弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主         文
1 原告の訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,被告が平成16年10月11日付けでなした告示(三野
町選挙管理委員会告示第103号)に係る香川県三豊郡三野町長A解職請求者署名簿
の署名の効力が無効であることを確認する。
第2 事案の概要等
1 概要
 本件は,三野町長である原告が,平成16年7月20日,訴外Bを請求代表
者として被告に提出された「香川県三豊郡三野町長A解職請求書」に係る解職請求
(以下「本件解職請求」という。)についての署名簿(以下「本件署名簿」とい
う。)が署名用紙1枚ごとに分けて署名を集めたものであって法定の要件を具備せ
ず,また,請求代表者又はその者から委任を受けた者ではない者が署名を集めてい
ること等を理由に,被告が平成16年10月11日付けで行った三野町長解職投票
の期日を同月31日とする旨の告示第103号(以下「本件告示」という。)に係
る本件署名簿の署名の効力が無効である旨の確認を求めたものである。
2 前提事実(掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実)
(1)当事者
 原告は,平成13年3月,三野町長に選出され,平成16年7月20日当
時も三野町長の職にあった(弁論の全趣旨)。
(2) 本件解職請求
 Bは,平成16年7月20日,被告に対して,三野町長である原告を解職
する旨の住民投票を実施することを求める内容の本件解職請求を行った(甲1の
1)。
 被告は,同月21日,Bに対して,同人が本件解職請求についての解職請
求代表者である旨を証する証明書を交付した(甲1の2)。
(3) 縦覧手続
 被告は,平成16年8月27日から同年9月2日までの間の午前8時30
分から午後5時00分まで,三野町役場において,本件解職請求に係る本件署名簿
を縦覧に供した(甲1の3)。
(4) 有効署名数の告示
 被告は,平成16年9月10日,本件署名簿の縦覧に供したところ,本件
署名簿の署名の効力についての異議申出が5件あり,そのすべての異議について決
定したとして,本件署名簿における有効署名の総数が3169人である旨の告示(三
野町選挙管理委員会告示第77号)をした(甲1の5)。
(5) 本件告示
 被告は,平成16年10月11日,三野町長解職投票の期日を同月31日
とする旨の本件告示を行った(甲5の1)。
(6) 本件訴え提起
 原告は,平成16年10月13日,本件訴えを提起した。
3 当事者の主張の要旨
 原告は,本件署名簿は,①解職請求書等の書類と署名用紙を順次一括して編
綴した上で,有権者に対して署名簿への署名を求める必要があるにもかかわらず,
本件署名簿は,解職請求書等の書類と署名用紙が分離された上,署名用紙が1枚ご
とに分けられて,有権者の署名が収集されているから法定の要件を具備していない
こと,②請求者または請求者から委任を受けた者が,直接,有権者に署名簿への署
名押印を求めなければならないのにもかかわらず,請求代表者または請求者から委
任を受けた者ではない者が署名を収集していること等を理由に,本件署名簿の署名
が無効である旨の確認を求めている。
 これに対し,被告は,原告の本件訴えは,そもそも,行政事件訴訟法の規定
する無効確認等の訴えに含まれないこと,原告の本件訴えを地方自治法74条の2
第8項に基づくものと解しても,原告適格を欠き,また,適法な出訴期間内に提訴
されたものでないから不適法なものであり却下されるべきである旨主張するととも
に,本件署名簿の署名全部を無効とする事由は存在しないとして原告の請求を棄却
することを求めている。
第3 当裁判所の判断
 1 地方自治法74条の2の解釈
(1) 地方自治法によれば,地方公共団体の長の解職請求手続に関し,請求代表
者が,署名簿の書面の審査を請求し,これに対して,選挙管理委員会が20日以内
にその効力を審査し,署名の効力を決定し,その旨を証明し,その署名簿の署名の
証明が終了したときは,その日から7日間,審査署名簿を縦覧に供し,署名簿の署
名に関する異議の申出がある者は上記縦覧期間に異議を申し出,選挙管理委員会
は,その申出を受けた日から14日以内にこれに対する決定及び申出を正当である
と決定した場合の修正に関する申出人及び関係人に対する通知並びに告示,申出を
正当でないと決定した場合の申出人に対する通知を行い,上記異議申出がないとき
又はすべての異議申出についての決定をしたときは,その旨及び有効署名者の総数
の告示,署名簿の返付
,以上の手続が順次予定されている(地方自治法81条2項,74条の2第1項な
いし第6項)。
 そして,上記署名簿の署名についての異議申出に対する決定(地方自治法
81条2項,74条の2第5項)に不服がある者は,その決定のあった日から14
日以内に,地方裁判所に対して本件署名簿の署名に関する決定の取消しを求める訴
えを提起しなければならないとされている(地方自治法81条2項,74条の2第
8項)。
(2) この点,地方自治法74条の2に規定する署名の効力に関する争訟は,個
々の署名の効力の有無を対象とするものであるが,同条の争訟で同時に複数の署名
の効力を争うことは何らの支障もなく,署名簿そのものの効力を争うことは全部の
署名の効力を争うことに帰するということができるから,同条が規定する争訟に
は,署名簿そのものの効力を争う場合も包含されていると考えられる。
 そして,地方自治法74条の2は,上記(1)記載のとおり,署名簿の署名の
証明,署名簿の縦覧,署名に関する審査といった事項とともに,署名簿の署名に関
する決定の取消しを求める訴えの手続,提訴期間について詳細に規定するところ,
同法256条は,普通地方公共団体における直接請求の署名簿の署名の効力につい
ては,同法に定められた争訟の提起期間及び管轄裁判所に関する規定によってのみ
これを争うことができる旨を規定する。
 そうすると,地方自治法256条の規定によって,直接請求制度に関する
署名簿の署名に関する紛争については,一律に地方自治法74条の2の規定に基づ
いて早期に審理を行うことで,民意を迅速に集約させて早期に民主主義制度を回復
することが期待されていると考えるのが相当である。
 以上によれば,本件署名簿全体の署名の無効を求める訴訟を提起すること
自体は否定されないとしても,かかる訴訟も,異議申出に対する決定の取消しを求
める場合と同じく地方自治法74条の2が規定する争訟手続のみによって争うこと
ができると解するのが相当である。
2 検討
(1) 前提事実(1),(2)によれば,原告は被解職請求者本人であるから,地方自
治法74条の2第4項の規定する「関係人」と解することができ,原告自身が同項
に基づく異議を申し出ていないとしても,同条8項の署名簿の署名の効力に関する
訴訟において原告適格を有する者ということができる。
(2) しかし,上記1(1)記載の条文の体裁によれば,署名簿の署名に関する争
訟(地方自治法81条2項,74条の2第8項に基づく訴訟の提起)は,本件署名
簿の署名に関する関係人による異議(地方自治法81条2項,74条の2第4
項),及びかかる異議申出に対する市町村の選挙管理委員会による決定(地方自治
法81条2項,74条の2第5項)といった手続を前提とするものであるから,本
件訴えが,本件署名簿の署名が無効であることの確認を求める訴えの体裁をとって
いたとしても,署名簿の署名に関する関係人の異議に対する市町村の選挙管理委員
会による決定から14日以内に提起しなければならないというべきである。
 けだし,地方自治法74条の2は,直接請求制度に関する署名簿の署名に
関する争訟につき,上記1(1)のように署名簿の署名の審査に対する選挙管理委員会
の審査期間,署名簿の縦覧期間,異議申出期間,異議申出から決定までの期間,提
訴期間を厳格に規定しているが,仮に,被解職請求者が,いつまでも,地方自治法
81条2項,74条の2第8項の規定する署名簿の署名に関する争訟を提起できる
とすれば,直接請求制度に関する署名簿の署名に関する紛争を早期に解決しようと
する地方自治法74条の2の規定の趣旨を没却し,早期の民意の集約という直接請
求制度の要請に反するし,また,法的安定性を害する事態を招くこととなり,不合
理である。
(3) そして,前提事実(3),(4)及び証拠(甲1の7,8,甲2の1~3)によれ
ば,被告は,本件署名簿を縦覧に供したところ,訴外C,同D,同E等からの異議
の申出が5件あり,その全ての異議について決定したとして,平成16年9月10
日,有効署名の総数が3169名である旨の告示を行っていることが認められる。
 そうすると,被告は,遅くとも,平成16年9月10日には,本件署名簿
の署名の効力に関する全ての異議に対する決定をしていることとなるところ,原告
が,本件訴えを提起したのは平成16年10月13日であるから,同日までには,
地方自治法74条の2第8項に規定する14日の出訴期間が既に経過していたとい
わざるを得ない。
 したがって,原告の本件訴えは,本件署名簿の署名の効力に関する争訟
は,署名簿の署名に関する異議の申出に対する決定のあった日から14日以内に提
起しなければならないとした地方自治法81条2項,74条の2第8項の規定を遵
守していないこととなる。
3 結論
  よって,本件訴えは不適法であるから,その余の点について判断するまで
もなく却下することとし,主文のとおり判決する。
  高松地方裁判所民事部
           裁判長裁判官   豊永多門
              裁判官   山口格之
              裁判官   角田康洋

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