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平成28年4月12日宣告裁判所書記官
平成27年(わ)第970号窃盗被告事件
判決
主文
被告人を懲役1年に処する。
この裁判が確定した日から5年間,その刑の執行を猶予し,被告人を
猶予の期間中,保護観察に付する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
【犯罪事実】
被告人は,平成27年9月11日,神戸市a区b町c丁目d番ef号所在のg
スーパーにおいて,同店店長A管理のリンゴ等5点(販売価格合計797円)を
窃取したものである。
【証拠】(各証拠に付記した番号は,検察官請求の証拠番号である。)
(略)
【法令の適用】
1被告人の行為は刑法235条に当たる。
2定められた刑のうち懲役刑を選択する。
3その刑期の範囲内で,主文のとおり刑を定める。
4被告人は平成26年11月19日神戸簡易裁判所で窃盗罪により懲役10月
に処せられ3年間その刑の執行を猶予され,本件の罪はその猶予の期間内に犯
したものであるが,情状に特に酌量すべきものがあるから,刑法25条2項を
適用して刑の執行を猶予し,同法25条の2第1項後段によりその猶予の期間
中被告人を保護観察に付する。
5訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人
に負担させる。
【量刑の理由】
被告人は,万引き窃盗で平成24年9月に罰金刑に,平成26年11月には懲
役10月,3年間刑執行猶予に処せられ,本件はその執行猶予期間中の再犯であ
る。窃盗行為に対する被告人の常習性の高さが指摘される。
もっとも,本件は商品を上着のポケットや脇に隠して店外へ持ち出すという比
較的単純な手口の万引き事犯であり,被害額も約800円にとどまり,被害品は
還付され,弁償も行われている。その違法性は特別に高いものではない。
そして,被告人を診察したB医師は,被告人は前頭側頭型認知症を患い,その
症状のひとつとして衝動を抑制しづらい状態にあり,本件犯行はその影響を受け
ていると証言している。同医師は,医学的検査の結果や被告人の行動傾向の分析
など複数の根拠を示して説明しており,その意見は信頼できるものである。検察
官は,診断の前提となる事実関係が適切に把握されておらず,標準的な診断基準
に則った診断がなされていないなどと主張するが,同医師の証言内容を検討して
も,事件記録や面談などの資料収集に関しても,専門的な知見に基づく診断に関
しても,その意見の信頼性を失わせるような誤りがあるとすべき根拠は見当たら
ない。
検察官は,被告人が周囲を確認してから商品を隠匿し,退店の際に周囲を何度
も確認している事実を指摘し,その行動は病的なものではないと主張する。しか
し,B医師の証言によれば,前頭側頭型認知症を患って衝動を抑制しづらい状態
にあっても,通常は万引きが悪いことだとは理解しているというのであるから,
被告人がそのような行動をしていることから直ちに同医師の診断が不合理である
とまではいえない。むしろ,上記のように手口が比較的単純でやや稚拙である点
を,罰則があっても報酬に対する衝動を抑制しづらい状態にあったことの表れと
見ることも可能と解される。
以上によれば,被告人の認知症の症状が本件犯行に一定の影響を及ぼしている
ことは否定できず,被告人が本件犯行に及んだことに対する非難は,ある程度限
定されるというべきである。
そうすると,被告人の責任は,再度の執行猶予を付することが許されないほど
重いものではない。
そして,被告人は,本件をきっかけに専門医の診察を受け,初めて認知症を患
っていることを認識し,今後は医療や介護の支援を受けながら更生する旨述べ,
被告人の親族も被告人の監督や更生への援助を約束している。これらの事情を踏
まえれば,被告人には社会内での更生がなお期待できるというべきである。
そこで,被告人には情状に特に酌量すべきものがあると認め,再度の執行猶予
を付することとした。
(求刑懲役1年6月)
平成28年4月12日
神戸地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官長井秀典
裁判官森幸督
裁判官安井亜季

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