弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成26年10月31日判決言渡
平成25年(行ウ)第13号行政処分取消請求事件
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
資源エネルギー庁長官が平成24年7月18日付けでした行政文書一部開示
決定(20120618公開資第9号。甲2。ただし,平成25年3月25日
付け追加開示決定(20130319公開資第1号。乙2。以下「本件追加開
示決定」という。)後のもの。以下,本件追加開示決定の前後を問わず「本件
各一部不開示決定」という。)のうち,別紙1「開示を求める不開示部分目録」
(以下単に「別紙1」という。なお,同別紙で定める略称等は,以下において
も用いるものとする。)記載の部分を不開示とした部分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,情報公開法4条1項の規定に基づき資源エネルギー庁長官に対して
行政文書の開示請求(以下「本件開示請求」という。)をした原告が,平成2
4年7月18日付けで本件開示請求に係る行政文書について本件各一部不開
示決定を受けたことから,同決定のうち前記第1において原告が争う部分につ
いて開示しないのは違法であるとして,その取消しを求める事案である。
1前提事実(証拠等を掲げたもの以外は,当事者間に争いがないか,当事者に
おいて争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)
(1)「平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)」
(以下「本件事業」という。)の概要
ア本件事業に係る委託契約についての入札等
(ア)資源エネルギー庁は,平成23年6月24日,本件事業に係る委託
契約について,入札の方法により一般競争(以下「本件入札」という。)
に付した。
同日付けの入札の公告(甲14。以下「本件入札公告」という。)に
は,入札書等の提出日時を同年7月13日午後5時までとし,開札の日
時を同月15日午後5時とする旨のほか,①「入札方法」として,ⅰ入
札金額は,本件事業に関する総価で行う旨,ⅱ本件入札の競争に加わろ
うとする者は,入札の際に提案書を提出し,技術審査を受けなければな
らない旨等が,②「入札者の義務」として,本件入札の競争に加わろう
とする者は,資源エネルギー庁が交付する仕様書に基づいて提案書を作
成し,これを入札書に添付して入札書の提出期限内に提出しなければな
らない旨等が,③「落札者の決定方法」として,予算決算及び会計令7
9条の規定に基づいて作成された予定価格の制限の範囲内で,支出負担
行為担当官が入札説明書で指定する要求事項のうち,必須とした項目の
最低限の要求を全て満たしている提案をした入札者の中から,支出負担
行為担当官が定める総合評価の方法をもって落札者を定めるものとする
旨等が記載されていた。
本件入札に係る仕様書(甲15。以下「本件仕様書」という。)には,
本件事業の「事業目的」として,「ツイッター,ブログなどインターネ
ット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を
常時モニタリングし,それに対して速やかに正確な情報を提供し,又は
正確な情報へ導くことで,原子力発電所の事故等に対する風評被害を防
止する」と,本件事業の「事業内容」として,「①ツイッター,ブログ
などインターネット上の原子力や放射線等に関する情報を常時モニタリ
ングし,風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不適切な情
報を調査・分析すること。モニタリングの対象とする情報媒体及びモニ
タリングの方法については,具体的な提案をすること。②上記①のモニ
タリングの結果,風評被害を招くおそれのある正確ではない情報又は不
適切な情報及び当庁から指示する情報に対して,速やかに正確な情報を
伝えるためにQ&A集(ママ)作成し,資源エネルギー庁ホームページ
やツイッター等に掲載し,当庁に報告する。③Q&A集の作成に際して,
必要に応じて,原子力関係の専門家や技術者等の専門的知見を有する者
(有識者)からアドバイス等を受けること。また,原子力関係の専門家
や有識者からアドバイスを受ける場合には,それらの者について具体的
な提案をすること。④事業開始から1ヶ月程度で30問以上,事業終了
時までには100問以上のQ&A集を作成すること。」と,「提案事項」
として,「①モニタリングの対象とする情報媒体(ツイッターは必須),
②モニタリングの具体的な方法と体制,③Q&A集を作成後,速やかに
周知するための具体的な方法,④想定される専門家や有識者,⑤これら
を活用した新規提案」と,本件事業の「事業期間」として,「委託契約
締結日から平成24年3月30日まで」と記載されていた。
(イ)本件入札については,P1及び公益財団法人P2(以下「P2」と
いう。)の2社が入札し,P1は,平成23年7月13日付けの同社の
作成に係る本件企画提案書(甲3,乙3)を,P2は同日付けのP2の
作成に係る「提案書(事業名:平成23年度原子力安全規制情報広聴・
広報事業(不正確情報対応))」(甲4。以下「P2提案書」という。)
を,それぞれその入札書に添付して資源エネルギー庁に提出した。同庁
は,同年7月15日,開札をし,同庁による技術審査の結果,P1が落
札者とされた。
イ本件事業に関する委託契約の締結
資源エネルギー庁とP1とは,平成23年8月12日,委託金を740
2万5000円,完了期限を平成24年3月30日までとして,本件事業
に関する委託契約(以下「本件委託契約」という。)を締結した。同日付
けの本件委託契約書(甲7)には,大要,以下のような約定がある。
(ア)本件委託契約1条(実施計画書の遵守)は,P1は本件委託契約書
の別紙1の本件実施計画書に従って委託業務を実施しなければならない
旨を定めている。なお,本件実施計画書に記載された本件事業の「事業
目的」及び「事業内容」は,「事業内容」の部分の「Q&A集」が「質
疑応答集」となっていること等のほかは,本件仕様書の「事業目的」及
び「事業内容」と同一である。
(イ)本件委託契約4条(計画変更等)は,P1は,実施計画を変更しよ
うとするとき(事業内容の軽微な変更の場合及び支出計画の区分経費の
10パーセント以内の流用(人件費への流用及び一般管理費への流用を
除く。)の場合を除く。)は,あらかじめ同契約所定の様式により作成
した計画変更承認申請書を資源エネルギー庁に提出し,その承諾を受け
なければならない旨(同条1項),政府の予算若しくは政策の重大な変
更があった場合(その可能性が高い場合を含む。)又はその他同契約締
結時に予測できない事情若しくは直接同庁の責めに帰さないやむを得な
い事由が発生した場合は,同庁はP1に対して必要な範囲で同契約(実施
計画書を含む。)の変更を求めることができる旨(同条3項前段)を定め
ている。
(ウ)本件委託契約7条(履行体制)は,P1は,本件委託契約書の別紙
2(本件履行体制図)に従って委託業務を実施しなければならない旨(同
条1項),P1は,本件履行体制図に変更が生じる場合には.速やかに
同契約所定の様式により作成した履行体制図変更届出書を資源エネルギ
ー庁に提出しなければならない旨(同条2項本文)を定めている。
(エ)本件委託契約11条(委託業務完了報告書の提出)は,P1は,委
託業務が完了したときは,直ちに,同契約所定の様式により作成した委
託業務完了報告書を資源エネルギー庁に提出しなければならない旨を定
めている。
(オ)本件委託契約13条(実績報告書の提出)は,P1は,同契約所定
の様式により作成した実績報告書を約定期限までに資源エネルギー庁に
提出しなければならない旨を定めている。
(カ)本件委託契約14条(支払うべき金額の確定)前段は,資源エネル
ギー庁は,同契約所定の確認及び納入物の引渡しを受けた後,同契約1
3条の定めにより提出された実績報告書の内容の審査等を行い,同契約
所定の方法により支払うべき金額を確定し,これをP1に通知しなけれ
ばならない旨を定めている。
(キ)本件委託契約18条(契約の解除等)前段は,P1が同契約の定め
に違反したとき等は,資源エネルギー庁は,催告を要さず同契約を直ち
に解除することができる旨を定めている。
ウ資源エネルギー庁は,本件事業の実施の開始後,本件委託契約の締結時
に予定していたホームページの制作を取り止めることとし,P1から,同
契約7条2項の定めに基づき,平成24年3月26日付けの同社の作成に
係る履行体制図変更届出書(甲21。以下「本件履行体制図変更届出書」
という。)の提出を受けた。
エ本件事業の終了
(ア)P1は,資源エネルギー庁に対し,本件事業の事業期間の末日であ
る平成24年3月30日付けの同社の作成に係る委託業務完了報告書
(甲22。以下「本件委託業務完了報告書」という。),同月付けの同
社の作成に係る「平成23年度事業報告書」(以下「本件事業報告書」
という。)及びQ&A集を提出したところ,本件委託契約の締結時には,
前記のとおり100問のQ&A集を作成するものとされていたが,最終
的には64問となった(甲9)。
(イ)資源エネルギー庁は,P1から,平成24年4月9日付けの同社の
作成に係る本件実績報告書(甲10)の提出を受け,同月13日に確定
検査を実施し(弁論の全趣旨),支払うべき金額を5575万7915
円と確定し(甲23),同月24日付けでP1に対して精算払いをした
(甲24)。
本件実績報告書の「3.実施した委託業務の概要」中の「委託業務の
概要」欄には,本件事業の目的として,「インターネット上に掲載され
る原子力や放射線等に関する情報を調査し,そこから国民の不安や疑問
がどのようなところにあるのかを分析して質問(以下Q)を作成した。
そのQをもとに回答(以下A)を作成し,そのQ&Aを活用することで,
風評被害を防止することを目的とした。」との,「事業の概要」として,
「(1)インターネット上での調査Twitterやブログをはじめと
するインターネット上の情報を,以下の①及び②の順に調査・収集した。
①あらかじめ設定したキーワードで機械式検索をし,そのキーワードと
併記されることの多いトレンドワードを抽出する。月平均で3000件
以上の,国民が不安や疑問に感じていると思われる情報を抽出した。②
①のトレンドワードを加えて再度機械検索をし,毎日,1000件以上
の情報を抽出した。その中から目視でチェックし,国民が不安や疑問に
感じていると思われる情報を100件程度に絞込みを行った。(2)情報の
精査・Q作成専門研究機関は,月平均3000件程度の情報から根底
にある不安や疑問を見つけ出し,それをQとして作成した。(3)専門家に
よるA作成作成したQは,原子力や放射線等の専門家に依頼してAを
作成した。また,放射線等の専門家に加え,リスクコミュニケーション
の立場から検討委員会で議論し,最終的に64問のQ&A集を作成した」
との記載がある。
(2)本件開示請求
ア原告は,平成24年6月18日,資源エネルギー庁長官に対し,情報公
開法4条1項の規定に基づき,「請求する行政文書の名称等」を「平成2
3年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)に関する資
料一式」とする本件開示請求(甲1)をした。
イ資源エネルギー庁長官は,平成24年7月18日付けで,本件開示請求
に係る行政文書を別紙2「開示文書目録」(なお,同別紙で定める略称等
は,以下においても用いるものとする。)の1から8までに記載のものと
特定した上で,同目録の4及び7に記載のものについては,全部を開示し,
その余のものについては,それぞれ別紙3「不開示部分目録」に記載のと
おり,情報公開法5条1号本文,2号イ等に該当する情報が記録されてい
ることを理由として,その一部を開示する旨の本件各一部不開示決定をし
た。
(3)原告による別件の開示請求と情報公開・個人情報保護審査会の答申
ア原告による別件の開示請求
原告は,本件開示請求とは別個に,資源エネルギー庁長官に対し,情報
公開法4条1項の規定に基づき,「平成23年度原子力安全規制広聴・広
報事業(不正確情報対応)」(平成イ23年6月24日公告)のうち,落
札者が提出した①評価項目一覧の提案書頁番号欄に必要事項を記入したも
の及び②提案書並びに③契約書類のうち仕様,すなわち受託者が本業務に
おいて契約に基づき実施する内容を記載した文書(特定会社が提案した提
案書を除く。)を開示請求に係る行政文書とする2件の開示請求(以下「別
件各開示請求」という。)をし,資源エネルギー庁長官は,平成23年8
月31日付け及び同年10月17日付けで,別件各開示請求に係る行政文
書を①本件企画提案書(甲3,乙3)及び②本件フロー確認資料(甲8)
と特定した上で,同法5条1号本文及び2号イに該当する情報が記録され
ている部分を除きこれを開示する旨の各決定(230801公開資第1号
及び230915公開資第1号。以下「別件各一部不開示決定」という。)
をした(乙1)。
イ情報公開・個人情報保護審査会の答申
原告は,別件各一部不開示決定について異議申立てをし,資源エネルギ
ー庁長官は,平成23年12月16日及び平成24年1月30日,情報公
開・個人情報保護審査会に諮問をした。同審査会は,本件企画提案書及び
本件フロー確認資料につき,いわゆるインカメラ手続によりその内容を見
分した上で,上記の各諮問を併合し,同年10月23日,本件企画提案書
の標題の不開示部分のうち,21頁から36頁まで及び41頁の全部並び
に37頁から40頁までの1文字目から13文字目までを開示すべきとす
る答申(平成24年度(行情)答申第246号及び第247号。以下「別
件答申」という。)をした(乙1)。
(4)本件訴えの提起
原告は,平成25年1月11日,本件各一部不開示決定のうち,別紙4「開
示を求める不開示部分目録(一部取下げ前)」記載の部分を不開示とした部
分の取消しを求めて本件訴えを提起した。
(5)本件追加開示決定
資源エネルギー庁長官は,平成25年3月25日付けで,本件企画提案書
のうち別紙5「本件追加開示決定部分目録」記載の部分について,本件追加
開示決定(乙2。以下同決定により開示された部分を「本件企画提案書追加
開示決定部分」という。)をした(乙2,3)。
(6)本件履行体制図変更届出書等に係る追加開示決定
原告は,本件訴えにおける被告の答弁書によって,本件履行体制図変更届
出書の存在を知り,平成25年5月24日付けで,被告に対し,当該文書が
本件開示請求に係る行政文書に含まれるか否かについて,行政事件訴訟に関
しその例によるものとされる民事訴訟法163条の規定に基づく照会をした
ところ(甲19),資源エネルギー庁長官は,同月31日付けで,本件各一
部不開示決定につき改めて開示文書を精査した結果,開示すべき文書があっ
たとして,平成24年4月17日付けの資源エネルギー庁の支出負担行為担
当官の作成に係る「平成23年度原子力安全規制広聴・広報事業(不正確情
報対応)の支払うべき金額の確定について」と題する文書(甲23)の全部
を開示し,①本件履行体制図変更届出書(甲21),②本件委託業務完了報
告書(甲22)及び③精算払請求書(甲24)の一部を開示する旨の決定(以
下「本件履行体制変更書等に係る追加開示決定」という。)をした。
(7)原告は,平成25年7月3日,本件訴えのうち,本件企画提案書追加開
示決定部分等に係る請求に係る部分を取り下げ,被告は,同月12日,これ
に同意した(当裁判所に顕著な事実)。
2争点及びこれに関する当事者の主張の要点
本件の争点は,本件各一部不開示決定のうち前記第1において原告が争う部
分(別紙1に記載の部分)の適法性(対象となった各行政文書の部分に記録さ
れている情報が情報公開法5条2号イの情報に該当する情報であるか否か)で
ある。
(被告の主張の要点)
(1)情報公開法の目的及び同法5条2号イの趣旨等
ア情報公開法は,行政文書の開示制度を定め,行政機関の保有する情報の
一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務
が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公
正で民主的な行政の推進に資することを目的とする(同法1条)。そして,
同法5条のいわゆる柱書きにおいて,行政文書は開示することが原則であ
ることを明示しつつ,同条各号において,私人の権利利益の保護や公益保
護のために必要な場合等に例外として不開示とすべき情報(以下「不開示
情報」という。)を定めており,開示請求に係る行政文書に不開示情報が
記載されているときは,行政機関の長は,開示請求者に対して当該情報を
開示することを禁じられていると解すべきである。
また,同法5条各号は不開示とすべき情報を規定しているが,不開示情
報は,保護すべき利益に着目して分類されたものであり,ある情報が同各
号の複数の不開示情報に該当する場合があり得るから,ある情報を開示す
る場合は,同各号のいずれにも該当しないことを確認する必要がある。
イ情報公開法5条2号イの趣旨
情報公開法5条2号イ本文は,法人その他の団体(国,独立行政法人等,
地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に
関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公にす
ることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当
な利益を害するおそれがあるものは不開示とする旨を規定している。
これは,法人等に関する情報には,営業秘密等,開示すると法人等の権
利利益を害するおそれのあるものがあるが,原則として法人等が有する正
当な権利利益は,開示することにより害されるべきではないとの考え方に
基づき規定されたものであって,「権利,競争上の地位その他正当な利益
を害するおそれ」の有無は,当該法人等と行政との関係,その活動に対す
る憲法上の特別の考慮の必要性等,それぞれの法人等及び情報の性格に応
じて,的確に判断されるべきである。
なお,上記の「競争上の地位」とは法人等又は事業を営む個人の公正な
競争関係における地位を指し,「その他正当な利益」とはノウハウ,信用
等法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。
ウ情報公開法5条2号イ該当性の判断枠組み等
情報公開訴訟においては,当該不開示決定に係る行政文書に記録された
具体的な情報の内容が明らかにされることはなく,また,一旦公開された
情報は,いかなる者の手に渡るとも限らない等のことからすると,情報公
開訴訟においては,ある情報を公にすると支障が生じるか否かの判断は,
当該情報が不特定の人,団体に取得され,利用されることを想定した一般
的,抽象的判断とならざるを得ないし,かつ,それをもって足りる。した
がって,被告が不開示情報に該当するとする情報の類型的な性質を明らか
にすることなどにより,そのような情報が公にされた場合,経験則上,支
障が生ずるおそれがあることを判断することが可能な程度の主張立証をす
れば,不開示情報該当性は肯定される。
そして,情報公開法5条2号イ所定の不開示事由は,法人等の競争上の
地位その他正当な利益に,いかなる影響がどの程度及ぶかという将来の予
測を内容とする「おそれ」の要件該当性を判断するものであり,開示実施
の任に当たる実施機関の長に要件裁量を付与したとまではいえないとして
も,少なくとも,一定の幅のある判断が許容されているのであって,その
ような幅を逸脱する判断がされた場合に限り,当該「おそれ」の要件該当
性が否定され,当該不開示処分が違法となる。
(2)本件訴えにおいて原告が本件各一部不開示決定の取消しを求める部分
(以下「原告請求部分」という。)には,いずれも情報公開法5条2号イに
該当する情報が記録されていること
原告請求部分に記録されている各情報(以下「本件各情報」という。)は,
いずれもP1あるいはその業務委託先(以下,P1と併せて「P1等」とい
う。)に関する情報であり,その具体的な内容は,別紙6「原告請求部分の
記録内容一覧(被告の主張)」の各欄に記載のとおりである。本件各情報は,
それぞれ以下に述べるとおりP1等の競争上の地位ないしノウハウ等の正当
な利益を害するものを含むから,情報公開法5条2号イの不開示情報に該当
する。
ア本件企画提案書(甲3,乙3)の不開示部分について
(ア)「1.事業の目的・内容及び実施方法」(2頁から41頁まで)の
不開示部分(以下(ア)において「本不開示部分」という。)について
本不開示部分が公になると,P1が,①本件事業が公募された背景事
情をどのように捉え,②資源エネルギー庁のニーズに応えるため,本件
事業の目的をどのように設定したかや,③企画した事業内容の基本方針,
特徴等として強調した点,④これをどのような役割分担としたか等の情
報が競業他社に判明するところ,①及び②については,本件事業の背景
事情の把握及びそれを表現するノウハウにはP1の独自性が認められ,
③のうち,企画した事業内容の基本方針については,P1が事前に情報
を収集し分析した上で独自の視点として打ち出した基本方針に係る情報
が記載されており,また,同社が特徴等として強調した点は,既に公に
なっているシステムをそのまま使うのではなく,事前の情報収集等を基
に,更にシステムを改良・強化するため,事業の目的に沿って他のサー
ビスとも組み合わせてカスタマイズした上で,独自のシステムを開発し
て提案をしているのであり,P1独自のノウハウが含まれている。そし
て,④についても,本不開示部分には,単に,外注先,専門家の縦割り
の役割分担が記載されているのではなく,情報収集からQ&A集の作成
に至るまでの間,様々なプロセスを組み合わせて成果物が正確に制作さ
れるような段取りを組んでいることが記載されているほか,トータル的
なパッケージプランが提案されており,また,それらを分かりやすくア
ピールするための表現方法にも創意工夫がされているのであって,これ
らは正にP1の独自のノウハウである。
また,本件企画提案書は提案内容全体の流れが全てつながって成立し
て評価されるものであり,その一部分の内容はそれ自体だけではさほど
重要ではないとしても,その記載が他の頁の説明や全体の流れにおいて
有効に機能することにより,本件企画提案書に価値を付加するものであ
るし,他方,その一部分が開示されることで本件企画提案書全体の解釈
が不完全に曲解される危険性もあるというべきである。
したがって,本不開示部分が公になれば,P1が,クライアントから
の業務の依頼,特に本件事業と同種又は類似の情報関連ビジネスに係る
業務の依頼に対し,どのような点に着目して,どのような特徴のある企
画を立案することができるかが競業他社にうかがい知れることとなる。
そして,競業他社がこれらの情報を知れば,これらの点を模倣したり,
これらの点を参考にしたビジネスを展開し,あるいは,P1の事業の利
点あるいは弱点などを分析・把握し,競業分野においてより競争力のあ
るビジネスを発案したり,本件事業との比較を顧客への働きかけに利用
したり,競合他社の検討等に係る時間が容易になるなど,P1との競業
事業において自社に有利又はP1に不利に利用することが考えられるか
ら,P1にとって競争上の地位ないしノウハウ等の正当な利益が害され
る(低下する)ことが容易に想定できる。
以上によれば,本不開示部分に係る情報は,情報公開法5条2号イに
該当する情報であることは明らかである。
(イ)「2.事業実施計画」(43頁及び44頁)の不開示部分(以下(イ)
において「本不開示部分」という。)について
本不開示部分には,単にスケジュールの記載だけではなく,事業全体
のパッケージにおける外注先及び有識者の役割やプロセスにおける留意
事項等P1のノウハウに係る要素が記載されているため,これらの情報
が公になると,P1が,本件事業と同種又は類似のビジネスに関し,具
体的にどのような作業につき,どの程度のスケジュールで対応すること
ができるとしていたのかや,不正確情報の分析手法とその対応等が競業
他社にうかがい知れることとなる。そうすると,競業他社が,これを模
倣したり参考にしたビジネスを検討,展開したり,より早いスケジュー
ル感でのビジネス対応や,顧客により魅力的な不正確情報の分析手法等
を提案したり,本件事業との比較を顧客への提案に際し引用したり,競
合他社の検討等に係る時間が容易になるなど,自社に有利又はP1に不
利に利用することが考えられ,P1にとって競争上の地位ないしノウハ
ウ等の正当な利益が害されることが容易に想定できる。
以上によれば,本不開示部分に係る情報が情報公開法5条2号イに該
当する情報であることは明らかである。
(ウ)原告の主張に対する反論
aP2提案書(甲4)が開示されていることについて
P2提案書に記録されている情報は,競業他社によって模倣され,
P2独自のノウハウが害されるおそれがあるといえるものではなく,
競業他社であれば一般的に考えられるような手法・内容に関するもの
であるから,個人情報を除き,そのほとんどが開示されているのであ
る(なお,同提案書には,本件事業の背景事情について,P2独自の
記載はなく,本件仕様書の事業目的及び事業内容がほぼそのまま記載
されているにすぎない。)。これに対し,P1は,本件入札に際し,
本件事業について,上記のような一般的手法だけでは解決できないと
判断し,本件事業のために独自の手法を投入して提案を実施したもの
であり,本件企画提案書の全てにわたってP1の技術ノウハウが含ま
れていることから,たとえその一部であっても開示されれば優位性・
競争性がなくなり,今後,P1にとって同種・類似の業務を実施して
いく中で中長期的な不利益につながるものである。このように,P2
提案書が全部開示されているからといって,本件企画提案書に情報公
開法5条2号イに該当する情報が記録されていないとはいえない。
b本件事業報告書と本件企画提案書の関係について
一般に,委託業務の事業報告書は,仕様書をベースとした実施計画
書を基に,実施細部については委託元と委託先が協議・確定した上で,
委託先が一定の期間内で実施した事業の取りまとめた成果を委託元に
報告するものであり,基本的に公開を前提として作成される資料であ
る。これに対し,事業提案書は,飽くまで仕様書に基づき,どのよう
な着眼点から,どのような手法を用い,また,どのような運営体制を
構築して(あるいは部分的に外注に委ね)一定の成果を上げるかにつ
いて,その企画提案で構成されているものであって,委託先が事業提
案書に記載した不開示情報と考えるノウハウ等まで,事業報告書に具
体的に記載されることは基本的には考えられないし,当該情報を記載
しないと事業報告書が成り立たないという性格のものではない。
したがって,本件事業報告書の全てが公開されていることをもって,
本件企画提案書に情報公開法5条2号イに該当する情報が記録され
ていないとはいえない。
なお,本件企画提案書の提案内容等が本件事業報告書に具体的に記
載されていないことについては,別件答申(乙1)においても明らか
にされている。
c本件採点シート(甲5)の評価について
本件採点シートにおいては,基礎点として10点が配点された全て
の項目について,5名の審査委員全員がP1とP2の双方に10点の
評価を与えているが,これは,両応札者の提案書は資源エネルギー庁
の提案要求事項に対して,最低限の要求水準を満たしていると評価さ
れたことを意味するにとどまり,両者の提案が同内容のものであった
ことを意味するものではない。なお,P2提案書(甲4)の基礎点に
おいて審査委員全員から10点の評価が与えられたのは,本件仕様書
の事業目的と同様の記載があったためであって,飽くまで最低限の要
求水準を満たしていると判断されたものにすぎない。
(エ)小括
以上のとおり,本件不開示部分のうち,本件企画提案書に係る各不開
示部分は,いずれも,P1の本件事業の計画に関する提案内容を記載し
たものであり,提案の内容等はP1やその業務委託先の同種・類似業務
に関する基本的な考え方,方針,検討の手法,着眼点,ノウハウ(構築
するウェブサイトの特徴その他の実績等を含む。),作業の段取り,使
用するシステムの特徴等を含むものである。そしてこれらの情報は,法
人であるP1に関する情報であり,公にすることにより,同種・類似業
務に際して,競合他社等に容易に模倣ないし参考とされ,あるいはこれ
らの情報を踏まえて競業他社がより有利な(P1等に不利な)ビジネス
を検討・提案したり,その違いを顧客に強調したり,より短い期間で検
討・提案が可能になる等,P1等の競争上の地位ないしノウハウ等の正
当な利益を害するおそれがあり,情報公開法5条2号イに該当する情報
である。
なお,付言すれば,本件企画提案書によるプレゼンテーションでは,
短時間で効率的かつ効果的な説明を行うために,本件企画提案書自体の
作成に当たっても,書式,見栄え等を含め,工夫を凝らし相当の労力を
かけているところ(なお,P1のホームページ上において公表されてい
る情報は,飽くまでも基本的なフレームワークにすぎないのに対し,本
件企画提案書においては,他のサービスとも組み合わせてカスタマイズ
し,独自のシステムとして提案をし,書式や見栄え等の工夫によってそ
の提案が分かりやすく効果的に理解されるようにされ,本件企画提案書
の上記不開示部分に係る情報が公になると,競業他社がP1のこのよう
な提案書作成のノウハウを模倣したり,より顧客に分かりやすく,説得
力のあるプレゼンテーション資料を作成することも考えられる。
したがって,この点でもP1の競争上の地位ないしノウハウ等の正当
な利益を害するおそれがある。
イ本件支出計画書及び本件履行体制図(甲7)の不開示部分(以下イにお
いて「本不開示部分」という。)について
(ア)本不開示部分に記録されているのは,いずれも法人であるP1等に
関する情報であって,公にされていない,又は公にされることが予定さ
れていない内部管理情報であり,これが公になれば,本件支出計画書に
ついてはP1の同種・類似の業務に際し通常かかるコストやそれを踏ま
えた提案金額が,本件履行体制図についてはP1の運営体制,外注先と
の分担内容(自ら実施することができる業務と外注を要する業務の内容,
外注する場合の負担金額等)が,それぞれうかがい知れることとなり,
競業他社が類似のビジネス等に際し,より有利なコストでの業務を検討,
提案,実施したり,運営体制や外注先について,P1を模倣ないし参考
としたり,より顧客誘引力のある内容としたり,P1との違いを顧客に
強調したり,より短い時間で関連業務の検討,提案等をするなど,P1
に不利又は競業他社に有利となるよう用いることによって,P1の競争
上の地位ないしノウハウ等の正当な利益を害するおそれがある。
(イ)原告の主張に対する反論
本件事業の事業費の総額が市場価格の相場に基づくものであるとして
も,その積算内訳あるいは外注費の内訳まで,市場において一般に同種・
類似の業務に際し通常かかるコストであると断ずるのは,通常の商取引
の実態を無視した主張にすぎない。一般に,提案者の運営体制の創意工
夫,あるいは外注先との分担関係等によって,応札価格は左右されると
ころ,競業他社は,公となった落札価格から,人件費や事業費,あるい
は外注費等の内訳がそれぞれどのような構成・金額となっていれば,結
果的にこのような総額(落札価格)となるのかに関心を示すものである。
そして,本不開示部分は,P1がどういった運営体制の創意工夫をし,
外注先との分担内容・外注金額をどのように考えているかに関する情報
が記録されているのであり,それこそP1の内部管理情報である。更に
いえば,本件支出計画書中の「事業費」の内訳において,「外注費」と
して「(6)情報分析費」と[(7)ウェブサイト作成,情報発信費」の費目
が公になっているからといって,その各金額を公にしてもよいというも
のではなく,外注費の内訳費用は,外注先との価格交渉の結果であって,
その金額自体は競業他社に知られたくない内部管理情報そのものという
べきである。
また,事業内容の一部変更及び事業費の変更については,後記(3)に述
べるとおり,P1は本件事業のうち未実施分の費用の支払を受けていな
い。
そもそも,原告が主張する本件事業に関する説明責任が国やP1にあ
るか否かということと,本不開示部分に情報公開法5条2号イに該当す
る情報が含まれる否かということは別次元の議論である。
(ウ)以上によれば,本件支出計画書及び本件履行体制図は,情報公開法
5条2号イに該当する情報である。
ウ本件フロー確認資料(甲8)の不開示部分(以下ウにおいて「本不開示
部分」という。)について
本件フロー確認資料は,資源エネルギー庁がP1と本件事業の進め方の
打ち合わせをした際に同社から提出された資料であり,本不開示部分には,
P1による本件事業に関する提案内容のうち,P1が使用するノウハウ,
システムの内容,外注先の名称,運営組織体制及び予定している業務のう
ち特筆すべき点が記載されている。これらには,P1がニュースリリース
で公にしたシステムを,他のサービスとも組み合わせてカスタマイズした
上で,独自のシステムとして提案した内容及び外注先等との役割分担など,
本件企画提案書でP1が提示したトータルパッケージプランの一端に関す
る情報が記録されている。そのシステムの開発やトータルパッケージプラ
ンを分かりやすくアピールするための表現方法は,P1独自のノウハウで
ある。
したがって,当該情報は,法人であるP1等に関する情報であり,公に
することにより,類似のビジネス等において,競合他社等に模倣ないし参
考とされたり,競合他社がより顧客に有利な提案をしたり,その違いを顧
客に強調したり,より短い時間での検討・提案が可能になることが考えら
れ,P1の競争上の地位ないしノウハウ等の正当な利益を害するおそれが
あるものであり,情報公開法5条2号イに該当する情報である。
エ本件委託業務経費(甲10)の不開示部分(以下エにおいて「本不開示
部分」という。)について
(ア)本件実績報告書は,P1が本件事業の終了に際してその実績結果を
まとめて資源エネルギー庁に報告した文書であり,本不開示部分には,
実際に本件事業に要した経費及び支出のうち,事業費の内訳の具体的な
金額が記載されており,これも,法人であるP1に関する情報であって,
公にされていない,又は公にされることが予定されていない内部管理情
報であり,これが公になれば,P1の業務に関し,当初の見積りとの差
異がうかがい知れることとなる。それにより,競業他社がP1よりも優
位なコストを検討,提案,実施し,あるいは,P1との差異を顧客に対
して強調したり,コストの見通し等がより簡単になるなど,P1に不利
又は競業他社に有利となるよう利用することが考えられ,P1の競争上
の地位ないしノウハウ等の正当な利益を害する。
(イ)原告の主張に対する反論
前記イ(イ)で述べたところと同様である。
(ウ)以上によれば,本不開示部分は情報公開法5条2号イ所定に該当す
る情報である。
(3)P1には,本件各情報について公にされない正当な利益があること
原告は,P1には,本件仕様書ないし本件実施計画書に変更があったにも
かかわらず,計画変更承認申請書が提出されていないのは契約違反であり,
かかる契約違反のあるP1において,本件不開示部分を公にされない正当な
利益はないなどと主張するが,契約違反があれば,当該企業の競争上の地位
等は情報公開法上の保護に値しないなどというのは情報公開法の解釈として
到底採用できない。その点をおくとしても,本件事業の実施に当たり,P1
に契約違反はなかったのであり,その意味においても,原告の上記主張は失
当である。
本件事業の遂行に関し,実施計画書に記載したとおりの事業内容が実施で
きなかった部分はあったが,これは,本件委託契約の締結時に予測できなか
ったやむを得ない事由が発生したことによるものであって,同庁の了解の上
でのことである。同庁がP1に対して委託契約の変更を求めなかったのは,
そのような手続を待つまでもなく所期の事業目的(Q&A集の作成・公表)
は達成できると判断することができたためであり,最終的には,上記のとお
り,事業期間内にはQ&A集を作成し,ホームページに掲載することができ
たことにより,本件事業の所期の目的は達成した。そして,同庁は,当初の
支出計画書に予算計上された事業のうち,ホームページ(ウェブサイト)制
作等を取りやめたことや,最終的な作成問数が減ったことを反映して,契約
金額から支払金額を減額している。
(4)まとめ
以上のとおり,本件各情報は,いずれも情報公開法5条2号イに該当する
情報であるから,本件各一部不開示決定のうち本件各情報に係る各部分は適
法である。
(原告の主張の要点)
本件各情報を開示することにより,これらを入手した他の者によりP1の権
利,競争上の地位その他正当な利益が害される具体的な危険性は何ら明らかで
はないから,本件各情報は情報公開法5条2号イの不開示情報には該当しな
い。
(1)本件企画提案書(甲3,乙3)の不開示部分について
ア本件企画提案書の不開示部分には,P1の競争上の地位その他正当な利
益を害するおそれのある情報は記録されていないこと
(ア)「本件事業の目的,内容及び実施方法」(2頁から41頁)中の事
業目的及び背景事情の不開示部分(後記(イ)及び(ウ)の部分を除く。)
について
本件事業の目的及び事業内容は,本件仕様書(甲15)において明確
かつ具体的に掲げられており,留意点までに細かに指示されていて,そ
の背景事情の捉え方,基本方針等もそれに沿ったものとなり,その捉え
方について応募者ごとに独自の差異が生じるものではなく,これについ
ての情報が開示されたとしてもP1の競争上の地位ないしノウハウ等の
正当な利益を害するおそれがあるとはいえない。
このことは,本件採点シート(甲5)に明らかである。すなわち,本
件採点シートによれば,審査には「基礎点」と「加点」があり,審査項
目によってどちらか一方だけのもの,両方のものがある。「事業の目的」
の項目は,基礎点しか配分されておらず加点の評価対象にはなっていな
い。基礎点については,「事業の目的が資源エネルギー庁の広報目的に
合致しているか」との評価基準が設定されており,配点は10点である
ところ,5名の審査委員全員がP1とP2の双方に10点の評価をして
おり,両者には全く差異が生じていない。この基礎点については,他の
4つの採点対象項目についても,全て,5名の審査委員全員がP1とP
2の双方に各10点の配点に対して10点の評価をしている。このよう
に,設定された評価基準に照らし競合他社との間に差が生じず,かつ,
加点評価の対象となっていない項目については,情報の性質上,その内
容が公開されたからといって,P1の競争上の地位ないしノウハウ等を
害するおそれがあるといえないことは明らかである。
(イ)「1.事業の目的,内容及び実施方法」(2頁から41頁まで)中
の役割分担及び「2.事業実施計画」(43頁から44頁まで)の不開
示部分(後記(ウ)の部分を除く。)について
役割分担については,①本件支出計画書(甲7の別紙1の別添)の開
示部分には,「外注費」として「(6)情報分析費」と「(7)ウェブサイト
制作,情報発信費」が掲載されていることから,本件企画提案書ではこれ
らが外注の役割分担とされていることは明らかであり,また,②本件仕
様書(甲15)の内容に照らすと,Q&A集の作成は専門家による役割
分担とされていると考えられる。
事業実施計画については,本件事業は,本件仕様書(甲15)におい
て,実施対象とされている特定の時期に,具体的にどのような作業を行
うのかが示されているのだから,その仕様に従ったスケジュールが競合
他社等に公になったからといって,P1にとって競争上の地位ないしノ
ウハウ等の正当な利益が害されることが容易に想定できるとはいえない。
しかも,本件企画提案書の43頁は「2.事案実施計画」中の「事業全
体スケジュール」,44頁は同じく「通常運営作業段階での基本となる
対応スケジュール」の頁であり,かかる情報はいずれもスケジュールレ
ベルのものであって,それが競合他社等に公になったからといって,P
1にとって競争上の地位ないしノウハウ等の正当な利益が害されること
が容易に想定できるとは到底いえない。
さらに,本件採点シートにおいても,これらに関する項目は加点評価
の対象となっておらず,差がつくことが予定されていない項目であり,
実際にも差がついていないのであって,そもそも独自性を要する項目で
はないことは前記(ア)と同様である。したがって,情報の性質上,公開
されてもP1の競争上の地位ないしノウハウ等を害するおそれがあると
いえない。
(ウ)「1.事業の目的,内容及び実施方法」(2頁から41頁まで)中
の企画した事業内容の基本方針,特徴等として強調した点の不開示部
分について
a本件企画提案書2頁から41頁までに記載されているというP1が
企画した事業内容の基本方針,特徴等として強調した点についても,
本件事業の背景や目的は,本件仕様書(甲15)の「事業目的」に記
載されたとおりであって,一義的であるから,それを実施する基本方
針も応募者ごとに差異が生じるものではない。仮にこの部分にP1が
時間と費用を投じていたとしてもそれ自体は不開示事由ではないし,
それをもって情報の性質が変わって不開示情報に該当することもない。
bまた,P1が本件企画提案書において独自のシステムないし特徴と
して強調した点とは,P1が確立したという「○」なるサイトパトロ
ールシステムに関するものであると推察されるところ,P1は,既に
平成22年9月16日付けニュースリリース(甲26。以下「本件ニ
ュースリリース」という。)においてこれについて詳細に発表してい
る。仮に本件事業のためにカスタマイズしているとしても,その中心
は,上記のとおり既に公になっている上記のシステムに関するもので
あるから,本件企画提案書に記録されているP1が企画した事業内容
の基本方針,特徴等として強調した点に関する情報が競合他社等に公
になったからといって,P1の競争上の地位ないしノウハウ等を害す
るおそれがあるとはいえない。
(エ)本件企画提案書の書式等について
本件企画提案書の書式,見栄え等の工夫についても,P1は,そのホ
ームページにおいて自社のプランニングの考え方,視点等を公表し,一
例としてダイレクトコミュニケーションの手法等について,工夫を凝ら
した画面構成で公開し,見る者にプレゼンテーションしている。このよ
うに,P1は,本件企画提案書の不開示部分が公表されることによって
競合他社が容易に模倣できる程度のノウハウ以上のものを公開している
のだから,被告が述べるようなおそれは認められない。
(オ)P2提案書が全部公開されていること
本件企画提案書の不開示部分の情報は,開示されてもP1の競争上の
地位ないしノウハウ等の正当な利益を害するおそれがあるとはいえない
ことは,P2提案書については,情報公開法5条2号イに該当するとし
て不開示とされた部分はないことからも明らかである。
仮に,本件事業における事業の背景事情や目的の捉え方,情報の分析
の手法等が,それを模倣されることで競争上の地位やノウハウが害され
るおそれがあるようなものであれば,P2提案書についても非公開とさ
れているはずである。しかし,本件事業ないしその提案書における情報
は,そうした類のものではないから,P2提案書については全てが公開
されているのである。
P1が本件事業のために投入したという独自の手法についても,前記
のとおり,既に公にされているシステムが中心となるものであるから,
P2提案書とP1企画提案書を別異に取り扱う理由とはならない。
(カ)本件企画提案書は,本件事業を落札できた場合には,公となること
が前提となったこと
本件企画提案書は,本件事業の入札時に提出されたものであって,落
札できた場合には本件企画提案書に沿って本件事業が実施され,実施し
た内容は本件事業報告書によって公表されることとなっているのである
から,本件企画提案書の内容は,本来は,本件事業を落札できた場合に
は公になることが前提となっていたといえる。
実際,本件事業の終了後にP1が作成した本件事業報告書(甲9)は,
経済産業省のホームページにおいて,その全部が公開されており,本件
企画提案書の不開示部分に記載されているとされる情報である①P1が,
不正確情報対応事業が公募された背景事情をどのように捉え,資源エネ
ルギー庁のニーズに応えるため,本件事業の目的をどのように設定した
か,②企画した事業内容の基本方針,特徴等として強調した点,③これ
をどのような役割分担としたかに対応する各項目が記載されているとこ
ろ,①については,本件事業報告書の「1.はじめに」のうち「1.1
目的」中の「(1)事業の背景」(1頁)及び「(2)事業の目的」(同前)
に対応し,事業の目的の背景事情の捉え方が本件事業の提案時とその数
か月後の実施時とで異なるとはおよそ考えられないし,本件事業の目的
の設定についても,飽くまで本件仕様書に記載された本件事業の目的を
踏まえてされるのだから,提案時と実施時とで異なることは通常考えら
れない。②についても,本件事業報告書の「1.はじめに」のうち「1.
2実施報告」(2頁)及び「1.3留意点」(同前),「2.インター
ネット上の書き込みの収集」のうち「2.1収集における基本的な考え
方」(4頁),「3.Qの作成」のうち「3.1Q作成に関する基本的
な考え方」(20頁)並びに「4.回答の作成」のうち「4.1A作成
における基本的な考え方」(21頁)に対応し,資源エネルギー庁は,
本件企画提案書の基本方針や特徴として強調されている点を評価し,P
1を落札業者としたのだから,これらが実際に実行されて本件事業報告
書に記載されているのが通常である。また,③についても,本件事業報
告書の6頁及び21頁に対応する記述があり,役割分担にのっとって事
業が実施され,本件事業報告書に記載されるのが通常である。
このように,競業他社等は,本件事業報告書をみれば,P1が本件事
業をどのように捉え,どのように役割分担し,どのようなノウハウ,方
法をもってして実施したか等は容易に分かる。
したがって,既に本件事業が終了し,本件事業報告書が公開されてい
る状況で,本件企画提案書の不開示部分が競合他社等に公開されたから
といって,P1の競争上の地位ないしノウハウ等の正当な利益が害され
る(低下する)ことが容易に想定できるとはいえない。
この点,別件答申(乙1)において,本件企画提案書と本件事業報告
書の記載が実際に確認され,本件企画提案書に記載されている提案内容
等は,本件事業報告書には具体的に記載されておらず,本件事業実施後
も公にされていないとされている。
しかし,P1が本件事業をどのように捉え,どのように役割分担し,
どのようなノウハウ,方法をもってして実施したか等が本件事業報告書
(甲9)に記載され公表されているということは,これらの情報は,そ
の情報の性質において,秘密保持が要求される「営業秘密」とはいえな
いものということになる。そのような性質の情報である以上,それがこ
れまで公表されていなかったということによって営業秘密になるもので
はなく,当該情報が開示されたとしても,P1の「正当な利益」を害す
るおそれがあるとはいえない。
また,既述のように,本件企画提案書の記載と本件事業報告書の記載
は,基本的に同様のものになるはずであって,本件事業の内容が本件委
託契約所定の正式な手続を経ずして変更されてしまったために本件事業
報告書に別の記載がされているとしても,そのことにより本件企画提案
書に記録されている情報を不開示とすることはできないことは,下記イ
に述べるとおりである。
(キ)全般を不開示にすることは不合理であること
仮に,本件企画提案書にP1独自のノウハウ等といえるものが記載さ
れていたとしても,本件事業は,提案の全てを不開示としなければノウ
ハウ等が守れない企業秘密を事業の全般に使用するようなものではない
し,前記のとおり,そもそも本件企画提案書には,これまで述べてきた
とおり,応募者によって独自性や差異が生じることのない事項が多くあ
る。それにもかかわらず,本件企画提案書の全般が情報公開法5条2号
イに該当するとして不開示とされていることは,明らかに不合理である。
この点,被告は,本件企画提案書は提案内容全体の流れが全てつなが
って成立して評価されるものであり,その一部分の内容はそれ自体だけ
ではさほど重要ではないとしても,その記載が他の頁の説明や全体の流
れにおいて有効に機能することにより,本件企画提案書に価値を付加す
るものであるし,他方,その一部分が開示されることで本件企画提案書
全体の解釈が不完全に曲解される危険性もあるというべきと主張するが,
同法はかかる危険性を不開示事由とはしていない。
そもそも,同法は,国民主権の理念にのっとり,行政機関の保有する
情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明
する責務が全うされるようにするとともに,国民の適確な理解と批判の
下にある公正で民主的な行政の推進に資するために,行政文書について
公開を原則としているのであって,例外である同法5条2号イに規定さ
れる不開示情報に当たるというためには,単なる確率的な可能性ではな
く法的保護に値する蓋然性が必要であり,その判断は,処分行政庁の裁
量判断に委ねられるべきものではなく客観的になされなければならない。
本件企画提案書の不開示部分のうち,原告が不開示決定を求める部分
の全てにおいて,公にすることによりP1の競争上の地位ないしその他
正当な利益が害される単なる確率的な可能性ではない,法的保護に値す
る蓋然性が客観的に認められるとは到底いえない。
イP1には,本件企画提案書の不開示部分を公にすることにより害される
「正当な利益」はないこと,
(ア)本件事業は,当初予定されていた事業内容が変更され,ツイッター
やブログなどインターネット上の原子力等に関する情報を,十分な人員
にて常時モニタリングし,風評被害を招くおそれのある不正確な情報又
は不適切な情報を調査・分析し,かかる情報に対して,速やかに,原則
として即座に,正確な情報提供をするために質疑応答集を作成し,資源
エネルギー庁ホームページやツイッター等に掲載するという事業(以下
「速やかな情報提供」という。)は行われず,100問以上のQ&A集
を作成するはずであったものが64問しか作成されなかったものである
ところ,以上の事情に照らせば,本件企画提案書(甲3,乙3)の事業
内容はそもそも実現可能であったのかが検討されなければならないが,
本件企画提案書の不開示部分が開示されないということは,P1がこの
検討を免れるということである。
また,上記の本件事業の内容の変更は,「事業内容の軽微な変更」(本
件委託契約4条1項)とはいえず,P1は,本件委託契約所定の計画変
更承認申請書を資源エネルギー庁に提出し,その承認を受ける義務を負
うところ(同項),同社はこれらの手続をしていない。かかる違反は,
本件委託契約の解除事由に該当し,その場合,資源エネルギー庁はP1
に対して委託金その他それまでに履行された委託業務の対価及び費用を
支払う義務を負わない(同契約18条1項4号)。
このように,同契約上の違反があるP1において,かかる違反ゆえに
本件事業報告書に記載されなかった本件企画提案書の内容について,公
にされない正当な利益はない。
なお,政府の予算又は政策の重大な変更があった場合や,契約締結当
時に予測できない事情若しくは直接P1の責めに帰さないやむを得ない
事由が発生した場合には,資源エネルギー庁からP1に対して必要な範
囲で実施計画の変更を求めることができるが(同契約4条3項),本件
事業の予算は平成23年度第一次補正予算で組まれ,同補正予算で実施
されており(甲27),予算の変更があったとは認められない。また,
同年8月12日の同契約の締結から平成24年3月30日の本件委託契
約の終了までの間に,政策の重大な変更がされた等の事実もない。以上
によれば,資源エネルギー庁は,同契約の解除はせず,P1に対し委託
金を支払ったことについて説明責任を負う(同契約12条1項,同14
条。甲7)。
別件答申(乙1)においては,単に本件企画提案書と本件事業報告書
の記載内容が比較されただけで,その意味ないしP1に正当な利益が認
められるかといった点については問題とされておらず,一切検討されて
いない。したがって,別件答申の結果をもって,本件訴えにおいて本件
企画提案書に係る不開示処分を適法と判断することはできない。
(イ)被告は,本件事業の実現不能ないし変更について,本件委託契約の
締結時に予測できなかったやむを得ない事由が発生したことによるもの
であり,資源エネルギー庁も了解している,契約締結後,予期し得なか
った事情が発生したにもかかわらず,資源エネルギー庁がP1に対して
委託契約の変更を求めなかったのは,そのような手続を待つまでもなく
所期の事業目的(質疑応答集の作成・公表)を達成できると判断するこ
とができたためであり,P1に同契約の義務に係る違反行為はないと主
張するが,本件実施計画書に記載された事業内容のうち,「速やかな情
報提供」の取りやめという変更とそれに対する資源エネルギー庁の了承
があったにもかかわらず,委託契約書に定められた契約変更の手続をと
らなかったということは極めて不合理,不自然であり,それ自体,官公
庁における委託事業の手続としてあり得ないことである。
また,本件事業の所期の事業目的が「質疑応答集の作成・公表」では
ないことは,本件仕様書(甲15)だけでなく,獲得予算のPR資料と
して経済産業省が作成した「平成23年度経済産業省関連一次補正予算
資料集」(甲29)に照らしても明白である。同資料集において,本件
事業は「インターネット上に流れる不正確な情報を随時監視し,それに
対して正確な情報を速やかに提供することで,風評被害を防止(する)」
事業として予算を獲得した旨記載されている。被告の主張は,本件事業
の所期の事業目的という重要な点において,資源エネルギー庁作成の本
件仕様書の記載とも,予算についての経済産業省作成の資料とも合致し
ていない。
さらに,被告は,本件訴えにおける原告からの求釈明に対し,本件実
施計画書の一部変更に関する文書(変更について資源エネルギー庁とP
1との合意ないし資源エネルギー庁の了解があることを証する文書,ま
た,それらの合意ないし了解に至るまでの連絡・調整に関する文書や,
資源エネルギー庁内部の決裁文書)は存在しないと回答したが,本件実
績報告書(甲10)によれば,資源エネルギー庁とP1は,本件委託契
約締結後,完了まで,「業務の進ちょく状況」について毎月1回合計8
回の打合せを行っている。その連絡事項は,「全体スケジュールの確認,
Q&A進捗に関する打合せ」,「事業報告書についての打合せ」などと
されている。これらをテーマに進捗状況について月1回打合せを行って
いながら,「実施計画書の一部変更に関する文書」が一切存在しないと
いうのは,官公庁における委託事業の進行,管理上あり得ない事態であ
る。
以上のとおり,①本件事業の事業内容の変更が生じることとなった理
由,②本件委託契約の変更手続を求めなかった理由,③これらに関連す
る文書が一切存在しないとの被告の主張はいずれも極めて不自然である
上,本件企画提案書(甲3)は全般に不開示とされており,不自然に広
範であることからすれば,本件においては,当初計画された本件事業が
表現の自由という憲法上保障された重要な人権に関わる問題のあるもの
であった可能性があり,そのまま実施すると批判を受けるおそれがあっ
たために,本件委託契約上の変更手続を行わず変更記録を一切残さない
という極めて異例で,ずさんな処理により,その内容を密かに変更した
疑いがあるといわざるを得ない。
以上によれば,当初予定していた本件事業の内容については,明らか
にされるべき社会的必要性と国の説明責任がある。そして,P1は,国
から委託され税金をもって公の事業を行ったのだから,かかる点につい
てはP1にも説明責任があるというべきであって,情報公開法の趣旨(1
条)に照らせば,本件企画提案書の不開示部分のうち,原告の求める部
分が公にされたからといって,P1の「正当な利益」を害するとはいえ
ない。
(2)本件支出計画書及び本件履行体制図の不開示部分について
ア本件支出計画書及び本件履行体制図には,P1の競争上の地位その他正
当な利益を害するおそれのある情報は記録されていないこと
P1と外注先との分担内容については,本件支出計画書の「事業費」の
「内訳」に「外注費」として「(6)情報分析費」と「(7)ウェブサイト作成,
情報発信費」が計上されており(甲7),公になっている。
また,官公庁における競争入札においては,あらかじめ市場価格を調査
した上で相場に基づき予定価格が定められるところ,本件事業の予定価格
は8126万4742円(甲6)であったのだから,P1の落札価格74
02万5000円は市場価格の相場に基づくものであるといえる。
したがって,本件支出計画書の事業費の金額及び積算内訳並びに本件履
行体制図の契約金額及び業務の範囲が公になったとしても,それは市場に
おいて一般に同種・類似の業務に際し通常かかるコストについての情報に
すぎないから,P1の競争上の地位,ノウハウを害するおそれのある情報
であるとはいえない。
なお,被告は,本件委託契約は上記のP1の落札価格である7402万
5000円で契約されたが,ホームページ制作を取り止めたこと(この点
については本件委託契約書に基づく正式な変更手続がされている。),Q
&Aの作成が100問から64問となったことから,最終的に本件事業の
委託金額として5575万7915円が支払われた旨を主張するが,本件
事業の変更点はそれだけではなく,本件実施計画書に記載された事業の一
部である速やかな情報提供も実施されていないから,この未実施部分に係
る費用についても減額されるべきであるところ,これがされたかは,本件
支出計画書に記載されている事業費の金額及び積算内訳並びに本件履行体
制図に記載されている契約金額及び業務の範囲と,本件委託業務経費の項
目に記載されている実際に支払われた事業費の積算内訳と比較することで
検討可能となるが,それらは全て非開示とされている。
イP1に正当な利益がないこと
被告は,本件支出計画書及び本件履行体制図の各不開示部分について,
P1がどういった運営体制の創意工夫をし,外注先との分担内容・外注金
額をどのように考えているかを示すものであり,それこそP1の内部管理
情報であるなどと主張するが,P1は公の事業を国から委託されたのであ
って,実施していない事業分について税金から支払を受けることはできず,
前記(1)イにおいて述べたように,P1においても未実施分の費用について
説明責任があるというべきであるし,国においても説明責任があることは
いうまでもないのであるから,情報公開法の趣旨(1条)に照らし,本件
支出計画書及び本件履行体制図について,原告の求める不開示部分が公に
されたからといって,P1の「正当な利益」を害するとはいえない。
(3)本件フロー確認資料の不開示部分について
別件答申によれば,本件フロー確認資料は,本件仕様書に沿った本件事業
の事業フローを記載した文書であり,その不開示部分には本件企画提案書(甲
3・乙3)に記載されている具体的提案の内容が記載されているというので
あるから(乙1),本件企画提案書の不開示部分について述べたことがその
まま妥当するのであって,本件フロー確認資料の不開示部分を公にしたとし
ても,P1の競争上の地位ないしノウハウ等の利益を害するおそれがある情
報であるとはいえない。
また,本件事業が正式な手続を経ずして変更されてしまったために本件事
業報告書に別の記載がされているとしても,そのことにより契約違反のため
に公にならなかった情報を不開示とすることはできないことは,前記(1)イで
述べたとおりである。
(4)本件委託業務経費の不開示部分について
ア本件委託業務経費はP1の競争上の地位その他の利益を害するおそれが
ある情報とはいえないこと
前記(2)で述べたとおり,本件事業のコストは,相場に基づくものであり,
市場において一般に同種・類似の業務に際し通常かかるコストであって,
これが明らかになったからといってP1の競争上の地位ないしノウハウ等
の正当な利益を害するおそれがあるとはいえない。また,当初の見積もり
との差異についても,被告によれば,ホームページの外注の取りやめ,Q
&A集の作問の数の減少という理由によるものであって,差異が公になっ
たとしてもP1の競争上の地位ないしノウハウ等を害するおそれがあると
はいえない。
イP1には,「正当な利益」があるとはいえないこと
本件業務委託経費に関する情報も,本件事業が本件仕様書や本件実施計
画書どおりに実施されていれば,本件事業報告書(甲9)に記載されてい
たはずのものであり,本件事業においてP1に契約違反があり,かかる違
反ゆえに本件事業報告書に記載されず公にならなかったのであるから,P
1には不開示部分について公にされない正当な利益はないことは,前記(1)
イで述べたことと同様である。
第3当裁判所の判断
1情報公開法5条2号イの規定の解釈等について
情報公開法5条2号イは,法人等に関する情報であって,公にすることによ
り,当該法人等の「権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあ
るもの」を不開示情報としているところ,これに該当する情報については,営
業上の秘密,ノウハウなど同業者との競争上,当該法人において,特に秘匿を
必要とする情報や,当該法人等の社会的地位が低下するなどの不利益を生じさ
せる情報が広く含まれるというべきである。また,「正当な利益を害するおそ
れがある」とは,同法が国民主権の理念から行政文書について開示を原則とし
ていること(同法1条,5条のいわゆる柱書き)からすれば,当該情報を公に
することにより,単に行政機関の主観においてその利益が害されるおそれがあ
ると判断されるだけではなく,法人等の正当な利益が害されるという相当の蓋
然性が客観的に認められることが必要であるというべきである。そして,その
判断に当たっては,当該情報の一般的な性質に照らし,当該法人等のそのよう
な利益を害する蓋然性があるか否かを客観的に判断することが相当であると
解される。以上を前提に,以下検討する。
2本件各情報の情報公開法5条2号イ該当性について
(1)本件企画提案書の不開示部分に係る情報について
ア本件事業は,いわゆる総合評価落札方式による入札の方法により一般競
争に付されたものであるところ(前提事実(1)ア(ア)),経済産業省が採用
している総合評価落札方式については,予定価格の制限の範囲内で最低の
価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするいわゆる自動落札方式
(会計法29条の6第1項)と異なり,競争に加わろうとする事業者等に
対して技術提案を求め,事前にその評価項目,評価基準等を公表した上で,
価格と品質が総合的に優れた内容の提案をした者を落札者とする方式であ
り,具体的には,価格以外の要素に係る評価点(技術点)と入札価格に係
る評価点(価格点)を計算した上で(評価点と技術点は契約ごとに一定の
割合で得点の配分がされる。),これらを合計した得点が当該入札者の総
合評価点となり,この総合評価点が最も高い者が最終的な落札者として決
定される。技術点は,入札する事業者等が公表された仕様書に基づき作成
した提案書を数名の審査員が審査した採点の平均点とされる。
また,落札のために必ず満たさなければならない要件として,①入札価
格が予定価格の制限の範囲内であること及び②技術点の評価項目の中に設
定された「必須項目」における最低限の要求水準を全て満たしていること
が必要である。「必須項目」とされた項目について,最低限の要求水準を
満たしているものについては,「合格」として,一定の得点が付与され,
これを「基礎点」と呼び,「必須項目」について基礎点が与えられる状態
を基準として更に優れた提案が行われたときには,その提案内容に応じて,
基礎点から更に加点がされ,その場合には,基礎点と上記加点の合計が必
須項目の得点となる。他方,必須項目のうち1項目でも最低限の要求水準
に達していないものがあれば,当該事業の確実な遂行が危ぶまれるとして,
直ちに不合格とされる。また,技術点の評価項目のうちの「必須項目以外
の項目」については,基礎点がなく,その提案の内容に応じて,全て加点
がされる。
総合評価落札方式による入札から契約までの手続については,大要,①
入札の公告,②入札説明会,③入札,④技術審査,⑤開札(落札者の決定),
⑥契約の締結及び⑦入札結果の公表という各段階がある。技術評価の評価
項目,評価基準,それぞれの項目についての配点及び評価手順は,入札説
明会において事前に公表するものとされおり,民間事業者等は,技術提案
をするに際して,必須項目についてもあらかじめ知ることができる。
また,入札結果は,経済産業省のホームページで審査の内容も含め公表
される。(乙1,5)
イ本件事業の評価項目等について
本件入札公告(甲14)においては,本件入札の競争に加わろうとする
者は,入札書の提出期限である平成23年7月13日までに本件仕様書に
基づいて作成した提案書を入札書に添付して提出し,技術審査を受けなけ
ればならないとされていたものであり(前提事実(1)ア(ア),乙1),本件
仕様書(甲15)には,「事業目的」,「事業内容」及び「提案事項」と
して前提事実(1)ア(ア)のとおりの記載がある。
また,本件事業については,技術審査における評価項目として,別紙7
「評価項目一覧」(以下単に「別紙7」という。)のとおりの評価項目(評
価項目は提案書の目次としても指定されている。),各評価項目に対応し
た「得点配分」並びに基礎点及び加点のそれぞれに対する「内部用評価基
準」が設定され,各評価項目に対応した「提案要求事項」を含むその一覧
表(以下「本件評価項目一覧」という。)が本件仕様書と同時に公表され
ていた(甲5,乙1)。
ウ本件企画提案書は,P1が本件入札について入札書に添付して資源エネ
ルギー庁に提出し,同庁による技術審査における評価の対象となったもの
であり(前提事実(1)ア(イ)),その目次については,「1.1事業の実施
目的,内容及び実施方法」(2頁から41頁まで),「2.事業実施計画」
(42頁から44頁まで),「3.事業実施体制」(45頁から78頁ま
で),「4.添付資料」(80頁及び82頁),「5.担当者連絡先」(8
3頁)及び「6.参考資料」(84頁)との大項目(最初の3項目は本件
評価項目一覧の大項目に対応)が設けられ,最初の3項目中に,「1.1
事業の目的」(2頁から4頁まで),「1.2事業内容」(5頁から41
頁まで),「2.1事業実施計画」(43頁及び44頁まで),「3.1
実施体制・役割分担」(46頁),「3.2組織としての専門性,類似事
業実績」(47頁から74頁まで),「3.3事業従事予定者の専門性,
類似事業実績」(75頁及び76頁)及び「3.4事業遂行のための経営
基盤・管理体制」(77頁及び78頁)との中項目(本件評価項目一覧の
中項目に対応)が設けられ,各中項目の中には更に細項目が設けられてい
る(甲3,5,乙3)。
エ本件企画提案書の3頁及び4頁(以下エにおいて「本各頁」という。)
の不開示部分に記録されている情報について
(ア)記録されている情報の内容について
本各頁のうち3頁は,本件企画提案書のうち,大項目「1.事業の目
的,内容及び実施方法」中の中項目「1.1事業の目的」に属する細項
目である「1.1与件の整理」(2頁)において本件仕様書に記載され
た事業の目的及び事業内容(前提事実(1)ア(ア))が掲げられているのに
続いて,上記の中項目に属する細項目である「事業の背景」に対応する
部分であり,同じく4頁は,上記の中項目に属する細項目である「事業
のゴールと検討フロー」に対応する部分であることが認められることか
らすれば(甲3),本各頁には,本件評価項目一覧の中項目である「事
業の目的」に関し,先に掲げた各細項目の見出しを反映し,P1の提案
事項の前提を成すものとして,同社の認識するところによる本件事業の
背景となる事情及び本件事業において達成すべき目標に関する情報並び
にP1におけるこれらの点についての事前の検討の作業の流れに関する
情報が記録されていることが推認される。
(イ)情報公開法5条2号イ該当性について
a本各頁に記録されている情報の内容は,前記(ア)に認定したとおり
であるところ,P1の作成に係る本件企画提案書と並んで本件入札に
応じて提出されたP2提案書(甲4)には,これに対応すると考えら
れる記述は格別見当たらないことや,本各頁に記録されている情報に
ついては,その内容とされているところを本件企画提案書の続く記述
の前提として示すことにより,P1が本件事業の目的及び内容を深く
理解し,その背景となる事情に即しその目的の達成に向けて信頼する
に足りる事業の遂行の見通し及び計画を有しており,これを担当する
にふさわしい適格を有していることを,本件企画提案書の技術審査に
当たり審査員に説得的に訴えるものであると認めるのが相当であるこ
とに照らすと,当該情報に関しては,そのような性質及び内容のもの
として,その様式等を含め,P1の各種の創意工夫が盛り込まれてお
り,また,後のオに述べるようにP1の独自のノウハウ等に関する情
報が具体的に記録されている本各頁に続く部分の記述を反映した記述
も含まれているものと推認するのが相当であって,本各頁に記録され
ている情報が公にされると,P1のこれらの事項に係る正当な利益が
害されるおそれがあると認められるものというべきである。
このように認定判断することは,別件各一部不開示決定についての
異議申立てに関し,情報公開・個人情報保護審査会が,本件企画提案
書を見分した上で,本各頁に記録されている情報を開示しないものと
した同決定を維持する旨の内容の別件答申をしていること(前提事実
(3)イ)によっても裏付けられるものというべきである。
b原告は,①本件事業の目的及び事業内容は本件仕様書(甲15)に
おいて明確かつ具体的に掲げられており,その背景事情の捉え方,基
本方針もそれに沿ったものとなり,その捉え方について応募者ごとに
独自の差異が生じるものではないとし,②このことは,本件採点シー
ト(甲5)において「事業の目的」には基礎点しか配分されておらず,
この事項に関しては本件企画提案書とP2提案書(甲4)とで審査員
の評価に差がなかったことからも明らかである旨を主張するが,上記
①については,前記aに述べたところに照らし,採用することができ
ず,上記②については,前記アに述べた総合評価落札方式における「基
礎点」及び「加点」の意義に照らすと,特定の情報につきそれが記録
されている部分が必須項目としての最低限の要求水準を満たしている
と評価されて基礎点が与えられる一方,当該項目について加点の対象
としては設定されていないということと,当該情報がその一般的な性
質に照らして情報公開法5条2号イの不開示情報に該当すると認めら
れるか否かとは,別個の事柄であるというべきであるから,上記の原
告の主張は,やはり採用することができない。
オ本件企画提案書5頁から41頁までの不開示部分(ただし,別紙5に掲
げる部分を除く。)に記録されている情報について
(ア)記録されている情報の内容について
a本件企画提案書の5頁(以下aにおいて「本頁」という。)につい

本頁は,本件企画提案書のうち,大項目「1.事業の目的,内容及
び実施方法」中の中項目「1.2事業内容」に属する細項目である「事
前検討結果を踏まえたP1の基本方針まとめ」に対応する部分である
ことが認められることからすれば(甲3),本件評価項目一覧の中項
目である「事業内容」に関し,前記エの本件企画提案書の3頁及び4
頁の事前検討作業等によってP1が取りまとめた本件事業の計画に係
る基本方針についての具体的提案に関する情報が記録されていること
が推認される。
b本件企画提案書の6頁(以下bにおいて「本頁」という。)につい

本頁は,本件企画提案書のうち,大項目「1.事業の目的,内容及
び実施方法」中の中項目「1.2事業内容」に属する細項目である「今
回の事業でのステップと運営体制のまとめ」に対応する部分であるこ
とが認められることからすれば(甲3),本件評価項目一覧の中項目
である「事業内容」に関する具体的提案として,P1が本件事業で実
施することを予定している作業を分類し,これらに係るP1内部の運
営の体制,各作業の役割分担(担当組織,委託先の概要等)等に関す
る情報が記録されていることが推認される。
c本件企画提案書の8頁から19頁まで(以下cにおいて「本各頁」
という。)について
本各頁は,本件企画提案書のうち,大項目「1.事業の目的,内容
及び実施方法」中の中項目「1.2事業内容」に属する細項目である
「事前検討」に対応する部分であることが認められることからすれば
(甲3),本件評価項目一覧の中項目である「事業内容」に関し,P
1が計画している本件事業の具体的な作業内容等についてP1が本
件入札に応ずるに当たりあらかじめ関係する事情の検討をした内容
が記録されていることが推認される。
d本件企画提案書の20頁から41頁まで(以下dにおいて「本各頁」
という。)について
本各頁は,本件企画提案書のうち,大項目「1.事業の目的,内容
及び実施方法」中の中項目「1.2事業内容」に属する細項目である
「具体的対策案」に対応する部分であり,本件評価項目一覧の中項目
である「事業内容」に関する具体的提案として,本件事業を①「不正
確情報収集」(21頁及び22頁),②「正確性判断」(23頁及び
24頁),③「クエスチョン作成」(25頁),④「アンサー作成」
(26頁から30頁まで),⑤「アンサーの正確性チェック」(31
頁),⑥「Q&Aサイト構築・更新」(32頁),⑦「Tweetに
よる周知」(33頁から35頁まで),⑧「Q&Aサイト活用」(3
6頁から40頁まで)及び⑨「PDCA定期実施」(41頁)の各作
業段階(上記①から⑨までを併せて,以下「本件事業の各ステップ」
という。)に分類した上で(甲3,乙3),それぞれについてP1が
計画している個別具体的な作業内容やそれらを実施するための体制
に関する情報が記録されていることが推認される。
(イ)情報公開法5条2号イ該当性について
a本件企画提案書5頁から41頁まで(以下(イ)において「本各頁」
という。)に記録されている情報の内容は,前記(ア)に認定したとお
りであり,これらは,いずれも本件企画提案書全体の中では,本件評
価項目一覧の大項目「1.事業の目的,内容及び実施方法」中の中項
目である「1.2事業内容」に係る提案事項として位置付けられてい
るところ,同評価項目に係る内部評価基準は,基礎点については,「・
仕様書内の【提案事項】①から⑤までが提出されているか。」という
ものであり,加点については,①「・モニタリングの対象とする情報
は適切か・モニタリングの方法や体制は適切か。」,②「・Q&A集
を作成後,速やかに周知するための方法は適切か。・想定される専門
家や有識者は適切か。」及び③「・これらを活用した新規提案は適切
か。」というものであって,本件事業の遂行に係る技術的なノウハウ
や業務体制等の内部管理情報の質を問うものであること,配点の面か
ら見ても,同評価項目には技術点の総計200点中140点の配点
(そのうち基礎点は10点,上記①及び②についての加点がそれぞれ
50点,上記③についての加点が30点)がされていることからすれ
ば,同項目は,本件事業に係る提案の中核を成すものと位置付けられ
ており,技術審査において最も重要視される項目であって,本件入札
に加わろうとする者がそれぞれに特徴,独自性等を強調し,他社に対
する優位性を明らかにすることが求められている点であることが認
められる(甲3,5,乙1,3)。そうすると,本各頁に記録されて
いる情報は,本件事業のような情報収集事業について,P1が同社内
部で蓄積してきた独自のノウハウや営業秘密,内部管理に関する情報
であることが推認されるというべきであって,これらの情報が公にさ
れれば,競業他社との関係においてP1の競争上の地位が低下するお
それがあると認められるというべきである。
b(a)原告は,①役割分担については,本件支出計画書(甲7)の開示
された部分には「外注費」として「(6)情報分析費」と「(7)ウェブ
サイト制作,情報発信費」が掲載されていることから本件企画提案
書ではこれらが外注の役割分担とされていることは明らかであり,
また,本件仕様書(甲15)の内容に照らすと,Q&A集の作成は
専門家の役割分担とされていると考えられること,②本件事業の背
景や目的は,本件仕様書の「事業目的」に記載されたとおり一義的
であるから,それを実施する基本方針も競争の参加者ごとに差異が
生じるものではないこと,③同社が確立したという「○」というサ
イトパトロールシステムについては,既に平成22年9月16日付
けの本件ニュースリリース(甲26)で詳細に公表されており,仮
に本件事業のためにカスタマイズしていたとしても,その中心は上
記のとおり既に公になっている上記システムであることからすれ
ば,これらが公になったとしても同社の競争上の地位ないしノウハ
ウ等を害するおそれがあるとはいえない旨を主張するが,上記①に
ついては,前記aに述べたような本各頁の本件企画提案書全体にお
ける位置付けからすれば,本各頁に記録されている役割分担に関す
る情報は,本件支出計画書や本件仕様書に記載された情報にとどま
らないもの(外注先や専門家として予定されている者等)である蓋
然性が高いといえ,原告の主張する公開されている情報が全てであ
ると推認することはできず,上記②についても,前記aに述べたと
ころに照らし,採用することができない。
また,上記③について,証拠(甲26)によれば.P1は,本件
入札公告前の平成22年9月16日付けで,「究極のサイトパトロ
ールソリューション『○』が完成インターネット内の書き込みを
24時間365日,人力で目視チェックコミュニティの監視から
改善提案までを,日本で初めてワンストップで提供」との見出しの
下,一般的に,ユーザー参加型のWEBコンテンツのチェックには
機械検索を活用する手法が用いられるが,特にネガティブな書き込
みについては「隠語」を使用するもの等の特殊例が多く,悪質なケ
ースほど見逃してしまうことが多くあったため,P1では,機械検
索方式よりも,実際に人間が目視を行い,文脈を読み取りながら監
視活動を行うことがベストな方法と考え,より正確なコミュニティ
状況の報告ができる体制を確立した旨等の本件ニュースリリース
を行ったことが認められる。しかし,既に述べたような本各頁の本
件企画提案書全体における位置付けからすれば,本各頁に記録され
ている情報は,上記システムについての一般的な紹介として公表済
みのものにとどまらず,また,本件事業の遂行に当たり,これをど
のように適用するのかといった具体的,実践的なノウハウに関する
ものであると推認されるところ,本件ニュースリリースによっても,
個々の事業を遂行するに当たって上記システムを適用する場合の
具体的なノウハウ等までが明らかになっているわけではないから,
本件ニュースリリースがされているからといって,本各頁に記録さ
れているP1独自のノウハウ等に関する情報が全て公になってい
るとまで推認することはできないというべきである。
(b)原告は,①P2提案書(甲4)はその全部が開示されているとこ
ろ,本件事業における情報の分析手法等が,それを模倣されること
で競争上の地位やノウハウが害されるおそれがあるようなもので
あれば,上記提案書も非公開となるはずである旨,②本件事業報告
書(甲9)は,経済産業省のホームページにおいてその全部が公開
されており,本件事業報告書には,本件企画提案書の不開示情報と
されているⅰP1が,不正確情報対応事業が公募された背景事情を
どのように捉え,資源エネルギー庁のニーズに応えるため,本件事
業の目的をどのように設定したか,ⅱ企画した事業内容の基本方針,
特徴等として強調した点,ⅲこれをどのような役割分担としたかに
対応する各項目が設定され,これに関する情報が記録されているか
ら,競業他社等は,本件事業報告書(甲9)を見れば,P1がどの
ようなノウハウ及び方法をもって本件事業を実施したかは容易に
分かるのであり,本各頁が開示されたからといって,P1の競争上
の地位又はノウハウが害されるとはいえない旨を主張するが,上記
①については,前記(a)に述べたように,本各頁に係る項目の内容
とされるところは本件事業の技術審査においても,最も競争者ごと
の差異が生じる部分であると考えられるから,P2提案書の全部が
開示されているからといって,本各頁もこれと同様に考えることは
できないことは明らかである。
また,上記②についても,本件事業報告書には,「1.2実施概
要」(2頁),「1.3留意点」(2頁),「2.1収集における
基本的な考え方」(4頁),「2.2収集概要」(4頁),「4.
1A作成における基本的な考え方」(21頁)等の各項目において,
P1が実施した本件事業の基本方針や実施した具体的な作業内容
等についての記載があり,また,「一定間隔で質問を作成する専門
研究機関に対して報告書を送付」(6頁)したことや,Aの作成は
「Qに応じて,それぞれの専門家に依頼した」(21頁)ことなど,
役割分担に関する記載も一定程度はされていることが認められる
が,本件事業報告書は,P1が本件事業を実施した後に,現実に実
施した事業内容について報告する趣旨で作成されたものであって,
本件入札における技術審査のために作成された本件企画提案書と
は,客観的に見てその趣旨及び目的を異にするものであり,本件企
画提案書の内容につき,本件事業報告書において公表されることが
予定されていたという事情も認めるに足りる証拠はない。したがっ
て,本件企画提案書の項目と重複する項目があるからといって,本
件企画提案書に記録されているP1のノウハウ等に関する情報の
内容が本件事業報告書に記録されたところと当然に同一であると
いうことはできないというべきである。
(c)また,原告は,本件事業については,前提事実(1)ア(ア)及びウ
のとおり,本件仕様書において予定されていた本件事業の事業内容
について,ホームページの制作の中止及びQ&A集の作問数の減少
があったのみならず,速やかな情報提供もされておらず,これらは
事業内容の軽微な変更とはいえないところ,P1は,事業内容の変
更に当たり,本件委託契約所定の計画変更承認申請書を資源エネル
ギー庁に提出するなどの本件委託契約上の義務を果たしておらず,
P1には本件委託契約上の義務に係る違反行為があり,かかる違反
は本件委託契約上の解除事由に該当し,同庁はP1に対し,本件事
業に係る委託業務の対価を支払う義務を負わないことからすれば,
P1は本件企画提案書の内容について,公にされない正当な利益は
ないなどと主張するが,情報公開法5条2号イの不開示情報該当性
は,飽くまで開示請求に係る行政文書に記録されている情報自体が,
それを公にすることとの関係で,当該法人の正当な利益といえる価
値を有するか否かによって判断されるものであると解すべきであ
り,本件委託契約に関し,P1に同契約上の義務に係る違反行為が
あったか否かによって左右されるものではないというべきである。
(d)以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができない。
c以上によれば,本各頁に記録されている情報は情報公開法5条2号
イに該当する情報であるというべきである。
カ本件企画提案書の43頁及び44頁(以下カにおいて「本各頁」という。)
の不開示部分に記録されている情報について
(ア)記録されている情報の内容について
本各頁のうち43頁は,本件企画提案書のうち,大項目「2.事業実施
計画」中の中項目「2.1事業実施計画」に属する細項目である「事業
全体スケジュール」に対応する部分であることが認められることからす
れば(甲3),本件評価項目一覧の中項目である「事業実施計画」に関
する具体的な提案として,本件企画提案書の5頁から41頁までに記録
されているP1が本件事業において予定している作業内容(前記オ(ア))
を踏まえ,これについて本件事業の実施対象とされている特定の時期に
具体的にどの作業をどの時期に行うのかに関する情報が記録されている
ことが推認される。
また,同じく44頁は,本件企画提案書のうち,上記の中項目に属す
る細項目である「通常運営作業段階での基本となる対応スケジュール」
に対応する部分であることが認められることからすれば,本件評価項目
一覧の上記の中項目に関する具体的な提案として,不正確情報が抽出さ
れた場合の,これに対する具体的な対応方法等に関する情報が記録され
ていることが推認される。
(イ)情報公開法5条2号イ該当性について
a本各頁に記録されている情報の内容は,前記(ア)に認定したとおり
であり,そうすると,本各頁に記録されている情報は,本件事業のよ
うな情報収集事業について,P1が同社内部で蓄積してきた独自のノ
ウハウや営業秘密,内部管理に関する情報であることが推認されると
いうべきであって,これらの情報が公にされれば,競業他社との関係
においてP1の競争上の地位が低下するおそれがあると認められると
いうべきである。
b原告は,①本件事業については,本件仕様書(甲15)において,
実施対象とされている特定の時期に,具体的にどのような作業を行う
のかが示されていること,②本各頁はスケジュールレベルの情報にす
ぎないこと,③本件採点シート(甲5)においてもこれらに関する項
目は加点評価の対象となっておらず,競争者の間で差がつくことが予
定されていない項目であり,実際にも本件企画提案書とP2提案書
(甲4)との間で差がついていないことからすれば,そもそも独自性
を要する項目ではないから,その情報の性質上,公開されてもP1の
競争上の地位ないしノウハウ等を害するおそれがあるといえないと
主張するが,本件仕様書(甲15)においては,本件事業全体を通じ
て実施されるべき事業の内容と事業期間について記載されているに
すぎないことのほか,既に述べたところからすれば,原告の上記主張
はいずれも採用することができない。
また,情報公開法5条2号イの不開示情報該当性は,飽くまで開示
請求に係る行政文書に記録されている情報自体が,それを公にするこ
ととの関係で,当該法人の正当な利益といえる価値を有するか否かに
よって判断されるものであると解すべきであり,本件委託契約に関し,
P1に同契約上の義務に係る違反行為があったか否かによって左右
されるものではないというべきであることは前記オ(イ)b(c)に述べ
たとおりである。
c以上によれば,本各頁に記録されている情報は情報公開法5条2号
イに該当する情報であるというべきである。
(2)本件委託契約書の不開示部分に記録されている情報について
ア記録されている情報の内容について
(ア)本件支出計画書について
本件支出計画書のうち開示された部分(甲7)によれば,その不開示
部分のうち「事業費」中の「(1)情報収集費」,「(2)情報分類,効果測
定費」,「(3)質疑応答集作成費」,「(4)ウェブサイト周知施策費」,
「(5)委員会費等」並びに「外注費」である「(6)情報分析費」及び「(7)
ウェブサイト制作,情報発信費」の各欄に係るものには,それぞれの費
目の内訳の金額及びその積算内訳に関する情報が記録されていることが
推認される。
(イ)本件履行体制図について
本件履行体制図のうち開示された部分(甲7)によれば,その不開示
部分のうち「契約金額」及び「業務の範囲」の各欄に係るものには,P
1が予定している本件事業における業務の外注予定先の事業者について
の契約金額(消費税別)及びその担当する業務の範囲についての具体的
事項に関する情報が記録されていることが推認される。
イ情報公開法5条2号イ該当性について
(ア)本件支出計画書及び本件履行体制図に記録されている情報の内容
は,前記アに認定したとおりであり,これが公にされれば,前者にあっ
てはP1が本件事業の同種又は類似の業務を遂行するに際し支出して
いる経費やその積算内訳,それを踏まえた受注金額に関する情報,後者
にあってはP1内部の運営体制,業務委託先との業務の分担内容に関す
る情報などの同社の内部管理情報が同業他社にもうかがい知れること
となり,同社の競争上の地位が低下するおそれがあると認められるとい
うべきである。
(イ)原告は,①P1と外注先との分担内容については,本件支出計画書
の開示部分に記載されている「事業費」の「内訳」に「外注費」として
「(6)情報分析費」と「(7)ウェブサイト作成,情報発信費」が計上され
ており公になっている,②官公庁における競争入札においては,あらか
じめ市場価格を調査した上で相場に基づき予定価格が定められているの
であり,本件支出計画書の事業費の金額及び積算内訳並びに本件履行体
制図の契約金額及び業務の範囲が公になったとしても,それは市場にお
いて一般に同種・類似の業務に際し通常かかるコストについての情報に
すぎないから,P1の競争上の地位,ノウハウを害するおそれのある情
報であるとはいえないなどと主張するが,上記①については,外注費の
項目に関する情報と,その具体的金額に関する情報は別個のものである
し,上記②については,入札の方法による一般競争に加わろうとする者
は,通常,市場価格を調査した上で,その範囲で更に競争者に対して優
位な提案をしようとするものであるから,P1の落札価格が市場価格を
踏まえたものであるからといって,P1の内部管理情報としての価値が
左右されるものではないというべきである。
また,情報公開法5条2号イの不開示情報該当性は,飽くまで開示請
求に係る行政文書に記録されている情報自体が,それを公にすることと
の関係で,当該法人の正当な利益といえる価値を有するか否かによって
判断されるものであると解すべきであることは,前記(1)オ(イ)b(c)に
述べたとおりである。
原告の主張はいずれも採用することができない。
ウ以上によれば,本件委託契約書の既に述べた不開示部分に記録されてい
る情報は情報公開法5条2号イに該当する情報であるというべきである。
(3)本件フロー確認資料の不開示部分に記録されている情報について
ア記録されている情報の内容について
本件フロー確認資料のうち開示された部分(甲8)によれば,その不開
示部分には,前記(1)オ(ア)dに認定したとおりの本件企画提案書の20頁
から41頁までに記録されているところである本件事業の各ステップを前
提として,各ステップで行うべき具体的な作業内容に関する情報が記録さ
れていることが推認される。
イ情報公開法5条2号イ該当性について
本件支出計画書及び本件履行体制図の不開示部分に記録されている情報
の内容は,前記(2)アに認定したとおりであり,本件企画提案書の20頁か
ら41頁までに記録されている情報について前記(1)オ(イ)aで述べたこ
とと同様,本件事業のような情報収集事業について,P1が同社内部で蓄
積してきた独自のノウハウや営業秘密,内部管理に関する情報であること
が推認されるというべきであって,これらの情報が公にされれば,競業他
社との関係においてP1の競争上の地位が低下するおそれがあると認めら
れるというべきである。
そして,これについての原告の主張をいずれも採用することができない
ことも,本件企画提案書の20頁から41頁までに記録されている情報に
ついて前記(1)オ(イ)bで述べたことと同様である。
(4)本件委託業務経費の不開示部分に記録されている情報について
ア記録されている情報の内容について
本件委託業務経費のうち開示された部分(甲10)によれば,その不開
示部分のうち,「事業費」中の「(1)情報収集費」,「(2)情報分類・効果
測定費」,「(3)回答作成費」,「(4)委員会費等」及び「(5)情報分析費」
の各欄には,P1の委託業務に要した経費のうち,「事業費」のそれぞれ
の費目の内訳の金額に関する情報が記録されていることが推認される。
イ情報公開法5条2号イ該当性について
本件委託業務経費の不開示部分に記録されている情報の内容は,前記ア
に認定したとおりであり,本件支出計画書及び本件履行体制図について前
記(2)イ(ア)で述べたことと同様,本件事業のような情報収集事業について,
P1が同社内部で蓄積してきた独自のノウハウや営業秘密,内部管理に関
する情報であることが推認されるというべきであって,これらの情報が公
にされれば,競業他社との関係においてP1の競争上の地位が低下するお
それがあると認められるというべきである。
そして,これについての原告の主張をいずれも採用することができない
ことも,本件支払支出計画書及び本件履行体制図について前記(2)イ(イ)で
述べたことと同様である。
第4結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すること
として,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判官品川英基
裁判官髙畑桂花
裁判長裁判官八木一洋は,差し支えのため,署名押印をすることがで
きない。
裁判官品川英基
別紙1
開示を求める不開示部分目録
1平成23年7月13日付けの株式会社P1(以下「P1」という。)の作成に
係る「平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)企画
提案書」(甲3,乙3。以下「本件企画提案書」という。)
(1)該当箇所
本件企画提案書
(2)不開示部分
3頁から44頁までの行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情
報公開法」という。)5条各号の規定により開示しないものとされた部分のう
ち,同条2号イに該当する情報が記録されているため開示しないものとされた
部分(本件追加開示決定により開示するものとされた部分を除く。)
2平成23年8月12日付けの「平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事
業(不正確情報対応)に関する委託契約書」(甲7。以下「本件委託契約書」と
いう。)
(1)ア該当箇所
本件委託契約書の別紙1「実施計画書」(以下「本件実施計画書」という。)
に添付の「支出計画書」(以下「本件支出計画書」という。)
イ不開示部分
「事業費」の金額及び積算内訳
(2)ア該当箇所
本件委託契約書の別紙2「履行体制図」(以下「本件履行体制図」という。)
イ不開示部分
契約金額及び業務の範囲
3平成23年9月12日付けのP1の作成に係る「不正確情報対応事業フロー確
認資料」(甲8。以下「本件フロー確認資料」という。)
(1)該当箇所
本件フロー確認資料
(2)不開示部分
提案の内容等
4平成24年4月9日付けのP1の作成に係る実績報告書(甲10。以下「本件
実績報告書」という。)
(1)該当箇所
本件実績報告書の「5.委託業務に要した経費」中の「(2)支出内訳」(以下
「本件委託業務費」という。)
(2)不開示部分
「事業費」の積算内訳
別紙2
開示文書目録
1本件企画提案書
2P2提案書
3本件事業に係る技術審査時における技術審査員らの作成に係る採点シート(甲
5。以下「本件採点シート」という。)
4本件入札に係る平成23年7月15日付けの入札調書
5本件委託契約書
6本件フロー確認資料
7本件事業報告書
8本件実績報告書
別紙3
不開示部分目録
1本件企画提案書
(1)該当箇所
本件企画提案書
(2)不開示部分
与件の整理,国からの受注実績に関する部分及び会社概要を除く部分
(3)不開示の理由
当該事業に係る公募が総合評価落札方式による一般競争入札によって行わ
れており,提案の内容等は当該企業の技術ノウハウを含むものであり,公にす
ることにより,競合他社等に容易に模倣される等,当該法人の権利,競争上の
地位その他正当な利益を害するおそれがあり,情報公開法5条2号イに該当す
るため不開示とした。さらに,事業提案書中,当該事業に係る関係者の情報は,
不開示の個人に関する情報であって,特定の個人を識別することができるもの
であり,同法5条1号に該当するため,不開示とした。
2P2提案書
(1)該当箇所
P2提案書
(2)不開示部分
事業実施体制の一部
(3)不開示の理由
当該事業に係る関係者の情報は,不開示の個人に関する情報であって,特定
の個人を識別することができるものであり,情報公開法5条1号に該当するた
め,不開示とした。
3本件採点シート
(1)該当箇所
加点
(2)不開示部分
内部用評価基準ごとの評価点,得点及び得点の合計点,特記事項
(3)不開示の理由
当該部分については,入札者の評価に関する情報であり,公にすることによ
り,各入札者の評価項目ごとの点数が把握される等,市場における評価に不当
に影響を及ぼし,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するお
それがあり,情報公開法5条2号イに該当するため,不開示とした。また,当
該部分については,個々人の意見であるから,これを公にすることにより,外
部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより,率直な意見の交換や,
公正であるべき公募手続に係る意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ
があるとともに,そのような事態の発生は,今後行われる同様の公募事務の適
正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,同法5条5号及び6号の柱書きに
該当するため,不開示とした。
4本件委託契約書
(1)ア該当箇所
表紙
イ不開示部分
法人代表者の印影
ウ不開示の理由
当該部分については,法人又は法人代表者の印影であって,法人に関する
情報であるが,認証的機能を有するものであり,公にすることにより,偽造
されるおそれがある等,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれがあると認められることから,情報公開法5条2号イに該当す
るため。
(2)ア該当箇所
本件支出計画書
イ不開示部分
「人件費」の金額及び積算内訳,「事業費」の金額及び積算内訳,「一般
管理費」の金額及び積算内訳
ウ不開示の理由
当該部分については,法人に関する情報であるが,当該法人の事業計画,
運営体制,営業ノウハウ,個別の取引内容等に関するものであって,公にさ
れ,又は公にされることが予定されていない内部管理情報であり,公にする
ことにより,競業他社等の対抗策の実施を容易にする,あるいは,競争上不
利な立場に置かれる等,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれがあると認められることから,情報公開法5条2号イに該当す
るため,不開示とした。
(3)ア該当箇所
本件履行体制図
イ不開示部分
事業者名,住所,契約金額,業務の範囲及び業務の分担関係
ウ不開示の理由
当該部分については,法人に関する情報であるが,当該法人の事業計画,
運営体制,営業ノウハウ,個別の取引内容等に関するものであって,公にさ
れ,又は公にされることが予定されていない内部管理情報であり,公にする
ことにより,競業他社等の対抗策の実施を容易にする,あるいは,競争上不
利な立場に置かれる等,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を
害するおそれがあると認められることから,情報公開法5条2号イに該当す
るため,不開示とした。
5本件フロー確認資料
(1)該当箇所
本件事業フロー確認資料
(2)不開示部分
提案の内容等
(3)不開示の理由
提案の内容等については,当該事業に係る公募が総合評価落札方式による
一般競争入札によって行われており,当該企業の技術ノウハウを含むもので
あり,公にすることにより,競合他社等に容易に模倣される等,当該法人の
権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,情報公開法5
条2号イに該当するため,不開示とした。
6本件実績報告書
(1)ア該当箇所
表紙
イ不開示部分
法人代表者の印影
ウ不開示の理由
当該部分については,法人又は法人代表者の印影であって,法人に関す
る情報であるが,認証的機能を有するものであり,公にすることにより,
偽造されるおそれがある等,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な
利益を害するおそれがあると認められることから,情報公開法5条2号イ
に該当するため,不開示とした。
(2)ア該当箇所
業務の進ちょく状況
イ不開示部分
対応者
ウ不開示の理由
当該事業に係る関係者の情報は,不開示の個人に関する情報であって,
特定の個人を識別することができるものであり,情報公開法5条1号に該
当するため,不開示とした。
(3)ア該当箇所
委託業務に要した経費及び支出内容
イ不開示部分
「人件費」の金額及び積算内訳,「事業費」の金額及び積算内訳,「一
般管理費」の金額
ウ不開示の理由
当該部分については,法人に関する情報であるが,当該法人の事業計画,
運営体制,営業ノウハウ,個別の取引内容等に関するものであって,公に
され,又は公にされることが予定されていない内部管理情報であり,公に
することにより,競業他社等の対抗策の実施を容易にする,あるいは,競
争上不利な立場に置かれる等,当該法人の権利,競争上の地位その他正当
な利益を害するおそれがあると認められることから,情報公開法5条2号
イに該当するため,不開示とした。
別紙4
開示を求める不開示部分目録(一部取下げ前)
1本件企画提案書
(1)該当箇所
本件企画提案書
(2)不開示部分
与件の整理,国からの受注実績に関する部分及び会社概要を除く部分で情報
公開法5条2号イに該当するため不開示とされた部分
2本件委託契約書
(1)ア該当箇所
本件支出計画
イ不開示部分
「人件費」の金額及び積算内訳,「事業費」の金額及び積算内訳,「一般
管理費」の金額及び積算内訳
(2)ア該当箇所
本件履行体制図
イ不開示部分
契約金額,業務の範囲及び業務の分担関係
3本件フロー確認資料
(1)該当箇所
本件フロー確認資料
(2)不開示部分
提案の内容等
4本件実績報告書
(1)該当箇所
委託業務に要した経費及び支出内訳
(2)不開示部分
「人件費」の金額及び積算内訳,「事業費」の金額及び積算内訳,「一般管
理費」の金額
別紙5
本件追加開示決定部分目録
本件企画提案書のうち,下記の部分

121頁から36頁まで及び41頁の標題のうち本件一部不開示決定で開示しな
いものとされた部分の全部
237頁から40頁までの標題のうち本件一部不開示決定で開示しないものとさ
れた部分であって各1ないし13文字目

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛