弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由第一、二点について。
 原判決は、上告人が現実にいわゆる逆選択を行つたとの事実を認定したものでは
なく、健康保険法二〇条一項がいわゆる任意継続被保険者資格取得の申請期間を一
〇日に限定したのは、いわゆる逆選択を防止せんとする趣旨から出たものであるか
ら、単に法律を知らなかつたというだけでは、同条二項の正当の事由があると認め
られる場合に当らないものと解すべきである、との趣旨を判示したものであつて、
右判断は正当である。そして、原審認定の事情(原審の認定によれば右資格申請が
あつたのは退職の日から三年以上を経過した後であるという。)の下では、仮に上
告人が現実に逆選訳をする意思がなく、被保険者であつた当時から肺結核であり、
従つて若し法律を知つていさえすれば右資格の申請をしたはずであるというような
事実が存在したとしても、それだけで申請期間の徒過につき正当の事由があるもの
とは解されない。また、期間の徒過につき正当の事由があると認めるに足りる時期
に上告人が品川社会保険出張所に再三問い合わせたとの事実は原審の認めないとこ
ろである。それ故、期間の徒過につき正当の事由があつたとは認められないとする
原審の判断は正当であり、所論は原審の事実認定を攻撃するものであるか又は原審
の認めない事実を前提として原判決を非難するに帰し、すべて採用のかぎりでない。
 同第三点について。
 所論は、上告人は試の使用期間を三ヶ月と定めて雇い入れられたものではなく、
雇傭関係は基準法二〇条により解約申入れの日である昭和三〇年八月四日から一ヶ
月を経過した同年九月五日をもつて終了したものであつて、甲三号証(記録一三九
丁)の記載内容は右事実に合致するものであるのに、原審が右に反する事実を認定
したことは違法であるというに帰する。
 しかし、原審は、上告人は昭和三〇年七月一日に三ヶ月の臨時工として雇われ、
同年八月上旬会社から雇傭契約解除の申入れを受け上告人がこれを承諾することに
よつて雇傭契約が終了した(八月上旬に合意解約が成立した)旨、及び甲三号証の
内容は右事実に符合するものではなく、会社社長が上告人の要求によりやむを得ず
真実に反し記載したものである旨を認定したものであつて、所論はひつきよう、右
事実認定を攻撃するに帰し採用のかぎりでない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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