弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一・
二審とも、被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同
旨の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は、原判決の事実摘示と同一であるから、その摘示を
引用する。
 証拠として被控訴代理人は、甲第一号証を提出し、原審における鑑定人Aの鑑定
の結果を援用。乙号証に対し、いずれもその成立を認め、第四号証の一と二を援
用。控訴代理人は、乙第一号証、第二号証、第三から第六号証の各一・二を提出、
原審証人B、C、当審証人D、Eの各証言を援用、甲第一号証の成立を認めた。
         理    由
 一、(1) 被控訴人は各種乳製品の製造販売を業とする株式会社なるところ、
同会社の平塚工場において、昭和二十三年三月一日から同年十一月二十七日までの
間に、「F」と称する商品名を附した牛乳を主要成分とする商品を製造し、これを
サイダー瓶やビール小瓶などにつめて、合計十万四千八百三十六本、総額金三百四
十万五千四十円に相当する商品を、右工場から移出販売したこと。
 (2) これに対し控訴人(当時は大磯税務署長)は、右製品が当時施行の物品
税法第一条・物品税法施行規則第一条による課税物品表第一種戊類八十九に該当す
る食料品なりとして、右製品価額金三百四十万五千四十円に対する所定課税率二割
を乗じた金六十八万千八円の税額に、被控訴人の製造販売にかかる他の商品(コー
ヒー牛乳)に対する物品税額を加算した、昭和二十四年随時物品税額金九十二万九
千九円を、被控訴人において納付すべきものとして、昭和二十四年三月八日附納税
告知をもつて、被控訴人に対し賦課処分したこと。
 以上の事実はいずれも当事者間に争いがない。
 二、 そこで右「F」が物品税法第一条・物品税法施行規則第一条による課税物
品表第一種戊類八十九の本文に該当する物品税の課税物品であるか、それとも前記
八十九の但書の適用を受ける非課税物品であるか、どうかについて判断するに、右
規則において、乳製品を非課税物品として除外した理由は、牛乳が栄養物として、
病人や乳幼児の必需品に扱われ、非課税となつている関係上、これに準ずべき乳製
品をも、非課税物品として除外したものと解すべきことは、原判決の説示するとお
りである。
 三、 そしてここにいわゆる乳製品とは、牛乳を主要原料とし、しかもこれに嗜
好飲料に適するような大巾の加工を加えないものに限るべく、甘味や酸味の点にお
いて、牛乳とはまるで違つた嗜好飲料は、こゝにいう乳製品に含まないと解すべき
ことは、前記関係法規の趣旨に徴し、明かなところといわなければならない。
 四、 控訴人は前記物品税法施行規則第一条による課税物品表第一種戊類八十九
但書にいうところの乳製品とは、牛乳営業取締規則に規定した成分・規格を具える
もののみを意味するものであると主張するけれども、牛<要旨>乳営業取締規則なる
ものは、牛乳営業者のみに適用せられる規定であつて、しかも保健衛生の目的から
制定せられた規則であるから、もし控訴人の主張するような趣旨に解すべき
ものとすれば、物品税法又はその施行規則中に、その趣旨の解釈規定を設けるべき
であつて、そうした解釈規定もないのに、まるで立法の目的を異にする物品税法の
解釈に、牛乳営業取締規則を引用して、その規則に定められた成分・規格を具えな
い限り、前記物品税法施行規則第一条による課税物品表第一種戊類第八十九但書に
いわゆる乳製品に該当しないとする、控訴人の主張は到底採用し難く、原審証人
B・C、当審証人D・Eの各証言、その他の証拠によつても、右の解釈を動かし得
ない。
 五、 ところで本件の「F」は、その製品一斗当りの原料として、牛乳七升とカ
ゼイン(牛乳からの)七十五匁を、約三升の水に溶解したものに、バター二ポン
ド、ゼラチン十グラム、甘味料(サツカリン)〇・五グラムを加え、煮沸乳化した
ものであることは、当事者間に争いがないので、原料の七割を占める主要原料は牛
乳であつて、これに混ぜるカゼインやバターも、牛乳製品であるから、畢竟牛乳に
準ずべき乳製品に該当するものというべく、これをその性質上嗜好飲料の範疇に属
せしむべきではない。
 そうだとすれば、本件の「F」は、前記物品税法施行規則第一条による課税物品
表第一種戊類八十九但書にいわゆる乳製品に該当しないものと認めて、これに課税
した賦課処分の失当なることは、もちろんであるから、その取消を求める被控訴人
の請求を認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。
 よつて民事訴訟法第三八四条・第八九条・第九五条を適用して主文のとおり判決
する。
 (裁判長判事 浜田潔夫 判事 河合清六 判事 仁井田秀穂)

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