弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人上野開治の上告理由第一点について。
 建物所有のための土地賃貸借においては、賃借人が何人なるかにより使用収益の
方法に必ずしも大きな差異を生ずるものでないということは、一般論として所論の
とおりである。しかし、この故に、建物その他地上物件の譲渡に伴い敷地賃借権の
譲渡をすることは、原則として背信行為にならないと論断することはできない。け
だし、転貸又は賃借権の譲渡が背信行為に当らないと認むべき特段の事情のあると
きには、民法六一二条の解除はできないものと解すべきことは当裁判所の判例とす
るところであるが(昭和二五年(オ)第一四〇号、同二八年九月二五日第二小法廷
判決、最高裁民事判例集七巻九七九頁等)、使用収益の方法に大差なければ背信行
為に当らないと解することは許されないからである。右判例が「特段の事情」を必
要としているのは、使用収益の方法に大差あると否とを問わず、およそ転貸又は賃
借権譲渡は一応背信性あるが故に民法六一二条の解除原因になつているのであり、
それが已むを得ない事情にいでた場合或は少くとも社会通念上恕すべき事情ありと
認められる場合にはじめて背信性が失われると解しているからにほかならない。所
論は、以上と異る独自の見解であつて採用し難い。(なお、所論は借地権譲渡につ
き黙認があるとも主張するが、これは単なる事実認定の非難にすぎない。)
 同第二点について。
 原判示の事実関係のもとでは、本件明渡請求を以て権利乱用と認め難いとした原
審の判断は正当であつて、論旨は理由がない。
 同第三点について。
 借地法一〇条による建物等買取請求権の行使によりはじめて敷地賃貸借は目的を
失つて消滅するものと解すべきであるから(大審院判決昭和九年(オ)第四六二号、
同年一〇月一八日、民集一三巻一九三二頁)、右行使以前の期間については貸主は
特段の事情のないかぎり賃料請求権を失うものではないこと所論のとおりである。
しかし、単に賃料請求権を有するというだけで、その間賃料相当の損害を生じない
とはいい難い。貸主が現に右賃料の支払を受けた場合は格別、然らざるかぎり、無
断転借人(又は譲受人)に対し賃料相当の損害金を請求するを妨げないものと解す
べきである。(大審院判決昭和六年(オ)第一四六二号、同七年一月二六日、民集
一一巻一六九頁、同昭和一三年(オ)第一七八〇号、同一四年八月二四日、民集一
八巻八七七頁、各参照。)
 なお、論旨は右相当賃料は、借地人たる訴外Dモー夕ースの支払うべき坪当り月
金二円と認むべき旨主張するけれども、原判示昭和二五年四月一日の本件借地権譲
渡の後である同年七月一一日以降地代家賃統制令の改正により本件土地は賃料の統
制を受けざるに至つたこと原判示の如くなる以上、その後の相当賃料を判定するに
当り原審が右約定賃料に拠らず原判示の証拠(鑑定)によつてこれを原判示の如く
認定したのはなんら違法ではなく、この点の論旨も理由がない。
 同第四点について。
 建物買取請求権を行使した後は、買取代金の支払あるまで右建物の引渡を拒むこ
とができるけれども、右建物の占有によりその敷地をも占有するかぎり、敷地占有
に基く不当利得として敷地の賃料相当額を返還すべき義務あることは、大審院の判
例とするところであり(昭和一〇年(オ)第二六七〇号、同一元年五月二六日、民
集一五巻九九八頁)、いまこれを変更する要を見ない。されば、これと相容れない
所論は採用し得ない。
 その余の論旨は、原審が適法にした本件建物の時価及び相当賃料の認定を非難す
るに帰着するものであつて、これまた採用の限りでない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛