弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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(主文)
被告人を懲役4年6月に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
押収してある簡易ライター1個(平成18年押第6号の1)を没収する。
(罪となるべき事実)
被告人は,平成17年9月14日に刑務所を出所し,同月30日ころから肩書住
所地に居住して,同年11月からは青森市から生活保護を受けて生活していたもの
であるが,青森市の担当職員から仕事を探すように言われ,職業安定所に行ったり
新聞の求人募集を見るなどして仕事を探したものの,年齢制限や資格を持っていな
かったことから,一向に仕事を見つけることができずにいたところ,平成18年1
月17日午後7時30分ころ,飲酒して帰宅し,布団に入ってぼんやりとテレビを
,,,見ているうち就職先が見つからないことに対する鬱憤が募りそれを晴らすため
自己が居住するA荘に放火しようと企て,同日午後8時ころ,青森市a丁目b番c
号甲ほか8名が現に住居に使用している木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建共同住宅(床
面積合計約328.73平方メートル)の2階d号甲方前共同廊下において,丸め
たティッシュペーパーに所携の簡易ライターで点火し,これを上記共同廊下壁面及
び灯油約18リットル入りポリタンク等に近接して置かれていた木片,タオル及び
灯油含有の研磨剤約500ミリリットル入りペットボトル等在中のプラスチックケ
ースの中に入れて火を放ち,もって,上記甲らが現に住居に使用する上記共同住宅
を焼損しようとしたが,隣室住民に発見されて消火されたため,上記プラスチック
ケース,その上蓋に使用されていた木板及びこれに近接して置かれていたポリバケ
ツ等を焼損し,付近の排気用パイプを溶解したにとどまり,その目的を遂げなかっ
たものである。
(累犯前科)
被告人は,()平成7年10月11日青森地方裁判所で現住建造物等放火罪によ1
り懲役7年に処せられ,平成14年7月12日その刑の執行を受け終わり,(2)そ
の後犯した現住建造物等放火未遂罪により平成14年11月13日秋田地方裁判所
で懲役3年に処せられ,平成17年9月13日その刑の執行を受け終わったもので
あって,これらの事実は検察事務官作成の前科調書及び(2)の前科に係る判決書謄
本によって認める。
(量刑の理由)
本件は,前刑出所後,就職先が思うように見つからないことに対する不満を抱い
ていた被告人が,その鬱憤を晴らすため,自己が居住する共同住宅に放火すること
を決意し,同共同住宅の他の居住者方前共同廊下において,ティッシュペーパーに
簡易ライターで点火し,これを研磨剤等が在中していたプラスチックケース内に入
れて火を放ったが,他の居住者に発見されて消火されたため,未遂に終わった事案
である。
被告人は,平成17年9月14日に刑務所を出所して同月30日ころから青森市
,,,に居住し同年11月1日以降青森市から生活保護費の支給を受けるようになり
同市の生活保護担当職員からの指示もあって就職先を探していたものの,年齢や免
許などの資格の制限があることから思うように仕事が見つからなかったことから,
不満が鬱積し,その鬱憤を晴らすために自己が居住する共同住宅に放火することを
いとも安易に決意して,本件犯行に及んだもので,その動機は自己中心的で短絡的
である。被告人は,本件共同住宅の他の居住者宅前に置かれていたプラスチックケ
ース内に簡易ライターで点火したティッシュペーパーを入れて火を放ったものであ
るが,上記プラスチックケース内には灯油含有の研磨剤が保管してあったほか,同
プラスチックケースのすぐ近くには合計約38.5リットルもの灯油が置かれてい
たこと,本件共同住宅は築25年以上経過した木造家屋であり,本件犯行時,本件
共同住宅内には他の居住者9名が在宅していたこと,他の居住者の中には高齢者や
耳が遠いなど身体の不自由な者がいたこと,本件共同住宅は住宅密集地に所在し,
南東約2,3メートルしか離れていないところに自動車整備工場があり,同工場に
は約1200リットルもの可燃性油類,ガスボンベが保管されていたことなどから
すれば,一歩間違えば大惨事となりかねない危険な犯行で,本件共同住宅の他の居
住者をはじめ近隣住民に与えたであろう不安も無視できない。本件共同住宅の所有
者及び媒介物であるプラスチックケースの所有者である他の居住者に対する被害弁
償も全くなされていない。また,被告人は,これまで2度にわたり,現住建造物等
放火罪及び同未遂罪により服役したことがあるのにもかかわらず,前刑出所後わず
か4か月余りで本件犯行を敢行していること,3回の同種前科があること等からす
れば,被告人の規範意識の欠如は著しいものがある。以上によれば,被告人の刑事
責任は重く,その行為は厳しく非難されるべきである。
他方で,本件は他の居住者らによる早期の消火活動により幸いにも未遂に終わっ
ていること,本件犯行は計画的に行われたものではないこと,本件犯行はプラスチ
ック,ポリバケツ等の他,本件共同住宅の排気用パイプを溶解したにとどまり,建
物自体の焼損はほとんどなかったこと,媒介物のプラスチックケース及びその在中
物等の焼損分も含め,損害額は合計3万3355円程度にとどまっていること,被
告人は,本件犯行について被害弁償をする旨及び本件を含め自己が行った放火は全
て飲酒時であったことから今後はダルクの活動に参加するなどして断酒する旨反省
の言葉を述べていることなどの被告人にとって有利な事情も認められる。
そこで,これらの諸事情を総合考慮した上で,主文掲記のとおりの刑を科すのが
相当であると判断した。
(求刑懲役6年,簡易ライター1個没収)
平成18年4月12日宣告
青森地方裁判所刑事部
裁判長裁判官高原章
裁判官室橋雅仁
裁判官香川礼子

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