弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告が昭和四七年三月七日付でなした原告の昭和四四年度分贈与税を二、四八
一万五、〇〇〇円とする決定、および無申告加算税を二四八万一、五〇〇円とする
賦課決定は、いずれもこれを取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
(本案前の答弁)
主文同旨
(本案に対する答弁)
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用に原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、原告の父Aの昭和四四年八月三一日現在C株式会社(以下単にCとい
う)に対する貸付債権のうち、四、一二〇万円の債権を同人より原告が贈与をうけ
たこと、および原告が贈与税の申告をなさなかつたことを理由に昭和四七年三月七
日原告に対し請求の趣旨1記載の本件各処分をなした。
2 しかしながら、原告は父Aから右貸付債権の贈与をうけたことはない。ただ、
右Aが同人の主宰する前記会社に対する自己の貸金債権のうち四、一二〇万円の債
権を同社社員に命じて原告に譲渡した如く同社の帳簿に記載させたことがあるが、
原告は全然これに関知していないし、右贈与を承諾したこともない。
従つて、右贈与の存在を前提とする被告の本件各処分は違法であるので、その取消
を求める。
二 被告の答弁
(本案前の抗弁)
本訴は出訴期間を徒過し不適法である。
即ち、本件各処分に対する原告の審査請求について、昭和四九年三月二六日棄却の
裁決がなされ、同裁決書の謄本は同月二八日原告に送達されたので、原告は同日右
裁決があつたことを知つたものというべきであるところ、行政事件訴訟法一四条一
項、四項によれば 審査請求をした者については、裁決があつたことを知つた日ま
たは裁決の日から起算して三箇月以内に取消訴訟を提起すべく、この場合期間は初
日を算入すべきであるから、本訴は遅くとも同年六月二七日までに提起すべきであ
るのに、同月二八日に提訴されたものであつて不適法である。
また、右裁決書を受領した者は父Aであり、原告がその内容を知つたのは同年三月
三一日であるとの原告主張は争う仮にAが受領したものとしても原告とAは同一敷
地内の隣接する建物に居住しているものであるから、右Aが受領した三月二八日を
もつて原告の了知しうべき状熊におかれたものというべきであつて、同日を以て裁
決があつたことを知つた日と解すべきである。
(請求原因に対する認否)
請求原因1は認め、同2は争う。
(被告の主張)
1 被告が原告主張のとおり本件各処分をなしたところ、原告は右処分につき昭和
四七年四月二四日被告に対し異議申立をなし、同年七月八日付で棄却の決定がなさ
れ、更に原告は右処分の取消を求めるべく同年八月三日国税不服審判所長に対し審
査請求をなしたが、昭和四九年三月二六日付で棄却する旨の裁決がなされた。
2 本件各処分の適法性について
(一) 原告がCに対する四、一二〇万円の貸付金債権を取得した経緯
(1) 原告の父Aは右会社の代表取締役の外、学校法人Dの理事長、その他E株
式会社等数社の代表取締役会長等をなす実業家であり、津島市においては相当な資
産家である。
他方、原告は右Aの長男であつて、右Eの代表取締役およびCの取締役ならびに右
Dの理事である。
(2) Cが被告に提出した同社の昭和四三年七月一日から昭和四四年六月三〇日
までの事業年度の法人税確定申告書添付の「借入金および支払利子の内訳書」によ
れば、同社は、昭和四四年六月三〇日現在Aからの借入金として八、二〇八万四、
一四二円の債務があつたところ、昭和四四年七月一日から同四五年六月三〇日まで
の事業年度の法人税確定申告書添付の「借入金および利子内訳書」によれば、同四
五年六月三〇日現在Aからの借入金は四、七七六万八、一〇〇円と減少し、新たに
原告からの借入金二、〇三四万九、三七八円が計上されていた。
(3) そこで被告が調査したところ、昭和四四年七月ないし八月ころ、AはCの
経理担当者Bに命じてAの同社に対して有していた貸付金のうち四、〇〇〇万円を
原告からの借入金として昭和四〇年に遡つて借入金内訳書に記載させ、併せて昭和
四四年六月三〇日付で未払利息一二〇万円を計上して元金に繰入れたうえ、原告か
らの借入金残高を四、一二〇万円と操作させ、以て右会社に対する貸金債権のうち
四、一二〇万円を原告に譲渡した事実が判明した。
(二) 被告が右譲渡を贈与と認定した根拠
(1) 前記四、一二〇万円は昭和四四年九月六日から昭和四六年八月二〇日まで
の間に、原告の結婚に伴なう結納金に一〇〇万円、建物新築費用に約二、三〇〇万
円、新居用什器備品購入費用に二七五万六、〇〇〇円等として払い出されている。
なお原告は、右建物新築について建築主として自ら建築確認申請手続を行つたほ
か、その企画構想を練り工事施行に関して指図し、完成後自ら居住し、不動産取得
税・固定資産税も納付しているものであるが、このことは右建物が自己のものとの
認識の上でなされたといえる。
そして父Aは、右建物の建築資金を捻出するため前記貸付債権の一部譲渡という形
式を採つたものであり、原告もこの間の事情を十分承知していたものである。
(2) また前記四、一二〇万円は(一)記載のとおり支弁されたほか、昭和四六
年一一月二七日原告は一、七八〇万円返済をうけ、そのうち一、七〇〇万円を前記
Eに貸付け、八〇万円を前記Dに寄付している。
(3) 更に昭和四六年一二月三一日に前記四、一二〇万円の残金一、四一四円が
原告に返済されているが、この間原告は昭和四四年分および昭和四五年分の所得税
確定申告において同社に対する貸付金利息を雑所得として計上している。
(4) 以上の如く原告はAから譲受けた前記貸付金債権を自己の利益のために実
質的に使用収益しているわけであり、しかもAに対する対価関係はなく、結局Aか
ら贈与を受けたものというべきである。
(三) 以上の各事実に基づき被告はAが昭和四四年六月三〇日現在Cに対して有
していた貸付金債権八、二〇八万四、一四二円のうち、同年七月から八月にかけて
四、一二〇万円につき、原告に名義変更した行為を債権の無償譲渡、すなわち贈与
であると認定したものである。
従つて原告を相続税法一条の二の贈与税納税義務者として同法三五条の規定を適用
して行なつた昭和四四年分贈与税の決定ならびに無申告加算税賦課処分は適法であ
る。
三 被告の答弁に対する原告の反論
(本案前の抗弁について)
1 行政事件訴訟法一四条四項所定の出訴期間の算定にあたつては、初日を算入す
べきではない。蓋し、とくに理由のないかぎり期間の算定については原則規定であ
る民法一四〇条に従い初日を算入すべきでなく、本件の場合は初日を算入する理由
もなく、もし算入すれば却つて出訴期間を短縮する結果出訴者の権利行使を制限
し、人権保護の趣旨に反することになるからである。
2 仮に被告主張のとおり、出訴期間の計算にあたり初日を算入すると解しても、
本件裁決書は被告主張の昭和四九年三月二八日、原告の父Aが受領したものであ
る。而して同人に原告と同一敷地内ではあるが、別棟に住み原告とは別個の生活を
営むものであるが、裁決書検討のため数日その手中におき、原告に知らされたのは
同月三一日になつてからであり、原告は同年六月二八日に本訴を提起しているか
ら、右の出訴期間は遵守されている。
第三 証拠関係(省略)
○ 理由
一 本件訴は出訴期間徒過により不適法であるとの被告の主張について検討する
に、本件贈与税の賦課処分等に対する取消訴訟の出訴期間について相続税法上何ら
の定はなく、専ら国税通則法一一四条により行政事件訴訟法一四条の適用があるも
のであるところ、同条一項は取消訴訟の出訴期間は処分又は裁決のあつたことを知
つた日から三箇月以内に提起しなければならないとし、同四項において、右第一項
の期間は審査請求があつたときは、その審査請求をした者についてはこれに対する
裁決があつたことを知つた日又は裁決の日から起算すると定めるのであるから、こ
の場合三箇月の出訴期間は裁決があつたことを知つた日又は裁決の日を第一日とし
て期間計算をなすことは法令用語の解釈として当然である。このことは例えば国会
法一四条、一三三条、行政不服審査法一四条一項、四五条、国税通則法七七条、一
一一条一項、地方自治法一四三条四項、二二九条三項等の用語例と対比しても明ら
かである。
原告は、期間計算にあたり初日不算入は民法上の原則でありまた初日を算入するこ
とにより出訴者の権利行使を制限し、人権保護に欠けるという。なるほど取消訴訟
における出訴期間およびその計算方法は、行政行為の公益性と当事者の救済、権利
保護とをどのように調和させるかによつて定められるとはいえ必ずしも民法上の原
則に拘束されるものでないし、また、およそ期間計算の方法は法律技術的に決せら
れるものであるから、審査請求をした者について裁決があつた場合、三箇月の出訴
期間について特に、原告主張の如く裁決のあつたことを知つた日又は裁決の日の翌
日から起算しなければ著しく当事者の権利保護に欠けるとする実質的理由は格別な
い。従つて原告の主張は理由がない。
そして本件各処分が昭和四九年三月二六日付でなされたことは当事者間に争がな
く、成立に争のない乙第二号証の一ないし三によれば同月二八日右裁決書の謄本が
原告の住所地津島市<以下略>へ書留郵便にて配達されたことが認められこれに反
する証拠はない。してみると、格別の反証のない限り右日時に右裁決書は原告の了
知しうべき状態におかれたものということができる。
ところで、原告は、昭和四九年三月二八日に配達された前記裁決書謄本は原告の父
Aがこれを受領し、原告は同日は家をあけ翌二九日も外出していたため右裁決書の
存在を知つたのは同月三一日ごろであると主張する。しかしながら、成立に争のな
い甲第三号証、乙第五ないし第七号証、第八号証の一、二および原告本人尋問の結
果によれば、原告は大学時代を除きほゞ現住所地にある父Aの居住建物に同居し、
大学卒業後は同人の関与する会社に関与しているのであるが、昭和四五年四月に結
婚してからは右建物と同一敷地内(広さ約一八〇坪)にこれに隣接して建てられた
二階建の別棟に居住しており、右二つの建物は廊下伝いで連絡されていること、住
民票上は、原告およびその妻子は依然として父Aと同一世帯を構成していること、
右二棟の敷地の出入口は原告家族とA家族の共用であり、とくに原告家族専用のも
のは設けられていないこと、郵便受は一箇所しかなく原告の留守中にきた郵便物は
書留郵便も含めて父Aの家族(使用人も含む)等がこれを受領していること、本件
各処分について、従来原告は父Aと相談して税務署などとの折衝を重ねていたこと
が認められ、右認定を左右する証拠はない。
右認定事実によれば、原告の父Aは原告より原告宛にきた郵便物を包括的に受領す
る権限を与えられていたものということができるところ、同人が昭和四九年三月二
八日前記裁決書謄本を受領したことは原告も自認するところであるから、同日をも
つて原告が右裁決のあつたことを知つた日と認めるのが相当である。
二 してみると、本件訴は、昭和四九年六月二八日に提起されたことは記録上明ら
かであるところ、右は、原告が前記裁決の存在を知つた日である同年三月二八日か
ら起算して前記法定の三箇月の出訴期間を徒過して提起されたものとして、不適法
というべきである。
よつて、原告の本訴は不適法として却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九
条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 山田義光 窪田季夫 小熊 桂)

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