弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人朝比奈新、同中尾昭の上告理由について。
 会社更生手続における一般調査期日には、裁判所の定めた届出期間内に届け出で
られた更生債権および更生担保権について調査が行なわれる。しかし、(一)期間経
過後の届出であつても、会社更生法(以下単に法と称する。)一二七条所定の場合、
および(二)届出期間を徒過し、しかも、同条所定の要件が認められない届出である
が、調査することにつき、管財人、更生債権者、更正担保権者および株主の何人よ
りも異議のない場合においては、一般調査期日にこれを調査することができる。た
だ、この(二)の場合には、右管財人らから調査することに異議があれば、これにつ
いてはもはや調査することは許されず、調査のため特別期日を開くことも認められ
ないから、右更生債権等は失権することとなる。しかし、一旦これを調査すること
に異議がなく、一般期日において調査することとなつた以上、右更生債権等につい
ては法一三五条によつて法一三二条に掲げる事項が調査されるが、この場合、異議
の事由となりうるものは、右調査事項に限られるのであつて、当該届出が、期間を
徒過し、かつ法一二七条所定の要件をも具えなかつたことを事由とする異議は許さ
れないものというべく、法一四七条所定の異議に基づく債権確定の裁判においても、
この事由をもつて請求を排斥することはできないものと解するのが相当である。
 これを本件についてみてみるに、本件更生債権(約束手形金債権)は届出期間経
過前に生じた債権で、該期間経過後に届け出でられたものであつて、しかも、右債
権届出は、被上告人の責に帰することのできない事由によつて期間内に届出をする
ことができなかつたものとして法一二七条の規定による追完を認められたものでは
ないが、D鉄工株式会社に対する更生手続における一般調査期日が開かれた際、上
告人管財人ら出席者全員において、本件更生債権を同期日に他の債権とあわせて調
査することに異議がなかつたので、同期日に調査されたこと、上告人管財人におい
て、右債権全額について異議を述べたが、その異議事由は、被上告人は、D鉄工株
式会社について更生手続開始決定があつたことを知り乍ら、所定の期間内に債権の
届出をせず、かつこのことにつき被上告人に帰責しえない特別の事由はなかつたか
ら、本件更生債権は期間経過により失権したというものであつたことは原審の適法
に確定するところである。
 右事実によれば、本件更生債権は、期間経過後に届け出でられたもので、しかも、
法一二七条の規定による届出の追完を認められたものではないが、更生債権等調査
の一般期日が開かれた際、これを調査することに上告人管財人ら出席者全員におい
て異議がなかつたため、同期日に調査されたのであるから、前叙するところから明
らかなように、以後上告人管財人は、右届出が期間を懈怠してなされたこと、右届
出に法一二七条所定の要件が具備されていないことを異議の事由とすることは許さ
れず、本訴更生債権確定の裁判においても、右の点をもつて請求を排斥し去ること
はできないものというべきであつて、これと同趣旨の原審の判断は正当として首肯
するに足り、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の確定しない事実関係を前
提として、独自の法解釈に基づき原判決を非難するものであつて、採用することが
できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   田       誠
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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