弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Fの弁護人佐藤喜代作の上告趣意は量刑不当の主張に過ぎず、刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。被告人Bの弁護人石高栄次郎、同中西政樹の上告趣意第
一点について。
 所論は原裁判所が、その第二回公判において証人尋問をその申請者たる弁護人に
十分にさせなかつた違法があり、憲法三七条二項及び刑訴法三〇四条二項後段に違
反すると主張する。
しかし、原審第二回公判期日における公判調書は、証人Aに対する尋問及び被告人
Bに対する質問につき「C弁護人」と記載すべきを「D弁護人」と、又証人Eに対
する尋問につき「D弁護人」と記載すべきを「C弁護人」と各誤記したものと認め
られる。けだし被告人両名は共謀関係のない各別の収賄であつて、弁護人は各別に
選任されたのであるから自己の担当しない被告人及びその証人につき質問及び尋問
を行つたとは考えられないし又その質問尋問につき異議が述べられた形跡もないこ
と及び第一回公判調書の正確な記載とを比照すれば、明白な誤記と認められるから
である。しかして、かゝる明白な誤記については刑訴五二条の規定にかかわらず、
これを本来の趣旨に従つて解釈することを妨げないものと解すべきであるから、違
法違憲の主張は共に前提を欠き、論旨は理由がない。
 同第二点について。
 原判決は被告人が賄賂者Gに返還した四九万二千円の内一九万五千円を被告人の
収賄金額より控除して其余の七五万五千円を被告人に対し追徴を命したことは所論
のとおりであるが、右返還金の内前記一九万五千円を除くその余の金円は、被告人
が収賄した金円そのものを返還したのではないから、所論のように返還を受けたG
から没収すべきものではない。従つて被告人から追徴を命した原判決は正当であつ
て、所論引用の判例は本件に適切でない(当裁判所第二小法廷昭和三〇年(あ)二
三七四号同三二年一二月二〇日判決刑集一一巻一四号参照)
 同第三点は量刑不当の主張に過ぎず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり
決定する。
  昭和三三年九月三〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   介
            裁判官    奥   野   健   一

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