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平成22年12月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成22年(行ケ)第10188号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成22年12月8日
判決
原告日本ソリッド株式会社
被告特許庁長官
同指定代理人遠藤秀明
千葉成就
紀本孝
豊田純一
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2008−21018号事件について平成22年4月28日にした
審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒絶
査定不服審判の請求について,特許庁が,特許請求の範囲の記載を下記2の(1)から
(2)へと補正する本件補正を却下した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書
(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由
があると主張して,その取消しを求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)本件出願(甲2)及び拒絶査定
発明の名称:物品
出願番号:平成10年特許願第177950号
出願日:平成10年5月22日
国内優先権主張日:平成9年6月2日
各手続補正日:平成18年10月4日付け(乙2),平成19年8月3日付け(乙
5),同年11月14日付け(乙8)
平成19年11月14日付け補正の却下決定日:平成20年7月4日(乙10)
拒絶査定日:平成20年7月4日(乙11)
(2)審判請求及び本件審決
審判請求日:平成20年8月15日(不服2008−21018号事件。乙12)
手続補正日:平成20年8月15日(甲3。以下,同日の補正を「本件補正」と
いう。)
審決日:平成22年4月28日
審決の結論:本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」
審決謄本送達日:平成22年5月18日
2本件補正前後の特許請求の範囲の記載
本件補正前及び本件補正後の各特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。
以下,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本願発明」,
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」とい
うことがある。なお,下記(2)の本件補正後の特許請求の範囲の記載における下線部
分は,本件補正による補正箇所である。
(1)本件補正前の特許請求の範囲(甲2,乙2,乙5)
請求項1:亀甲模様を施した,透過部を有する構造体に,同じ亀甲模様を施した
透過部を有する構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて
構成されてなる物品
請求項2:透光性を有する素材からなる構造体に,亀甲模様を同一または同一色
の濃淡,あるいは異なる色彩によって描いてなる請求項1記載の物品
(2)本件補正後の特許請求の範囲(甲2,乙2,乙5,甲3)
請求項1:図1の図形模様を施した,透過部を有する構造体と,図1の図形模様
を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した,透過部を有
する構造体とを間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品
請求項2:透光性を有する素材からなる構造体に,図1の図形模様を同一または
同一色の濃淡,あるいは異なる色彩によって描いてなる請求項1記載の物品
なお,上記の図1は,本件出願の願書に添付された下記の図面である。
3本件審決の理由の要旨
(1)本件審決の理由は,要するに,①本件補正は,請求項の削除,特許請求の範
囲の減縮,誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明のいずれをも目的とするものでは
ないから,平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第4項(以下
「法17条の2第4項」という。)各号のいずれの事項にも該当しないから却下を
免れず,②仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的としたものであったとして
も,同改正前の特許法36条6項(以下「法36条6項」という。)2号に適合す
るものではないから,特許出願の際,独立して特許を受けることができないもので
あり,平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項において準
用する特許法126条5項の規定に違反するものとして,却下すべきものであり,
③本願発明は,実願昭56−78790号(実開昭57−189900号)のマイ
クロフィルム(甲5。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発
明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特
許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。
(2)なお,本件審決が認定した引用発明並びに本願発明と引用発明との一致点及
び相違点は,以下のとおりである。
ア引用発明:六角模様を施した,透明板(1a)に,同じ六角模様を施した,
透明板(1b)を角度を30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成さ
れてなる装飾板
イ一致点:亀甲模様を施した,構造体に,同じ亀甲模様を施した構造体を角度
を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品
ウ相違点:構造体が,本願発明では,亀甲模様を施した透過部を有するもので
あるのに対して,引用発明では,透明板(1a),(1b)に六角模様を施したも
のである点
4取消事由
(1)本件補正を却下した判断の誤り(取消事由1)
(2)本願発明を拒絶した判断の誤り(取消事由2)
第3当事者の主張
1取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)法17条の2第4項該当性
本件審決は,30度回転させる対象を「構造体」から「図形模様」へと変更する
ことは,発明を特定する事項を限定することによる特許請求の範囲の減縮を目的と
するものということができず,また,誤記の訂正を目的とするものとも,明瞭でな
い記載の釈明を目的とするものとも認められないとした。
しかしながら,図形模様は,構造体に描かれているもので,両者は一体のもので
あるから,図形模様を30度回転させるということは,構造体を30度回転させる
ことと実質的に同一であるので,変更には当たらない。
そして,「構造体」を「図形模様」に補正することは,図柄の組合せ状態を明確
にしたものであって,明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
(2)明確性の要件
本件審決は,本件補正における「図1の図形模様」とは,図1に示されている個
別の亀甲模様(六角形の模様)のことを意味するのか,複数の亀甲模様(六角形の
模様)が集合して形成された集合体により形成される模様のことを意味するのか,
若しくは図1に示される全体の形状からなる模様を意味するのか明らかでなく,特
許を受けようとする発明が明確となるように特許請求の範囲の記載がされたもので
はないとした。
しかしながら,本件審決の上記認定は,「亀甲模様」の意味を間違えて解釈した
上での認定であって失当である。
「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なっている模
様」を意味するから(「国語大辞典」昭和56年12月10日小学館発行。甲4),
「亀甲模様」との用語から,図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)
との解釈が生ずる余地はない。
「亀甲模様」とは,本願補正前の明細書(甲2。以下,添付の図面を含めて「本
願明細書」という。)の図1のとおり,六角形を形成する輪郭線が互いに隣接する
六角形と共有して構成されたものであって,同図は,正六角形の形状を有する亀甲
模様を表したものである。
(3)補正案に対する説示
なお,本件審決は,本件補正を却下するに当たり,原告作成の平成21年12月
9日付け回答書(甲7)に,特許請求の範囲及び図1の補正案(以下「本件補正案」
という。)が示されているが,同補正案には法的根拠はなく,仮に,同補正案を勘
案し,同補正案の図1を参酌しても,本願発明の「図1の図形模様」との記載が,
どのような図形模様を意味するのか明確ではないとした。
しかしながら,同補正案の図1をみると,これが「正六角形の亀甲模様」である
ことが明白である。
〔被告の主張〕
(1)法17条の2第4項該当性
原告は,図形模様は構造体に描かれているもので,構造体と図形模様とは一体の
ものであるから,図形模様を30度回転させるということは,構造体を30度回転
させることと実質的に同一であるので,変更には当たらず,「構造体」を「図形模
様」に補正することは,明瞭でない記載の釈明に該当すると主張する。
しかしながら,本願明細書【0010】には,図形模様を構造体に施す方法とし
て,「打ち抜きや印刷,刻印,転写,吹き付け」することが記載されており,この
ような手法(特に転写)を採用するに当たっては,図形模様の原板が必要であり,
原板の図形模様を構造体に形成することになる。そして,構造体,例えば「ガラス」
の向きを変えることなく図形模様の向きを変えることも可能となるのであって,両
者が一体という原告の主張は理由がない。
また,本件出願の当初明細書(公開公報は甲2)【0005】及び【0007】
によると,図形模様と構造体とは必ずしも一体的なものではなく,所定の効果を得
るための可動対象として選択的に記載されていたものであって,これらの記載につ
いてのその後の補正によって,図形模様と構造体の性質が出願当初のものから変更
されるものではない。
したがって,30度回転させる対象を,「構造体」から「図形模様」とする本件
補正は,目的とする効果を得るために手段を変更する補正であるということができ,
明瞭でない記載の釈明を目的としたものと認めることができない。
(2)明確性の要件
原告は,「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なっ
た模様」を意味するのであり,「亀甲模様」との用語から図1に示されている個別
の亀甲模様(六角形の模様)との解釈が生ずる余地はないと主張する。
しかしながら,そもそも,本件補正発明には,「図1の図形模様」との記載があ
るものの,「亀甲模様」との記載はなく,原告の主張は失当である。
また,原告は,「亀甲模様」なる用語から「図1に示されている個別の亀甲模様
(六角形の模様)」との解釈が生まれる余地はないと主張するが,原告がそれぞれ
提出した平成19年11月14日付け意見書(乙9)における「本願発明の図形模
様は,本願添付図面の図1に示すように,亀甲模様同士が隙間なく互いに連接され
た状態に構成されているものであって」との記載及び平成20年8月15日付け審
判請求書(乙12)における「本願発明は,図1に示す如く,正六角形の図形がそ
れぞれ接合された状態で構成された図形模様を構造体に施すものであります。」と
の記載からすると,原告において「亀甲模様」の意味が一定しておらず,原告の主
張には理由がない。
(3)本件補正発明の進歩性の有無
さらに,本件補正の目的及び発明の明確性の点を措くとしても,本件審決が「仮
に,当該手続補正が適法なものであり却下されないものであったとしても」として
本件補正発明の進歩性について説示しているとおり,本件補正発明は,引用発明に
基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあって,進歩性を有しな
いから,独立特許要件を欠き,本件補正が却下されるべきことに違いはない。
(4)補正案に対する説示
なお,本件補正案には法的根拠はなく,本件補正案に関する判断は本件審決の結
論に影響しないものである。
2取消事由2(本願発明を拒絶した判断の誤り)について
〔原告の主張〕
(1)一致点の認定の誤りの有無
本件審決は,「亀甲形」とは「亀の甲のように六角形が上下左右に並んだ模様」
のことであるから,引用発明の「六角模様」は,本願発明の「亀甲模様」に相当す
ると認定した。
しかしながら,「亀甲模様」とは,前記1の〔原告の主張〕の(2)のとおり,「亀
甲にかたどった六角形が,上下,左右に連なった模様」であって,「亀甲模様」と
の用語から,「本願明細書の図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)」
との解釈が生ずる余地はなく,「亀甲形模様」と「亀甲模様」とは別異の模様であ
る。そして,本願発明における亀甲模様を重ね合わせてできる模様は,多数の形状
のものが有機的に組み合わされて繊細な模様(曼荼羅模様)を生起させることがで
きるものであって,引用発明のような比較的単純なものではない。
したがって,本願発明と引用発明とは,亀甲模様を施した構造体に,同じ亀甲模
様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成
されてなる物品との点で一致するとの認定は誤りといわざるを得ない。
(2)相違点の判断の誤りの有無
ア透過部について
本件審決は,本願発明と引用発明との相違点の検討において,引用発明の透明板
(1a),(1b)に施された隣り合う六角模様により形成される部分は透過部で
あるということができるから,引用発明の透明板(1a),(1b)は,亀甲模様
を施した透過部を有する構造体であるとした。そして,本願発明の「亀甲模様」自
体が「透過部」であることにつき,引用発明において,そのモアレ効果を考慮しつ
つ六角模様の輪郭線内部の色彩や透過性を適宜変更することは,当業者が適宜なし
得る設計的事項にすぎず,相違点に係る事項は,当業者であれば想到することが容
易であるとした。
しかしながら,引用発明において「白抜き模様」としたとしても,その模様は依
然として「亀甲形の模様」に変わりはなく,本願発明の「亀甲模様」とは別異のも
のである。そして,本願発明のように,亀甲模様とその部分が透過部であることと
の組合せによって,初めて繊細な模様を生起することができるのである。
イ作用効果について
本件審決は,本願発明が奏する作用効果は,引用発明から当業者が予測できる程
度のものであって,格別のものではないとした。
しかしながら,本願明細書の図1に示す正六角形の亀甲模様を重ね合わせた場合,
描かれる模様は8種類の形状の図形から構成され,更に柄数も85個から構成され
ていることから極めて繊細な模様を得ることができる。他方,引用発明のように,
正六角形を「亀甲形」に配列した模様を重ね合わせても,6種類の形状の図形から
しか構成されず,また,柄数も42個にすぎず,極めて大柄の模様しか得ることが
できない。
このような本願発明の極めて繊細な模様が得られるという優れた技術的効果は,
引用発明から容易に想到し得るものではない。
本願発明の「亀甲模様」は,「エネルギー最小消費で最短の軌道を通り,最大の
効果を得る」最小原理を基盤として高度の最適解を追求した図形である。自然の成
り立ちは,この最小原理を基盤とした無駄のない設計がされている。
本願発明は,自然法則に最も近い構造からなるもので,4の数を基盤とした世界
の曼荼羅とは異なり,6を基盤とした全てを内包する新しい高次曼荼羅模様を容易
に作図することを可能としたものである。数字では「1や9を中心とする最高位概
念」が従来文献にあるが,あまねく内包するものには中心も下位・上位もないが全
てが少しずつ異なった図形が連なって,どのような形もその中に内在することがで
きるものである。平等の形の図形は捉われたところがなく,無端の円環が明確に現
れて,近代科学ではナノチューブに見られるものである。これは,自然の形が偶然
現れたもので,究極の構造といわれた60個のカーボンが集まる「フラーレン」よ
り次元が高いものである。
〔被告の主張〕
(1)一致点の認定の誤りの有無
「亀甲模様」とは,「亀の甲羅を図案化した六角形の文様。めでたい印として古
くから単独・連続で使われる。」(「日本語大辞典」平成元年11月6日講談社発
行。乙13)との意味であり,六角形が一定のピッチ幅で連続している場合も含む
模様であるから,引用発明の「六角模様」は,亀甲模様であるといえる。
したがって,引用発明の「六角模様」は,本願発明の「亀甲模様」に相当する。
(2)相違点についての判断の誤りの有無
ア透過部について
引用発明の模様は,本願発明の「亀甲模様」に相当するものであるから,これを
否定することを前提とする原告の主張は失当といわざるを得ない。
なお,原告も,本件訴訟において,「亀甲模様の輪郭線(境界部分)にあっては,
目的とする物品によってその幅を適宜選択すれば良いだけのことである。」と主張
しており,本願発明の亀甲模様について,六角形同士が輪郭線(境界部分)により
一定幅離れていてもよく,亀甲模様の輪郭線(境界部分),すなわち六角形のピッ
チ幅については,設定的事項であることを認めている。
イ作用効果について
特定の模様を施した2つの構造体を重ねて得られる図柄の繊細さが,構造体に施
す模様や構造体同士のずれ幅(あるいは回転角度)などに依存することは技術常識
であり,構造体に施す模様のピッチを小さくしたり,模様自体を細かくすることで,
構造体を重ねたときに,より繊細な図柄が得られることは,当業者が予測可能な程
度のものであり,本願発明が奏する作用効果は,引用発明から当業者が予測できる
程度のものであって,格別のものということはできない。
第4当裁判所の判断
1取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について
(1)本件補正のうち請求項1についての補正は,前記のとおり,①「亀甲模様」
を「図1の図形模様」とするとともに,②「同じ亀甲模様を施した透過部を有する
構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて」を「図1の図
形模様を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した,透過
部を有する構造体とを間隙を設けて重ね合わせて」とするものである。
(2)原告は,上記(1)②の補正部分につき,図形模様と構造体とは一体のもので
あって,図形模様を30度回転させるということは,構造体を30度回転させるこ
とと実質的に同一であるので,変更には当たらないとした上,「構造体」を「図形
模様」に補正することは,図柄の組合せ状態を明確にしたものであって,明瞭でな
い記載の釈明に該当するものであると主張する。
(3)しかしながら,法17条の2第4項は,拒絶査定不服審判を請求する場合に
おいて,その審判の請求と同時にする特許請求の範囲についてする補正は,同項1
号ないし4号に掲げる事項を目的とするものに限ると規定しているのであって,明
瞭でない記載の釈明として補正が許されるのは,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に
示す事項についてするものに限られるところ(法17条の2第4項4号),平成2
0年7月4日付け拒絶査定(乙11)の理由となる同19年10月1日付け拒絶理
由通知(乙7)は,引用文献との関係で進歩性の欠如を指摘するものであって,上
記(1)②の補正部分の補正前の規定について指摘するものではなく,同部分の補正は,
拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものではないから,明瞭で
ない記載の釈明に該当するということはできない。
また,上記(1)②の補正部分は,法17条の2第4項1号(請求項の削除),2号
(特許請求の範囲の減縮)及び3号(誤記の訂正)のいずれの事項に該当するもの
でもない。
(4)したがって,上記(1)①の補正部分が法36条6項2号所定の明確性の要件
に欠けるとした本件審決の認定判断に誤りを認め得るものであったとしても,本件
補正の目的は法17条の2第4項各号のいずれにも該当しないとした本件審決の判
断を左右するものではなく,本件補正を不適法なものとして却下すべきとした本件
審決の結論はこれを是認することができる。
(5)なお,原告は,本件審決が,本件補正案の図1を参酌しても,本願発明の「図
1の図形模様」との記載が,どのような図形模様を意味するのか明確でないとした
ことを非難するが,補正案の提出は補正ではないから,この点に関する原告の主張
は失当である。
2取消事由2(本願発明を拒絶した判断の誤り)について
(1)引用発明の内容
ア引用例の記載によると,引用発明は,透明又は半透明板に適当な幾何学模様
を多数形成し,該板の少なくとも2枚を重ね合わせて,その各板を相対的に移動さ
せてモアレ模様を表出させるべく構成したことを特徴とする装飾板であって,引用
例添付の下記第1図のとおり,透明板の少なくとも一方の外表面に,六角模様を縦
横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成し,これらの2枚の透明板(1a)及
び(1b)を適宜隙間をあけて対向状に重ね合わせるとともに,一方の透明板を他
方の透明版に対して回動可能に支持させ,透明板(1a)及び(1b)がその各六
角模様が互いに重なり合うように対向位置させた状態から一方の透明板(1a)を
他方の板(1b)に対して約30度回動させたときには,回動中心地域及び周辺地
域に小柄の花柄モアレ模様が多数表出されるものである。
イ以上によると,引用発明は,「六角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正
しく多数施した透明板(1a)に,同じ六角模様を施した透明板(1b)を角度を
30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成されてなる装飾板」と認め
ることができる。
(2)一致点の認定の誤りの有無
ア原告は,本件審決が,「亀甲形」とは「亀の甲のように六角形が上下左右に
並んだ模様」のことであるから,引用発明の「六角模様」は,本願発明の「亀甲模
様」に相当するとしたことにつき,「亀甲模様」とは,「亀甲にかたどった六角形
が,上下,左右に連なった模様」であるから,「亀甲形模様」と「亀甲模様」とは
別異の模様であるとして,本件審決の一致点の認定には誤りがあると主張する。
イしかしながら,上記(1)のとおり,引用発明は,その第1図に示すように,透
明板の少なくとも一方の外表面に,六角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正し
く多数形成したものであって,六角模様が適宜の間隔を置いて,上下,左右に連な
っているものであるところ,個別の六角模様相互の間隔については,引用例も本願
発明も特定しているものではないから,この点については適宜の設計事項というこ
とができ,引用発明における「六角模様を施した」ことは,本願発明における「亀
甲模様を施した」ことに相当するということができる。
ウこの点について,原告は,甲4を引用し,「亀甲模様」とは,「亀甲にかた
どった六角形が,上下,左右に連なった模様」であるから,「亀甲模様」との用語
から,本願明細書の図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)との解釈
が生ずる余地はなく,「亀甲形模様」と「亀甲模様」とは別異の模様であると主張
する。
しかしながら,上記のとおり,引用発明も,六角模様が上下,左右に連なってい
るものを含むものであって,原告の主張は失当といわざるを得ない。
また,原告は,本願発明における亀甲模様を重ね合わせてできる模様は,多数の
形状のものが有機的に組み合わされて繊細な模様(曼荼羅模様)を生起させること
ができるのであって,引用発明のような比較的単純なものではないと主張する。
しかしながら,本願発明に係る特許請求の範囲の記載による限り,これが多数の
形状のものが有機的に組み合わされて繊細な模様(曼荼羅模様)を生起させるもの
に限定されるものであるとみることができない上に,引用発明においても,六角模
様を規則正しく多数施す際,個別の六角模様の輪郭を細くしたり,個別の六角模様
同士の間隔を適宜調整したりすることによって,原告が主張するような本願発明に
おける繊細な模様を作り出すことができるものであり,引用発明と比較して本願発
明が繊細な模様を生起させるものであるとする原告の主張は採用することができな
い。
エ以上によると,本願発明と上記(1)のとおりに認定される引用発明との一致点
について,前記第2の3(2)イのとおり,「亀甲模様を施した,構造体に,同じ亀甲
模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構
成されてなる物品」とした本件審決に誤りはない。
(3)相違点についての判断の誤りの有無
ア透過部について
原告は,本件審決が,本願発明の「亀甲模様」自体が「透過部」であることにつ
いて,引用発明において,そのモアレ効果を考慮しつつ六角模様の輪郭線内部の色
彩や透過性を適宜変更することは,当業者が適宜なし得る設計的事項であるとした
ことにつき,引用発明の模様は「亀甲形の模様」であって,本願発明の「亀甲模様」
とは別異のものであるから,本願発明のように,亀甲模様とその部分が透過部であ
ることとの組合せによって生起される模様とすることができないと主張する。
しかしながら,前記(2)のとおり,本願発明と引用発明とのいずれも,六角(亀甲)
模様が上下,左右に連なっているものであって,その六角模様が適宜の間隔を置い
ている引用発明においても,その間隔のない状態にすることは予定されているから,
そのような引用発明の模様が,本願発明の模様とは異なるとの原告の上記主張は理
由がない。
イ作用効果について
原告は,本願発明が奏する作用効果は,引用発明から当業者が予測できないもの
であるなどと主張する。
しかしながら,引用発明も,本願発明との一致点のとおり,「亀甲模様を施した,
構造体に,同じ亀甲模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設
けて重ね合わせて構成されてなる物品」であり,引用発明において,六角(亀甲)
模様を等間隔をあけて規則正しく多数施した透明板に,同じく六角模様を施した透
明板を角度を30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成するにおいて,
六角模様を規則正しく多数施す際,個別の六角模様の輪郭を細くしたり,個別の六
角模様同士の間隔を適宜調整したりすることによって,原告が主張するような本願
発明における繊細な模様を作り出すことができるものであるから,本願発明が奏す
る作用効果も,結局のところ,引用発明から当業者が容易に予測できるものといわ
ざるを得ず,原告の主張を採用することはできない。
3結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求
は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官本多知成
裁判官荒井章光

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我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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