弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
     当審における訴訟費用は被告人Jの負担とする。
         理    由
 被告人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、同Iの各上告趣意及び
被告人Jの弁護人小田泰三の上告趣意は、末尾の書面記載のとおりである。
 被告人A外八名の上告趣意について。
 所論は、いずれも事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人Jの弁護人小田泰三の上告趣意第一点について。
 公職選挙法二二一条一項五号と内容を同じくする旧衆議院議員選挙法一一二条一
項五号にいわゆる選挙運動者には、法定の選挙運動者及び無届選挙運動者のみなら
ず金銭を供与せんとする者の意を受けその目的を知りながら被供与者に伝達するた
め金銭の交付を受ける者をも包含することは、つとに大審院の判例(昭和一一年(
れ)二二五二号同一二年一月三〇日第三刑事部判決、刑集一六巻一七頁、昭和一一
年(れ)一七三七号同年一〇月五日第二刑事部判決、刑集一五巻一二五八頁)とし
たところであつて、公職選挙法二二一条一項五号の解釈としても、いまにわかに右
大審院判決の見解と異なる解釈をしなければならないものとは思われない。ところ
で、原判決の確定した事実によれば、被告人Jは昭和二七年一〇月一日施行の衆議
院議員選挙に際し選挙人であつたところ、同年九月一六日頃肩書自宅で山形県a区
から立候補したKの選挙運動者Lから父Mに対し右候補者に当選を得しめるため投
票並びに投票取纒めをすることの報酬として渡して貰いたい旨の依頼を受け その
資金として金二千円の交付を受けたものであるというのであつて、右判示事実自体
により被告人が前記判例にいう選挙運動者に該当することが示されている。それゆ
え、原判決が右事実に公職選挙法二二一条一項五号を適用処断したからとて、所論
のように被告人が選挙運動者であつたことを判示しないで処断したものではないか
ら、所論当裁判所の判決に違背するところはなく、また理由不備の違法もない。
 同第二点について。
 被告人Jが論旨第一点で判示した趣旨の選挙運動者と認められることは、原判決
挙示の証拠により肯認することができる。そして、同被告人の原判示行為が公職選
挙法二二一条一項五号に該当することは第一点において説明したとおりであるから、
所論違憲の主張はその前提を欠き問題とならない。
 なお、本件には刑訴四一一条を適用すべき事由も認められない。
 よつて、刑訴四一四条、三九六条、一八一条に従い、裁判官全員の一致した意見
で主文のとおり判決する。
 検察官 竹原精太郎出席。
  昭和二九年一二月七日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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