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平成13年(ネ)第2876号 特許権確認等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所
平成11年(ワ)第10306号)(平成14年1月21日口頭弁論終結)
判         決
      控訴人       フドウ建研株式会社
   訴訟代理人弁護士    上 村 正 二
       同           石 葉 泰 久
       同石 川 秀 樹
       同           松 村   武
      被控訴人       株式会社リタ総合企画
      訴訟代理人弁護士    永 野 周 志
主         文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審における訴え変更後の請求を棄却する。
当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は、控訴人に対し、別紙目録1記載の各特許権の共有持分2分の
1について、持分移転登録手続をせよ(当審における訴え変更後の請求)。
(3) 控訴人が、別紙目録2記載の特許を受ける権利につき、共有持分2分の1
を有することを確認する。
(4) 被控訴人は、控訴人に対し、7500万円及びこれに対する平成10年1
2月29日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(5) 訴訟費用は、第1、2審を通じ、被控訴人の負担とする。
(6) 仮執行の宣言
 2 被控訴人
   主文と同旨
第2 事案の概要
 本件は、控訴人が、別紙目録1及び2記載の各発明について、被控訴人との
共同発明であるか、又は被控訴人との間で特許を受ける権利を各2分の1の割合の
共有とする旨合意したとして、当該特許を受ける権利につき共有持分2分の1の確
認を求めるとともに、上記各発明等の実施料として被控訴人が受領した金員の2分
の1について支払を求めた事案であるところ、上記各発明のうち、別紙目録1記載
の各発明については、その特許権の設定登録がされたため、当審において、当該特
許を受ける権利の共有持分2分の1の確認請求に換え、特許を受けた当該発明に係
る特許権(別紙目録1記載の各特許権)の共有持分2分の1の移転登録手続請求に
訴えの交換的変更をしたものである。
 原判決は、上記各発明について、控訴人及び被控訴人の共同発明であると
も、控訴人が被控訴人との間で特許を受ける権利を各2分の1の割合の共有とする
旨合意したとも認められないとして、控訴人の請求を棄却した。
  本件の当事者間に争いのない事実等、争点及び争点についての当事者の主張
は、次のとおり補正、付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の1頁25行目な
いし28頁13行目のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決の補正
 (1) 原判決2頁5行目の「第1」を「第3」に、4頁6行目の「第2」を「第
4」に、15行目「第3」を「第5」に改める。
 (2) 同4頁9行目及び17行目の「各特許を受ける権利」並びに23頁22行
目の「持分」をいずれも「ポカラ十字ブロック及びポカラBに係る特許権の共有持
分2分の1について移転登録手続請求権を有するか、また、ポカラDに係る特許を
受ける権利」に改める。
 2 控訴人の当審における主張
  (1) 原判決は、Aが、初めてBと面談した平成9年3月14日ころ、Bに対
し、後にポカラAとなる中空部分が球形の中空コンクリートブロックを提案したと
認定するが、誤りである。中空部分を丸い球状にするという発想は、Aの提案した
コンクリートブロックとは発想を異にしており、同月18日、Bが発案してAに提
案したものである(B作成の報告・打合記録[甲第9号証])。そして、これによ
り、ポカラAからポカラJに至る各発明とその事業化が可能となった。
  (2) 平成9年3月24日ころ、A、B、Cらの間で共同開発の合意がされた
が、その検討内容は、風船方式によるポカラAの発明に限定されるものではなかっ
た。このことは、甲第9号証にポカラAの製造方法について何ら記載がないこと、
B作成の発明届出書(甲第11号証)の発案の構成欄に「①製品の発案(中空PC
ブロックの形状)」との記載があることからも明らかである。また、ポカラAの特
許出願の願書に添付した明細書(甲第2号証添付)の特許請求の範囲【請求項1】
は、コンクリートブロックの中空部分の形状を球形に限定しておらず、【請求項
3】【請求項4】において、中空コンクリートブロックを用いた構造物の基本構造
を記載するのみで、その具体的用途について記載はない。ポカラAはもとより、ポ
カラ十字ブロック、ポカラB及びポカラDの発明も、上記共同開発の合意に基づ
く、控訴人と被控訴人による一連の共同開発行為の中で行われたものである。
  (3) 原判決は、ポカラBの試験体の製造について、AがBに対し、既にあるポ
カラAの枠体を用いて穴の部分に発泡スチロールを入れる方法を指示したと認定す
るが、この方法によるポカラBの型枠は作られておらず、誤りである。ポカラBの
試験体は、Bが独自に開発したものであり、被控訴人はこれに関与していない。ポ
カラBの発明は、控訴人と被控訴人の共同開発の合意に基づいて、Bが独自に開発
したものであることは明らかである。被控訴人は、ポカラBの出願に対し拒絶理由
通知が発せられたことから、Bが発明したポカラBの型枠と同様のものに補正して
特許を受けている。このことは、BがポカラBの発明に関与していたことの証左で
ある。
  (4) ポカラ十字ブロックの特許出願において、Bは発明者として記載されてい
る。モルタル等の充填材を上から注入可能な充填孔並びに充填孔に流露を連通させ
て受け座の表面に開口する放出孔及びブロックの中心を通って互いに90度の角度
を持つ関係とした3本の軸線上の貫通孔の設置について、Aが発明したことを示す
証拠はない。拒絶理由通知に対する補正において、充填孔、開放口を用いてモルタ
ル等の充填材を供給するなどの構成が採られたが、この構成は、控訴人がポカラ十
字ブロックが解決しようとする技術的課題を解決するものとして主張したのであ
る。
  (5) 原判決は、ポカラDに関し、平成9年3月14日ころの上記面談の際、中
空コンクリートブロックを貯水槽に使用するアイデアが話し合われたと認定する
が、誤りである。被控訴人の控訴人に対する面談の要請は、D土木事務所発注の道
路拡張工事の設計を行ったのが契機であり、ポカラDのアイデアの主要部分は、同
月24日の上記開発会議によって開発されたものであって、Bに共同開発の事実が
認められる。
  (6) 原判決は、本件覚書7条について、単に相手方への通知と協議に応ずる義
務を定めたものにすぎないと認定するが、控訴人と被控訴人による共同開発の合意
の対象は、球形の中空部を作るポカラ開発のほか、他の考え得るブロックの構造、
中空コンクリートブロックの用途であるから、この合意の対象に含まれる新たな発
明に対する権利は、当然に、控訴人と被控訴人の持分各2分の1の共有になる。
  (7) 本件訴訟が原審係属中である平成11年6月18日、ポカラ十字ブロック
及びポカラBは、被控訴人を特許権者とする特許権の設定登録がされたが、真の権
利者の特許出願後に無権利者が無権限で出願名義人変更届を行ったために無権利者
を特許権の共有者とする登録がされた場合において、真の権利者が当該無権利者に
対し特許権持分移転登録手続請求権を有することは、最高裁平成13年6月12日
第三小法廷判決・判例時報1753号119頁のとおりであり、本件においても、
上記各発明に係る特許権の共有持分2分の1について、真の権利者である控訴人か
ら被控訴人に対する移転登録手続請求が認められるべきである。ポカラ十字ブロッ
ク及びポカラBは、出願後に補正がされているが、これら発明と補正を経て特許さ
れた発明とは同一性があるから、控訴人の上記移転登録手続請求権に何ら消長を来
さない。
 3 被控訴人の当審における主張
  (1) 平成9年3月当時、形状が立方体等である中空のコンクリート製ブロック
自体も、中空コンクリートブロックを組み合わせて人工地盤や貯水施設の構築等の
土木工事に用いることも、既に公知であった。Aは、同工法の経済性に着目し、構
造用中空コンクリートブロック組立工法を全国で広く事業展開することを計画して
いたところ、控訴人が中空コンクリートブロックを製造することができるとの情報
を入手したので、同月10日ころ、その製造が可能かどうかについて、控訴人九州
支店のE土木営業課長に打診した。そのころ、AがBに対して話したことは、中空
コンクリートブロックの製造が可能かどうかであって、同ブロックの中空の形成技
術の開発や、その共同開発の提案ではない。
  (2) 平成9年3月当時における、AのBに対する話の内容が上記のようなもの
であったことは、以下のとおり、その後の両名の行動からも推認することができ
る。
    同年8月7日にF株式会社で行われた打合せがポカラAについてのもので
あることは、B及びAが記載内容を確認した甲第29号証の同月7日欄の記載から
明らかである。控訴人は、BがポカラBの開発に関与したのは、分割中子の技術的
要素部分であると主張する一方、その発明時期を同月15日と主張するから、発明
前である同月7日にされた上記打合せは、Bが分割中子を発明した根拠とはなり得
ない。上記打合せがポカラAのものであったこと、Bが分割中子の発案を始めたの
が同月27、28日ころであり、ポカラBをAが発案したことは、B自身が原審で
証言しているところである。仮に、上記打合せがポカラBのものであったとするな
らば、同月30日ころ、BがGを遠方から呼び出してポカラB製造用型枠の製造を
打診する必要はないはずである。
    同月7日にF株式会社で打合せが行われたのは、同社がポカラA製造用型
枠製造の管理窓口となっていたためであって、最終的にH株式会社が上記型枠を製
造したからといって、上記打合せがポカラBのためのものであったということはで
きない。
    ポカラBの特許出願時において、既に分割中子は公知であり、同発明にお
いて分割中子の補正がされていることは、Bがこれを発明したことの根拠とはなり
得ない。
  (3) 控訴人の引用する最高裁判例は、すべての冒認出願について特許権持分移
転登録手続請求権を認める趣旨のものではない。本件は、①真の権利者が特許出願
後に、無権利者が無権限で出願名義人変更届を行ったために、無権利者を特許権の
共有者とする特許権の設定登録がされた場合であって、かつ、②特許出願された当
初の発明と特許権設定登録がされた発明とは同一であるなどの点で、同判例とは事
案を異にする。また、ポカラ十字ブロック及びポカラBは、出願後に明細書の特許
請求の範囲が補正されている点でも、同判例とは事案を異にする。
  (4) 控訴人が平成14年1月11日にした甲第77号証(B作成の陳述書)の
証拠申出は、時機に後れた攻撃防御方法の提出として、民事訴訟法157条1項に
より却下されるべきである。すなわち、本件の争点はBが本件各発明を共同発明し
たかどうかであること、甲第77号証は本件の上記争点について直ちに提出可能な
証拠であること、当審における審理が専ら発明の同一性であったこと、裁判所は第
2回口頭弁論期日に弁論を終結させる意向を示したにもかかわらず、発明の同一性
について主張を補足したいとの控訴人の希望により第3回口頭弁論期日が指定され
たこと、甲第77号証はBの証人尋問に代替させようとするものであり、被控訴人
がこれを弾劾しようとすれば反対尋問により訴訟の遅延を招来し、遅延を回避しよ
うとすれば被控訴人は反対尋問権を放棄せざるを得ないこと等に照らすと、甲第7
7号証の証拠申出は却下されるべきである。
第3 当裁判所の判断
   当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断するが、その理由は、次
のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の28頁15行目ないし43
頁2行目のとおりであるから、これを引用する。
 1 控訴人の当審における主張について
  (1) 原判決は、Aが、初めてBと面談した平成9年3月14日ころ、Bに対
し、後にポカラAとなる中空部分が球形の中空コンクリートブロックを提案したと
認定するところ、控訴人は、中空部分を丸い球状にするという発想は、Aの提案し
たコンクリートブロックとは発想を異にしており、同月18日、Bが発案してAに
提案したものであること、また、これにより、ポカラAからポカラJに至る各発明
とその事業化が可能となったことを主張する。
    しかしながら、控訴人主張の当時、A、Bらの間で、後にポカラAとなる
中空部分が球形の中空コンクリートブロックについて提案、検討がされていたこと
は、原判決も認定するところであるが、これにより、ポカラAを除く控訴人主張の
上記各発明とその事業化が可能となったとの控訴人主張事実を認めることはでき
ず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
  (2) 控訴人は、平成9年3月24日ころ、A、B、Cらの間で共同開発の合意
がされたが、その検討内容は、風船方式によるポカラAの発明に限定されるもので
はなく、ポカラAはもとより、ポカラ十字ブロック、ポカラB及びポカラDの発明
も、上記共同開発の合意に基づく、控訴人と被控訴人による一連の共同開発行為の
中で行われたものであると主張する。
    確かに、原判決も認定するとおり、ポカラAについては、控訴人と被控訴
人が共同開発を進め、同年6月17日、共同出願人として特許出願をした経緯はあ
るが、ポカラ十字ブロック、ポカラB及びポカラDについては、Bに共同発明者と
いえるだけの実質的な関与があったということはできないから、ポカラAを除く上
記各発明が、共同開発の合意に基づく控訴人と被控訴人による一連の共同開発行為
の中で行われたとしても、Bが上記各発明の共同発明者であるとする控訴人の主張
は採用することができない。なお、控訴人が本件覚書に基づきポカラAを除く上記
各発明に係る権利を有するとも認められないことは、原判決の判示するとおりであ
る。
  (3) 原判決は、ポカラBの試験体の製造について、AがBに対し、既にあるポ
カラAの枠体を用いて穴の部分に発泡スチロールを入れる方法を指示したと認定す
るところ、控訴人は、この方法によるポカラBの型枠は作られていないとか、ポカ
ラBの発明は、控訴人と被控訴人の共同開発の合意に基づいて、Bが独自に開発し
たものであると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
    また、控訴人は、被控訴人が拒絶理由通知を受け、Bが発明したポカラB
の型枠と同様のものに補正をして特許を受けており、このことは、BがポカラBの
発明に関与していたことの証左であると主張する。しかし、BがポカラBの発明に
関与していたとしても、発明及びその出願手続に関与しただけでは、当該発明の共
同発明者であると認めることはできないのであり、かつ、手続補正書(甲第71号
証)によれば、上記補正は、平成11年4月6日に被控訴人によって行われたもの
であることが明らかであって、Bがこれに関与したとも、同人の意向に沿って同補
正がされたとも考え難いところである。Bの発明に対する具体的な関与の内容を認
定することができない以上、上記補正がされたことは、同人がポカラBの共同発明
者であることを推認させるに足りるものではない。
  (4) 控訴人は、ポカラ十字ブロックの特許出願の願書において、Bが発明者と
して記載されていることを主張する。しかしながら、上記のとおり、上記発明にお
けるBの具体的な関与の程度が不明であること、ポカラ十字ブロックとその余の上
記各発明とでBが関与した内容に顕著な差異があったとも認められないのに、ポカ
ラ十字ブロックの特許出願においてのみ、Bが発明者として記載されていることな
どに照らすと、ポカラ十字ブロックの特許出願の願書における発明者の記載から、
直ちに、Bがその発明者であると推認することはできない。
    また、控訴人は、ポカラ十字ブロックについて、充填孔、貫通孔の設置等
について、Aが発明したことを示す証拠はないと主張する。しかしながら、コンク
リートブロック同士の接合に充填材を使用しブロック間の隙間を充填、接合するこ
とは、ポカラ十字ブロックの願書に添付した明細書(甲第3号証)に従来技術とし
て記載された(4頁15行目~19行目)、当業者であるAにとっても周知の技術
事項であり、これをポカラ十字ブロックに適用するに際して上記充填孔及び貫通孔
の構成を採用することは、Aにとっても着想し得た可能性が少なくないと認められ
る。そうすると、控訴人の上記主張の点は、上記のとおり、ポカラ十字ブロックに
ついて、Bが共同発明者であるとは認められないとする上記認定を左右するもので
はない。
  (5) 控訴人は、ポカラDに関し、平成9年3月14日ころの面談の際に中空コ
ンクリートブロックを貯水槽に使用するアイデアが話し合われたとする原判決の認
定も非難するが、仮に、この点の事実関係が控訴人主張のとおりであったとして
も、Bが上記発明の共同発明者であることを何ら推認させるものではない。
  (6) 控訴人は、本件覚書7条について、単に相手方への通知と協議に応ずる義
務を定めたものにすぎないとする原判決の認定を非難し、控訴人と被控訴人による
共同開発の合意の対象は、球形の中空部を作るポカラ開発のほか、他の考え得るブ
ロックの構造、中空コンクリートブロックの用途であるから、この合意の対象に含
まれる新たな発明に対する権利は、当然に、控訴人と被控訴人の持分各2分の1の
共有になると主張する。
    そこで、本件覚書(甲第1号証)の記載を検討するに、本件覚書は、「本
発明」を「特許出願番号:特願平9-159515号」などとしてポカラAに特定
した上、1条において、「本発明」について特許を受ける権利を控訴人及び被控訴
人の共有とすることを明記し、7条において、本発明の改良について特許又は実用
新案登録の出願をしようとする場合に、あらかじめ一方の当事者にその内容を通知
し、この場合の取り扱いについて控訴人及び被控訴人が協議の上決定することを明
記している。そうすると、本件覚書は、ポカラAとその余の発明とを明確に区別し
て記載した上、1条において、ポカラAの特許を控訴人と被控訴人の共有とし、7
条において、その改良発明について通知義務及び協議義務を定めていることが明ら
かである。
    加えて、本件覚書が作成された平成9年8月19日に先立って、同年7月
17日、ポカラ十字ブロックが既に被控訴人により特許出願されており、このこと
が控訴人にも知らされたことを契機に本件覚書の締結に至ったことは原判決の認定
するとおりであるから、既にポカラ十字ブロックの特許出願が被控訴人単独でされ
たことを知りながら、本件覚書においてポカラAのみを「本発明」として共有と明
記している以上、その余の本件各発明に係る権利を控訴人と被控訴人の共有にする
合意がされたと認めることはできない。
  (7) 控訴人は、当審において、控訴人の当審における主張に沿う証拠として甲
第73ないし第77号証を提出する。しかしながら、仮に、上記各発明の共同開発
に控訴人がかかわったとしても、Bに共同発明者といえるだけの実質的な関与がな
ければ、同人がこれらの発明の共同発明者であることを推認することができないこ
とは、上記のとおりである。そうすると、単に上記共同開発の主張に沿うにすぎな
いこれら甲号証は、当審の上記認定を左右するものではない。
    なお、被控訴人は、甲第77号証(B作成の陳述書)の証拠申出が時機に
後れた攻撃防御方法の提出であり却下されるべきであると主張するが、甲第77号
証は当審における控訴人の主張全般を立証するための証拠方法であり、当審におい
てBの証人尋問の申出もされていないことなど本件訴訟の経緯に照らすと、時機に
後れた攻撃防御方法とまでいうことはできない。
  (8) 控訴人は、本件訴訟の原審係属中に、ポカラ十字ブロック及びポカラBに
ついて、被控訴人を特許権者とする特許権の設定登録がされたとして、上記各発明
に係る特許権について、真の権利者である控訴人から被控訴人に対する特許権持分
移転登録手続請求が認められるべきであると主張する。しかしながら、本件におい
ては、控訴人が上記各発明について特許を受ける権利の共有持分2分の1を取得し
たと認めることはできないのであるから、冒認に係る特許出願一般について特許権
持分移転登録手続請求権を認めるべきかどうかなど控訴人引用の判例の趣旨及び上
記各発明と補正を経て特許された発明との同一性の有無について検討するまでもな
く、控訴人の上記主張は採用することができない。
2 結論
以上のとおりであるから、控訴人の特許を受ける権利の持分確認請求及び損
害賠償請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、控訴人の本件控
訴は理由がないからこれを棄却し、控訴人の当審における訴え変更後の請求である
特許権持分移転登録手続請求も理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用
の負担につき、民事訴訟法67条1項本文、61条を適用して、主文のとおり判決
する。
     東京高等裁判所第13民事部
            裁判長裁判官   篠   原   勝   美
               裁判官   長   沢   幸   男
               裁判官   宮   坂   昌   利
(別紙)
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