弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 原告の請求中、管理職選考受験資格の確認を求める訴えを却下する。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告の負担とする。
       事実及び理由
第一 請求
一 原告と被告との間において、原告が平成七年度及び同八年度の管理職選考試験
中、選考種別Aの技術系医化学の受験資格を有することを確認する。
二 被告は原告に対して、金二〇〇万円及びうち金一〇〇万円に対する平成六年三
月一〇日から、うち金一〇〇万円に対する平成七年五月二八日から各完済まで年五
分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
 本件は、大韓民国籍の特別永住者で、被告(東京都)の保健婦である原告が、被
告の管理職選考試験を受験しようとしたが、原告が日本国籍を有しないことを理由
に被告が申込書の受取りを拒否したことなどから、右試験を受験することができな
かったため、原告が右試験の受験資格の確認と慰謝料の支払を求めた事件である。
一 前提となる事実(以下の事実は、当事者間に争いがないか、各項末尾の証拠に
よって認められる事実である。)
1 原告の経歴等
(一) 原告は、昭和二五年に岩手県で出生した大韓民国籍の外国人であり、「日
本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例
法」(平成三年法律第七一号)に定める特別永住者である。
(二) 原告は、昭和四五年に准看護婦資格、昭和六一年に看護婦資格、昭和六三
年に保健婦資格をそれぞれ取得し、同年四月に被告に保健婦として採用された。被
告は昭和六一年に保健婦の採用の要件からいわゆる国籍条項を撤廃していたが、原
告は、外国人としては初めて被告に保健婦として採用された者であった。(原告本
人)
(三) 原告は、昭和六三年四月に東京都日野保健所に保健婦として配属され、平
成五年三月まで同所で勤務した。原告は、平成四年一一月に主任試験に合格し、平
成五年四月から主任として東京都八王子保健所西保健相談所に配属され、同所で保
健婦として勤務していた。原告は、平成五年四月から現在まで四級職にある。
2 被告東京都における管理職選考
(一) 東京都人事委員会の「平成六年度管理職選考実施要綱」は、知事、公営企
業管理者、議会議長、代表監査委員、教育委員会、選挙管理委員会、海区漁業調整
委員会又は人事委員会が任命権を有する職員に対する課長級の職への第一次選考に
ついて規定するものであり、原告の受験しようとした選考の種別Aの受験資格につ
いては「別表1の職種の職務に従事する者で、平成七年三月末日現在、四級職にあ
り、かつ、その在職期間が二年以上五年未満の者。ただし、すでにAを三回受験で
きた者は除く。」、受験手続については「受験の申込みは、所属長から申込書の配
付(二月中旬の予定)を受け、必要事項を記入のうえ、平成六年三月一〇日(木)
までに所属長に提出する方法により行う。」とそれぞれ定められ、保健婦は、右別
表1に記載されていた職種の一つであった。また、「平成七年度管理職選考実施要
綱」においては、右と同様の規定が置かれているほか、受験資格に日本国籍を有す
ることが加えられた。(乙四、五号証)
(二) 管理職選考の実施に関しては、東京都人事委員会が実施要綱を定め、知
事、公営企業管理者等の任命権者に事務処理を依頼し、各任命権者がそれぞれの職
場に伝達して人事記録の送付、受験申込みの取次等の事務が行われている(証人
a)。(以下において、被告東京都における右の管理職選考を単に「管理職選考」
ということもある。)
3 管理職選考受験申込書の受取拒否
(一) 原告は、東京都人事委員会が実施する平成六年度管理職選考の種別Aの技
術系医化学を受験することとし、平成六年三月一〇日、申込書を東京都八王子保健
所副所長bに提出しようとしたが、右b副所長は、管理職となれば公権力の行使や
公の意思の形成への参画する職に就くこととなるが、日本国籍を有しない職員はそ
のような職に就くことができないので、原告に受験資格はないとして、右申込書の
受取りを拒否した。このため、原告は、同年五月二二日に実施された筆記考査を受
験することができなかった。
(二) 被告は、平成七年度において、同年度管理職選考実施要綱及び受験申込書
用紙を原告に配付せず、このため、原告は同年五月二八日に実施された筆記考査を
受験することができなかった。
4 被告東京都における管理職
(一) 東京都事案決定規程には、知事の権限に属する事務に係る決定権限の合理
的配分と決定手続を定める(一条)、事案の決定は、当該決定の結果の重大性に応
じ、知事又は出納長若しくは局長、部長若しくは課長が行うものとする(三条)、
右に基づき知事又は出納長若しくは局長、部長若しくは課長の決定すべき事案は、
おおむね同規程の別表に定めるとおりとする(四条)、と定められており、右別表
には、決定事項の種類に応じてそれぞれの職層に属する決定権限の内容・範囲が定
められている(乙三号証)。
(二) 被告における管理職には、右のほかに次長、技監、理事(局長級)、参事
(部長級)、副参事(課長級)等の職がある。こうした管理職は、基本的には、そ
れぞれ決定権限をもっているが、そのほかにも、計画の企画や専門分野の研究を行
うなど、スタッフとして職務を行う決定権限そのものを直接的に有しない管理職員
も若干存するのが実情であった。
ただし、被告においては当該管理職の職種による人事管理は行われておらず、例え
ば医化学の区分で選考に合格して管理職に任用されると、その後の昇任に伴って、
そのまま従来の医化学系の分野にだけ従事するものとは限らず、その他の分野の仕
事にも担当が及んでいくとともに、職員の人事管理事務、事業の進行管理をする事
務等の管理的な事務に就くことがある。なお、被告においては管理職選考試験に合
格すると、候補者名簿に登載され、その数年後、最終的な任用選考を経て管理職に
任用される。(証人a)
二 争点
 本件の主要な争点は、日本国籍を有しない原告が管理職選考試験を受験すること
を拒んだ被告の措置が違法であったか否かである。なお、管理職選考試験の受験資
格を有することの確認を求める訴えの適否も問題となっている。
三 当事者の主張
(原告)
1 法治主義(法律による行政)違反
(一) 被告が、「公務員に関する当然の法理」として、「公権力の行使又は公の
意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには日本国籍を必要とする。」
という漠然とした曖昧な基準で外国人の公務員就任あるいは管理職への就任を制約
することは法治主義(法律による行政)の原則に反する。
 憲法二二条一項の規定する職業選択の自由は、権利の性質上外国人にも保障され
る。もっとも、職業選択の自由はもとより絶対的なものではなく、公共の福祉の見
地から各種の制限が認められることがあるが、その場合でも制限は法律に基づかな
ければならず、右自由が法律によらずに行政により恣意的に制約されれば、これは
法治主義の原則に反し違法となる。
 ところで、現行国家公務員法や地方公務員法には、日本国籍のないことを欠格条
項と定めた規定がなく、またその他の法律によっても一般に日本国籍を有している
ことが、公務員の就任に必要な要件であることを定めた明文規定は存しない。わず
かに外務公務員法七条が、国家公務員法第三八条(欠格条項)に該当する場合の
外、国籍を有しない者は、外務公務員になることができない旨を規定するのみであ
る。
 現在行われている外国人の公務員就任に関する基準は、法律によってではなく行
政機関相互に交わされた「照会」、「回答」(行政実例、行政事例、通達、法制意
見等)によって形成されたものである。このような行政機関内部の「照会」と「回
答」により、国会による論議と批判を経ることなく、「公の権力の行使を担当する
官吏となる権利については国民のみの専有する権利としているのが各国の通例であ
る」とか「公務員に関する当然の法理」といった空漠たる理屈で前述のような制約
基準を形成し、外国人の公務員職への就任を大幅に制限することは、その制限が立
法機関によってつくられた法律によってではなく、行政当局の一方的意思によりな
されてきた点で、法律による行政という憲法の基本に抵触している。
(二) 被告は、公務就任権は憲法一五条の参政権に含まれ、外国人には認められ
ていないから、憲法二二条にも違反しないと主張するが、現在では憲法一五条によ
っても少なくとも地方公務員レベルにおいては公務就任権を原則として認めている
と解すべきである。
(三 )最高裁判所第三小法廷平成七年二月二八日判決(民集四九巻二号六四一
頁)は、外国人の地方参政権については、憲法は何ら禁じておらず、立法政策の問
題であることを明確にしている。地方参政権については、現行の公職選挙法が選挙
権・被選挙権を日本国民に限っているために、法改正が行われない限りは外国人に
は認められないことになるが、公務就任権については、外務公務員等を除けば、法
は何ら制限していないのであって、法律上制限がない以上、外国人の地方自治体の
公務就任権を否定することは、法に基づかずに外国人の人権を制約するものであ
り、法治主義に反して許されない。
2 「公務員に関する当然の法理」の人権制約基準としての不合理性
(一) 職業選択の自由を制限するためには合理的な理由がなければならず、ある
制限につき合理性があるというためには制限の理由が明示され、制限手段が目的達
成との関連において妥当性がなければならない。ところが行政当局の制約基準は、
その理由につき「公務員の当然の法理」とするのみで、その内容が何であるのか全
く示されていない。このような内容のない理由では、その制限の合理性を判断する
ことは到底なしえず、職業選択の自由の制限を正当化することはできない。
 また、「公権力の行使」、「公の意思の形成への参画」との概念は、職業選択の
自由を制約する基準としてはあまりにも包括的かつ抽象的である。このような包括
的・抽象的な基準が行政当局により形成、運用されることは、外国人の公務就任権
が行政当局の全くの恣意により侵害される結果を招来することになり、その内容に
おいても違法を免れない。
(二) 外国人を官吏に任用できるかという問題については、明治四三、四四年こ
ろの文献を見る限り、当時の学者の間でも意見が分かれており、肯定説がむしろ有
力であった。歴史的にみても、明治四二年七月一二日の日韓両国の間で交換された
覚書二条で、日本政府は当時外国人であった韓国人につき、一定の資格を有する韓
国人を日本の裁判所の官吏として任用することを約束しており、これらのことは
「公務員に関する当然の法理」が必ずしも当然なものではなく、政治状況によって
左右される極めて曖昧なものであることを物語っている。
(三) 「公務員に関する当然の法理」の根底には、天皇が主権者とされた旧憲法
下の官吏観がある。「公務員に関する当然の法理」についての戦後初期の公的見解
である昭和二三年八月一七日法務調査意見長官の意見は、公務員には国家に対し無
定量の義務を負うということを前提としている。しかし、このことは、国家公務員
法一〇五条の「職員は、職員としては、法律、命令、規則又は指令による職務を担
当する以外の義務を負わない。」との規定に反するものであり、また、近代的な公
務員労働関係と相容れない。
(四) また、「公務員に関する当然の法理」についての昭和二八年三月二五日付
け内閣総理大臣官房総務課長宛内閣法制局第一部長回答は、たとえ公権力の行使に
当たる公務員であっても、都道府県や市町村の農地委員については外国人にその資
格を認めることは憲法の趣旨に適合すると述べて、公権力の行使であるからといっ
て、すべての場合について外国人は排除されなければならないとは解していない。
なお、右回答は、憲法一五条一項の「固有の権利」とは「奪うべからざる権利」の
意味に解するのが正しく、一般に外国人に対して公務員を選定する権利が認められ
ないのは、直接憲法一五条から引き出される結論ではなく、わが国の主権を維持す
るとともに他国の主権をも尊重しようとする憲法の理念に由来する当然の結論であ
ろうと述べている。このことは、外国人の公務就任権の制限が憲法一五条から導き
出されるという被告の立場を明確に否定している。
(五) 外国人の地方公務員への就任は戦後しばらくの間は何ら問題がないとされ
ていた。外国人を県職員として採用することについて、昭和二四年五月二六日総理
庁自治課長回答は、任命権者において判断すべきものと考えられるとし、昭和二七
年七月三日地方自治庁公務員課長回答は、原則として差し支えないものと解すると
していた。しかし、地方公務員法が施行され、採用試験の公告、選考は人事委員会
で行うこととなり、このころから地方公務員採用試験の募集要綱に国籍条項が登場
し、外国人を一律に排除するようになった。外国人は、「公務員に関する当然の法
理」を理由に事実上長年の間、国家公務員のみならず地方公務員についてもほぼ全
面的に排除されてきたのである。
 しかし、外国人を公務員から排除することは、憲法の国際協調主義に反するもの
であり、また、在日韓国・朝鮮人を中心とする国籍条項撤廃運動から次第に強い批
判を浴びるようになった。このため、国や地方自治体は、外国人に対して就任でき
る公務の門戸を徐々に広げてきたのであるが、このように門戸が徐々に拡大されて
きた事実は逆に「公務員に関する当然の法理」の基準としての曖昧さを物語るもの
である。
(六) 以上のとおり、「公務員に関する当然の法理」は人権制約基準としておよ
そ認められないものであり、「公務員に関する当然の法理」をもって原告の管理職
選考の受験を拒否することは、憲法二二条一項の規定する職業選択の自由を侵害
し、また憲法一三条が保障する人間としての幸福を追求する権利を侵害するもので
ある。さらに、前記のとおり「公務員に関する当然の法理」といった空漠たる論理
で国籍を唯一の理由に、外国人の公務員就任あるいは管理職への就任を否定するこ
とは不合理な差別であり、憲法一四条に違反する。
 また、原告は、管理職に就任させることを求めているのではなく、管理職選考を
受験させることを求めているに過ぎず、「公務員に関する当然の法理」により原告
の管理職選考の受験資格までをも奪うことは、この点からも不当である。
3 特別永住者であることの考慮
(一) 原告のような特別永住者は、その生活実態は日本国民と全く変わらないの
であって、日本社会とのかかわりの程度を考慮することなく「公務員に関する当然
の法理」により外国人を一律に公務員就任あるいは管理職への就任から排除するこ
とはその合理性を認めることはできない。
(二) 在日韓国・朝鮮人特別永住者数は、平成四年末で五八万五一七〇人である
が、彼らは日本の朝鮮に対する植民地支配の結果日本に居住するに至った人々及び
その子孫である。彼らの約九〇パーセントは、日本出生の二、三世以下の世代であ
る。彼らは日本で生まれ育ち、日本で学校を卒業し、日本で職を得て、日本で死ん
でいく人々であり、生活の本拠は完全に日本にある。彼らにとって日本での職業選
択の自由の保障が切実であることは日本国民の場合と全く異ならない。彼らにとっ
ては、日本国籍がないとの形式的理由で、ある分野の職業に就けないとされること
は、日本の地にあって韓国・朝鮮人として生まれたというだけのことで、すべての
人間にとって平等であるべき基本的権利がその分だけ否定されたに等しい。これは
出生を理由に人がもって生まれた能力を発展させる可能性を奪うに等しく、職業選
択の自由が否定されるばかりか、憲法一三条が保障する人間としての幸福追求の権
利が否定されることを意味する。また生活実態が日本国民と変わりないにもかかわ
らず、生まれながらの国籍の違いを理由に日本国民と差別待遇を受ける点で、憲法
一四条が規定する法の下の平等に違反する。
4 労働基準法三条違反
(一) 被告が原告の管理職選考の受験を拒否したことは、原告の在日韓国人とい
うもって生まれた属性を理由にして他の職員に比して不利益な差別的取扱いをなし
たものであり、労働基準法三条が禁止し犯罪として構成している国籍を理由とする
差別的取扱いに該当する。すなわち、本件のように昇任の基準たる選考の受験資格
が同条の規定する「労働条件」に該当することは異論がなく、その受験の機会を国
籍を唯一の理由にして奪うことに合理性がないことは明白である。
(二) 外国人の公務就任権が憲法二二条一項で保障されると解すべきことは前述
したとおりであるが、仮に憲法上外国人には公務就任権が保障されていないとして
も、そのことから直ちに労働基準法三条が犯罪として構成している国籍を理由とす
る差別的取扱いが正当化されるものではない。差別的取扱いが合理的なものという
ためには、原告に管理職選考の受験資格を認めることが憲法に違反し法によって保
護すべき利益に当たらないといえなければならないが、定住外国人の参政権は憲法
の禁止しているものというべきではないから、刑罰法規を一部無効とするような憲
法違反を論ずることは不可能である。
5 地方公務員法違反
(一) 憲法一四条は、「国民」という文言を使用しているが、同条は原則として
外国人にも適用されることは異論がなく、憲法の右条項に由来する地方公務員法一
三条の「全ての国民」には、原告のように地方公務員として採用された外国人も含
まれると解すべきであり、また原告のように日本生まれの在日韓国人にとっては、
少なくとも日本国籍を有しない在日という地位が同条の「社会的」身分に含まれる
と解すべきである。したがって、被告が国籍を理由に管理職選考の受験を拒否する
ことは地方公務員法一三条に違反する。
(二) 地方公務員法一五条は、「職員の任用は、この法律の定めるところによ
り、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基づいて行われなければならな
い。」と規定し、任用行為の一つである昇任の基準に「能力の実証」とは無縁の国
籍を持ち出すのはこの任用の根本基準に明らかに反し、同条に違反する。
(三) 地方公務員法一九条一項は、憲法一四条、地方公務員法一三条を具体化し
たものであり、外国人にも適用されると解すべきである。管理職選考実施要綱(平
成六年度)は、国籍について全く触れておらず、受験資格の公開を規定した地方公
務員法一九条一項に違反するものである。また、右受験資格として職務遂行と無関
係な国籍を要求することは、受験資格につき職務遂行上必要最小限のものであるこ
とを要求している同条二項にも違反する。
6 以上のとおり、原告は、管理職選考試験を受験する権利があり、かつ、管理職
に昇任することができるとの期待を抱いて採用以来誠実に職務を遂行してきた。右
権利の侵害及びこれにより原告が被った精神的苦痛は金二〇〇万円を下らない。
(被告)
1 本案前の答弁(確認の利益の不存在)
 本件確認の訴えは、公法上の法律関係に関する訴訟(行政事件訴訟法四条後
段)、すなわち、いわゆる実質的当事者訴訟であり、行政事件訴訟法は、実質的当
事者訴訟の確認の利益についての規定がないので、民事訴訟の確認の訴えについて
の例によることになる。確認の利益は、原告の権利又は法律的地位に不安が現に存
在し、かつ、その不安を除去する方法として原告被告間でその訴訟物たる権利又は
法律関係の存否の判決をすることが有効・適切である場合に認められる。
 本件確認の訴えにおいて、原告は、管理職選考試験の選考種別Aの技術系医化学
の受験資格を有することの確認を求めているが、前記選考は東京都人事委員会が実
施するものであることに加え、そもそも原告が主張する前記受験資格の確認は、抽
象的に前記選考の受験をなしうる地位の確認を求めるものであって、右の地位は単
に事実上の利益に過ぎないものであるから、権利とは到底いえず、確認の訴えの対
象とはなりえない。したがって、本件確認の訴えは却下されるべきである。
2 管理職選考における国籍要件の適法性
(一) 外国人の公務就任権
(1) 公務員となる権利、すなわち公務就任権については、憲法上、参政権に含
まれるとされ、公務員の選定罷免権(憲法一五条一項)を根拠に国民に対して保障
されるものである。参政権は、自国の主権の保持及び国家的利益の見地から、主権
の保持者である国民に本来的に帰属するものであって、この参政権に含まれる公務
就任権は、日本国籍を有しない者すなわち外国人には認められない。したがってま
た、外国人の職業選択の自由には公務就任権は含まれないというべきである。
 原告は、少なくとも地方公務員レベルにおいては公務就任権を原則として認める
べきと主張するが、地方公務員は、多くの国の機関委任事務を行っているから、外
国人の公務就任権の保障に関して、ことさら国家公務員と地方公務員を区別する合
理的な理由はない。
(2) しかしながら、憲法は一方で国際主義の見地に立っており、この立場か
ら、一概に外国人の公務への就任をすべて否定するべきではないとも解され、立法
政策又は行政の運用上、一定の制約基準すなわち公権力の行使や公の意思の形成へ
の参画という基準により、これらを職務内容とする職務を除いて、外国人の公務へ
の就任を裁量により認めることができるものである。
(3) 原告は、法律によらず行政機関相互に交わされた「照会」「回答」により
形成された漠然たる基準により外国人の職業選択の自由を制限することは法律によ
る行政の原則に違反すると主張するが、右のとおり、外国人の公務就任権は憲法上
保障されておらず、職業選択の自由の保障も公務就任権には及ばないのであるか
ら、原告の右主張は失当である。
 また、外国人の日本社会との関わりの程度の差異を考慮しなかったとしても、外
国人の公務就任権が憲法上保障されない以上、何ら合理性を欠くものではない。
 さらに、憲法一三条の幸福追求の権利は、外国人の公務就任権を含むものではな
く、憲法上公務就任権は保障されていないのであるから、法の下の平等を規定した
憲法一四条に違反するものでない。
 また、原告の引用する平成七年二月二八日の最高裁判所判決は、憲法一五条一項
の規定がわが国に在留する外国人に適用されないことを明らかにするとともに、定
住外国人の地方参政権、すなわち地方公共団体の長、議会の議員等に対する選挙権
についてのみ言及したもので、被選挙権や外国人の公務就任権について何ら述べて
いないのであるから、右判決から外国人の公務就任権を否定することが法治主義の
原則に反するということはできない。
(二) 東京都における外国人の任用
(1) 東京都人事委員会は、前記の趣旨を踏まえ、採用試験・選考については、
「公権力の行使」、「公の意思の形成への参画」にかかわる業務であるか否かを基
準に個別的検討を行い、このような業務に従事する蓋然性の低い職種の採用試験・
選考においては、日本国籍を有することを資格要件とはしないこととしてきた。
(2) これに対して、東京都人事委員会は、管理職選考については、東京都の管
理職の職務は、すべて「公の意思の形成への参画」にかかわる業務であり、かつ、
その中に「公権力の行使」に該当する職務も含まれているものであることから、管
理職選考においては、日本国籍を有することを資格要件としている。ここで「公の
意思」とは、被告東京都の意思を指すが、「公の意思の形成への参画」にたずさわ
る職について、被告は、都知事(他の任命権者についてもほぼ同様である。)の権
限に属する事務にかかる決定権限を有する職、すなわち事案決定権限を有する職
(東京都事案決定規程三条により、知事又は出納長若しくは局長、部長若しくは課
長と規定されている。)及び決定に至る過程において相当程度意思形成に参画する
者(事案決定権限は有しないが、事案決定過程において関与する管理職。具体的に
は、次長、技監、理事(理事級)、参事(部長級)、副参事(課長級)等の職)が
これに当たると解している。
 また、管理職選考を経て任用される東京都の管理職は、すべて「公の意思形成へ
の参画」に携わり、しかも職種による任用管理を行っていないため、公権力の行使
にかかわる蓋然性の高い職務に従事する場合が多い。具体的に原告の場合でいえ
ば、仮に原告が管理職選考に合格した場合、保健婦としての管理的職務に従事する
のではなく、職種にとらわれない管理的職務に従事するのであるから、公権力の行
使や公の意思の形成への参画に携わることになるのである。
(3) なお、原告は、管理職に就任させることを求めているのではなく、管理職
選考を受験させることを求めているに過ぎないから右選考の受験資格までをも奪う
ことはできないと主張するが、管理職選考の合格者は、当然に管理職に任用される
ものであり、管理職選考が特定の者が管理職という職に就く適格性を有するかどう
かを確認する方法として位置付けられるものであるから、その受験申込みは、本人
が管理職への任用を希望していることを前提としており、任用を希望しない者が合
格者になることを予定していないので、原告の右主張は失当である。
(三) 労働基準法三条について
 労働基準法三条の「賃金、労働時間その他の労働条件」のうち、「その他の労働
条件」とは、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件等労働者の勤務に関する
基本的な条件をいうと解されるから、管理職選考の受験資格は「その他の労働条
件」に含まれない。
 仮に、管理職選考の受験資格が「その他の労働条件」に該当するとしても、同条
は憲法一四条の平等原則の趣旨に基づくものであるところ、憲法の右規定は合理的
理由による差別を許しているのであり、前記のとおり日本国籍を有しない職員に地
方公務員の職のうち公権力の行使又は公の意思の形成に参画する職務を行う管理職
の任用を前提とした管理職選考の受験資格が認められなかったとしても、憲法上外
国人は公務員に就任し行政活動に影響を及ぼす行為をなすことは認められないとい
う合理的な理由によるものであるから、何ら労働基準法三条に違反するものではな
い。
(四) 地方公務員法について
(1) 地方公務員法の適用について平等に取り扱うべきことを定めた同法一三条
は、「すべて国民は」と表現しており、同条にいう国民の中には外国人は含まれな
い。したがって、同条は、外国人の任用及び任用後の身分の取扱いについては、直
接適用されないものである。
 仮に右規定の趣旨が外国人にも適用されるべきであるとしても、右規定は憲法一
四条の平等原則に基づくものであるから、絶対的平等を意味するものではなく、合
理的理由による差別は許されるものと解されるところ、以上に述べたとおり、日本
国籍を有しない職員に管理職選考の受験資格を認めないことには合理的理由があ
る。
(2) 地方公務員法一九条一項において、同条の定める公務への就任する機会付
与の公平・公開の原則の適用を受ける対象者は、すべての国民であり、この原則
は、国民の法の下の平等を定めた憲法一四条及び地方公務員法一三条を受けたもの
であって、日本国籍を有しない者は同条の適用を受けないものである。
 なお、地方公務員法一九条一項にいう競争試験とは、特定の職に就けるために、
不特定、多数のうちから競争によって選抜する方法であるが、東京都人事委員会が
実施する管理職選考は、同条にいう競争試験ではなく、選考試験であって、選考と
は、特定の個人が特定の職に就く適格性を有しているかどうかを確認する方法であ
る。
第三 争点に対する判断
一 受験資格の確認請求について
1 確認請求の性質について
 原告は、本件において、原被告間で原告が平成七年度及び同八年度の管理職選考
試験中選考種別Aの技術系医化学の受験資格を有することの確認を求めているが、
地方公共団体においては、人事委員会が職員の競争試験及び選考を行い、競争試験
における受験資格も定めることとされている(地方公務員法八条、一八条及び一九
条)のであるから、東京都を被告とする原告の本件訴えは、行政事件訴訟法四条後
段にいう原被告間の公法上の法律関係に関する訴訟として請求しているものである
と解される。
2 確認の利益について
 そして、原告が求める右受験資格を有することの確認請求が、東京都人事委員会
の定めた管理職選考実施要綱の手続に従い右要綱に定められた試験を受験させるこ
とを請求することのできる法的地位の確認を求めるものであるとしても、原告の右
の訴えのうち、平成七年度の受験資格の確認を求める点については、既に当該年度
の試験は実施ずみであることが明らかであり、右の確認が現在の原被告間の法律関
係に何らの影響を及ぼすものではないから、その確認の利益がないというほかはな
い。
 また、平成八年度の受験資格については、本件口頭弁論終結時点で、東京都人事
委員会において管理職選考の内容を定める同年度の管理職選考実施要綱が決定され
ていない。ところで、当該年度に管理職選考を実施するか否か、さらに、受験する
ことのできる職種、級、在職期間等の受験資格をどのように設定するかは、前記の
地方公務員法の規定によれば、地方公共団体にあって独立の合議機関である右委員
会の判断にかかるものであるから、右委員会において実際に当該年度の選考の実施
が決定され、受験資格に関する要件を定められない限り、受験することのできる者
の範囲は定まらない性質のものである。そうしてみると、原告が同年度の受験資格
の確認を求める点については、本件口頭弁論終結時点では、原被告間の具体的な権
利義務関係をめぐる紛争が存するということはできないのであるから、確認の利益
がないといわざるを得ない。
3 結論
 したがって、原告の請求中、管理職選考受験資格の確認を求める部分は、不適法
な訴えとして却下すべきである。
二 慰謝料請求について
 原告は、前記「前提となる事実」2及び3のとおり、平成六年度管理職選考にお
いては、日本国籍を有しないことを理由として被告が原告の受験申込書の受取りを
拒否し、また、平成七年度管理職選考においては、東京都人事委員会においてその
実施要綱中に受験資格に日本国籍を有することを受験資格の要件とすることを明示
し、被告が原告に対して受験申込書用紙を配布しなかったため、右各年度の管理職
選考を受験できなかったということができる。そこで、被告の右の各措置が違法か
どうかについて判断する。
1 地方公務員法違反の主張について
(一) 地方公務員法一三条は、すべて国民は同法の適用について平等に取り扱わ
れなければならず、人種、信条、性別、社会的身分もしくは門地によって差別され
てはならないこと、同法一九条一項は、競争試験は人事委員会の定める受験の資格
を有するすべての国民に対して平等の条件で公開されなければならないこと、ま
た、同条二項は、人事委員会は受験者に必要な資格として職務の遂行上必要な最少
かつ適当の限度の客観的・画一的要件を定めることをそれぞれ規定し、右各条の規
定は、国民すなわち我が国の国籍を有する者を対象とすることを明示している。
(二) しかしながら、憲法第三章に定める基本的人権の保障は、権利の性質上日
本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人
に対しても等しく及ぶものであり、憲法二二条一項の職業選択の自由については、
権利の性質上日本国民のみをその対象としているものを除き、我が国に在留する外
国人に対してもその保障が及ぶものというべきであり、また、憲法一四条一項の法
の下の平等の規定も、その保障の対象となる権利等の性質上、特段の事情が認めら
れない限り、我が国に在留する外国人にも適用されるべきものである。
(三) 他方、国民主権の原理は、憲法前文及び一条において憲法の基本原理とし
て採用されていることが明らかであり、その理念は、国家権力の正当性の究極の根
拠が日本国民の意思に存し、日本国民が国の政治のありかたを最終的に決定するこ
とをいうものと理解することができるが、我が国は、国際社会の中で独立した国家
であり、憲法及び法律によってつくられた枠組みの中で国民に対して広汎な支配を
及ぼし、その担い手となる公務員の職務遂行を通じて右の統治作用が日々実現され
ているものであることに鑑みると、国民主権の原理は、単に公務員の選定罷免を決
定する場面のみに日本国民が関与することで足りるものではなく、我が国の統治作
用が主権者と同質的な存在である国民によって行われることをも要請していると考
えられるから、憲法は、我が国の統治作用にかかわる職務に従事する公務員が日本
国民すなわち我が国の国籍を有する者によって充足されることを予定しているもの
というべきである。
(四) このことを公務員の職務内容に即してみると、憲法は、統治のあり方とし
て、憲法上国の統治作用の根本とされる立法、行政、司法の権限を行使し、主権者
たる日本国民の意思が職務遂行の中に体現していると認められる重要な権限を直接
的に行使する公務員、例えば国会の両議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大
臣、裁判官等については、日本国民であることを要するものとしているというべき
であるから、法律をもって外国人がかかる地位に就くことを認めるのは、国民主権
の原理に反して許されないものと考えられる。
 さらにまた、統治作用は国政全般の多岐にわたるものであり、その権限は、法規
により、国政における重要性等に応じて一定の基準をもって各職層の公務員に配分
されているものであるから、右の直接的に国の統治作用にかかわっているものと認
められる場合だけでなく、公権力の行使あるいは公の意思の形成に参画することに
よって間接的に国の統治作用にかかわっていると認められる場合についても、憲法
は、外国人が右の職責を有する公務員に就任することを保障しない趣旨であるとい
うべきである。
 もっとも、右のように公権力の行使あるいは公の意思の形成に参画することによ
って間接的に国の統治作用にかかわる職務に従事するにすぎない公務員について
は、主権者たる日本国民の意思の発動として、法律をもって明示的に、日本国民で
ない者にもこうした権限を授与することは、何ら国民主権の原理に反するものでは
ないから、憲法上禁止されているものでないと解するのが相当である。
 したがって、前記のとおり、外国人に対して憲法二二条一項の職業選択の自由及
び同法一四条一項の法の下の平等の各規定の適用があるとしても、右の基本的人権
は、その性質上、右に述べたところと抵触しない限りにおいてその保障が及ぶに過
ぎないものと解するのが相当であり、これを禁止する法律がないからといって、外
国人が右の職責を有する公務員に就任することが保障されているということはでき
ないものというべきである。
(五) そこで、以上の検討を前提に地方公務員法一三条及び一九条の各規定を合
理的に理解するならば、右各条は、国民すなわち我が国の国籍を有する者を対象と
する旨を規定しているけれども、我が国に在留する外国人は、公権力の行使あるい
は公の意思の形成に参画することによって直接的または間接的に我が国の統治作用
にかかわる職務に従事する地方公務員に就任することはできないが、それ以外の職
務、いうならば上司の命を受けて行う補佐的・補助的な事務、もっぱら専門分野の
学術的・技術的な事務等に従事する地方公務員に就任することは許容されているも
のと解するのが相当である。
 なお、地方公務員は、地方自治体の住民の日常生活に密接な関連を有する公共的
事務の処理に携わるものであり、また、我が国に在留する外国人のうちでも永住者
等であってその居住する区域の地方公共団体と緊密な関係を持つに至ったと認めら
れるものについては特段の考慮を払う余地があるとしても、地方公共団体が我が国
の統治機構の不可欠の要素をなし、地方公共団体の権限も究極的には国家の統治権
に由来するものであり、また、国の事務が機関委任事務として地方公共団体によっ
て行われていることが少なくないことを考慮すると、我が国に在留する外国人が地
方公務員に就任することについては右のとおり解すべきことに格別の妨げとなるも
のではない。
 また、公務員の職に就任する権利ないし資格についてはこれが憲法一五条一項に
規定する公務員の選定罷免権の保障の範囲に含まれるものと解することができると
しても、右規定が国民主権の原理に基づくものであることに鑑みると、右規定によ
る権利の保障は、その性質上日本国民のみをその対象とし、我が国に在留する外国
人には及ばないものと解するのが相当である。
(六) 以上に述べたところによれば、我が国に在留する外国人には、公権力の行
使あるいは公の意思の形成に参画することによって我が国の統治作用にかかわる職
務に従事する地方公務員に就任することにつき、憲法上の保障は及ばないのである
から、その限りでは、外国人であることを理由として平等の取扱いを受けられず、
また、その旨があらかじめ人事委員会によって定められていなかったとしても、同
法一三条及び一九条の各規定に違反したということはできないというべきである。
 本件においては、前記「前提となる事実」2及び4のとおり、管理職選考は、東
京都の課長級の職への選考を目的としており、課長級の者のうち課長職は、東京都
事案決定規程によって知事の権限に属する事務に係る決定権限が配分され、その他
の課長級に該当する副参事には一部に決定権限そのものを直接的に有しない者がい
ることが認められるが、東京都においては当該管理職の職種による人事管理は行わ
れておらず、例えば医化学の区分で選考に合格して管理職に任用された場合、その
後の昇任に伴って、医化学系の以外の分野をも担当し、また、一般的な職員の管理
を含めた管理的な事務を行うことがあるというものである。
 そうしてみると、本件の管理職選考は、決定権限の行使を通じて公の意思の形成
に参画することによって我が国の統治作用にかかわる職への任用を目的とするもの
であり、実際に合格後にそのような職に任用されているということができるから、
外国人である原告は、管理職選考の結果任用されることとなる職に就任することが
憲法上保障されていないというべきである。したがって、原告が管理職選考を被告
の前記措置によって受験できなかったとしても、被告に地方公務員法一三条、一九
条の規定に違反した違法があるとはいえない。
(七) なお、地方公務員法一五条は、職員の任用は、受験成績、勤務成績その他
の能力の実証に基づいて行われなければならないことを定めるものであるが、同法
一七条三項によれば、採用及び昇任の方法は競争試験または選考の方法によるべき
ことが定められており、右の任用における能力実証主義の原則は、競争試験ないし
は選考の判定においては、その成績に基づいて任用されなければならないことをい
うものと解するのが相当である。そして、以上にみたとおり、本件は、競争試験ま
たは選考の判定内容に関するものではなく、これらの実施前における受験者の適格
性に関するものであるから、同法一五条が適用される余地はないというべきであ
る。
2 労働基準法違反の主張について
 労働基準法三条は、使用者は、労働者の国籍や社会的身分を理由として、賃金、
労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならないことを定める
ものであるが、同条は憲法一四条の法の下の平等に基づくものであるところ、前記
のとおり、外国人が公権力の行使あるいは公の意思の形成に参画する職務に従事す
る公務員に就任することは、憲法上許容されていないか、又は、その保障は及ばな
いのであるから、その限りで同条の適用はないというべきである。したがって、本
件においては、被告の前記の措置に労働基準法三条違反があるということはできな
い。
3 憲法違反の主張について
 原告は、本件において、被告の措置が憲法二二条一項、一四条、一三条に違反す
ると主張するが、憲法二二条一項の職業選択の自由、同法一四条の法の下の平等
は、前にみたとおり、原告が管理職選考の結果任用されることとなる職に就任する
ことについて、その保障が及ばないというべきであるから、被告の措置に憲法の右
条項に違反した違憲の点があるということはできない。そして、憲法一三条違反を
いう点は、実質的に憲法二二条一項ないしは同法一四条の違反をいうものであるか
ら、採用することができない。
4 結論
 以上によれば、原告が管理職選考を受験することができなかったことについて、
被告の前記の措置に違憲・違法があるとはいえない。したがって、原告の請求のう
ち慰謝料を請求する部分は理由がないから、これを棄却する。
東京地方裁判所民事第一一部
(裁判官 遠藤賢治  白石史子  梅本圭一郎)

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