弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人中村健太郎、同中村健の上告理由第一点について。
 訴外Dは、被上告人Bの運転する自動車が道路の中央線をこえて進行してくるの
を約八五メートル前方に発見しながら、その動向を注視せず、漫然中央線寄りをそ
のまま進行したものである旨の事実を認めて、Dに本件事故発生についての過失が
あるものとし、他方、被上告人Bにも過失があると認めて、原判示の割合による過
失相殺をした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして正当として肯認
することができないものではなく、右認定判断の過程に所論の違法はない。論旨は、
ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実の認定を非難し、さら
に、原審の認定にそわない事実関係を前提にして右過失に関する原審の判断の違法
をいうものであつて、採用することができない。
 同第二点について。
 記録によれば、本件の経過は、次のとおりである。すなわち、
 被上告人Bは、第一審において、療養費二九万六二六六円、逸失利益一一二八万
三六五一円、慰藉料二〇〇万円の各損害の発生を主張し、療養費、慰藉料の各全額
と逸失利益の内金一五〇万円との支払を求めるものであるとして、合計三七九万六
二六六円の支払を請求したところ、第一審判決は、療養費、慰藉料については右主
張の全額、逸失利益については九一六万〇六一四円の各損害の発生を認定し、合計
一一四五万六八八〇円につき過失相殺により三割を減じ、さらに支払済の保険金一
〇万円を差し引いて、上告人の支払うべき債務総額を七九一万九八一六円と認め、
その金額の範囲内である同被上告人の請求の全額を認定した。上告人の控訴に対し、
原審において、被上告人Bは、第一審判決の右認定のとおり、逸失利益の額を九一
六万〇六一四円、損害額の総計を一一四五万六八八〇円と主張をあらためたうえ、
みずから過失相殺として三割を減じて、上告人の賠償すべき額を八〇一万九八一六
円と主張し、附帯控訴により請求を拡張して、第一審の認容額との差額四二二万三
五五〇円の支払を新たに請求した(弁護士費用の賠償請求を除く。以下同じ。)と
ころ、これに対し、上告人は右請求拡張部分につき消滅時効の抗弁を提出した。原
判決は、療養費および逸失利益の損害額を右主張のとおり認定したうえ、その合計
九四五万六八八〇円から過失相殺により七割を減じた二八三万七〇六四円について
上告人が支払の責を負うべきものであるとし、また、慰藉料の額は被上告人Bの過
失をも斟酌したうえ七〇万円を相当とするとし、支払済の保険金一〇万円を控除し
て、結局上告人の支払うべき債務総額を三四三万七〇六四円と認め、第一審判決を
変更して、右金額の支払を命じ、その余の請求を棄却し、さらに、附帯控訴にかか
る請求拡張部分は、右損害額をこえるものであるから、右消滅時効の抗弁について
判断するまでもなく失当であるとして、その部分の請求を全部棄却したものである。
 右の経過において、第一審判決がその認定した損害の各項目につき同一の割合で
過失相殺をしたものだとすると、その認定額のうち慰藉料を除き財産上の損害(療
養費および逸失利益。以下同じ。)の部分は、(保険金をいずれから差し引いたか
はしばらく措くとして。)少なくとも二三九万六二六六円であつて、被上告人Bの
当初の請求中財産上の損害として示された金額をこえるものであり、また、原判決
が認容した金額のうち財産上の損害に関する部分は、少なくとも(保険金について
右と同じ。)二七三万七〇六四円であつて、右のいずれの額をもこえていることが
明らかである。しかし、本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由
とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にする
ものであるから、その賠償の請求権は一個であり、その両者の賠償を訴訟上あわせ
て請求する場合にも、訴訟物は一個であると解すべきである。したがつて、第一審
判決は、被上告人Bの一個の請求のうちでその求める全額を認容したものであつて、
同被上告人の申し立てない事項について判決をしたものではなく、また、原判決も、
右請求のうち、第一審判決の審判および上告人の控訴の対象となつた範囲内におい
て、その一部を認容したものというべきである。そして、原審における請求拡張部
分に対して主張された消滅時効の抗弁については、判断を要しなかつたことも、明
らかである。
 次に、一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失
相殺をするにあたつては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請
求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を
認容することができるものと解すべきである。このように解することが一部請求を
する当事者の通常の意思にもそうものというべきであつて、所論のように、請求額
を基礎とし、これから過失割合による減額をした残額のみを認容すべきものと解す
るのは、相当でない。したがつて、右と同趣旨において前示のような過失相殺をし、
被上告人Bの第一審における請求の範囲内において前示金額の請求を認容した原審
の判断は、正当として是認することができる。
 以上の点に関する原審の判断の過程に所論の違法はなく、論旨は採用することが
できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下   田   武   三
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛