弁護士法人ITJ法律事務所

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平成29年6月26日宣告
殺人被告事件(裁判員裁判)
主文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中380日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1妻及び2人の子らと生活していたが,平成14年初め頃からAと交際し始め,
間もなく同人と同居生活を送るようになった。平成16年5月8日に同人との
間にBが出生すると,被告人は,Aに対し,年内にはAとBとを自己の戸籍に
入れる旨伝えたものの,入籍できない状態が続き,同年9月頃以降は,Aから
強く入籍を求められるようになった。そうした折の,同年12月下旬頃,被告
人は,Aから,3日間続けて,深夜,繰り返し,自分たちを何とも思っていな
いし愛してもいないのではないかなどと,これまでにない強い口調で,入籍の
約束が果たされていないことを責められた。被告人は,3日目の夜,布団に入
ったものの寝就けず,このまま年内に入籍できなければAとBを失ってしまう
などと考えて絶望感を覚えるとともに,Aから厳しく責められたことへの腹立
ちもあって,Aを殺すしかないと思い至った。そして,その頃,福岡県久留米
市ab丁目c番d号の当時のef番館g号のA方において,就寝中の同人(当時
28歳)に対し,殺意をもって,その左側胸部等を包丁(刃体の長さ約18.
3センチメートル,(領置番号略)で複数回突き刺し,よって,その頃,同所に
おいて,同人を死亡させて殺害した。
第2前記第1の犯行に引き続き,Aの傍らにいたBも殺そうと思い立ち,その頃,
前記A方において,Bに対し,殺意をもって,その頚部をAVコードで強く絞
め,よって,その頃,同所において,同人を死亡させて殺害した。
(証拠の標目)略
(法令の適用)
罰条
判示各行為につきいずれも平成16年法律第156号による改正前の刑法1
99条(いずれも行為時においては平成16年法律第15
6条による改正前の刑法199条に,裁判時においてはそ
の改正後の刑法199条に該当するが,これは犯罪後の法
令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,
10条により軽い行為時法の刑による。)
刑種の選択
判示各罪につきいずれも無期懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,46条2項本文,10条(犯情の重い判
示第2の罪の無期懲役刑で処断するので,他の刑を科さな
い。)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件は,妻子がありながら他の女性と交際していた被告人が,入籍できないこと
を交際相手から厳しく責められ,就寝中の同人とその間にもうけた子を殺害した2
件の殺人の事案である。
もとより,本件は,生後約7か月の幼い子を含む2名の尊い生命が奪われた重大
な事案であり,この点は本件の量刑を決する上でまずもって重視されるべき事情と
いえる。
犯行態様は,殊更に各被害者に苦痛や恐怖を与えるようなものではないものの,
就寝中で無防備な状態にあった交際相手に対し,布団をめくり上げた上,心臓を狙
って包丁で突き刺し,さらに,とどめを刺すために攻撃を加えているし,子につい
ても,抵抗する術のない生後約7か月の乳児の首を強く絞め付けているのであって,
いずれも残忍な仕打ちというべきである。本件はいずれも突発的な犯行ではあるが,
被告人の殺意は,確実に各被害者を殺そうという極めて強いものであった。犯行の
経緯についても,被告人が交際相手から厳しく責められ続けて追い詰められた心境
にあったこと自体は間違いないが,その結果,交際相手らの殺害を選択したことは
理解し難く,その動機は自己中心的かつ短絡的で,同情の余地を見出せない(なお,
被告人と当時の妻との離婚に関する話合いの経過がどのようなものであったかにつ
いては,同人と被告人の説明に食い違いがあり不明な点もあるが,仮に被告人の述
べるとおり,当時の妻が頑なに離婚を拒んでいたとしても,本件犯行の動機に大き
く酌むべきものがあるとは考えられない。)。被告人が被害者らの遺体を土中に埋め
るなどして結果的にその発見が遅れたことも,本件各殺人の情状として,一定程度
考慮せざるを得ない。被害者らの遺族は被告人に対して厳しい処罰を望むが,以上
の検討からすれば誠にもっともな心情と理解できる。
以上によれば,本件は,2名を殺害した殺人事件の中では,極刑が相当する部類
に属するとまではいえないものの,決して軽い事案ではない。
他方,被告人は事実を認めており,上記のとおり被害者らの遺体を土中に埋めた
ことが一因とはいえ,事案解明に協力するなどの反省の態度を示している。その他,
被告人には前科前歴がないことや,20万円の贖罪寄付をしたことなども被告人に
有利な事情である。しかし,これらを最大限考慮しても,被告人の刑事責任は重大
であり,有期懲役刑を選択することが相当とはいえない。
よって,被告人に対しては,無期懲役に処するのが相当と判断した。
(求刑・無期懲役,弁護人の科刑意見・懲役13年から15年程度)
平成29年7月5日
福岡地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官丸田顕
裁判官岩田淳之
裁判官中山さほ子

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