告商品目録記載1ないし4の各ブラウス
(以下,個別には同目録記載の番号に応じて「原告商品1」などといい,これらを併
せて「原告各商品」という。)の形態を模倣した商品の譲渡等として不正競争(不正競
争防止法2条1項3号)に該当すると主張して,①不正競争防止法3条1項による差
止請求権に基づき譲渡等の禁止,②同条2項による廃棄請求権に基づき被告各製品の5
廃棄,③同法4条による損害賠償請求権に基づき損害賠償金3298万6800円及
びこれに対する不正競争後の日(本訴状送達の日の翌日)である平成29年9月16
日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事
案である。
1前提事実(当事者間に争いがない又は後掲の証拠〔以下,書証番号は特記しな10
い限り枝番の記載を省略する。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
⑴当事者
原告は,婦人服等の企画,製造,販売を業とする株式会社であり,「tocco」等
のブランド名を使用して婦人服を販売している。
被告は,衣料品等の販売,卸売及び輸出入等を業とする株式会社であり,「KOBE15
LETTUCE」又は「神戸レタス」のブランド名を使用して婦人服を販売している。
⑵原告各商品の販売
原告は,平成27年8月7日から原告商品1及び原告商品3の販売を,平成28年
3月18日から原告商品2及び原告商品4の販売を,それぞれ開始した(甲9)。原告
は,原告各商品を「toccocloset」と題するインターネットショッピン20
グサイトにおいても販売している(甲2,22)。
⑶被告各商品の販売
被告は,遅くとも平成28年5月1日以降,被告各商品を輸入し,公式ウェブサイ
ト及び楽天株式会社の運営する楽天市場等の多数のインターネットショッピングサ
イトや実店舗において,被告各商品を譲渡し,譲渡のために展示した。25
⑷被告による販売継続
原告は平成29年2月25日,被告に対し,不正競争防止法上の差止請求権に基づ
き,被告各商品の譲渡等の停止と在庫の廃棄を求める旨等を記載した警告書を送付し
たが,被告は原告の要望に応えることはできない旨を回答し,現在も被告商品の譲渡
等を継続している。
2争点5
⑴原告各商品は不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に当たるか(争点
1)
⑵被告商品1は原告商品1の,被告商品2及び被告商品5は原告商品2の,被告
商品3及び被告商品6は原告商品3の,被告商品4は原告商品4の各形態を模倣した
商品であるか(争点2)10
⑶原告各商品の形態は不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」に当たるか
(争点3)
⑷損害の発生及び額(争点4)
3争点に対する当事者の主張
⑴争点1(原告各商品は不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に当たる15
か)について
(原告の主張)
原告は,平成27年2月から3月上旬にかけて,原告各商品の開発を行った。原告
各商品が開発,発売されるまで,「ノースリーブブラウスに後からふんわりとボリュ
ームを持たせた同じ生地の袖を縫い付けることで少し肩を見せる形態」(以下「本件20
特徴」という。)を有するブラウスは存在していなかった。
原告従業員は,平成27年2月頃までに原告各商品の形態をデザインし,総丈,肩
幅及び天幅などの寸法の情報並びに身頃,袖裏及び袖口の仕様の情報や図面を記載し
た縫製仕様書を作成し,同年3月5日に大韓民国(以下「韓国」という。)所在の縫製
工場を有するDabok社(現在の商号は「JOYTRADING」である。)にF25
AXで送信した。原告は,同月中旬にDabok社から受領したサンプルの襟元や袖
部分に問題があったため,同月19日,Dabok社に対し,上記縫製仕様書に修正
箇所を加筆してFAXで送信し,再度のサンプル作成を依頼した。しかし,Dabo
k社からは,満足のいく質のサンプルが得られなかった。
そこで,原告は,平成27年5月27日頃,韓国の別のメーカー(以下「原告商品
メーカー」という。)に対し,同日付けの縫製仕様書を示してサンプル作成を指示し,5
同年7月6日,原告の関係会社である有限会社セレクションに対し,原告商品メーカ
ーを指定して「発注確認書(オーダー表)」を提出して,原告商品1及び原告商品3を
発注し,同年8月7日に原告商品1及び原告商品3を発売した。
したがって,原告各商品は,不正競争防止法2条1項3号の「他人の商品」に当た
る。10
(被告の主張)
本件特徴を有するブラウスは,原告が,原告商品1及び原告商品3の販売を開始す
る平成27年8月7日より前に,既に株式会社DHOLICFBL(以下「DHO
LIC社」という。)が遅くとも同年5月14日に販売しており,各種雑誌やSNSで
多数取り上げられて評判になっていた。15
そうすると,原告各商品は,原告が独自にデザインしたものではなく,むしろDH
OLIC社の商品に依拠して制作された可能性が高いから,不正競争防止法2条1項
3号の「他人の商品」には当たらない。
⑵争点2(被告商品1は原告商品1の,被告商品2及び被告商品5は原告商品2
の,被告商品3及び被告商品6は原告商品3の,被告商品4は原告商品4の各形態を20
模倣した商品であるか)について
(原告の主張)
ア実質的同一性について
被告各商品の形態と原告各商品の形態は,いずれも本件特徴を備えたブラウスであ
る点,生地は布帛(織物生地)である点,襟ぐり及びシルエットの点で共通する。ま25
た,原告商品1と被告商品1の色は黒色で共通する。
被告各商品の形態と原告各商品の形態は,原告各商品には袖に黒色のリボンが付さ
れている一方で,被告各商品には袖にリボンが付されていない点で一応相違するが,
本件特徴を有するブラウスのうち,原告以外の者が販売する商品については,袖にリ
ボンのないものも含めて「tocco風」と一般に認識されているなど,リボンの有
無は商品の全体的形態に大きな変化を与えるものではなく,商品全体から見ると些細5
な相違にとどまる。また,被告各商品と原告各商品の色は,原告商品2の方が被告商
品2よりやや色が暗い点,原告商品3はオフホワイト色であるが被告商品3はアイボ
リー色である点,原告商品4における格子柄の方が被告商品4における格子柄よりも
細かい点,原告商品2はネイビー色だが被告商品5は紺色である点,被告商品6はコ
ーラル色だが原告商品3はオフホワイト色である点で一応相違する。しかし,色の相10
違はそれほど大きくないか,単なる色違いとの印象を与えるに過ぎず,格子柄の幅の
相違も,商品の全体的形態に大きな変化を与えるものではなく,商品全体から見ると
些細な相違にとどまる。
以上によれば,被告商品1と原告商品1の形態,被告商品2及び被告商品5と原告
商品2の形態,被告商品3及び被告商品6と原告商品3の形態,被告商品4と原告商15
品4の形態は,実質的に同一である。
イ依拠性について
上記アのとおり,原告各商品と被告各商品の形態は同一であり,原告各商品の形態
が特徴的であることからすれば,両者の同一性が偶然に生じることはあり得ない。
また,原告各商品は,被告各商品が販売される以前から市場において流通しており,20
原告は,原告各商品を,原告の店舗だけでなく,原告のウェブサイト及び楽天市場に
おいて販売してきている。被告は,婦人服の販売等を業として行っているのであるか
ら,原告各商品の形態を知っていたというべきである。
さらに,被告はこれまでも,原告が平成26年に販売を開始した「イベリア」とい
う名称のブラウスの模倣品を平成27年に,原告が平成28年に販売を開始した「ミ25
ーリス」及び「フォービス」という名称のワンピースの模倣品を平成29年に,それ
ぞれ販売を開始した。被告は,原告が開発,販売した商品を数か月から1年後に模倣,
販売し,原告が作り出した流行に便乗するという行為を連続的にビジネスとして行っ
ている。したがって,被告各商品の形態は,被告による連続的な模倣行為の一環とし
て,原告各商品に依拠して作り出されたものである。
(被告の主張)5
ア実質的同一性について
(ア)原告各商品と被告各商品の共通点及び相違点について
被告各商品が,原告各商品の創作的特徴を有するという点,襟ぐり及びシルエット
が同一であるとする点は否認する。また,原告各商品と被告各商品は,襟の前後の下
がりの深さや袖形状が異なる。10
(イ)原告各商品と被告各商品の対比について
リボンの有無や,色彩及び格子柄の細かさの相違が,商品全体から見ると些細な相
違だとする点は争う。リボンの有無は明らかに見る者の注意を惹く部分であるといえ,
全体的形態の相違は明らかである。
また,本件特徴を有するブラウスのうち,原告以外の者が販売する商品が「toc15
co風」と一般に認識されているとする点は否認する。
イ依拠性について
争う。
上記アのとおり,被告各商品と原告各商品の全体的形態は相違している。
また,原告各商品の形態は,一般的なものであって,多数のメーカーが商品化して20
いるから,被告は,同様の形態について販売主体が原告であることは認識していなか
った。
上記「イベリア」,「ミーリス」及び「フォービス」の形態も,いずれも他のメーカ
ーや被告が商品化して販売している一般的なものであって,原告が創作した形態では
ない。よって,被告はこれまでに原告が販売した商品の形態を模倣したことはない。25
さらに,被告は,遅くとも原告各商品の販売開始前である平成27年8月5日には,
原告各商品と同じ形態的特徴を有する商品を販売していたから,被告各商品は,原告
各商品に依拠していない。
⑶争点3(原告各商品の形態は不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」に
当たるか)について
(原告の主張)5
原告各商品が開発,販売されるまで,本件特徴を有するブラウスは存在していない
のであり,本件特徴を有するブラウスは,一般に「tocco風」と認識されている
のであって,原告各商品の形態は,ありふれた形態ではないから,不正競争防止法2
条1項3号の「商品の形態」に当たる。
(被告の主張)10
被告は,同じ生地を縫い付ける形態ではないが,「ノースリーブブラウスに後から
ふんわりとボリュームを持たせた生地の袖を縫い付けることで少し肩を見せる形態」
の商品の販売を,遅くとも,原告各商品が販売される1年以上も前の平成26年7月
17日に開始した。また,被告は,袖を縫い付ける形態ではないものの,「ふんわりと
ボリュームを持たせた同じ生地の袖のある少し肩を見せる形態」の商品の販売を,平15
成26年5月20日に開始した。このように,被告は,原告各商品が販売される以前
から,原告各商品の商品形態を有する商品を販売している。さらに,販売開始時期は
明らかではないが,多くの有名ブランドから原告各商品と同様の形態の商品が販売さ
れている(乙11~29)。特徴を有するブラウスが,一般に
「tocco風」と認識されている事実もない。20
なお,原告各商品のショルダーデザインは,ファッション辞典にも掲載されている
伝統的なデザイン手法であるオープンショルダー又はベアショルダーの範疇に含ま
れるものである。
以上によれば,原告各商品の形態は,ありふれたものであり,不正競争防止法2条
1項3号の「商品の形態」に当たらない。25
⑷争点4(損害の発生及び額)について
(原告の主張)
被告が故意又は過失により被告各商品を輸入し,譲渡のために展示し,譲渡したこ
とによって,原告の営業上の利益が侵害された。これによって原告に生じた損害は,
下記ア又はイ及びウの合計額3298万6800円である(下記ア又はイのうち高額
なものを選択的に請求する。)。5
ア不正競争防止法5条1項により推定される損害額
被告は,平成28年5月1日から平成29年9月(本件訴え提起時)までの間に,
被告各商品を併せて少なくとも合計1万4000枚販売した。
被告各商品が販売されなければ,原告は上記被告販売枚数と同数を販売することが
できた。その1枚当たりの原告の利益額は平均して2142円を下らない。10
よって,不正競争防止法5条1項により推定される原告の損害額は,上記被告販売
枚数に上記利益額を乗じて算出される2998万8000円である。
イ不正競争防止法5条3項2号に基づく損害額
上記アのとおり,被告は,平成28年5月1日から平成29年9月(本件訴え提起
時)までの間に,被告各商品を併せて少なくとも合計1万4000枚販売していたと15
ころ,被告各商品の1枚当たりの単価は,1890円であるから,被告の上記期間に
おける被告各商品の売上総額は2646万円である。
原告各商品の形態につき使用を許諾した場合の使用料率は30%を下らない。
よって,不正競争防止法5条3項2号に基づく損害額は,上記被告売上総額に使用
料率30%を乗じて算出される793万8000円を下らない。20
ウ弁護士費用
被告による不法行為と相当因果関係のある弁護士費用額は,299万8800円で
ある。
(被告の主張)
否認又は争う。25
第3当裁判所の判断
1事実認定
後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
⑴原告各商品の形態等
ア原告各商品は,「afres」の名称で,「チョイ肩見せお袖リボンお目立ち令
嬢ブラウス」との説明を添えて販売されている色を除いて形態を共通にする商品であ5
る(甲2,22)。
イ原告各商品の形態は,別紙2原告商品目録記載1ないし4の各写真のとおりで
あり,具体的には次のとおりである(甲2,5~8,16~21,22)。
(ア)全体・シルエット
裾に向かって若干広がっているノースリーブブラウスに,ボリュームを持たせたフ10
リル袖を縫い付けることで肩及び上腕の上部を少し見せる形態としたブラウスであ
る。
(イ)生地
生地は,布帛(織物生地)が用いられている。
(ウ)色15
原告商品1は黒色,原告商品2は濃いネイビー色,原告商品3はオフホワイト色,
原告商品4は,白色と黒色の縦横とも同じ太さのギンガムチェックである。
(エ)袖
袖は,その上部がブラウスの裾とほぼ水平になるようにフリルを設けて縫い付けら
れており,下部の広がりはあまりない。半袖と同様の長さがあって,袖の長さより長20
い黒色のリボンが付されている。
⑵被告各商品の形態等
ア被告各商品は,「オープンショルダーデザイン♪フレアブラウストップス」との
説明を添えて販売されている色を除いて形態を共通にする商品である(甲23)。
イ被告各商品の形態は,別紙1被告商品目録記載1ないし6の各写真のとおりで25
あり,具体的には次のとおりである(甲10~21,23)。
(ア)全体・シルエット
裾に向かって若干広がっているノースリーブブラウスに,ボリュームを持たせたフ
リル袖を縫い付けることで肩及び上腕の上部を少し見せる形態としたブラウスであ
る。
(イ)生地5
生地は,布帛(織物生地)が用いられている。
(ウ)色
被告商品1は黒色,被告商品2はネイビー色,被告商品3はアイボリー色,被告商
品4は,白色と黒色の縦横とも同じ太さの原告商品4より幅が太いギンガムチェック,
被告商品5は紺色(デニム色),被告商品6はコーラル色である。10
(エ)袖
袖は,ボリュームのあるフリルを設けて縫い付けられており,半袖と同様の長さが
あって,下部は広がっている。リボンは付されていない。
(オ)襟
原告各商品よりも襟の前後の下がりが浅い。15
2争点2(被告商品1は原告商品1の,被告商品2及び被告商品5は原告商品2
の,被告商品3及び被告商品6は原告商品3の,被告商品4は原告商品4の各形態を
模倣した商品であるか)について
本件事案の内容に鑑み,まず,争点2について判断する。
⑴実質的同一性について20
ア共通点について
原告各商品と被告各商品は,前記1の認定事実のとおり,(a)ノースリーブブラウス
にボリュームを持たせたフリル袖を縫い付けることで肩及び上腕の上部を少し見せ
る形態としたブラウスである点,ノースリーブブラウスは裾に向かって若干広がって
いる点,(b)生地は布帛(織物生地)である点,(c)原告商品1と被告商品1の色は黒色25
で同じであり,原告商品4と被告商品4は白色及び黒色で構成される縦横とも同じ太
さの格子柄(ギンガムチェック)である点で共通である。
イ相違点について
原告各商品と被告各商品は,前記1の認定事実のとおり,①原告各商品の袖は,ブ
ラウスの色を問わずいずれも袖の長さより長い黒色のリボンが付されており,下部も
余り広がらない形状であるが,被告各商品の袖は,リボンは付されておらず,裾は広5
がっており,フリルにボリュームがある点,②原告商品2の色は被告商品2のネイビ
ー色より濃いネイビー色である点,原告商品2の色はネイビー色であるが被告商品5
の色は紺色(デニム色)である点,原告商品3の色はオフホワイト色であるが被告商
品3の色はアイボリー色であり,被告商品6の色はコーラル色である点,③原告各商
品よりも被告各商品のほうが襟の前後の下がりが浅い点,④原告商品4の格子幅は被10
告商品4より細かい点で相違する。
ウ判断
上記イのとおり,原告各商品は,裾に向かって若干広がったノースリーブブラウス
にフリル袖を縫い付けたブラウスであるが,ノースリーブブラウスの部分には特徴的
な点はないから,原告各商品のうち,特徴的であり需要者の目を引く部分は,フリル15
袖であるといえる。
そこで,袖について検討すると,原告各商品と被告各商品は,いずれもノースリー
ブに縫い付けられフリルを設けたものである点で共通するものの,上記相違点①のと
おり,フリル袖の広がり及びフリルのボリュームの相違という袖形状の相違は,袖全
体の形状であり着用時も含めて需要者の印象を大きく左右するものであるから,その20
相違の程度が些細なものであるとはいえず,形態の全体的な印象に影響を及ぼすもの
といえる。また,原告各商品と被告各商品には,黒いリボンの有無という相違がある。
原告各商品の黒いリボンは,正面から見たときに見える部分に付されており,袖の長
さからはみ出す長さであるから,ブラウスの装飾として存在感があり,フェミニンさ
を強調するものである。さらに,地色が淡い原告商品3(オフホワイト色)及び原告25
商品4(白地に黒のギンガムチェック)においては,黒いリボンの存在は更に印象的
である。したがって,リボンの有無は,全体的な印象を左右するものであるといえる。
以上によれば,需要者の着目するフリル袖の部分に上記相違(相違点①)があるか
ら,商品全体の形態として対比した場合に,原告各商品と被告各商品が全体として酷
似しているということはできない。よって,被告各商品の形態は,原告各商品の形態
と実質的に同一であると認めることはできず,これに反する原告の主張はいずれも採5
用できない。
⑵小括
したがって,被告商品1は原告商品1の形態を,被告商品2及び被告商品5は原告
商品2の形態を,被告商品3及び被告商品6は原告商品3の形態を,被告商品4は原
告商品4の形態をそれぞれ模倣したと認めることはできない。10
第4結論
以上によれば,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求にはすべて理
由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官
山田真紀
裁判官
伊藤清隆25
裁判官
棚橋知子
(別紙1)
被告商品目録
以下の写真(正面及び背面)により示されるブラウス([C2203]との品番が付されて
いるものを含みこれに限られない)
1被告商品15
正面
背面
2被告商品2
正面
背面
3被告商品3
正面
背面
4被告商品4
正面
背面
5被告商品5
正面
背面
6被告商品6
正面
背面
(別紙2)
原告商品目録
以下の写真(正面及び背面)により示されるブラウス(品名【afresアフリス】
商品番号127-099387)
1原告商品15
正面
背面
2原告商品2
正面
背面
3原告商品3
正面
背面
4原告商品4
正面
背面

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